Case Study

社会を変えるイベントレポート

2021年度病院の働き方改革シンポジウム
−長崎大学病院の先進的な取り組み事例より−

病院の働き方改革シンポジウム −長崎大学病院の先進的な取り組み事例より−

医療現場では2024年から始まる医師の時間外労働の上限規制導入に向け、働き方改革推進の機運が高まりつつあります。
長崎大学病院は、弊社が提供する長時間労働削減および生産性向上のための「働き方改革コンサルティング」を診療科に導入。数々の先駆的な取り組みにより、顕著な成果を収めてきました。
2021年3月20日、前年に引き続き2回目となる「病院の働き方改革シンポジウム」をオンラインで開催。外傷センター、形成外科、産科婦人科の3チームによる取り組み内容と成果の発表が行われました。本レポートでは、このイベントダイジェストをお届けいたします。

●国立大学法人 長崎大学様の働き方改革事例はこちらでご紹介しています。

長崎大学・河野茂学長あいさつ

病院における働き方改革のモデルを目指して

河野:本学では平成27年以降、研究者のライフイベントやワーク・ライフバランスに配慮した研究環境の改善と意識改革、そして女性研究者の増員と研究力の向上、上位職への積極登用などに部局横断で取り組んでまいりました。

令和元年度からは、「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(先端型)」に採択され、特に女性研究者がキャリアアップしやすい環境をバックアップし、全職員が男女共同参画について理解を深めるための取り組みを進めています。 具体的には、

①女性研究者海外派遣支援制度、
②英語論文の校正費の一部助成、
③新規上位職への研究費助成、
④ダイバーシティ推進学習プログラムの開発、
⑤大学病院における働き方改革の実施

に取り組んでまいりました。本日は働き方改革の成果を発信することで、医学・医療分野における働き方改革のモデル病院を目指すとともに、全国的な波及を目指したいと思います。

 

外傷センター 江良允医師

外傷センターの働き方改革ー取組後、超過勤務時間を抑えること(27.5%減)に成功ー

江良:2020年度は主に「医局の整理整頓」「多職種カンファレンス」「週4日勤務体制への変更」に取り組み、現在も継続中です。 2021年度からは「season2」として再スタート。情報共有に関しては、ホワイトボードの利用、Excelによる患者さんの情報管理などに取り組みました。スタッフのスキルアップに関しては、よく診る症例に対応するためのスキルマップの作成・運用を行っています。

週4日勤務体制への変更については、シフト制を導入。昨年度と比較して手術件数が増えても(31.0%増)超過勤務時間を抑えること(27.5%減)に成功しています。

今後はスキマ時間の有効利用、スキルマップのブラッシュアップにチャレンジしたいと考えています。

 

形成外科 芦塚翔子医師

形成外科の働き方改革ー「思いやる」「助け合う」「早く帰る」ー

芦塚: 多忙により医局全体が慢性的に疲弊し、雰囲気が悪化している状況を感じていました。そこで、アンケートをもとに問題点を絞り、「思いやる」「助け合う」「早く帰る」という活動目標を掲げて取り組みました。

具体的には ①スキルマップの作成、②「○○中ボード」の作成、③お互いのいいところ探しアンケート、④帰ろうデー を実施。

帰ろうデーの対象者に対して周りの人が気遣う光景が見られ、1月12日の開始以降、計40時間の有給取得を実現しました。また、恒常的に「早く帰ろう」という意識変容にもつながっています。結果として「思いやる」「助け合う」「早く帰る」ともに顕著な効果が見られたと感じています。

今後は、帰ろうデーを安定して施行できる制度を検討するほか、業務の見える化に取り組むなど、今回の取り組みを定着・継続していきたいと考えています。

 

 

産科婦人科 野口将司医師

産科婦人科における働き方改革ー時間外労働は32%減を実現ー

芦塚:女性医師の割合が約75%、うち半数が育児中であり、踏み込んだ働き方改革が期待されていました。 特に「労働時間・休日」をテーマに以下の項目に取り組みました。

①診療科内での意識の共有…働き方改革の重要性・必要性を明確に示した。
②当直後の業務負担軽減…当直翌日は午前中の業務で終了、午後には帰宅可能とした。
③時間外の病棟対応…時間外の連絡は当直医がハブとなることで、時間外の業務負担を軽減した。
④診療業務以外の雑務…ドクタークラークを増やして診療に集中できる環境を確保。
   各医師の情報共有と業務負担の均一化を目指した。
⑤ワーク・ライフバランスとキャリアアップ(やりがい)の両立
   …毎週水曜日に抄読会、臨床研究報告会、勉強会を実施した。

時間外労働は32%減を実現。今後もよりよい職場づくりに取り組みたいと思います。

 

日本赤十字医療センター第一産婦人科部長 木戸道子様

他病院事例紹介 
日本赤十字医療センター第一産婦人科における働き方改革

木戸:医師の働き方改革は「タスクシフト・シェア」「医師の業務の削減」「変形労働時間制の導入」「ICT等の活用」「その他の業務削減・効率化」のすべてを組み合わせることが重要であり、当センターではすべてに取り組んでいます。

特に、変形労働制(変則二交代制勤務)を導入することで長時間の連続勤務がなくなり、ワーク・ライフバランスも向上。直近における時間外勤務時間数(3カ月合計)は年960時間のラインを下回っています。 また、医師事務作業補助者による書類作成や入力業務の代行、看護職(助産師)との業務分担が非常に有効に機能しています。単なる横滑りのタスクシフトではなく、それぞれの職能を生かした有機的なタスクシェアを意識しました。 他には、当院で分娩予定の妊産婦の外来健診を地域のクリニックに委託し共同管理する「周産期病診連携」(地域全体でのチーム診療)も効果を上げています。

働き方改革は人口減少社会への対応策となるだけでなく、特に女性医師の自己肯定感を高め、能力を発揮してもらい、医療を未来につなげるためにも不可欠な取り組みであると確信しています。

 

中尾一彦病院長・長崎大学河野学長

閉会あいさつ

中尾:現在、本院は2024年の働き方改革に向けて準備を進めています。「タスクシェア・タスクシフト」が一つのキーワードであり、特定行為の研修施設を設置したほか、診療看護師(NP)導入に向けた支援システムも構築しています。 そのほか医師の事務作業軽減、チーム医療、複数主治医制、女性医師への支援などについて取り組みを充実させていくつもりです。

河野:私自身、病院長だった当時から「働きやすい職場を作らなければ大学病院に若い人がいなくなる」との危機感を持って取り組んできました。そういった危機感が今日までの活動につながっています。 医療機関として最も大切なのは、仕事に対するやりがいと充実感がある職場にすることです。ぜひ、やりがいのある職場にするためにトップダウン、ボトムアップで頑張っていただければと思います。ありがとうございました。