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男性の育休取得が5%である3つの理由

2019年3月28日

【コンサルタントによる解説】

男性の育児休業取得率が少しずつ伸びてきています。2017年度には5.14%となりました。しかし政府の目標値は13%(2020年度)であることや女性の取得率が83.2%であることを踏まえると、まだまだ伸びしろがありそうです。取得率は父親になった人(配偶者が出産した人)のうち、育児休業を取得した人の割合を見ています。つまり「5%」という数値は、2017年度中に子どもが生まれた、というお父さん100人を集めても5人しかいない。育児休業を取得した男性に出会える、というのはたいへん貴重だとわかります。では、男性の育児休業率が大きく向上しない理由はどこにあるのかを考えてみましょう。

【図 育児休業取得率の推移】

※平成23年度の[ ]内の割合は、岩手県、宮城県および福島県を除く全国の結果 / 資料出所:厚生労働省「雇用均等基本調査」

理由①:社会全体が男性の育児に理解がない

男性が育児に携わることについて、日本社会ではまだ理解が進んでいません。例えば私が7カ月の育児休業を取得しようとしたとき、知人や友人に「育休を取って何を手伝うの?」と言われました。「手伝う」のではなく「育児をする」ために休業するのです。家族に加わる新しい仲間を受け入れ、夫婦で様々な手続きを進めながら、家族内での暮らし方を整えていくのです。
他にも「母子手帳」という言葉があります。一部の自治体ではこの表現を見直して「親子健康手帳」と名付けていますが、「母が育てる」という価値観や認識が表れていることに違和感を覚える自治体は、まだ少数です。育児休業を取得しようという考えを持つ前に、「男性が育児に参画する」ことの社会的ハードルが高いと言えます。

理由②:全階層の労務知識不足

被雇用者の育児休業は、法律によって男女ともに認められています。しかし今でも「うちの会社には男性の育児休業の制度はない」という声を聞きます。あるいは「休業期間中は収入がなくなる」「給付金はあるが2/3になってしまう」といった誤解も存在しています。

労務知識が不足した人たちがマネジメントの立場になると「育休?ふざけるな」とマタハラ・パワハラ問題に発展させてしまうケースもあります。働くことに関する正しい知識を、一般職層・マネジメント層ともに広く持ち合わせることがたいへん重要です。

理由③:教育の違いによる価値観の乖離

私は「38歳のハードル」と呼んでいます。家庭科の男女共修を経験した世代と、男子が技術科、女子が家庭科を習っていた世代との間に価値観の違いが生まれています。1993年~1994年に中学と高校で男女共修となり、その教育を受けてきたのが38歳以下の世代なのです。38歳以上は性別役割分担の意識が強く、男性の育児参画は選択肢の中にない傾向を持ち、38歳以下の世代は「イクメン」と呼ばれることにさえ違和感を覚え、「私は父親なんです」と考える傾向が強まります。まさに育休を取得しようとする一般職層と、その価値観を持ち合わせていないマネジメント層の年代の間で、乖離が生じているのです。

表現するまでもなく、子どもは将来の社会を担う宝です。「父が」「母が」という論点だけではなく、社会全体で子どもを育てていく必要があります。性別役割分担にとらわれることなく、より柔軟な発想で子育てをとらえ、皆で取り組んでいくものでしょう。

最低限の労務知識を誰もが持ち合わせ、皆が幸せに働き、生きることのできる社会を作るために協力しひとりひとりの価値観を尊重していくことが求められていると考えます。

解説:松久晃士
出典:内閣府男女共同参画局