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ワーク・ライフバランス基本データ解説

睡眠と生産性の関連性~効果的な睡眠術~

2019年6月28日

多くの人は、働くことについて考えるとき、睡眠にまでは目を向けていません。しかし、実は睡眠こそが創造的な仕事の源であることが、近年いくつかの調査により明らかになってきました。今回は、睡眠と日中のパフォーマンスの関連性、そして生産性を上げるための睡眠の技術について見ていきましょう。


睡眠と日中のパフォーマンスの関連性

睡眠と日中のパフォーマンスの関連性を調べるために、アメリアの睡眠学会が発行する学術誌『SLEEP』で、ある実験が行われました。スタンフォード大学の男子バスケット選手10人に、40日間、毎晩10時間の睡眠をとらせたところ、フリースローの成功率・スプリントの数値・リアクションタイムの速さなどが大幅に向上したのです。睡眠と日中のパフォーマンスが密接に関連していることがわかります。

また、睡眠不足が日中のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことを示す、他のデータもあります。米ペンシルバニア大学などの研究チームが行った実験では、徹夜のグループと6時間睡眠のグループを比較し、パフォーマンスの差を調査しました。結果、6時間睡眠を2週間続けた脳は、2晩徹夜した脳と同程度のパフォーマンス低下が見られました。
なお、ここでのパフォーマンスとは、認知能力・注意力・身体能力を指します。

さらに、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で行われた研究では、優秀な学生ほど、長く睡眠を取っていることも明らかになりました。

脳は、睡眠中に記憶を整理し、体をメンテナンスし、細胞を修復・成長させています。睡眠が不足すると、この時間が削られてしまうため、日中のパフォーマンスが低下するのは、ある意味当たり前のことといえるでしょう。

生産性を上げる睡眠術

ここまで、睡眠と日中のパフォーマンスの関連性について見てきました。パフォーマンス向上のために必要なのは、量と質の担保された「よい睡眠」です。しかし、日々の忙しさに追われ、睡眠量の確保が難しい方も多いのではないでしょうか。そこでここからは、睡眠の「質」の向上にフォーカスし、生産性を上げる睡眠術を紹介していきます。

睡眠の質を高める上で最も重要なのが、入眠後すぐに訪れる深い睡眠です。
睡眠が、体は休んでいても脳は活動しているレム睡眠と、体も脳も休息するノンレム睡眠の2つに分類されることは有名です。浅い眠りであるレム睡眠と、深い眠りであるノンレム睡眠は、90分周期で交互に繰り返されています。そして最高の睡眠の基礎になるのが、入眠後最初に訪れる深い眠り、つまり最初のノンレム睡眠にあたる90分間です。

この90分間では、睡眠全体で分泌される成長ホルモンのうち、70~80%が分泌されています。その他にも、脳のコンディショニング、眠気や疲労からの解放、免疫力の増強、記憶の保存など、多くの役割を担っています。最初のノンレム睡眠をしっかりとることができれば、睡眠の重要な役割は、ほぼ確保できていると言っても過言ではありません。

最高の90分の確保のために重要なのは、ベッドで最初に訪れる眠りを逃さず、スムーズに入眠することです。ここでのポイントは、「体温」と「脳」。2つのスイッチを上手く切ることで、深い眠りに入ることができます。ここからは、具体的な方法をいくつかご紹介していきます。

①寝る90分前に入浴する。
体温は、皮膚体温と、筋肉や内臓が熱を発する深部体温の2つに分類されます。日中の覚醒時は、深部体温の方が2度ほど高いですが、スムーズな入眠のためには、この2つの体温差を縮めることが重要です。

そのために利用するのが、「大きく上がるとより下がろうとする」深部体温の性質です。入浴で意図的に深部体温を上げることで、その後深部体温が大きく低下し、皮膚体温との差が縮まります。

スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所と秋田大学が協力して行った実験では、40度のお風呂に15分入ると、およそ0.5度の深部体温上昇が見られました。0.5度上がった深部体温が元に戻るには90分かかるため、入浴前より深部体温が低下するのは、入浴後90分以降だと言えます。そのため、寝る90分前に入浴することで、入眠のスイッチが入るのです。

②脳が寝る準備をする
・寝る前のスマートフォンはご法度
・夕方以降は頭を使う仕事を入れない
・カフェイン・お酒は寝る3時間前まで 等

睡眠の量を担保することが難しい方も、上記の睡眠術を駆使し、ぜひ今日から睡眠の質の向上に努めてみましょう。


今回は、睡眠と日中のパフォーマンスの関連性と、効果的な睡眠術についてご紹介しました。
先進国の中でも非常に睡眠時間が短く、睡眠の質も悪いとされる日本人ですが、生産性が求められる現代こそ、睡眠と真剣に向き合い、パフォーマンスを向上させることが求められているのではないでしょうか。

解説:佐々木希海

出典:西野精治『スタンフォード式 最高の睡眠』サンマーク出版
アレックス・スジョン―キム・パン / 野中香方子 訳『シリコンバレー式 よい休息』日経BP社
NHKスペシャル 「睡眠負債が危ない」