Case Study

社会を変えるイベントレポート

経営者も社員も要注目のスキル!
「アンガーマネジメント」と「働き方改革」を考える

近年、海外の経営者やビジネスパーソンの間で注目されている「アンガーマネジメント」。日本でも話題のキーワードになりつつあるので、「どういうものか気になっていた」という方も多いのではないでしょうか。“怒り”という単語の印象から「感情的になりやすい人だけの問題では?」と思われがちですが、じつは“怒り”という複雑な感情を整理し、状況を客観的に把握・対処することで、業務の生産性UPにつながります。つまり、働き方改革とアンガーマネジメントの間には密接な関わりがあるのです。今回は、「アンガーマネジメントと働き方改革を考える」と題したイベントを弊社にて開催しました。

職場でのコミュニケーションの取り方に悩んでいませんか?

2019年10月1日、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実さんをお招きし、弊社の取締役で創業メンバーのひとりでもある大塚万紀子とのトークセッションを行いました。

働き方改革に取り組む中で、あるいは日々の業務にたずさわる中で、以下のような悩み・要望を感じている方は多いと思います。

  • チームのコミュニケーションをより良くしたい
  • 自分の感情をコントロールし、チームの生産性を高めたい
  • 異なる価値観を持つ人とのコミュニケーションを取るために適切な対処法を身に付けたい
  • 組織でパワハラが減らず、なんとかしたい
  • 感情を客観視できず、衝動的の発言/行動してしまいがち
  • 「あのときあんなことを言わなければ・・・」と後悔することが多い
  • 怒っている人に自分の気持ちが左右されることがよくある

今回のイベントにはそんな方にぜひおすすめしたい情報が満載。事前申し込み制で会場にお集まりいただいた方だけでなく、地方の方にもオンラインで同時に発信しながら行いました。


戸田久実さん(左)と弊社の大塚はもともとプライベートでも親交があり、今回のトークセッションが実現しました。「誰もが知りたい身近な情報」として、アンガーマネジメントの基本や日常への取り入れ方が終始なごやかなムードで共有され、有意義な時間となりました。

“怒り”は持っていい! 大切なのは表現の仕方です。

アンガーマネジメントとは、実際のところどういうものなのでしょう? 具体的に何を目指せばよいのでしょうか?

“怒り”というと「大人げない」「ガマンすべき」など、怒ること自体にネガティブな印象を持ちがちですが、嬉しい、さみしい、楽しいなどと同レベルの感情表現のひとつであって、自分の身を守るための防衛感情ともいわれています。


育児期間をはさみながら、27年間、企業への講演研修を行っておられる戸田さん。「コミュニケーション全般に関わっていますが、ここ2〜3年はアンガーマネジメントの講演研修依頼が非常に増えてきています」とのこと。アンガーマネジメントに対する社会の需要が高まっているのですね。

「怒りは誰にでもあります。怒るのは悪いことではないんですよ。ただ、怒りに自分を支配されて、怒る必要があるものとないものの区別ができないようだと、コミュニケーションはうまくいきません。また、感じた怒りをどう表現するか、つまり“上手に怒る”こともとても重要です」(戸田さん)

専門的ながらも非常にわかりやすい戸田さんの解説を伺いつつ、会場に集まってくださったみなさんと簡単なワークも行いました。

お題は「ここ1週間で、怒りを感じたこと」。いつ?どこで?何に対して? と、初対面の人同士、差し支えのない範囲で話し合います。

自分がどんなことに、どの程度、腹を立てたかが具体的に把握できていると、怒りを客観視できるようになるといいます。「なんだかよくわかんないけどむしゃくしゃする、という曖昧な状態では、正しい対処ができるようにはなりません。感じた怒りをノートや携帯に記すのもおすすめです。文字にして表すのは理性を働かせる行為なので、自分の怒りの傾向が客観的にわかってきます。そうすれば、いざ怒りを感じたときに“あ、このパターンね”と冷静になれるんです」と戸田さん。

ほかにも、「怒りのピークが何秒続くか」「そのピークをやり過ごすためにどんなトレーニングをしたらよいか」「○○はこうある“べき”だ! の“べき”とどう向き合うか?」など、実用的なヒントを多数お話しいただきました。

今回ご紹介いただいたことをはじめとする多くのヒントが日本アンガーマネジメント協会のHP https://www.angermanagement.co.jp書籍、メルマガなどでも紹介されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

各自のアンガーマネジメントが、全体の働き方改革を成功へと導く

弊社が働き方改革のコンサルティングを行う中で、「残業の多い職場ほど不機嫌な人が多く、社員間のコミュニケーションも取れていない。挨拶をしても返ってこない」という傾向があります。取り組みが進むうちに社員さんの笑顔が増え、コミュニケーションの質が向上し、業務の効率や業績も上がっていきます。

逆に考えると、残業が多く、コミュニケーションの質が低下している職場では、怒りを感じた瞬間に「つい怒りにまかせた行動をしてしまって、後から悔やむ」という方が多いだろうと推測できます。どなりつけることはしないものの、理詰めで責め立て、結果的に部下を追い込んでしまう方も多いでしょう。もしくは、「部下に感情を見せてはいけない」と思い込み、怒りをはじめとする感情の多くを胸の内にしまいこんでいる方も多く見受けられます。


戸田さんのお話しを聞きながら、みなさん熱心にメモを取っておられたのが印象的でした。アンガーマネジメントの手法を活かして働き方改革をさらに進めたい、という思いが伝わってきます。

戸田さんが最初におっしゃったように「怒りは感じていい」のです。ただ、それをどう表現するかが重要です。

今回ご説明いただいた中に「“べき”は人によって違うし、時代によっても変化する」というお話しがありましたが、人とのコミュニケーションを進めるうえで、この考え方は大いにヒントになります。同じ単語を使って話していても、その単語に対する印象・価値観は人によってまるで違っていて、そのせいでコミュニケーションのギャップが埋まらない、ということは多々あります。自分の“べき”を相手に押しつけても、何も解決しない、ということなのです。

「部下を指導の一環で叱ることは悪くありません。ただ、そこには自分の“べき”が関わっているはずです。その“べき”に相手が合っていないからという理由だけで怒るのは問題があります。叱る理由、本来目指していたゴールは何だったかを常に意識することが重要です。部下を叱る際のゴールは、追い詰めて再起不能にすることではなく、相手が“そっか、こうすればよかったんだ”と気づいて行動変容につなげることですよね。そこを常に意識しておかれるとよいと思います。その際に、“なんのためにこういうことを言っているのか”という理由もしっかり伝えてください」(戸田さん)

親と子、上司と部下、同僚同士、教師と生徒、知らない人との一時的な接点など、コミュニケーションの場において“怒り”が関わってくることは誰にでもあります。アンガーマネジメントは、誰にとっても身近なテーマであり、ライフでもワークでも必ず役に立つスキルだといえます。

今回のようなイベントを通じて、多くの方が「アンガーマネジメントと働き方改革」の関連性や効果的な取り組みについて学んでいただけたら幸いです。今後もこういった試みは続けていきたいと思っておりますので、引きつづきよろしくお願いいたします。


戸田さんと大塚とのテンポのよい掛け合いに対し、「大変ためになる、とても楽しいセッションでした!」とのご感想を多数いただきました。戸田さん、わかりやすく有意義なお話をありがとうございました!

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撮影/SHIge KIDOUE
文/山根かおり