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日本の少子化を解決するのは「男性の働き方改革」

2017年5月15日

夫婦が第一子を持ったあと、その家庭に第二子が生まれるかどうかに一番影響を与えているのは何だと思いますか? 2015年に厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」が作成したデータからそれがはっきりと分かりました。

【コンサルタントによる解説】

少子化は日本の深刻な課題ですが、なぜ少子化が起こるのでしょうか? そして、どう対策したらいいのでしょう?

子どもを持つ、持たないは完全に個人の自由であるべきことです。ですから「早く結婚を!」「早く子どもを!」という施策は先進国の日本では個人の自由を侵害してしまうことになりかねません。

しかし、第一子を持った夫婦が、なんらかの理由で第一子の育児経験が良いものだったと思うことができずに、その後の第二子、第三子へと続いていないならばどうでしょうか? それは国を挙げて解決し、せっかく子どもを持ちたいと思っている夫婦が、理想の子ども数まで持てるように支援できたら素晴らしいですよね。

その「なんらかの理由」が非常にはっきりとわかるデータがあるのです。このグラフは、厚生労働省が第一子を出産した夫婦をその後11年間追跡調査したデータです(出典:21世紀成年者縦断調査)。第一子を持った夫婦に、そののち第二子以降が生まれたかどうかに一番関係していたのは「夫の育児家事参画時間」だったのです。掲載しているのは休日のデータなのでより分かりやすいのですが、夫が1日に6時間以上家事育児に参画していた家庭では、その後第二子以降が産まれた割合がなんと80%だったのです! グラフの色の濃い部分が階段状になっている点に注目してください。こんなにも夫の育児家事参画時間と、第二子以降が生まれた確率は比例していたのです。

多くの女性にとって、これは調査をするまでもないこととして、今までも実感されてきたのではないでしょうか? 第一子が生まれ、深夜に何度も授乳で睡眠を分断されながら自分が育児をするなか、いつまでも仕事で帰宅できない夫・帰宅しても疲れすぎていて子どもが泣いても全く起きない夫との生活で、幸せなはずの子どもの誕生が夫への不信感の始まりになった家庭は数多くあるはずです。

夫側も決して悪気があったわけではないと思いますが、こうした中で妻は「結婚した時は対等な夫婦だと思っていたけれど、子どもが生まれたらこんなにも自分の人生だけ変わってしまい、こんなにも夫は生活を変えないのか」という不信感を強めていきます。すると「この人と第二子なんて考えられない」と考え、目の前の子どもへの愛情を一心に注ぐことでなんとか心のバランスを取る毎日となります。夫はなぜ自分がこんなにも急に妻から不機嫌に接せられるのかが分からず傷つき、仕事場に遅くまで残り、よりいっそう家庭から逃げていきます。

これまで各家庭で起きてきたことが、こんなにもデータではっきりと見えているのです。このデータを用いて、官邸で総理をはじめとした議員の皆さまに何度もプレゼンしました。これまで女性たちの苦しんできた心情と少子化の真の理由を、男性の議員さんたちが、データをもとに、頭で理解できた、ということが大きなパラダイムシフトだったかと思います。

「男性の働き方改革」こそが、真の少子化対策なのです。

解説:小室淑恵