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ワーク・ライフバランス基本データ解説

男性の育児休業に関する正しい労務知識(後編)
– 家計への影響を試算しよう –

2019年6月7日

男性の育児休業取得率が伸び悩む要因のひとつに「家計への影響の懸念」があります。しかし「家計への悪影響」とはほとんどのケースで誤解であり、6カ月間までの育児休業取得であれば家計にほとんどマイナスの影響を与えません。(6カ月を超える育児休業期間中は給付金の支給率が50%となるため)実際に筆者は7カ月間の育児休業を取得しその影響がほとんどないことを確認・実感しました。そのうえでこの「誤解」の背景には、労務知識・情報の不足があると考えています。そこで前編と後編に分けて、男性の育児休業取得に関する正しい情報を整理してご紹介します。

前編:どのような制度かを正しく知ろう
後編:家計への影響を試算しよう


前編では、男性の育児休業に関する基本的な知識についてご紹介しました。この後編では実際に6カ月の育児休業を取得した場合に家計にはどのような影響があるのかを試算します。育児休業を取得していない場合と、取得した場合の可処分所得(給与や賞与などの所得から税金や社会保険料などを差し引いた、残りの手取り収入)を比較することで家計への影響を見てみましょう。

モデルケース(前提条件の整理)

年齢:30歳
給与月額:40万円
夏季賞与(7月):80万円
冬季賞与(12月):40万円
通勤手当:無し
標準報酬月額:410,000円

※配偶者(特別)控除及び年少扶養控除(住民税) の考慮をしない。
※標準報酬月額は社会保険料の算出の際に使用する。
※育児休業を4月から9月までの6か月間取得するものとする。
※住民税については翌年の税額にて比較する。当年の収入に基づき翌年の税額が決定されるため。

このモデルケースで6カ月間の育児休業を取得した場合、可処分所得にどのような変化が現れるかを試算したのが下図です。当然のことながら勤務先からの収入は相当程度減額されますが、最終的な可処分所得にはほとんど差がないことがわかります。1年間の可処分所得の変化は約-1.19%(-54,715円)程度にとどまります。「ほとんど差が生じない」のは以下の2つの理由によります。

①給付金は所得税・住民税が非課税である(その年の所得税、翌年の住民税額が減る)
②休業期間中は社会保険料が免除される(社会保険料の納付額が減る)

つまり「給付金の支給率が67%である」というのは、税金と社会保険料を考慮した「可処分所得に影響を与えない支給率である」と言い換えることができます。

項目 取得しない場合 取得する場合(6カ月) 補足説明
収入(A) 6,000,000 3,600,000 取得する場合は【基本給6カ月+賞与】にて算出
給与所得控除(B) 1,740,000 1,260,000
その他控除(C)※1
└ (内訳)基礎控除
└ (内訳)社会保険料※2
1,260,920
(380,000)
(880,920)
794,060
(380,000)
(414,060)
※1【基礎控除+社会保険料】にて算出

※2社会保険料は収入(A)に基づき算出
課税所得(A-B-C) 2,999,080 1,545,940
所得税 202,408 77,297 【課税所得】に基づき算出
住民税(翌年) 299,908 154,594 【課税所得】に基づき算出
社会保険料 880,920 414,060
可処分所得(a) 4,616,764 2,954,049 【収入(A)-所得税-住民税-社会保険料】にて算出
給付金(b) 0 1,608,000 40万円×67%×6カ月
実質可処分所得(a+b) 4,616,764 4,562,049 可処分所得の変化は
-1.19%(-54,715円)

一方で次のような疑問が浮かんだり、まだ誤解が残る可能性があるため詳細について解説を加えます。

Q:収入が相当程度高い場合であっても、給付金は同じ割合で支給されるだろうか。

給付金の算定基準となる「賃金月額」には上限があります。そのため計算した賃金月額がこの上限を超えている場合、給付金は上限額以上支払われません。賃金月額の上限は449,700円であり、給付金の上限は 301,299円(67%の給付率の場合)となります。

Q:残業代が相当程度あるため、給付金だと実質的に可処分所得は減ってしまうのではないか。

給付金を算定する際、残業代(時間外勤務手当)も含まれます。給付金を算出する際の賃金月額は休業前6か月間の、時間外勤務手当や通勤費を含む給与の月額平均によって決まります。この賃金月額の67%が給付金として支給されます(休業期間が6カ月を超える期間については50%が支給されます)

解説:松久晃士