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2026.04.03

研修開催レポート

育休復帰者向けセミナー ~参加者473名のデータが示す、職場復帰支援の現在地~

本研修の実績

1. 開催概要

2026年3月17日、オンライン形式にて育休復帰者向けセミナーを開催した。講師は株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタント・山﨑純平と原わか奈、参加者は合計473名、アンケート回答者は144名でした。

■ 参加者属性

参加者の性別・参加時の状況

男性参加者28名のうち7名は管理職・上司として、9名はその他(人事担当者等)として参加しており、当事者だけでなく受け入れ側・推進側も多数参加した点が特徴的でした。

■ セミナーのゴール

セミナーのゴールは「育休復帰の不安を解消し、新しい働き方を手に入れる方法を理解する」こと。

育休復帰の3ステップ(セミナー全体の構成)

■ セミナーの構成

第1部 両立支援を取り巻く社会変化
 → 人口動態・男性育休の現状・介護との複合的課題・生涯賃金

第2部 職場復帰前の準備
 → 不安の洗い出し・パートナーとの価値観すり合わせ・育児力向上

第3部 ならし期間の乗り越え方
 → タイムマネジメント・家事2層構造・職場コミュニケーション

第4部 完全復帰後のキャリア・健康
 → ライフイベントへの備え・女性ホルモンと健康管理

第5部 理想のワーク&ライフ実現のコツ
 → 仕事術・睡眠・Me Time確保・シャンパンタワー理論

セミナー全体の満足度

2. セミナーの定量的評価

2-1. 全体満足度:参加者の99%が「満足以上」

セミナー終了後のアンケート(N=144)にて全体満足度を評価いただいた。「大変満足」73名(50.7%)・「満足」69名(47.9%)を合計すると142名(98.6%)が満足以上と回答した。

セミナー全体の満足度

男性参加者限定でも96%が満足以上(大変満足50%・満足46%)と全体と同水準。管理職・人事担当者を含む多様な参加層に対して、高い教育効果が確認されています。

2-2. 不安軽減効果:72%が「両立への不安が減った」

「とても不安が減った」(4%)と「ある程度不安が減った」(68%)の合計で72%が軽減を実感した。「変わらない」22%については、課題が言語化・可視化されたことによる認知拡張の効果として前向きに解釈できる。セミナーで「不安の解像度をあげる、書き出す」という手法を提示したことが、このような変化につながったと考えられる。

セミナー後の不安変化

「セミナーで指摘された課題を聞いて、うちはまだ準備が足りていないと気づきました。何に備えるべきかが明確になったので、不安が整理された感覚があります」

── 育休中・女性・0歳のお子さん

2-3. 実践意欲:89%が「すぐに実践しようと思うことがあった」

「具体的なことが複数ある」98名(68%)・「1つある」29名(20%)を合計すると、127名(88.2%)が実践意欲を持ってセミナーを終了した。

実践意欲

自由記述から抽出された実践予定行動の主なものを以下です。

  • ワンオペの練習をしておく(復帰後の状況を事前にシミュレーション)
  • パートナーと価値観・役割分担のすり合わせを定期実施する
  • アンガーマネジメントを日常に取り入れる(6秒ルール等)
  • 自分だけの「Me Time」を週に一度確保する
  • 不安なことをリストアップし、解像度を上げて整理する

3. プログラム別評価と参加者の声

3-1. 特に参考になったパート(複数回答)

全5部のうち特に参考になった部を複数選択形式で回答いただいた(N=144、複数回答)。

特に参考になったセミナーパート(複数回答)

第2部「復帰前の準備」(57%)・第3部「ならし期間」(52%)が1・2位を占めました。参加者の68%が育休中(復帰前)という属性を反映し、「これから何が起きるか」を具体的に把握したいというニーズが高いことがうかがえます。

3-2. セミナーで特に反響が大きかった内容

アンケート自由記述と、セミナー内で行われたチャット投稿の傾向から、参加者の反応が特に大きかった内容を紹介する。

【愛のシャンパンタワー理論】

「愛のシャンパンタワー理論」は特に反響が大きかった。子どもが増えたときの愛情の注ぎ方の順番――自分→パートナー→上の子→下の子――をシャンパングラスを重ねた塔に例え、「自分のグラスを満たすことが家族全体への愛情の循環につながる」というメッセージが、多くの参加者に刺さった。

「シャンパンタワー理論は目から鱗でした。自分を満たすことが家族を幸せにする近道だという考え方は、復帰後も大切にしたい」

── 育休中・女性

【家事・育児の2層構造】

「家事・育児の2層構造」も議論を呼んだフレームワークでした。家事・育児を「見える家事(実作業)」と「考える家事(在庫管理・予定調整・情報収集)」に分け、後者こそが”管理職の仕事”に相当するという指摘は、「なんとなく家事育児は大変なんだよな」という感覚を言語化するものとして好評を得ました。

家事・育児の2層構造

【ワンオペ練習の3ステップ】

「いざというときにどちらもワンオペが丸2日できる状態にしておく」という提言は、特に男性参加者の反響を呼びました。ステップ1(日中ワンオペ)→ステップ2(夜ワンオペ)→ステップ3(1泊2日ワンオペ)と段階を踏むことで、夫婦双方がいつでも育児を担える体制を構築しておく重要性が強調されました。

「不安な点を解像度を上げて可視化すること、ワンオペの練習をしてみることを早速やってみようと思います」

── 育休中・男性・0歳のお子さん

【保育園の病欠日数データ】

「0歳児クラスは年間平均19.3日も保育園を病欠する」というデータは、多くの参加者に具体的な備えの必要性を再認識させました。夫婦合わせた年間欠勤リスクの実態を数字で示された点が評価されました。

保育園児の年間平均病欠日数

【必要なアクション】

0歳児クラスで年19.3日、1歳児でも年11.5日の欠勤リスクが発生します。「誰が休むか」の家庭内ルール整備だけでなく、職場側の業務分散・代替体制の整備も不可欠です。

3-3. 参加者の声(自由記述より)

アンケートの自由記述欄に寄せられたコメントから、代表的なものをカテゴリ別に抜粋します。

【セミナーの有効性・内容評価に関する声】

「チャット欄の皆さんのコメントを読んで、いろいろなご家庭があることがわかりましたし、同じ悩みを抱えている方もいらして、1人じゃない!と思えました」

── 育休中・女性・1歳のお子さん

「女性側の視点だけでなく、男性側の視点もしっかり盛り込まれており、ジェンダーギャップ等の違和感を感じることなくセミナーを聴くことができた点が非常に良かった」

── 育休中・女性・フルタイム復帰予定

【実践・行動変容に関する声】

「Me TimeやスリーグッドシングスはすぐにPDCAが回せる実践的な内容でした。誰にでも通ずる、明日からできることが学べました」

── その他・女性(人事担当者として参加)

「アンガーマネジメントとパートナーとの価値観のすり合わせを、復職後の忙しい中でも継続したいと思いました」

── 育休中・女性・1歳のお子さん

【管理職・人事担当者として参加した方の声】

「男性育休推進の担当課として参加しましたが、復帰する職員を迎える側としてどのような点に気をつけるかという視点でも大変勉強になりました」

── 管理職・男性

「人事担当者として参加しました。先に両立をしている先輩とつなげることも大事だと強く感じました」

── 人事担当者・女性

「業務負荷が独身者や育児介護のない社員に偏っていくことが問題との認識が管理職にも浸透してほしいと思いました」

── 育休復帰後・女性

4. 参加者が抱える課題の実態

4-1. 最も課題に感じていること(単一回答)

最も課題に感じていること(単一回答)

タイムマネジメントが34%で断トツの第1位。セミナーでは「緊急×重要」の右上の仕事に追われ続ける悪循環を「重要×緊急でない」右下の仕事(段取り・育成・関係構築)に時間を割くことで打破する方法論が提示されましたが、参加者の多くはそもそも「時間をつくること」から着手が必要な状態にあることが見て取れます。

「1人でも大変だったところ、子どもが増えて仕事をやっていく時間が確保できるのか不安」

── 育休中・男性・0歳のお子さん

4-2. 会社・職場への改善要望(複数回答)

会社・職場への改善要望(複数回答)

フレックス・在宅拡充が59%と第1位。セミナー内でも「ワーク・ライフバランスとワーク・ファミリーバランスは似て非なるもの」として、育児中の人だけに配慮するのではなく「お互い様の組織文化」を作ることの重要性が強調されましたが、参加者がまさにその文化を職場に求めていることが数字に表れています。

「業務負荷が独身者や育児介護のない社員に偏っていくことが問題との認識が管理職にも浸透してほしいと思いました」

── 育休復帰後・女性

4-3. さらに深く聞きたかったテーマ(複数回答)

もっと深く聞きたかったテーマ(複数回答)

キャリアデザイン(35%)・保育園活用(34%)・パートナーとの対話術(31%)が上位3テーマ。「制度を知る」レベルを超えた実践的ニーズが高まっており、次回コンテンツ強化に直結するデータです。

5. 男性参加者フォーカス分析

今回のアンケート回答者のうち男性は28名(19.4%)。管理職・上司として7名、育休中(復帰前)6名、育休復帰後6名、その他9名でした。

96% 「満足以上」(大変満足50%・満足46%)──全体平均と同水準

男性参加者の課題

男性においてもタイムマネジメントが最大の課題(36%)。育児参加への意欲が高まる一方、仕事量が変わらない現実との乖離が浮かび上がっています。管理職として参加した7名からは「受け入れ側として何をすべきか」という実践的な関心が強く見られました。

「男性育休推進の担当課として参加しましたが、復帰する職員を迎える側としてどのような点に気をつけるかという視点でも大変勉強になりました」

── 管理職・男性(男性育休推進担当)

6. 育休推進担当者が打つとよい5つの実効策

本セミナーのアンケートデータとプログラム内容を総合分析した結果、優先的に取り組むべき施策として以下の5点を提言します。

施策① フレックス・在宅勤務の運用改善

【根拠データ】改善要望の第1位(59%・85名)

セミナーでは「時間制約のある人材が増える中で、仕事の属人化を排除し定時内でチームとして成果を出す体制への転換」が強調された。申請プロセスの簡素化・上司向けガイドラインの整備・制度利用率の可視化を実施し、管理職のKPIに活用促進を組み込む。

施策② 育休復帰者向け個別キャリア面談の制度化

【根拠データ】「復帰後のキャリア面談」要望13%・希望テーマ第1位(35%)

セミナー内でプランドハプンスタンス理論(キャリアの8割は偶発的出来事で決まる)が提示されたように、復帰後のキャリア不安は「不確実性への対処力」の欠如から生じることが多い。復帰後30日・90日・180日の3回面談を標準化し、「育休取得が評価に影響しない」ことを明文化したロードマップを提示する。

施策③ 業務量・分担の仕組み化とチームへの配慮

【根拠データ】業務量見直し要望30%(43名)、職場の理解要望33%(47名)

セミナーでは「全部自分でやる人は迷惑な人」「秘伝のタレ(属人業務)をなくす」という表現で、チームとしての仕事の進め方改革が提唱された。育休復帰者の業務アサインに上長承認プロセスを設け、チーム全体の負荷分散を半期ごとに人事がモニタリングする。

施策④ 育休復帰者コミュニティの構築・先輩とのマッチング

【根拠データ】交流コミュニティ要望22%(32名)、「1人じゃない」という安心感への高いニーズ

セミナー中のチャット機能を通じた「リアルタイムの横のつながり」が最も好評だった要素の一つ。オンライン交流会(社内Slack/Teams活用)と先輩復帰者によるメンタリング制度を設計する。特に男性育休経験者のロールモデル発信を強化する。

施策⑤ 管理職向け育休復帰サポート研修の早期実施

【根拠データ】管理職参加者7名からの強いニーズ、「上司・同僚の理解」要望33%

セミナーでは「ワーク・ファミリーバランスではなくワーク・ライフバランスの視点」として、事情のある人だけに配慮するのではなくお互いのライフを尊重し合う組織文化の重要性が強調された。復帰者向けセミナーと管理職研修をセットで設計し、マネジャーが「受け入れる準備」を同時に整える仕組みを構築する。

おわりに

今回のアンケートデータが示すのは、育休復帰という体験が当事者にとっていかに大きな負荷と不安を伴うものであるかという現実でした。タイムマネジメントの限界、キャリアへの不安、パートナーとの軋轢――これらは個人の努力だけでは解決しきれない、組織・制度・文化の問題でもあります。

セミナーで山﨑が語ったように、「夫が定時退社することで生涯賃金として2億円を獲得できる」。育休復帰支援は個人のウェルビーイングだけでなく、組織の生産性と従業員の生涯経済にも直結する経営課題です。満足度99%・実践意欲89%という数字は、「正しい情報とコミュニティさえあれば人は自ら動ける」ことを証明しています。人事担当者・男性育休推進担当者の役割は、その「動けるきっかけ」を組織の中に仕掛け続けることではないでしょうか。

本レポートが、貴組織における育休支援施策の設計・改善に少しでも寄与できれば幸いです。

<講師>
原 わか奈
山﨑 純平

株式会社ワーク・ライフバランスについて