2026.05.18
開催レポート
オンラインイベント「”がむしゃら”から”戦略的情熱”へシフトする『持続可能なハードワーク』とは?」 第2弾!
目次
- イベント概要
- 第一部「歴史の構造と最新の調査からみる、戦略的ハードワーク時代を生き抜く視点」
(株式会社COTEN代表取締役CEO 深井龍之介 氏 × 株式会社ワーク・ライフバランス 取締役・パートナーコンサルタント 大塚万紀子 氏) - 第二部「令和型ハードワークの再定義 — 成果を出し続けながら、燃え尽きないチームをどうつくるか?」
(株式会社Public Shaper Networks 代表取締役 CEO 好本 洋 氏/取締役COO 森山貴章 氏× 株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵) - パネリストによる質疑応答
- 自分と組織が持続可能なハードワークをイメージできるための考え方・データ集
(株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵)
2026年1月20日、弊社は「“がむしゃら”から“戦略的情熱”へシフトする『持続可能なハードワーク』とは?」と題する無料オンラインセミナーを開催し、たくさんのご参加をいただきました。
第一部「歴史の構造と最新の調査からみる、戦略的ハードワーク時代を生き抜く視点」のゲストは株式会社 COTEN 代表取締役 CEO・深井龍之介さん。弊社取締役の大塚万紀子が聴き手となり、長時間動労働という戦略が抱える問題について、歴史や文化の構造、深井さんたちが行った最新の調査結果を通して解き明かしました。
長時間労働を推進すると、家事育児労働が女性に偏っている日本の現状では、女性が労働市場から退場せざるを得ない状況につながるといった視点も共有いただきました。
また、この対談ではこれからの時代を生き抜く視点についても、強い危機感に基づいたメッセージをお伝えしています。
第二部は「令和型ハードワークの再定義 — 成果を出し続けながら、燃え尽きないチームをどうつくるか?」。外資系コンサルティングファーム・マッキンゼー出身で現在は政策提言等に携わる株式会社 Public Shaper Networks 代表取締役 CEO 好本 洋さんと、取締役 COO 森山貴章さんをお迎えしました。
もともと長時間労働で成果を出されてきたお 2 人ですが、3か月間にわたって社内の働き方を徹底的に見直し、残業の半減に成功するとともに、「働き方を変えることが、経営を変える」ことを実感したといいます。弊社代表取締役社長の小室淑恵を聴き手に、同社の取り組みや組織を変えるためのヒントをお話いただきました。
そしてイベントの最後は小室淑恵から「持続可能なハードワーク」をイメージするための考え方やデータについてご紹介しました。日本社会を持続可能にしていくため、最適な働き方とはどのようなものか、そのためにどんな組織を目指していくべきかについて、各種データに基づく提言を行っています。
当日の詳しい内容は以下にご紹介しております。ぜひご覧ください。
■第一部「歴史の構造と最新の調査からみる、戦略的ハードワーク時代を生き抜く視点」
株式会社COTEN代表取締役CEO 深井龍之介 氏(以下敬称略)
聴き手:株式会社ワーク・ライフバランス取締役 大塚万紀子

◎長時間労働で勝つことは不可能
大塚:深井さんからご覧になって、日本の働き方で「無理が出てきている」と思うポイントはどこにありますか。
深井:端的に言うと、長時間労働をやりながら世界の市場競争で勝つことは不可能だと考えています。今の日本社会は女性に家事・育児が偏重していて、都市部を中心に核家族が多くなっています。都市部の核家族の男性が長時間労働をやると、時空間の制約上、男性がたくさん働いて育児・家事に参加せず、女性が主に家事・育児をするという構図が固定化され続けます。
長時間労働を推進すると、家事育児労働が女性に偏っている日本の現状では、女性が労働市場から退場せざるを得ない状況につながってしまいます。
でも、女性の中には意思決定が得意な人がいますし、男性の中には意思決定が苦手な方もいます。つまり、日本は意思決定が得意な女性が重要な意思決定に参加できず、無理やり参加させている男性の中に、実はすごく苦手な人たちがたくさんいる状態です。この状態で欧米の国々とグローバル市場で戦えば、非常に困難な状態になるのが目に見えています。
大塚:経営者の中には「市場競争で勝つためにもっと働くべき」と主張される方もいますが、どう思われますか。
深井:「頑張って働きたい」という気持ちは理解できますが、戦略として違うし、状況理解として違っていると思います。
人口の半分である女性の中には、ビジネスが得意な人が男性と同数います。これから生成AIによってさまざまな仕事が回収されていく時代に長時間労働を進めると、「意思決定ができる」「リーダーシップが取れる」「動機・やる気がある」といった、お金で買えずAIでも代替できない才能やリソースを半分失うことになります。
まずはこの状況を理解し、それに基づいた戦略を作ることが重要ですが、歴史的に見て日本人はこれがかなり苦手です。
大塚:どういうことですか。
深井:日露戦争や第二次世界大戦を見るとわかるのですが、日本人は戦略を立てたり精緻な状況理解をしたりする手前の段階で、目の前のことを全力で頑張ろうとしがちです。これまでのやり方で頑張るというのは、今の時代でいうと男性の長時間労働です。
でも、イギリスやアメリカ、ドイツは、現時点で女性の意思決定力を日本の3〜4倍活かしているわけです。論理的に考えて男女ともに長時間労働と家事・育児は両立し得ません。「とにかく頑張る」ではなく、これをどう戦略的に解決するかを思考する必要があります。
◎「頑張り方」は時代とともに変化している
大塚:女性が意思決定の場に参加すると、かえってまとまりにくい、スピードが落ちるとおっしゃる経営者もいます。これも状況理解と戦略が足りないということでしょうか。
深井:非常に足りないですし、超短期的な視点だと思います。それは「DXを導入したら社内が一瞬混乱するので、DXを導入しません」と言っているのと一緒です。歴史上、新しい技術や人的リソースを活用しなかった勢力は100%負けています。女性の意思決定力を活かさない経営で、どうやって勝つつもりなのかがわからないですし、逆に大企業の経営者たちに聞きたいです。
時代とともに頑張り方は変化します。例えば、織田信長や明智光秀にとっての「頑張る」は人を殺すことでしたが、現代のわれわれは人を殺そうとはしません。それと一緒で、今後かけた時間とパフォーマンスが比例しない領域がたくさん出てくると、「時間をかけて頑張る」はますます通用しなくなり、長時間を費やさずにできる人が勝つ時代になります。長時間費やさずに勝つためには、女性の意思決定力を活かすことが不可欠です。女性の意思決定力を活かす経営にすれば、シンプルに意思決定力が倍になります。
◎このままでは日本が淘汰されてしまう
大塚:深井さんがお話されていて印象的だったのが「鋤鍬(すきくわ)理論」です。それについて改めてお聞かせください。
深井:「男性が働いて女性は家庭を守るべき」「女性がたくさん食べるのはよくない」といった、性別に関する社会規範を「性別社会規範」といいます。歴史学や人類学、生物科学や動物行動学といったさまざまな角度から、性別社会規範が何によって形成されるのかを調べた結果、最初の出発点は「どういう働き方をしているか(生産体制)」であることがわかりました。
多くの人が、家族や宗教が出発点だと思っていますが、実は全然違います。家族や宗教は再生産装置、つまり規範を教育する場所になっていますが、規範自体は生産体制で決まっています。鋤鍬の話はその中の一例として出したものです。
例えば牛に鋤を引かせて農業をする社会と、焼き畑農業をする社会では、ジェンダーギャップに大きな違いがあります。焼き畑農業は筋力を必要としないので、ジェンダーギャップが小さい。つまり、女性の地位が高いです。
大塚:女性が農作業に関わることができるからですね。
深井:逆に牛に鋤を引かせる農業は筋力が要るので、男性が働くことになります。また、子どもを牛の近くに置くのは危険なので、家で女性が子どもの面倒を見ることになる。そこで性別分業行われ、それが規範になっていくわけです。
最初は生産体制に基づいて役割を分けていたわけですが、それが「女はこうするもの」「男はこうするもの」という規範へと変わり、固定化され、それが宗教や家庭で何度も再生産されてきたということです。
ここで改めて生産体制という出発点に戻ると、今我々が行っているビジネスは筋力を必要としません。そして男女に知能差が無いことは科学的に証明されています。「リーダーシップに差がある」と思う人がいるかもしれませんが、それは生物的性差ではなく社会的性差です。差がある社会で生きてきた結果として女性が遠慮してリーダーシップを発揮しないことはありますが、実際は発揮しようと思えばできるわけです。
筋力を必要としないビジネスが誕生した瞬間から、ビジネスの才能を持っている人をたくさん参加させた社会が勝つのは自明であり、これは不可逆な変化として起こっています。このままの働き方では、日本が淘汰されてしまうということです。
◎倒すべき2つの「大ボス」とは?
大塚:日本が淘汰されないためには、どうすればよいでしょうか。
深井:倒すべき大ボスが2ついます。1つは規範です。規範を新しい時代に合わせて変化させなければいけません。今、70代の意思決定者が持っているのは大量生産時代の規範ですが、すでに産業は大きく変化しています。たとえば銃が出てきたときに銃をいち早く取り入れなかった勢力が負けたように、規範を変えないと淘汰されてしまいます。
もう1つのボスが家事と育児の偏重です。実際に、女性が意思決定層になりたくても家事・育児が理由でできない状況が起こっています。
この2つを解決しようとすると長時間労働はできません。女性の意思決定参与が進んでいる国では長時間労働が減っているので、日本でも長時間労働を減らしていかないといけません。
大塚:「国が悪い」「国が動くのを待っている」というスタンスの方も多いと感じます。
深井:国はジェンダーギャップの構造を十分に理解していません。政治から変わるのを期待するのは合理的ではないと思います。政治に期待している経営者がいるとすれば、楽観的すぎるし、経営として危なすぎます。
自分たちで頑張るしかありませんが、頑張る前に構造理解と戦略構築が大切です。そうしないと、「ガソリンがないのに戦って負ける」みたいな悲惨な歴史が繰り返されます。今の日本は歴史を再現しすぎていて怖いです。
大塚:私にも娘が2人いるので、彼女たちの未来のためにも、みんなで理解して一緒に解決していきたいです。
深井:ここまで経営戦略的な角度からお話してきましたが、根本は人権の問題です。僕にも小さい娘がいますが、娘が物心ついたときに日本のジェンダーギャップの感覚を持たされ、再生産されるのは本当に困ります。
普通、我々は自然科学を大きく否定しません。例えば、物理学の知識を無視して建物を建てるとか、薬学の知見を無視した薬を作って売るようなことはしていません。でも、ジェンダーの領域ではそれをものすごくやっています。ですから、まず構造を理解してほしいです。
大塚:ぜひ皆さんには現状を理解した上で、このままの戦略でいいのか、修正が必要なのかを思考する機会にしていただければと思います。深井さん、ありがとうございました。
■ 第二部「令和型ハードワークの再定義 — 成果を出し続けながら、燃え尽きないチームをどうつくるか?」
社会変革に取り組む企業の“脱・戦略コンサル”働き方改革
株式会社Public Shaper Networks 代表取締役 CEO 好本 洋 氏(以下敬称略)/取締役COO 森山貴章 氏(以下敬称略)
聴き手:株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 小室淑恵
◎3か月の取り組みで残業時間を半減
小室:今日は、元超長時間労働のお2人から、経験を含めたお話をお聞きできればと思います。
好本:私たちは政策提言と世論形成、業界団体活動の支援に携わっているコンサル企業です。業界の意見を取りまとめ国・自治体への政策提言を支援するほか、自治体との協業も行っております。直近だと、小池東京都知事と小泉農水大臣(当時)と女性経営者の意見交換会の運営をサポートしたほか、当社が支援した業界団体の提言が東京都の女性活躍促進条例へ反映されるなどの実績があります。
森山:弊社は事業を通して社会課題解決していく会社であり、会社としても個人としても新しい働き方を体現する必要があると考えていました。以前はフルタイムのメンバーが夜遅くまで残業をしていましたが、2025年9月から約3か月の期間で業務プロセスや会議の設計、採用育成、職場環境などをすべて見直し、離職率0%を維持しながら顧客満足度をしっかり高め、残業時間を半減させることに成功しています。
◎働き方を変えるきっかけ
小室:長時間労働に成功体験を持っていた中、働き方変えることに恐怖があったのではないかと思います。なぜ変えることができたのでしょうか。
森山:創業当初は成果主義を重視しており、夜まで超効率的に働くことで結果を出してきましたが、その中でメンバーの休日対応も生じていました。「結婚記念日当日にディズニーランドの予定をキャンセルした」という話を聞き、非常に申し訳なく感じました。「このままでは社員が燃えつきてしまう」「社員だけでなく、家庭にも悪影響が出る」という強烈な危機感を持ったことが大きなきっかけとなりました。
好本:私の妻も起業をしていますが、私が土日も働くと、妻の家事負担が大きくなり、妻の会社の業績にも影響しかねない状況がありました。コンサルティングファーム在籍時代はプロジェクトやセットアップを言い訳にしていた部分もありましたが、自分で経営している中で働き方が選べないのはおかしいと感じたのがきっかけとなりました。
◎効果につながった3つの取り組み
小室:具体的にどのように取り組まれたのでしょうか。
森山:取り組んだのは以下の3つです。
- ①業務量の削減・型化
- ②育成の仕組み化
- ③働きやすい職場づくり
①に関しては、戦略コンサル出身のメンバーが多かったので、1人がマルチに何でもやる体制でしたが、調整業務や事務業務、資料作成などを請け負う業務支援チームを設け、コンサルタントの負荷を減らし、付加価値の高い業務に時間をかける体制を作りました。それに紐づき、プロセス再設計やサービス水準の見直しなども徹底的に行っています。
②では社員個人のゴールと成長計画、理想の働き方、必要な支援を1枚に見える化し、育成と相互支援を加速させました。研修や定期的な1on1を通じ、新人や若手の育成支援にも注力しています。
③では20%稼働や週4勤務といった柔軟な働き方を制度化し、多様な人財を戦力化しました。そのためにも「やらない仕事」を見つけるとともに、今日・今週は何に注力するかを毎日明確化しています。
さらに、福利厚生や職場環境改善にも努めました。例えば女性向けに産婦人科のオンライン診療サービスを会社が全額負担するなど、友人にも自慢できる職場づくりを行っています。
◎優先順位付けやマニュアル化を徹底
小室:変えていくときに、社員の皆さんとどのような話をされたのでしょうか。
森山:先ほどのディズニーランドのような出来事は二度と起こしてはいけないし、ワーク・ライフバランスを実現し、みんなが一生いる会社にしたい。そのためには持続可能であるべきである、と繰り返し伝えました。目の前の仲間を一番大事にすることに関しては伝わったのではないかと思います。
小室:具体的にはどういうことをやめたのでしょうか。
森山:例えばいろんな書類が業務支援チームに積まれると対応に追われてしまうので、「今週やるべきこと」「やらなくても問題ないこと」に分け、さらに毎日のTodoに優先順位をつけることを、チーム単位・個人単位で取り組みました。
また、「依頼されたらすぐ対応」というマインドで働いていたのですが、実は1週間分まとめて処理した方が効率的になる業務もあります。「同じ種類の書類は毎週火曜日に処理するので、月曜までにリクエストをください」といったルールづくりなども行っています。
好本:特に効果が大きかったのがマニュアル化の徹底です。それぞれのコンサルタントがインディペンデントに働くと、過剰にクライアントサービスをする傾向があります。その中で、政策提言と必ずしも関係ないコンサルワークをしてしまうことがありました。経営陣でマニュアル化を進め、「何をやるべきか・やらないか」をクリアにしました。
◎解決すべきは有効労働投入不足
小室:今、経済会には「労働時間の上限をもっと引き上げた方がいい」といった議論があります。その先に勝ち筋があるのかをお聞きしたいと思います。
好本:財界や政府のメッセージは「残業すべし」と捉えられていますが、政府・与党の議論内容を見ると、有効労働投入不足という課題をどう解くかを包括的に議論しています。ですから、民間側からも「残業時間を増やしてくれ」と提案するだけではなく、全体として労働力が増えるように提言していくことが重要だと思います。
ポイントを挙げると、以下の要素を提言していく必要があります。
- ●女性やシニアなどによる「労働人口の増加」
- ●働き方改革による「生産性改善」
- ●柔軟な働き方による「稼働時間の確保」
- ●AIを中心とした「技術革新の普及」
小室:今、経済界が一番時代遅れな提言をしてしまっています。有効労働投入不足を解決していくために、まだまだ能力を発揮できていない、時間に制約のある人たちをもっと働ける職場にすることを一緒に政策提言していきたいと思います。ありがとうございました。
パネリストによる質疑応答
◎Q1 持続可能なハードワークの実現方法
大塚:「持続可能なハードワークって、結局どうすればいいの?」というご質問をたくさんいただきました。
森山:インパクトの高い仕事に集中することが大前提であり、「どの山に登るのか」「どうやって最短ルートで登るのか」の2つを考えていく必要があります。また、それに関してコミュニケーションを取ることが大事だと思います。
好本:前職のコンサルティングファームには「オブリゲーション・トゥー・ディセント(反論する義務)」という文化があります。事業内容や会社の仕組みに関して、職位や立場に関わらずメンバー全員が「こうしたほうがもっと働きやすい」と言える仕組みを経営者が作っていくことが大事です。
深井:歴史を見ると、新しい時代に追いつけずに滅びた事例はたくさんあります。意思決定者には危機感を持って組織を変革してほしいです。僕たちも働き方を抜本的に変えるため、管理職2人体制や家事・育児分担を減らすための支援制度をつくっています。
小室:私たちは「長時間労働社会を変える」という、寿命をかけても終わらないかもかもしれない目的を掲げているので、自分のモチベーションを高く保つだけでなく、次世代にバトンをつなぐ必要があります。つまり「どう持続可能にしていくか」がハードワークの肝といえます。
年配者は若い人に対して「今がむしゃらにやらないと成長しない」と言いがちですが、今の時代、量をやるとスキルが上がる業務は激減していますし、キャリアにおいて時間外ができる時期は限られています。「若い人に時間をかけさせようとすると、むしろ本人の成長につながらない」と、指導する側が認識すべきです。
◎Q2 「日本人は働いていない論」について
大塚:「もはや日本人はそんなに働いていない。アメリカ人の方が働いている」と言われることがあります。このエリート層との認識のズレをどう解消していけばよいでしょうか。
深井:前向きに一緒に考える場を作るためには、同程度の知識量と構造理解が必要ですが、みんなの知識量がそろっていないところに大きな課題があります。お互いが同程度の知識を持つように学ぶことが重要であり、少なくとも担当部署の人たちは知識の水準を上げる必要があります。それができない組織は社会淘汰されるので、そこから去るべきだと思います。
森山:実際には二極化していますが、日本の会社員はかなりハードに働いていますので、仕組みや考え方を変えることで働き方をもっと効率的にしていく必要があります。「日本人は働いていない」という人は、ぜひ騙されたと思って働き方改革に取り組んでみてほしいです。
小室:日本の平均労働時間が減っているように見えるのは、高齢者の社会参加が増えて平均が下がっているだけです。フルタイム男性の労働時間は全く減っておらず、他国より約1日2時間長い状況です。男性が18時に帰ると育児・家事ができますが、20時に帰ると女性に家事・育児が偏重します。この2時間の差で女性の社会参画が妨げられますが、男性の労働時間を減らすと社会全体の労働時間はプラスとなります。このように社会全体で見ていただきたいと思います。
■自分と組織が持続可能なハードワークをイメージできるための考え方・データ集
株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵
◎「持続可能なハードワーク」はチームで実現する
日本では64歳までを労働力としたときの労働力人口の比率が減少していますが、70歳までを労働力と見ると、2070年まで現在と同じ比率を維持できます。それを阻害している最大の要因が働き方です。
時間外ができる人の比率は減っているため、特定の数人が頑張る働き方は限界にきています。つまり、労働規制を緩和する戦略は先細りになります。重要なのは、多様な人が労働参画できる働き方に変えることです。
持続可能なハードワークは、チームで実現するものです。1人1人が長時間労働をしないけれども、育児中や介護中の人たちもリスペクトされ、お互いに美しくパス回しして仕事をしていくチームを作れば、多様な人材の生産性高いハードワークで支える職場へと変わります。経営者がビジョンを変え、1人1人が意識を変えることが重要です。
◎勝てる働き方こそが「戦略的ハードワーク」
現在、日本は働き方が柔軟になったことで、労働力人口が過去最多となっています。「労働力不足だから労基法の緩和を」と言っている企業は、労働市場に出てきた人たちから選ばれていないということです。選ばれる企業になるため、休日労働や残業を前提としない組織を徹底して作っていく必要があります。
中国の大学が行った研究では「週40時間以上働くと、子どもを持ちたいという意欲が急激に低下する」という結果が報告されました。40時間を超えずに働き続けられる国が持続可能であるということです。
経済界の男性と議論すると「日本人1人当たりの労働時間が短くなったからGDPが減った」と言われることがあります。確かにこれは事実ですが、その理由は働き方改革ではなく人口構造にあります。1人当たりの労働時間短い中でも経済成長できる方向に舵を切ることこそが大切です。
日本は人口が減少し、社会全体の負担が大きい「人口オーナス期」にあります。若者の比率が高い人口ボーナス期は、若者が長時間労働で稼ぐモデルで経済成長できましたが、オーナス期はいろいろな労働力を社会の支え手にしていく必要があります。また、未来の労働力を確保するために、2人で働きながら2人以上の子どもを持てるような環境を整えていかなければなりません。働き方を変えることでこの2つを実現し、新しい経済成長に乗っていきましょう。
◎長時間労働が可能な期間はたった15%
私のビジネス人生を振り返ると、長時間労働ができたのは、たった15%の期間でした。一般的にも子どもが9〜15歳ぐらいの時期には不登校や受験に直面するケースが多く、子育てが一段落とはなりません。また、親と年齢が離れている人は、早い時期から親の介護が始まります。
最初の15%の期間にフィットした働き方をしてしまうと、その後85%の時期に思うように働けず、自分を責めたり家族にネガティブな感情を持ったりすることになります。ぜひ最初の時期から残り85%の時期に通用する仕事のやり方を身につけていただきたいと思います。
これからも弊社と働き方とにご注目ください。ありがとうございました。

