2026.06.13
開催レポート
介護を”やる”から”マネジメントする”へ。両立のために必要な価値観の転換とは
本レポートは、「介護離職予防研修 定額制サービス」で提供しているセミナー「介護と仕事の相談カフェ」の開催レポートです。導入企業の皆様には、従業員に向けて、介護に直面する前の早い段階での両立支援に関する情報提供の場として活用いただいております。
日本は、かつてないスピードで超高齢社会へと進んでいます。
1980年には「7人で高齢者1人を支える」構造でしたが、いまや「2人で1人」。そして近い将来、1.5人で高齢者1人を支える社会が到来すると言われています。
言い換えれば、働く世代のほぼ全員が、キャリアの途中で介護に直面する可能性があるということです。
しかし、ここで一つ意外なデータがあります。
介護について積極的に情報収集をし、相談もしている人ほど、実は離職に至る割合が高いという調査結果です。
「調べている」「制度を知っている」「相談している」。それでも離職は起きている。
つまり、問題は制度の有無だけではないのです。
そこで本セミナーでは、介護の専門家をお招きし、具体的な事例や豊富な相談実績をもとに、制度の活用方法だけでない、「本当に大切な」介護との向き合い方についてお話しいただきました。
講師プロフィール
講師はNPO法人「となりのかいご」代表理事 川内潤氏
1980年生まれ。上智大学文学部社会福祉学科卒業。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。2014年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。厚労省「令和2年度仕事と介護の両立支援カリキュラム事業」委員、育児・介護休業法改正では国会に参考人として出席。著書に『親子共倒れにならない! 親の入院・介護「どうする?」がわかる本』(監修、ナツメ社)『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』(共著、日経BP)『親の介護の「やってはいけない」~家族介護の壁を乗り越える方法~』(青春出版社)等多数。<ご著書・他多数>
セミナー内容
セミナーの冒頭ではまず、「両立のために絶対にやってはいけない5つの介護」が紹介されました。その中には、「え?どうしてそれがいけないの?」と感じるものもあったかもしれません。
川内氏がセミナーを通して何度も問いかけたのは、
私たちの中に「直接介護=親孝行」という思い込みがないか?ということ。
家族が自ら手を動かすことこそが最善の選択だと考えがちですが、見守りを理由にした同居や、テレワークで常時対応する働き方、介護休業を使って日常的に介護を担うことは、かえって相手との関係性を悪化させてしまうことがあります。
そのような状態で看取りを迎えたとしたら、果たしてそれは「最善の選択」だったと言えるでしょうか。
介護のゴールは、「どれだけやったか」ではなく、「関係性を良好に保てているかどうか」。
この視点に、考えさせられた方も多かったかもしれません。
また、「自分がやらなければならない」という意識の強い人こそ要注意。責任感の強い人ほど介護のスキルを身につけようとし、制度を詳しく調べようとします。
しかしその一方で、限界を迎えるまで抱え込み、準備が整わないまま休業や離職に至ってしまうケースも少なくないといいます。
両立できている人に共通しているのは、早い段階で相談し、周囲を頼っていること。つまり、介護について「人に話すこと」が両立の何よりの土台となります。
だからこそ、組織として求められるのは、制度を整えることに加えて、「話してもよい」と思える雰囲気をつくることだと語られていました。
そしてセミナーの中で何より強調されたのは、「自分が健康でなければ、良いケアはできない」というメッセージ。
介護は相手を支える行為のように見えますが、実際に疲弊していくのは支える側です。余裕を失えば優しさを保つことは難しくなり、その後悔は介護が終わった後も残ります。
逆説的ではありますが、自分の心身を守り、働き続け、専門職に任せ、適切な距離を保つことが、結果的に最良のケアにつながる。
それは、介護を「行為」ではなく「マネジメント」として捉え直す視点でもあるのです。

参加者からの質疑応答
質疑応答の時間には、親だけでなくきょうだいの介護に関する相談や、同居やテレワークの選択に迷う声など、すでに介護に直面している方からの切実な質問が数多く寄せられました。
川内氏は、その一つひとつに対し、「ドライかもしれないけど」と断ったうえで「どこまでやるべきか」ではなく「どの距離なら関係性を保てるか」という視点で考えてほしいとアドバイスをされていました。
頑張ることよりも、自分が続けられる形を選ぶこと。家族ですべてやらなくてもいい、プロに任せるのは逃げではない、仕事を続けることは裏切りではない、川内氏の語る「価値観」に、どこかほっとした人も多いのではないでしょうか。
いただいた感想の一部をご紹介します。
- 講師の方のおっしゃる通り、”介護知識のない自分が介護をするべきなのだ”と思っていた層だった為、考えがまるっと変わりました。教えていただき大変助かりました。そして専門職にしっかり頼っていいんだ、と安心もしました
- 親とある程度距離を取った介護を行うことが親孝行になる、という逆説的な表現にはっとさせられた
- 本日のセミナーで「介護でやってはいけないこと」のお話がありましたが、自分自身でやってしまっていることばかりで耳が痛かったです。
- 川内さんの最初のスライドに書いてあった「やってはいけないこと」を、全部やっていました。そして、苦しんでいます。まだ提出こそしていませんが、毎日離職を考える日々です。そんななかで今日のセミナーは、非常に参考になりました。
- 家族の事なので、自分が頑張ってやらなければならない。と思ってましたが
長期的に考えて早めに準備して、周囲を頼ってもいいと考え方を変える事が出来ました。
介護の事を思うと憂鬱っでしたが、少し心が軽くなりました。 - 同居しない方が良い、まずは自分の生活を守る、自身の意識改革が必要 等、
自分では何度か失敗して現在はそうしているが、プロの方の考え方も同じと知れて、罪悪感がかなり減りました。
介護離職予防研修 定額制サービスのご案内
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「介護離職予防研修 定額制サービス」では、本セミナーのほか、下記のサービスもご提供しております。
- トップメッセージの発信のハードルを下げ、効果を高めるための「トップの発信サポート」
- トップやマネジメント層の理解促進と推進を加速するための「経営層・管理職向け研修」
- 介護はまだ先と感じる方向けの「人生100年時代のキャリアデザイン研修」
- すべての年代の方向けの「介護と仕事の両立セミナー」
- 担当者間の交流でノウハウを深める「人事・推進者向け交流会」
- イーラーニングに活用可能な「介護が始まる前に知っておきたい初動のキホン」動画コンテンツ
従業員にとって介護と仕事の両立は、「親の老い」という向き合いにくいテーマ。そのため情報収集が遅れ、介護開始後に負担が一気に高まり離職につながるケースが少なくありません。当社では、本サービスを通して早期に必要な知識や支援策を届け、「介護」と「キャリア」を天秤にかけずに済む社会を目指しています。
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📌 参考情報
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