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2026.08.28

開催レポート

こどもまんなか社会実現に向けた一歩へ|令和8年度の男性育休について考える|こども家庭庁「スキルナレッジカフェ」第3回 男性育休セミナー レポート

開催概要

開催日時
2026年5月19日(火曜日)
開催形式
対面・オンライン ハイブリッド
主催
こども家庭庁
講師
大畑愼護(株式会社ワーク・ライフバランス コンサルタント)
登壇者
こども家庭庁 安里課長、花房勇輝様(育休取得経験者)
プログラム
①大畑による講演 ②職員との鼎談

はじめに

2026年5月19日、こども家庭庁では「スキルナレッジカフェ」第3回として、男性育休をテーマにしたセミナーを対面・オンライン ハイブリッドで開催しました。

今回は、年間4回・1回あたり約500名が参加する「企業型父親学級」を主宰する株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタント・大畑愼護が、男性育休の現状や必要性、職場づくりのポイントを解説しました。。後半はこども家庭庁職員が実体験を語る鼎談を実施。当事者・同僚・管理職など、さまざまな立場の参加者が多角的な視点で学びを深めました。

第1部:大畑愼護による講演

社会の変化と男性育休の現状

大畑はまず、日本の労働力人口が初めて7,000万人を超えたことを紹介。その増加の担い手が主に女性とシニアであり、地方では採用難を超えた「定着危機」が深刻化していると指摘しました。

その上で、クイズ形式で参加者と現状認識を共有しました。

  • 2024年度の男性育休取得率は40.5%(回答者の多くが驚きを示した)
  • こども家庭庁職員の取得率は81〜100%と全国平均を大きく上回る
  • 18〜25歳の男性の約3割が「半年以上の育休取得」を希望
  • 30歳以下の男女で「当然女性が家庭優先」と考える割合はわずか3.6%

こうした数字を通じ、次世代の価値観が大きく変わりつつあることが鮮明になりました。

こども家庭庁 男性育休セミナーで講演する大畑愼護

男性育休が必要な5つの理由

大畑は男性育休の意義を、5つの観点から丁寧に解説しました。

① 母子2人分の命を守る行動だから

産後の妻の死因第1位は自殺(産後うつによるもの)であり、初産婦の4人に1人がリスクを抱えます。産後うつのピークは出生後1.5カ月まで。この時期に「7時間の連続睡眠」と「朝日を浴びての散歩(リズム運動)」を確保することが有効とされますが、母親1人では実現が極めて困難です。男性が育休を取り、家庭に入ることがこの2つを支える上で不可欠だと語りました。

② 産後の1年が夫婦関係の未来をつくるから

東レ経営研究所の調査による「妻の愛情曲線」を紹介。産後、夫への愛情は急落しますが、その後「回復するグループ」と「低迷し続けるグループ」に二分されます。分岐点は産後すぐの夫の育児参画と夫婦間の感情共有の有無でした。「熟年離婚の7割は女性側から切り出されるが、その意思決定は20年前の産後期に始まっている」という言葉が印象的でした。

③ 家族構成の未来に影響するから

厚生労働省の13年間の追跡調査によると、夫の家事・育児時間がゼロの場合の第2子以降出生率は10%。一方、6時間以上の場合は87.1%と大きな差があります。「第1子の孤独な育児が妻のトラウマになり、第2子以降を望まなくなる」という考察が示されました。

④ 育児スキルの格差は産後に生じるから

子どもが生まれる前は父母ともにスキルゼロ。産後すぐに関わらないと育児スキルに格差が生まれ、上司・部下のような関係性になってしまいます。ゼロから一緒にスタートすることでボタンの掛け違いを防ぐことが重要です。

⑤ 仕事のできる人間になれるから

早稲田大学・入山教授の「両利きの経営」の考え方を援用し、育休は「知の探索(業務の幅を広げる)」につながると説明。地域社会への参画、保育士との対話、異業種の父母との交流などを通じ、中長期的なキャリアにも好影響をもたらすと語りました。

こども家庭庁 男性育休セミナーの会場風景

取得しやすい職場が実践していること

男性育休の取得率・日数が高い職場では、共通して次の取り組みが見られると大畑は指摘します。

  • 職場全員で「なぜ必要か」を理解する(子育て中社員だけでなく、全員が対象)
  • 早期相談で準備時間を確保する(安定期入り後すぐに申し出れば6カ月前から準備可能)
  • 業務の見える化・属人化の解消(約30%は引き継ぎ不要な消える業務)
  • 複数担当制の導入(メイン+サブ体制で、業務品質向上・過失防止にも有効)
  • 心理的安全性の高いチームづくり(無駄を指摘し合える関係性の醸成)

また、「育休取得は計画を立てやすい唯一の休み」であると強調。年次有給休暇や病気、介護と異なり、出産予定日をもとに最長半年以上前から準備できます。「今の取り組みは介護休業など将来の制度活用の練習にもなる」とのメッセージも参加者に響きました。

第2部:こども家庭庁職員との鼎談

後半は大畑の進行のもと、育休取得経験者・花房勇輝様と、管理職として部下の取得をサポートした安里課長が登壇し、リアルな経験談を共有しました。

育休を取ろうと思ったきっかけ(花房様)

「もともと保育士の資格を持っており、育児にコミットしたいという思いがありました。妻とも、お互いのキャリアと子育てを両立すると約束していました。」

こども家庭庁 男性育休セミナーで鼎談する花房勇輝様と安里課長

部下から育休申し出を受けた時(安里課長)

「まず『おめでとうございます』と伝えました。課長としては業務調整が必要とは感じましたが、同時に良いチャレンジの機会だとも受け止めました。部下が叶えたいキャリアや業務への思いを大切にしながら、いつ・どのくらい休むかを一緒に考えました」

大畑はこの姿勢について、「反射的に『おめでとう』と言えるかどうかは、事前に知っておくことで準備できる」とコメントし、管理職としての心構えの重要性を改めて伝えました。

こども家庭庁 男性育休セミナーで話す安里課長

業務の調整方法

花房様は、育休明けに、業務量はあるものの時間の融通が効きやすい部署へ異動したことで両立できたと語りました。「できないこと」だけでなく「深夜や早朝の対応で代替するなど、できること」を上司に伝えたことが、適材適所のマッチングにつながったと振り返ります。

安里課長は、業務上のキーとなる審議会スケジュールを先に調整したうえで、「余力があり、その業務に関心を持ちそうなメンバー」を見渡してサポート体制を組んだと説明。「たまたまではなく、取ると決めたから、どうするかという思考が生まれた」という大畑の言葉が印象的でした。

育休後の変化

「育休を経て、限られた時間の中で何が最優先かを常に考え、かけた時間に対する成果を最大化する意識が研ぎ澄まされました。」(花房様)

安里課長は管理職としての気づきとして、「育休中に業務を分担したことで、そのメンバーの新たな強みが見えた。チームの新しい面が見られて面白かった」と話しました。また、男性育休を機に「家族を大切にしながら働ける職場」を当たり前にしていくことが、こども家庭庁の使命にも直結するとの思いを語りました。

こども家庭庁 男性育休セミナーの鼎談風景

おわりに

今回のセミナーで一貫して伝えられたメッセージは、「男性育休は価値観の変化ではなく、命と家族を守るための行動」だということです。また、男性が育休を取りやすい職場づくりは、育休に限らず、介護・病気・ライフイベントなど、あらゆる休業に対応できる強い組織基盤の醸成にもつながります。

こども家庭庁は「こどもまんなか社会」の実現を掲げています。そのビジョンを職場から体現していくために、今回の学びを日々の業務・マネジメントへと活かしていただければ幸いです。

講師プロフィール

大畑愼護(おおはた しんご)

株式会社ワーク・ライフバランス コンサルタント。厚生労働省「ともにいく(共働き共育て)プロジェクト」推進委員。和歌山県庁職員(兼務)として男性育休100%宣言を推進。年間4回・約500名が参加する「企業型父親学級」を主宰し、父親世代への育休前準備教育に取り組む。

株式会社ワーク・ライフバランスについて