社会を変えるイベントレポート
長崎大学にて父親学級開催! -「時代の価値観が変わった」のではなく「命を守るために」そして「強くなる」ために男性育休を-
2021年10月2日、長崎大学主催の父親学級に、弊社コンサルタントの松久晃士と大畑愼護が登壇しました。 育休取得を希望し、実際に取得している男性が増えているものの、 男性育休促進がもたらす本当のメリットについてまだまだ誤解が多いのも事実です。 そこで今回のセミナーでは、当事者である男性だけではなく、同僚や上司にも知っておいていただきたい「男性育休のホントのところ」をお伝えしました。
2021年6月に育児介護休業法が改正されてから、企業の人事・労務ご担当者様から 「法改正への対応に向けて、準備を進めています!」 「当社で男性育休第1号が実現しました!」 「取引先に男性従業員の育休を伝えたら、当社の姿勢に共感してくださった!」 といったご報告をたくさんいただくようになりました。
2019年の当社主催のシンポジウム(https://work-life-b.co.jp/event/top_seminar_report02.html)から2年あまり。社会全体で男性育休促進への理解が進んだことは、私たち㈱ワーク・ライフバランスにとって感慨深いものがあります。
とはいえ、まだまだ社内での理解が進まず、「どうやって男性の育休取得促進をしたらいいのか」と悩む担当者も少なくありません。
特に、当事者の男性自身が育休の必要性を感じていなかったり、マネジメント層が育休取得のメリットを誤解していたりといったケースも多く、そういった課題を解決するために、私たちは「企業主導型父親学級」の導入を推進しています。今回、長崎大学ダイバーシティ推進センターとコラボレーションし、一般参加可能なオンライン父親学級を開催しました。
私たちが目指す父親学級の在り方や、なぜ長崎大学とコラボレーションしたのかはこちらをご覧ください。 ▼男性育休が当たり前になる世の中へ。長崎大学にて「父親学級」を開催!
大切なのは、育児に関わりたいという気持ち
冒頭、講師の松久よりこんな話がありました。 「日本社会において子育てをしていると、父親は、何度も何度も『あなたじゃない』と言われるんです」
育児書を読むと「赤ちゃんはママの抱っこが好き」と書いてあるし育児用品の説明書には「ママの安全が安心して使用するために」という注意書き。はたまた、母子手帳というからには母と子にだけ必要な内容なのかと思えば、中身を見ると実は「親子健康手帳」であり、父親も知っておくべき情報が満載だったこと。
これらは松久が育児をする中で感じた違和感です。 このような「(赤ちゃんに必要なのは)あなた(父親)じゃない」に直面する場面はこれからたくさんあるだろうけれど、「そこで子育てに携わりたいという意欲をそがれたりせず、ご自身や家族の価値観を大切にしていただきたい」とお伝えしました。 実際に松久の長女は5歳になりますが、これまでに「お母さんじゃなきゃダメ!嫌だ」となったことは一度もないそうです。 まだまだ父親として育児をする中で疎外感を感じることがあるのも事実。そんな中、なぜ育児休業を取ることが重要なのでしょうか?
男性社員の「定時退社」よりも「産後の育休」が重要であるワケ
男性が育休を取るときに、当事者の男性からは 「この先のキャリアに影響があるのではないか」「収入が減るのが不安」といった声をよく聞きます。 これまで仕事で実績を積んできた方にとって、一時的であれ仕事から離れることへ不安を感じるのは当然のことでしょう。
ただ、まず大前提として知っていただきたいのは、男性育休は妻と子供の命を守る行動だということ。 産後の女性の死因1位は産後うつによる自殺です。
女性は産後のホルモン変化によって気持ちの浮き沈みが起きやすく、そこに赤ちゃんとの不規則な生活が重なることにより、産後の女性の10人に一人は産後うつを発症すると言われています。 ホルモン変化のピークは産後2~4週目頃。 この期間に男性が育児に関わり、育児を女性だけのものにしないことで産後うつを防ぐことができ、 ひいては母と子の命を守ることへとつながります。
つまり育休を取るか取らないかと悩むときに考慮すべきは「自分のキャリア・収入」ではなくて「妻子の命」なのです。
一方で子どもが生まれたら父親は定時退社をして、夜の子育てにコミットする方がよいのでは?という声もあります。 もちろんそれもとても重要なのですが、私たちが産後すぐの育休の取得を推奨している背景には、 「産後すぐの期間の日中に子育てに関わる」を実現してほしいという想いがあるのです。
教えて!男性育休の企業側のメリットは?
セミナー中、チャットでは 「男性が育休を取るメリットはわかった。けれども企業側のメリットがわからないから教えてほしい」 というコメントをいただきました。 短期的には組織から人員が減るので、その負担の方が大きいのでは、という観点でのご質問です。 この質問に対し、このようにお答えしました。
まず長期的にはイノベーション創出につながる、ということ。 仕事を進めていく上で、自身のスキルを高めたり、深めたりといったことは業務の延長で可能かもしれません。しかし、仕事以外の時間を増やさなければ、新しい視点を取り入れこれまでにない発想や知識を得ることはできないのです。 育休という形で仕事をしない時間を強制的に過ごすことはもちろんのこと、育児を通してこれまで交わることのなかった社会と接点を持つことは、一見遠回りですが「いい仕事」をするための種まきとなるのです。
チャットでは、 「私も地域では保育園の体験会が積極的に行われていて、保育園の収納アイデアを職場で応用しています。同僚にもすごく褒められました。知見の幅が広がり仕事に生かせるという意味、よく分かります。」 というコメントをいただきました。
そして短期的な視点では、BCP(事業継続計画)対策にも有効であるということ。 病気や事故、介護を理由とした「突然の休業」と違い、育休は、休み始めるタイミングも、復帰するタイミングも事前にわかっている休業です。 このため「このチームで、人員が減った場合にどう仕事を回すか」を事前に考え準備をしておくことができます。たとえば、仕事の属人化の排除やテレワークの推進などの対応を進めておけば、それは予期せぬ災害や事故など、通常どおりの業務遂行が難しい場面の予行演習にもなります。 つまり企業側の、育休による人員減への対応は、結果的に危機管理能力の向上につながるのです。
▼(参考)大臣が育休を取得した環境省では、コロナ禍においてもっともテレワーク対応が可能でした
このような背景を解説しながら、男性育休の取得促進が重要である理由は、 「男も家事育児をする時代になった」からでも、「少し前の世代とは価値観が変わった」からでもなく 「企業、組織として強くなり、これからも生き抜くため」だということをお伝えしました。
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