[オンライン実施のポイント(後編)]

運営側も参加者も大満足!
効果を最大化する「オンライン研修」実施のコツ

【1】研修のプロから見た「オンライン研修のメリット」

特定の場所に集合することなくどこからでも参加できるオンライン研修は、会場手配や日程調整の手間が省けるうえ、移動時間/コストの削減につながるなどメリットは多々あります。また、弊社で多数のオンライン研修を行ってきた結果、集合研修よりもオンラインのほうが「意見が活発化する」ことも明らかになっています。

コロナ渦で「人が集まる研修は中止・延期しよう」という企業も少なくありません。「不要な研修を実施せずに済んだ」のなら良いのですが、「必要な研修なのにできなかった」というのでは業務に差し支えます。オンラインで、今まで以上に効率的な研修を実施することが重要です。

もちろんどんな場合にもオンラインがベストということではなく、集合研修のほうがより高い効果が得られる場合もあります。複数の選択肢を持ち、状況やニーズに対応していきたいものです。

コンサルタント田川より:

集合研修では質問や意見を募っても2〜3人挙手する程度ですが、チャットにするとその状況は一変。多いときには50人以上が質問や感想を書き込んでくれます。つまり、集合型では疑問を残したまま終えることになっていた方が、オンラインなら疑問を解消でき意見も伝えやすくなるため、より高い満足度を得られます。

また、たとえば小さな支店や店舗ではメンバーの一人が通常業務から抜けて研修に参加すると、残された人の負荷がどうしても高くなります。しかし、オンライン開催なら移動時間がないため、他のメンバーへの負荷や追加人員の人件費等、業務や費用への影響を最小限に抑えることができます。

ほかにも、参加者から「会場での投影よりオンラインのほうが資料は見やすいし、講師が目の前で話してくれる感覚なので、より集中できる」といった感想をいただいています。私たちとしても「集合型研修では講師の表情や投影資料が見づらいことがあったんだ」という改善点を知り、次につなげるきっかけになりました。

【2】成功に導く「運営・事務局」側のコツ
【事前準備】

・キーパーソン(社長や経営層)への対応
オンラインで研修を行うことやメリットをあらかじめ伝え、合意を取っておきましょう。参加者の積極性・自主性を高めるため、キーパーソンから研修の意義、必要性、「この時期だからこそやるべき研修なんだ」という発信をしてもらうと理想的です。

・「オンライン」を意識しすぎない
研修成功の条件は「集合かオンラインか」ではありません。オンライン実施であることを意識しすぎず、研修自体の目的に集中することが重要です。弊社でおすすめしているのは、「研修の優先順位」(下図参照)を念頭に置くこと。「最も重要なのは、研修終了後に行動が変わること。そのために何をどのように伝えるべきか」を意識します。 また、所要時間は集合型の1.1〜1.3倍かかることを目安にし、内容を詰め込みすぎないこと。講師役の人にもその点を事前に伝えておきましょう。

・目的に合った会議システムを探す
Zoom、Hangouts Meet、Skype、Live On、V-CUBEミーティングなど、有料/無料のさまざまなWeb会議システムがあります。規模や目的に合わせてふさわしいものを選び、実際に運営側で試してみて、「知らないこと」をなくしておきましょう。

・オンライン掲示板を作成する
オンライン会議室や資料データのURL、当日の注意点・困ったときのFAQなどを用意し、事前にオンライン掲示板に記載しておきます。「研修までに目を通しておいてください」と参加者に念を押すこともお忘れなく。

・事前に接続テストを実施する
「カメラがオンできない」「音声が出ない」など個々人の細かなトラブルはつきものです。可能であれば研修と同じ時間帯に接続テストを実施し、何人かに参加してもらって、どのようなトラブルが起きそうか、どんな対処が必要かを想定しておきましょう。

コンサルタント田川より:

オンライン研修の実績を多数積んでいる私たちも、「参加者に集中力を維持してもらうこと」「参加者の様子を感じ取ること」には細心の注意を払っています。慣れていない方はなおさら難しく感じる部分だと思います。

運営側として、まずは以下のような工夫をしてみてください。
・研修前にログインした人に「〇〇さん宜しくお願いします!」などと声かけをして一人一人と会話する。
・一方的なインプットの時間は15分前後にとどめ、参加者に発言をしてもらう時間やグループディスカッションを研修序盤から頻繁に入れる。
・休憩は短くてよいので、45〜60分に一度は設ける(2時間以上の場合)。

【当日】

・冒頭で、キーパーソン/事務局から挨拶
参加のお礼を伝えるほか、研修の目的や意義を具体的に共有します。「運営側も不慣れですが、一緒に有意義な時間にしていきましょう」とひと言添えることで雰囲気が和やかになり、協力体勢も生まれます。

・研修のルールや注意事項を確認
「入室/休憩の時間を守る」「発言しないときはマイクをOFF」「カメラは原則ON」「メールやチャットの通知はOFF」「リアクションは大きめに」「誰かの発言中は発言を控える」などの決まり事を決めておき、共有します。自宅からの参加者がいる場合は「背景に家族が映ってもOK」「マイクをOFFにしているからお子さんが話しても大丈夫」など、気負わない雰囲気をつくることも大切です。

・事務局も参加し、講師と連携する
講師の発言中には必要に応じて補足情報を掲示板やチャットに書き込み、しっかり連携します。また、「質問はチャットにどんどん書いてください」と呼びかけたり、質問が出た場合には「質問ありがとうございます」「○○さんの視点は斬新ですね!」などと反応したりして、場を盛り上げる配慮もしてみましょう(ただし、進行を妨げないようタイミングには要注意)。

コンサルタント田川より:

以前、私が担当するクライアント企業で1回につき200人の管理職が参加する研修を4回、のべ800人に向けて行ったことがあります。私自身はメイン講師を務めましたが、ほかに弊社のコンサルタント3名がチャットで質問を受けつけ、その場で回答しながら研修を進行しました。質問に答えるスピードが速かったため、クライアントから「AIで対応しているのですか?」と驚かれたことが印象に残っています(笑)。

このように講師をサポートする役割を事務局の方がうまく務められれば講師は講義内容に集中できますし、より中身の濃い研修ができると思います。

【終了後】

・アンケートの実施
参加者に研修で学んだことを振り返ってもらい、今後どんな目標に向けて動いていくのか、具体的な「行動変容」を促すことがとても重要です。また、参加者の満足度を確認して今後の研修に活かすためにもアンケートを上手に活用しましょう。

・研修受講後に参加者が悩みや課題を共有できるコミュニティをつくる
研修で使用した掲示板やチャットの様子は研修後も残しておき、引きつづき利用するよう促します。コミュニティ化することで参加者同士の交流や学びが深まり、研修効果が継続・増幅していきます。

【3】講師を務める人が意識すべきこと

・環境と機材を整える
集合研修と違って目の前に聴講者はいませんが、オンラインを意識しすぎず、自分のスタイルで話しましょう。たとえば立ったほうがテンションがあがる!という場合は、立ったまま話を進めます。デバイスは、①投影資料や参加者からの質問/チャットなどの除法をチェックするためのもの、②参加者の様子(受講生からの見え方)、事務局や講師との連絡用など、複数用意しておくのもおすすめです。

・カメラ映りを意識する
PCスタンドを活用してカメラ位置を調整したり、環境に応じて“女優ライト”を用意したりして、カメラ映りを意識しましょう。また、カメラに映えて清潔感のある服装を心がけることも重要です。

・講話中の細かなコツ
オンラインでの開催は、接続や操作上のミス、トラブルなどで集合型より時間がかかりがち。内容を詰め込みすぎず、また、参加者の集中力を切らさないよう適度なワークタイムや休憩をはさみましょう。いつもよりテンション高め、声もワントーン高めで、語尾までしっかり話しきることも重要です。
資料を見せるときは、現在のスライド番号をその都度伝え、「どこの部分を話しているのか」が参加者に明確に伝わるよう意識します。

・参加者の反応を見て、うまく巻き込む
参加者が笑ったりうなずいたりする様子や、チャットへの書き込みを確認した場合は「○○さん、ありがとうございます」「いい笑顔ですね」など、相手が起こした反応を“承認”することで、さらに積極的な参画を促します。集合研修に比べると相手の様子や反応は見えにくいですが、そこに動揺せず堂々とにこやかにのぞみましょう。サポート役の人にもうまくフォローを入れてもらえるよう、事前に打ち合わせをしておくことも大切です。

【4】プロの研修を頼みたい方へ 〜コンサルタント田川より

株式会社ワーク・ライフバランスでは、2016年より大規模なオンライン講座や研修を多数実施し、実用的で細やかなノウハウを蓄積してきました。コロナ渦以降は弊社のオンライン研修へのニーズやお問い合わせがさらに増加、私自身もますます多くのオンライン研修を実施していますが、そのたびに新たな気づきを得ています。

まず実施までの段取りを旨く行うことが研修の成否を決定づける重要ポイントなので、
・参加者が目的意識を持って臨めるよう研修の意義やゴールを明確にしておくこと
・研修前後に経営層からの期待や感想をみなさんに伝えること
などに留意しながら、事務局の方と事前にしっかり打ち合わせすることから始めます。

ゴールや目的によって、使用する会議システム、運営方法、研修プログラムなども変わりますが、それらは弊社からご提案しています。運営上の詳細マニュアルもお送りしていますので、研修当日から逆算しながら、機材準備・役割分担・接続テスト・案内方法などを順次行っていただきます。

ところで、学校の現場では「アクティブ・ラーニング」という双方向型の学習法が取り入れられ、主体的・対話的で、深い学びを得ることを重視しているのをご存知でしょうか。一方で、企業のオンライン研修の内容をうかがうと、動画を一方的に視聴する「講義型」がとくに新人向け研修に多く、深い学びを妨げてしまっています。

オンライン研修は人数に制限がありません。このメリットを活かし、双方向型で深い学びを得られる研修にチャレンジしていただければ幸いです。

●講演・研修へのお問い合わせはこちら