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【プレスリリース”誕生秘話ストーリー”】法改正の裏方役が語る男性育休が必要な理由。妻の産後うつを防ぎ、保育園のお迎えを父親が普通に担当できる社会をつくる~企業の意識を変えて取得率100%を目指す~

更新日:2023年10月23日

「残業をなくしたら業績があがり、会社が伸びる!」をモットーに、経営戦略としてのワーク・ライフバランスの実現を支援する株式会社ワーク・ライフバランス。2006年の創業以来、3,000社を超える企業の働き方に触れてきました。「働き方改革」や「法改正」にもかかわるワーク・ライフバランス社が近年力を入れているのが「男性の育児休業取得」の推進です。

2023年7月31日に、日本の男性の育児休業取得率は、2020年13.97%、2021年度17.13%だったことが厚生労働省から発表されました。2021年7月から父親の育休取得が義務化されたフランスでは、男性育休取得率は100%を達成していることをふまえると、まだまだ低い数字にとどまっています。

男性が育児休業を取得する必要性について疑問を抱く人がまだまだ多いなか、なぜ、男性の育児休業が必要なのか、社会全体のムーブメントに昇華するなかでの苦労や気づき、転換点について、同社で「男性育休プロジェクト」のリーダーを務めるコンサルタント・大畑愼護さんに話を聞きました。


第1章:「父親を自覚することがこんなに難しいなんて」という衝撃
大畑さんは、凸版印刷株式会社を経て2013年に株式会社ワーク・ライフバランスに入社し、株式会社オンワードホールディングスや住友生命保険相互会社を担当するワーク・ライフバランスコンサルタントとして活躍中ですが、3人の子どもの父親でもあります。

「第一子が生まれたのは前職のころ。実は当時は男性が育児休業を取ることができる、ということすら、まったく知らなかったんです」と大畑さんは苦笑いします。

「営業職だったので立ち合い出産もできませんでした。子どもが生まれても父親としての実感がまったくわかない状態がしばらく続きました。でも、妻は出産と同時に母親に切り替わっている。うしろめたさがありましたね。子どもの写真を見ては『自分はこの子の父親』と自分に父親としての自覚を芽生えさせるのに必死でした(苦笑)」と、現在は男性育休プロジェクトのリーダーを務める大畑さんは振り返ります。

「転機になったのは、株式会社ワーク・ライフバランスに転職してから。そのころ、一人目の子どもが生後4か月ほどだったのですが、先輩コンサルタントから『早速だけれど、大畑さんは育児休業をいつ取るの?』とたずねられたんです。男性で、しかも入社直後の自分が、育児休業を取る選択肢なんてあるのか?!と半信半疑で1か月間の育休を取得した」ところ、1か月も休めるのか!という驚きや、同世代の周りの男性で育休を取る人が誰もいないという不安、子どもを持つこと=キャリアの葛藤が生まれるという事実を知るという衝撃体験があったそうです。

このときの経験で、「男性も育児休業を取ったほうがいい」という確信が生まれ、2019年に社内で男性育休を推進するためのプロジェクトを、同社代表取締役社長・小室淑恵さんと一緒に立ち上げました。

▼男性育休100%宣言企業の経営者による『男性育休応援動画』を公開
総勢7社の経営者が、「もっと一緒にいたかった」エピソードを紹介し育児休業取得を呼び掛け 〜経営者と若手世代の意識のギャップを解消し、より多くの男性が育児休業を取得できる社会へ〜


▼書籍「先生がいなくなる」
 著者:株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 小室淑恵
    株式会社ワーク・ライフバランス 田川拓麿
    名古屋大学教授 内田 良氏
    岐阜県公立高校 西村祐二氏

▼小泉進次郎議員×経営トップの集う『働き方改革と人生100年時代の企業経営』セミナーを開催しました!(2019年3月18日)


第2章:妻の産後うつを救うのは、実は男性だった
日本の父親の育児休業制度は「世界で最も恵まれた制度」であるともいわれています(国連児童機関(ユニセフ)「先進国における家族に優しい政策』報告書・2019年6月13日)。でも、私たちの実感としては、日本の男性を取り巻く環境は、育児はおろか、働くことにおいても過酷なところがあります。

2018年の男性の育児休業取得率はわずか6%。
政府が2010年から男性育休の取得推進周知事業に約20億円かけて取り組んだにも関わらず、10年間で取得率は2%から6%に微増したにとどまり、2020年の政府目標13%には遠く及びませんでした。その背景には、日本の職場において「休ませない同調圧力」があり、制度はあってもその制度を使える風土がないことが原因であると言われています。

また、非常にショッキングなことに、産後の妻の死因の一位は自殺(国立成育医療研究センター調査より)です。一般的なイメージとして「出産おめでとう!人生で一番幸せだね」と言われる子どもの誕生ですが、その裏側では大変悲しい実態も生まれています。
ただ、このことがなぜ男性の育児休業取得につながるのか、疑問に思う人もいるかもしれません。

実は、この残念な結果は、産後女性の急激なホルモンの低下・孤独な育児と睡眠不足による「産後うつ」が要因であると言われています。

産後うつの状態になると「涙が止まらない」「パートナーにきつく当たってしまう」「自分はダメな母親なのではないか」「消えたい」という気持ちになり、重症化すると自殺、子への虐待につながってしまいます。明日も朝から仕事がある夫と比べて、家で子どもを見ることしかできない…ついこの間まで対等に仕事をしていたのに…と思うと、「夜中の授乳を交替してほしい」の一言がなかなか言えないということも考えられます。

実際に、大畑さんの妻も、「第一子が産まれた頃は、自分は一時的に仕事を休むから夫には仕事を頑張ってほしいと思っていた」や「自分は母親だからという呪縛があって、なんでも一人でやろうとつい抱え込んでしまうし、ツライと言えない」と言っていたとのことで、誰にでも起こりうる状態だといえそうです。
こうした悪循環を防ぐためにも、男性の育児休業取得の促進が急務と感じていました。

また、別の確度から見ると、男性新入社員の約8割が「子どもが生まれたときには、育休を取得したい」と考えている(2017年日本生産性本部「新入社員意識調査」より)そうです。社員のワークモチベーション向上、離職防止、人材獲得にも、男性社員が育児休業を取得できる環境を整えることに大きな期待が寄せられているのです。

出所: 「妊産婦のメンタルヘルスの実態把握及び介入方法に関する研究 平成26 年度 総括・分担研究報告書」より作成。産後うつ病のスクリーニング票として開発されたEPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)に基づく。10の質問事項において9点以上(信頼度95%区間)のEPDS陽性者をグラフ化している。

第3章:男性育休プロジェクト発足!企業の賛同を社会に見える化させるために
そこで株式会社ワーク・ライフバランスは、2019年3月に「男性の育児休業取得率の向上を目指そう!」とプロジェクトを立ち上げました。

まず行ったのは「男性育休100%宣言」です。
この宣言の趣旨に賛同した企業の経営者が、男性の育児休業取得について目標をもってアクションと発信を行います。
同時に、テレビ局や建設業、医療、国会議員など各界の経営トップ140名が参加したシンポジウム「働き方改革と人生100年時代の企業経営セミナー」を開催するなど、官民で連携した取り組みも仕掛けました。プロジェクト開始後4年が経過した今、「男性育休100%宣言」には169社もの企業が参加しています(2023年8月4日時点)。

▼男性育休100%宣言の賛同企業の詳細はこちら 

また、個人が男性の育児休業の取得を望んだとしても、それだけでは取得率の向上に限界があることもわかっていました。本人に「取得したい」という気持ちがあるにもかかわらず実現できないのは、職場ーーすなわち企業側ーーに原因があるのではないか。そんなふうに大畑さんたちプロジェクトメンバーは考えていました。これまでも、「育児休業を取りたい」と企業に言えば、企業側は断ることは法律上、出来ませんでした。しかし、「取りたい」と言い出せる風土をあえて作らないことで、結果的に男性が育児休業を取れない環境があることがわかりました。そこで、取得対象者から企業に申し出るのではなく、企業が取得対象者に対して育休の周知・取得の意向を確認する流れに変えることが必要だ、と気づいたのです。そのための動きとして、「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」と連携し、育児介護休業法の法改正の働きかけを行い、実現につなげていきました。

これにより、出生時育休(通称:男性版産休)の創設、企業は育休対象者に対して周知や意向確認、1,000人超の企業については男性育休取得状況の公表の義務づけ、といった法改正を実現したのです。

▼【プレスリリース】(2023年7月31日)
3月末決算企業の約9割が6月中に公表完了予定、 公表義務化企業の男性育休取得率は46.2% 平均取得日数は46.5日に 男性の育休等取得率の公表により、育休取得の促進だけでなく、 人材獲得の面でも効果

第4章:みんなに喜んでもらえるはずなのに、思わぬ逆風が…!
「ただ、こういった取組みだけでは、本音にアプローチしきれない、という悩みもありました」と大畑さんは語ります。
「”男性育休義務化”というパワーワードを使ったことで、たくさんのメディアで男性育休が取り上げられました。日本社会のムーブメントが作られはじめた!と最初はワクワクしたのですが、前向きな意見だけではありませんでした」と大畑さんは当時を振り返ります。

「『家に旦那がいられても迷惑』とか『大きな子どもが一人増えるだけ』、『夫が育休をとった時に育児をせずにゴルフに行って、イライラが倍増した』、なんていう声もありました…“パパゴロゴロ問題”ですね」

実際に、「数日の育休なら必要ない」「育児はずっと続くのでそれよりも定時退社のほうが嬉しい」といった、育休よりも定時退社を希望する声も多く寄せられたそうです。
ほかにも、「育休中の給料が心配」などの”お金問題”や、「会社が取れというから仕方なく1日だけ取得した」「いつ取っていいかわからないから適当に数日取得してやり過ごした」など“取るだけ育休問題”も発生。

また、管理職側からも「自分が若い頃は男が育休なんて取らなかった」「子どもが生まれるなら、むしろ、もっと働いた方がいいんじゃないか」「今の時期は忙しいから休まないでほしい、子育てなんていつでもできるだろう」など、誤解や情報不足からくる“無意識のパタハラ”を生み出すケースも散見されました。

そして、企業は男性育休の必要性を深く理解しないまま法対応に追われ、取得対象者への周知や意向確認の義務化は進みましたが、肝心の管理職や本人(取得対象者)に正しい知識を習得してもらうための「雇用環境の義務化」については手が付けられてない状況も見えました。

「思ったよりも、男性が育児休業を取ることのメリットや、取得している期間の動き方に対する理解が少ない、それを推進する企業側のリソースも足りていないということに気づき」、大畑さんたちプロジェクトメンバーは“男性育休推進研修 定額制サービス”の開発に動きます。


▲2023年6月19日(月) 「こども家庭庁」での父親学級の様子

第5章:「2人分の命を守る」をプレパパに届けるため「男性育休サブスク」に進化
男性育休推進研修 定額制サービス(通称:男性育休サブスク)は、サブスク(サブスクリプション:定期購読、継続購入を意味し、商品やサービスを所有・購入するのではなく、一定期間利用できる権利に対して料金を支払うこと)モデルで、男性が育児休業を取得することに関する様々な情報を提供するものです。

2022年4月以降、男性育休周知義務化など改正育児介護休業法の施行されました。事業主は次の4つの措置のうち1つ以上(出来るだけ複数)を実施することが義務付けられています。

① 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
② 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

なかでも、①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施は、育休取得をする男性本人に向けた「父親学級」と、上司や周囲の同僚に向けた「意識改革研修」の両方を実施していくことが重要です。

大畑さんによると、いつ誰が育休取得するかは見込みが立たないので、企業が研修を前もって準備してタイミングよく開催するのはなかなか大変で予算も工数をさきにくい、とのこと。さらに、育休取得をする男性は社内ではまだまだ少数派であることが多く、妻に妊娠が分かり出産までの誕生前の期間、未来の父親になる人を指す“プレパパ”コミュニティーがない企業では、他社のプレパパと交流することで、育児家事参画への姿勢を学んでほしいというニーズもあったそうです。

そこで、男性育休サブスクでは、プレパパ向けに“男性育休の必要性や育休期間中の過ごし方の情報” を提供する「オンライン企業型父親学級」や、管理職向けに“男性育休の必要性とともに部下に育休をとってもらうため の手法”といった働き方改革の知識も提供する「管理職研修」などを用意、時間がとれないなかでも全従業員に知っておいて欲しい情報を伝える15~20分のイーラーニング動画4本をいつでもどこでも見ることができるサービスなどを用意し、男性育休の必要性の理解を後押しすることにしました。

「私たちは法改正を後押しした責任があり、表面上の法改正にさせないためにしっかり中身のある取り組みを企業で行っていただきたいという思いがありました。また、この法改正で人事部の負荷が高まっていますが、人事部の皆さんには対象者のサポートに力を割いてほしいという願いもあります。そのため、研修の開催準備や社内募集や申し込みなど一連の手間を私たちが一挙に引き受けたい、という気持ちで設計しています。」(大畑さん)

▼男性育休推進研修定額制サービスの詳細はこちら


第6章:ついに導入企業が100社に!“父親が保育園のお迎え担当”が当たり前な社会へ!

2022年3月から開始した男性育休サブスクは、2023年6月には100社を超える企業が活用するまでに成長しています。主な導入企業には、みずほフィナンシャルグループや大王製紙、サンヨー食品、日本航空、清水建設三井化学、フジテレビなどの企業が連なります。「男性育休100%宣言とあわせて、男性育休サブスクを活用する企業が増えています。取得率だけでなく取得日数もあがり、従業員満足度や企業ブランドの向上に貢献しているので、1社66万円(2023年8月時点)の導入費で大きな効果を得ることができ費用対効果が高い、とよくおっしゃっていただきますね」と大畑さんはいいます。

また、大畑さんが講師を務める父親学級の参加者は400名が参加するまでになり、その満足度は96%と大好評です。​
「一番嬉しかったのは、私の父親学級に参加したことがきっかけで育休取得を決意したプレパパがたくさんいたことですね」と大畑さんは笑います。

「男性に育休を取ってもらいたくても、どう伝えたらいいか、考えあぐねている人が多い大企業にとって、男性育休サブスクで父親学級を受講すると、受講生である自社の男性社員のマインドが『育児休業、取ったほうがいいに決まっているね』と変わって職場に戻ってくる、と好評いただいているようです。」

さらに、株式会社ワーク・ライフバランス・代表取締役社長 小室淑恵さんが講師を務める管理職を対象にした「業績とモチベーション向上を実現する男性育休マネジメントとは~誰が休んでも回る職場を作る・秘訣は心理的安全性~」も、参加者は2,000名をこえ、満足度96%​と高いだけでなく、「部下に育休を勧めたい・可能な限り勧めたい」と回答した管理職が98.7%、男性育休の推奨取得期間は「1か月以上」と回答した管理職が87%と、管理職の意識改革も大きく前進した様子がわかります。

アンケートには、参加者の率直な意見がよせられていました。その一例をご紹介します。
●妻が自殺するなんて考えたくもなかったのですが、母になる女性は誰しもその可能性を秘めているという事実が衝撃でした。
●子育て時の生活リズムが壮絶で、とても妻一人に任せるのは厳しいと感じた。二人の子どもなので、二人で育てるという意識が大切だと再認識しました。
●男性育休への理解不足がこれ程の社会的信用の失墜につながるおそれがあるという実例を示していただいたりするなど、具体的で逼迫した危機感を抱かせる内容で、管理職として部下の説得・啓発のための効果的な武器になる気がいたします。
●自分自身も育休を取得し、妻を助けてあげればよかったと思った。同じような思いを部下にはさせないように職場内での男性育休取得を進めていきたい。

大畑さんによると、導入企業では定量的な変化も観測されているそうです。
たとえば、大王製紙の男性育休取得率は 2020 年度に 6.3%でしたが、男性育休推進研修 定額制サービスなどの導入により、2021年度は 28.9%、2022 年度予想(2023年1月回答時点)は 93.0%と 3 年間で大きく伸長しました。
「男性育休サブスクを通して、第一子の子育てが”妻だけのワンオペ孤独体験”ではなく、“夫婦で感情を共有できるハッピー体験”となることで、第二子・第三子に夫婦が前向きになれる環境を作っていくことが日本社会の課題を解決していくことにつながっていくと考えています。今、保育園には朝に父親が送りに来る様子を見るようになりましたが、男性育休がさらに進むことで夕方のお迎えにたくさんの父親で賑わう社会に変化していくといいですよね!」とにこやかに話す大畑さんが印象的なインタビューでした。

株式会社ワーク・ライフバランスの男性育児休業取得推進に関する取組みをもっと詳しく知りたい人は
こちら

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