2026.03.17
開催レポート
経営者様交流会2025 働き方改革の最新トレンドを共有!ゲストによる取り組み事例発表!
2024年12月16日、弊社では毎年恒例の経営者交流会をオンラインで開催しました。多数の経営者様にご参加いただき、各社による働き方改革の取り組みの背景や思いを相互に共有する機会となりました。今回はゲストに東亜建設工業株式会社 代表取締役社長 早川毅様、株式会社商船三井 代表取締役副社長 篠田敏暢様、日本ファブテック株式会社 代表取締役社長 中楯伸一様をお招きし、それぞれの取り組みについてお話いただきました。本稿ではその内容をレポートします。(司会進行:株式会社ワーク・ライフバランス 松久晃士)
目次
- 1 イベント概要
- 2 人手不足と少子化を解決し、組織の成果と意欲も最大化する日本の新しい働き方とは? (株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵)
- 3 人材不足の時代を生き抜く 多様な働き方と心理的安全性を両立する働き方改革 (東亜建設工業株式会社 代表取締役社長 早川毅様)
- 4 ゲスト登壇企業様による取り組み事例のご紹介① (株式会社商船三井 代表取締役副社長 篠田敏暢様)
- 5 ゲスト登壇企業様による取り組み事例のご紹介② 経営交代期に学ぶ組織変革の実践論 〜みんなでかえるか! プロジェクトの舞台裏 (日本ファブテック株式会社 代表取締役社長 中楯伸一様)
- 6 働き方改革に関する最新トレンド (株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵)
イベント概要
■小室淑恵 挨拶
会の冒頭では弊社代表取締役小室から「日本の働き方の注目ポイント」についてお話いたしました。
- 自民党総裁選の「働いて、働いて……」発言に象徴されるように、多くの業界団体や経済団体には労働時間上限緩和のニーズがある。
- その背景には、働き方改革が進まず、人手不足に悩む企業の焦燥感と、社会負担が増す個人の苦境がある。
- しかし、24時間型人材が減る日本において、労働時間の上限緩和はソリューションとなり得ない。重要なのは、お互いに休むことを前提にした働き方の転換である。
- 多様な人材が働ける環境をつくることで、持続的な経済成長が実現する。このことを経営者も強く認識する必要がある。
■東亜建設工業株式会社ご発表
続いて、東亜建設工業株式会社 代表取締役社長 早川毅様から取り組みのご発表がありました。同社ではカエル会議を導入し、「心理的安全性」「傾聴」をキーワードに、トップが本気で関わりながら働き方改革に取り組まれています。
- 魅力ある会社づくりのため、好事例を共有するための働き方改革発表会を開始。この取り組みを通じて、コミュニケーションや心理的安全性の重要性を理解した。
- 会社の文化や意識を変える取り組みだからこそ、トップが本気で関わることが重要であり、経営層も職場での工夫や実践事例を知る機会となっている。
- 現時点で社内の約24%がカエル会議を経験。社内にカエル会議の有効性が浸透しつつある。今後もコンサルタントの協力を得ながら、カエル会議をより良いものへと高めていきたい。
■株式会社商船三井様ご発表
株式会社商船三井 代表取締役副社長 篠田敏暢様と弊社小室淑恵の対談形式による、取り組み発表が行われました。篠田様からこれまでの成果や、コミュケーションの重要性、女性活躍推進などの現状についてお話をいただきました。
- 約10年前から働き方改革に取り組み、「働く場所の改革」と「テレワークの徹底」などを実施。本社ビルを改装し、フリーアドレスの執務スペースをつくるなど、会話を促進する試みを行った。
- 働き方改革では「話ができること」を重視し、「チャーツトーク」と称した対話の場を開催。事業や制度について自由な対話の場を設けている。
- 女性活躍推進についてはトップコミットメントの下、育成とキャリア採用も積極的に進めている。
- 1人1人の意識を変えることが重要であり、1人1人が事業・経営に参加しているつもりになれるような取り組みを進めていきたい。
■日本ファブテック様ご発表
日本ファブテック株式会社 代表取締役社長 中楯伸一様と弊社コンサルタント滝沢雄太の対談形式による取り組み発表が行われました。同社では「みんなでかえるか!プロジェクト」という働き方改革の取り組みを実践されています。
- 仕事のやり方を変える、考え方を変える、意識を変える、定時で帰るなどの思いを込め、「みんなでかえるか!プロジェクト」をスタートさせた。
- ワーク・ライフバランス社による講演や経営者とコンサルタントによる戦略会議などを通じ、アクションを進めてきた。
- 業務一覧表作成を起点に経理部の属人化解消やペーパーレス化を実現。現場では、カエル会議から出たアイディアをもとにWEBツールを活用した情報共有を行い、大幅な時間削減を実現した。
- 戦略会議では経営層が毎月のアクションを決め、人事異動制度の改善やテレワーク推進などを行った。
- 経営者と従業員が直接対話するタウンホールミーティングにより、コミュニケーションが深まっている。
■働き方改革に関する最新トレンド紹介
会の締めくくりとして、小室から働き方改革に関する最新トレンド紹介が行われました。
- 企業が残業に頼らない経営をする上では、時間外割増率を1.5倍にする政策が有効である。
- 高知県庁では、2026年4月から時間外割増率を1.5倍にすると決定。短時間で成果を上げる働き方への転換を進めている。
- 短時間で70歳まで当たり前に無理なく働ける職場が実現すれば、日本は持続的に成長できる余地がある。
- 夫婦がともに働き続けた場合と夫が長時間労働をし、妻が仕事を辞めた場合を比較すると、家計にもたらされる生涯賃金には2億円の違いが出る。また、前者の働き方は少子化を解消し、未来の働き手確保にもつながる。
- 国民の健康と命を守るためには、「勤務間インターバル」「時間外割増率1.5倍」「過労死ライン以下の時間外労働」が不可欠である。
- 経営者の皆様と「真の働き方改革」「多様な働き手の意欲を最大に引き出す環境整備」社内外に信頼される経営の支援」を進めていきたい。
当日のイベント内容は以下に詳しくご紹介しております。ぜひご覧ください。
人手不足と少子化を解決し、組織の成果と意欲も最大化する日本の新しい働き方とは?
(株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵)

「馬車馬発言」の背景にある日本の転換点
2025年10月、自民党総裁選で「ワーク・ライフバランスを捨て、馬車馬のように働きます」との発言が出ました。個人の決意だから特に問題はないという声が多かったのですが、実は総裁選の候補者5人とも労働時間の上限緩和を打ち出していました。
2026年は「労基法改正国会」であり、多くの業界団体や経済団体が自民党総裁候補にロビイングを行っていました。候補者たちが「みんな労働時間を緩和したいんだな」「長時間労働ができる社会へのニーズが強い」と感じていたから、総裁が決まった瞬間に「働いて働いて……」という発言が出たのではないかと思います。
高市総理が就任翌日、各大臣に出した指示書には「労基法の緩和」が入っていました。数日後には、総理が午前3時から会議を行う出来事もありました。こうした一連の動きは、高市総理の熱心さや個人の価値観ではなく、今の日本の意識を表しています。
一方、厚労省は2026年の法改正に向けて「勤務間インターバル義務化」や「連続勤務13日まで」など、働き方改革を加速させる方向性を出しています。なぜ今、企業も個人も労働時間に注目しているのでしょうか。そして経済団体と厚労省の主張が真逆に見えるのはどうしてでしょうか。私たち経営者はどう考えるべきでしょうか。
労働力人口は過去最多!
ここでしっかりファクトに目を向ける必要があります。今、人手不足が叫ばれていますが、実際には2025年の労働力人口は過去最多を記録しています。働き方改革が進んだことにより、育児中、介護中、残業転勤不可といった多様な人材が労働市場に戻ってこられるようになったからです。ただ、さまざまな事情を抱える労働力を活用できるのは、残業や休日出勤を前提としない組織のみです。そういった組織には顕著に人が集まった一方で、働き方改革を進められていない企業の人手不足感は加速し、企業の大きな焦りとなっています。
そして個人の側では、1人当たりが負担する社会保険料が年々増加し、働いても暮らしが悪化していく状況です。「これは働き方改革関連法で、残業上限が規制されて残業代が稼げなくなったからではないか?」という思いが、働き方改革へのバックラッシュとなっているわけです。
経済成長の鍵は「多様な人材活用」
では、労働時間の上限緩和はソリューションになりうるのでしょうか。
働き方改革を始める前、企業は「誰かの労働時間が欠けたら、24時間型で働ける人の残業に乗せればいい」という手段をとってきました。そして、今はこの状況を緩和しようとしています。ところが、日本では24時間型で働ける人の割合が減っています。24時間型人材に期待する「上方向の経済成長」では行き詰まるのが明白です。

一方、私たちと働き方改革に取り組んだ企業は、勤務間インターバルを取り入れ、65歳以上の再雇用、週4勤務、育児時短、介護時短といった多様な人材を使っています。そうすれば社会保障の担い手が増え、1人当たりの税金が跳ね上がらないで済み、持続可能な社会が実現します。これを「横方向の経済成長」といいます。重要なのは「子持ちはいいよね。こっちは大変ですけど」などと責め合う「ギリギリ職場」から、お互いに休むことを前提とした「お互い様職場」に転換していくことなのです。
日本では労働力が1100万人足りなくなると言われますが、65歳から75歳の高齢者だけで1700万人、働き方がハードでなければ正社員になりたいと思っているパートの方が290万人もいます。そういった方が社会保障の担い手として仕事を続ければ、1人当たりの負担が跳ね上がらず、男女の賃金格差も埋まります。また、毎月の残業代が読めるようになり、デジタル投資が促進され、ベースアップも実現できます。
日本社会を上方向の経済成長に持っていくのか、それとも横方向の経済成長に持っていくのか。これが政治にも問われていますし、経営者にも問われています。こうした問題意識を持っていただけばと思います。
人材不足の時代を生き抜く 多様な働き方と心理的安全性を両立する働き方改革
(東亜建設工業株式会社 代表取締役社長 早川毅様)
(※以下敬称略)
担当コンサルタント:株式会社ワーク・ライフバランス 桜田陽子

東亜建設工業の働き方改革
私どもは1908(明治41)年、浅野総一郎が神奈川県に埋立事業計画を提出したところから始まりました。その後、港湾土木事業を拡大し、現在は総合建設業として創業117年を迎えます。まずは、当社の働き方改革の取り組みについて、社員の声を通じてご紹介したいと思います。
<カエル会議紹介動画抜粋より>
「カエル会議をするようになり、部下の育成について考える時間が増えました。業務を任せる覚悟を持ち、すぐの結果ではなく伸びしろに期待したいと思っています」(中国支店山本一仁氏)。
「入社予定の学生から『新人でも意見を出せる取り組みが志望動機となった』という話がありました。カエル会議は採用面でも寄与し始めています」(本社建築本部福地康幸氏)。
「若い社員と平日休暇を取るというアクションに取り組みました。休暇時に何をしたいかという話をしたとき、最初は『歯医者に行きます』という答えでしたが、だんだん『富士山に登ってみたいです』などのアクティブな声が出るようになりました。私自身も自分でチームを引っ張りすぎずに、若手主導で意見を出してもらうマネジメントへと変化しました」(横浜支店三浦裕介氏)。
<早川社長より>
トップとしての働き方改革の意思決定
私たち建設業は請負契約で成り立っており、工期を守ることが前提ですが、屋外での施工も多く、自然との戦いになることが多くあります。「海が荒れても工期を守らなければならない」「海が穏やかなときに仕事をする」といった考えが習慣となり、残業や休日出勤が当たり前という意識が根強く残っていました。
そんな中、時間外労働の法制化、人材不足、技術継承が高いハードルとなり、働き方改革を進めなければ、これからも勝ち続けていくのは難しいと感じました。まずは社員の意識を変えるという課題を掲げましたが、結果を残さなければならないというプレッシャーもありました。また、ロードマップを作成したものの、手探りの部分も多く、何か有効な策はないかと模索していました。
一方、社員の側も働き方改革の重要性は理解しつつも「具体的に何をやればいいのか」「何かヒントが欲しい」と悩んでいました。そこで私が社長に就任後、好事例を共有する目的の下、働き方改革発表会を始めました。発表会では、現場や支店で取り組んだ内容や、カエル会議の中間報告を発表してもらいました。そこで「法律やルールをしっかり理解してもらうこと」「上司が部下の仕事を把握し、上下間でしっかりコミュニケーションをとること」「お互いが意見に耳を傾け、心理的安全性が高い職場環境を作ること」が土台になるとわかりました。
働き方改革の取組全体像と変化
取り組み内容をキーワードに沿ってご説明します。まず「経営者としての関わり方」ですが、情報共有の重要性を認識し、最優先事項として私自身が直接関わることとしました。働き方改革は、会社の文化や意識を変える取り組みだからこそ、トップが本気で関わることが重要です。
続いて「ブレークスルーポイント」ですが、働き方改革において明確なブレークスルーポイントはないと感じています。実際の改革は、じわじわと浸透してくるものです。ただ、カエル会議を実践したチームは、取り組み自体がブレークスルーポイントになったと感じています。
「経営層が感じた変化」については、経営層も働き方改革発表会を聞き、刺激的な気付きが多々ありました。職場での工夫や実践事例を知ることで、経営陣の意識も変化してきました。
そして「採用への効果」です。当社のホームページに働き方改革の情報を掲載しています。カエル会議の取り組みも紹介しており、それを見た学生が志望動機やエントリーシートに書いてくれています。働き方改革の情報発信が、一定程度採用に効果があったと感じています。
働き方改革の実践とコンサルタント活用ヒント
カエル会議の対象者は年々増えており、通算約450名、社内の約24%がカエル会議を経験しています。完全自走が理想ですが、現段階ではコンサルタントの伴走が非常に重要だと感じています。
全社員に「カエル会議アンケート」を実施したところ、カエル会議の認知度は「イメージできる」「ある程度イメージできる」人が全体の8割程度であることがわかりました。また、カエル会議の有効性について、経験者の約80%が「有効だと感じる」、未経験者も65%が「有効だと感じる」と回答しています。コンサルタントの伴走により、未経験者にもカエル会議の有効性をアピールできたと感じています。

キーワードとしている「心理的安全性」については「若手を定時で退社させるため」「衝突を避け、仲良く仕事をするため」などと解釈されることもありますが、本来は組織の目標を達成するために上下間関係なく自由に意見を言い合える職場環境を作ることを意味します。アンケートでは80%以上が真の目的を理解しているという結果が示されました。心理的安全性向上のためには互いの「傾聴」もポイントであり、これもキーワードとしています。

「カエル会議をやってみたいか」という問いに対して、経験者は「やってみたい」「状況が整えばやってみたい」を合わせると70%以上、未経験者も約60%が「やってみたい」と回答しています。自由意見では「時間の確保が難しい」「忙しいときには困難」「人数が少ない現場では難しい」「やらされ感がある」といった課題が挙がった一方で、「経験者の人数を増やすべき」「成功体験を共有すべき」「所長や上司の理解とリーダーシップが大切」「柔軟性を持ってやり方を簡略化することが必要」といった浸透へのヒントもありました。現状のカエル会議はまだ完全ではないので、コンサルタントの皆さんの協力を得ながら、より良いものに高めていきたいと考えています。

弊社ホームページで働き方改革の取り組みの様子をご紹介しており、カエル会議の説明や発表会の様子を掲載しています。ぜひご覧いただければと思います。ありがとうございました。

参加者からの質疑応答
桜田:「カエル会議は、実際に成果が出始めるまでどのぐらい時間がかかりましたか?」とのご質問をいただきました。
早川:経験した社員に聞くと、最初は戸惑いがあったものの、コンサルタントに指導いただきながら、理想の職場像などを付箋に書いて壁に貼っていくうちに、少しずつカエル会議の意義が掴めてきたそうです。そして回数をこなすうちに「上司はこう考えている」「部下はこう考えている」とわかってきます。すると若い人から「もう少しここを教えて欲しい」「こうすれば時間短縮になるのではないか」という建設的な意見がフランクに出てきます。それが職場の生産性向上や残業時間削減につながり、チームワークが生まれます。中には、家族に近いような関係を構築できた現場もありました。5回、6回と回数を繰り返すことで変化が出てくると感じています。
桜田:社長がしっかりぶれずに伝えてくださることで、現場の皆さんからも「心理的安全性」や「傾聴」といった言葉が自然に出てきていると思います。
「カエル会議は完全ではないことについて、もう少しお聞きしたいです」というご質問については、いかがでしょうか。
早川:例えばメンバー内で声の大きな人の意見が通りやすかったり、1人だけ喋ってしまったりすることがあります。そこに関しては、経験者にアンケートを実施し、本音を語ってもらうことで改善点を探っています。カエル会議に取り組む現場の個性は多様ですが、人が入れ替わることでも変化していきます。多少うまくいく・いかないことがあっても、繰り返す過程で全体に浸透していくと考えています。
桜田:最後に、東亜建設工業様で取り組みが進んでいるポイントを解説します。全国で工事の状況や作業所の状況が異なるため、画一的なやり方ではなく、支店にマッチしたプランニングができるよう、支店幹部の皆様と意見交換を行ったり報告会をご覧いただいたりしています。支店ごとに意見を聞きながら、現場の状況に応じて取り組むチーム数、開始時期、サポートのやり方を丁寧に組み立てているところがポイントであると思います。早川社長、ありがとうございました。
ゲスト登壇企業様による取り組み事例のご紹介①
(株式会社商船三井 代表取締役副社長 篠田敏暢様)
(※以下敬称略)
聴き手:株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵

ワークプレイス改革〜「いつでも、つながる」オフィスづくり〜
小室:商船三井さんは、これから私どもがコンサルをお手伝いさせていただくこととなっています。早くから働き方改革に取り組まれて来られたとのことですが、これまで達成したことについてお聞かせください。
篠田:10年近く取り組む中で、2019年ごろから働き方改革が加速し、特に目立ったのが「働く場所の改革」と「テレワークの徹底」です。テレワークはコロナ発生がきっかけとなり、さまざまなライフを抱える皆さんが、柔軟に仕事に参加できるようになりました。
ワークプレイスについては、2019年に本社ビルのワンフロアを改装し、フリーアドレスの執務スペース、話をするための共用スペース、コンセントレーションのためのスペース、飲み物やスナックをつまめるスペースなどを作りました。なおかつ他部門と話しやすい座席の配置にしました。希望する部門に3カ月交代で使ってもらい、アンケートをとった結果、一定以上の効果があることがわかりました。そこで2023年、15階建のオフィスビルの全階を改装し、全ての階を同じような仕様にしました。

オフィス内には自動販売機があるのですが、違う部門の2人以上が社員証を登録して飲み物を買うと無料になる仕組みを採用し、会話を促進しています。また、フロアがわかれていると、話がしづらい状況も生まれるので、オフィススペースの中に内階段を2カ所設けました。これにより、社内の雰囲気が相当変わり、いろいろな階層で会話が増えています。
働き方改革の位置づけ
篠田:働き方改革を進める目的の1つは、労働市場に対して商船三井という会社がいかに魅力的かを訴えることです。また、心の余裕と時間の余裕を持ち、それによってプラスアルファの生産性向上させる必要があります。皆さんが新しい発想を持ち、建設的な議論ができ、それによってイノベーションや付加価値を生み出せるようにする。その基本として重視しているのは「話ができる」ということです。
私たちはカエル会議という言葉を使わず「チャーツトーク」と称しています。「チャーツ」という言葉には、商船三井グループ共通の価値観を共有したいとの思いが込められており、「Challenge」「Honesty」「Accountability」「Reliability」「Teamwork」「Safety」の頭文字を取っています。私たちは海運会社であり、海図を意味する「チャート(chart)」になぞらえていますが、そこに一番重要な要素である安全(Safety)のSを付けて「チャーツ」としました。「チャーツトーク」では事業や制度について自由な対話の場を設けています。

小室:さらに一歩進める上でわが社を選んでいただいた理由をお聞かせください。
篠田:働き方改革は進みましたが、時間の使い方を初めとして、中間管理職から上級管理職の人たちにしわ寄せがいっていました。管理職は事業の責任を負う一方で、マネジメントもしなければいけません。改革を進めるうちに、この両立が難しくなり、「改革疲れ」が出やすい状況にありました。刺激材料を探していたところ、小室さんのご活躍と試みを知り、管理職を対象に働き方改革を習得するプログラムをご依頼しました。
商船三井の女性活躍推進
小室:御社の女性活躍の進捗については、いかがでしょうか。
篠田:経営計画のKPIの中で、女性管理職の登用比率を上げることをステークホルダーにコミットしています。トップがコミットメントしているので力強く進んでいますが、候補者が少ないという課題を抱えています。現在、育成とキャリア採用を積極的に行っており、今後5年程度で課題は解消できると考えています。
小室:管理職の働き方が変わると女性が上昇志向を持てるようになります。働き方改革をより一層上のレイヤーでも進めていくことが重要です。また、御社の取り組みで注目したいのが、男性育休を平均52日取得していることです。パーセンテージを上げるだけでなく、平均取得日数が延びている点も大変素晴らしいと思います。最後に、今後に向けたメッセージをお願いします。

篠田:働き方改革は会社が一方的に与えるものではありません。もちろん制度面の充実などは必要ですが、やはり1人1人の意識を変えることが重要です。「言われた範囲の仕事だけをやる」ということではなく、1人1人が事業・経営に参加しているつもりになれるように、共有できるものを増やしていきたいと思っています。
小室:ありがとうございました。
ゲスト登壇企業様による取り組み事例のご紹介②
経営交代期に学ぶ組織変革の実践論 〜みんなでかえるか! プロジェクトの舞台裏
(日本ファブテック株式会社 代表取締役社長 中楯伸一様)
(※以下敬称略)
担当コンサルタント:株式会社ワーク・ライフバランス 滝沢雄太

「みんなでかえるか!PJ」とは
滝沢:日本ファブテックさんは、ビルの鉄骨や、鋼製の橋などを設計から製造、施工を一貫して手がける専業メーカーであり、創業から100年以上の歴史をお持ちです。私たちは2024年11月から取り組みをご一緒にしています。本日は、2025年4月に代表取締役社長に就任された中楯様にお話を伺います。
御社では働き方改革のプロジェクトを「みんなでかえるか!プロジェクト」と銘打っています。どうしてこの名前で呼ばれているのでしょうか。
中楯:カエル会議を通じて仕事のやり方を変えたり、今までの考え方を変えたり、自分の意識を変えたりすることで、定時で帰ることをみんなでやっていきたいと考え、「みんなでかえるか!プロジェクト」としました。今まで自分の意見を言う場所がなかったと聞いていたので、「声に出して言うことが大切」「最初からあきらめるのではなく、できる方法を提案していく」「出てきた意見は頭から否定することなく受け止め、一緒に考えていく」、その結果として仕事がやりやすくなることを目指しています。

「みんなでかえるか!PJ」の全体像
滝沢:御社の取り組みは2027年度を見据えてプランニングしており、モデル現場チームへのヒアリングによる現状分析を行いながら、全社員を対象に意識改革のための講演を実施してきました。また、事務局員5名全員が弊社のワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座を受講し、働き方改革のノウハウを学ぶ一方、経営者の皆様も月に1回戦略会議で弊社とミーティングの時間を設けてアクションを進めています。
モデル現場では、2025年度6チームでカエル会議に取り組み、第2フェーズで7チームの取り組みがスタートしました。また、社長直下の「タウンホールミーティング」として、各工場に足を運び、従業員との対話を続けられています。2026年からは管理職に向けた研修も予定しています。改めてプロジェクトの背景をお聞かせください。
「みんなでかえるか!PJ」に取り組んでいる背景
中楯:最初のきっかけは離職者が増加したことです。前社長が「何かしなければならない」ということで取り組み、社長交代の引き継ぎをする中で、「しっかり前に進めてもらいたい」とのお話がありました。私自身、社員のやる気が大切だと認識していたので、素直に引き継ぐことができました。
就任当初は「とにかくみんなと顔を合わせて話がしたい」「全社員に日本ファブテックという会社を好きになってもらいたい」との思いがありました。タウンホールミーティングの場で「会社を好きになってほしい」と話したところ、「私の祖父は昔この工場にいて、祖父の働く姿を見てここに来ました」「親戚を含めて3人が日本ファブテックにいます」といったこと聞き、非常に嬉しく思いました。
「みんなでかえるか!PJ」の成果─属人化の解消
滝沢:現場の成果を3つご紹介します。1つ目は、経理部による属人化の解消です。経理部でお互いの仕事を見える化するため業務一覧表を作成したところ、約60個の業務のうち半分が属人化していると判明しました。これに対して引き継ぎやマニュアル作成を進めた結果、担当者不在時の業務停滞リスクが軽減し、人に教えることで業務理解が深まるといった成果が出ています。
さらにペーパーレス化も進めました。これまでは伝票作成・確認、印刷、案件番号記入、提出・回覧、承認といった業務プロセスがあったのですが、これをスプレッドシート上で行うことにより時間を大幅に削減し、月1000枚以上の紙を削減しています。
「みんなでかえるか!PJ」の成果②─WEBツールを活用した情報共有
取手工場では「WEBツールを活用した情報共有」を行いました。この工場では修理依頼が発生したとき、連絡を受けた事務所から工場に駆けつけて現場を確認し、修理道具を再度事務所に取りに戻るという移動時間のロスが発生していました。カエル会議で、「WEBカメラで確認したらいいのでは?」というアイディアが出され、実際にやってみたところ、移動時間1回あたり20分程度、週100分程度の時間節約につながっています。こういった事例を横展開していけばインパクトも大きくなっていくと思います。

経営者としての取り組み①戦略会議・テレワーク推進
滝沢:御社では経営陣の皆さんが戦略会議を通じて弊社と議論を行っています。その中では従業員から上がってきた課題に対して、どのような対応をしていくのか、「みんなでかえるか!プロジェクト」をどうしたら浸透できるかを考えてアクションしています。
中楯:プロジェクトを立ち上げたとき「新しい取り組みをやっても、そのまま尻すぼみになって、いつの間にかなくなってしまうのではないか」という声が漏れ聞こえてきました。そういった中で、ワーク・ライフバランス社さんが私どもを導き、「本気度を社員に伝えるためには、自分たちがしっかりやる気持ちが大事だ」と教えを請うことができました。
滝沢:毎月アクションを決め、役員1人1人が「これをやるぞ」と宣言し、翌月に振り返りをする非常にコミットが高まる時間だと感じています。その中で行った1つが人事異動制度の改善です。これまで現場から「異動希望を出しても、なかなか希望が通らない」といった不満の声が上がっていたのですが、実はその声が部内の上部でとどまっていることがわかり、経営層までしっかり情報が共有されるように面談シートに記録を残すなどの制度改定を行っています。
また、テレワーク推進にも取り組まれましたが、これについてもお聞かせください。
中楯:弊社は2024年に本社を移転したのですが、工場から本社機能を移転する過程で「テレワークはできない・してはいけない」という誤解が生じてしまう出来事がありました。もともとテレワークの環境がなく、個人携帯に頼っていたため、全て会社の携帯に変え、自宅でも作業できる環境を整えました。「誤解をさせて申し訳なかった」と伝えながら、テレワークの仕組みをしっかり周知しています。その際はワーク・ライフバランスさんがパイプ役となって現場の声を吸い上げていただきました。
経営者としての取り組み②タウンホールミーティング
滝沢:誤解を生んだことを謝罪されたところに非常に誠実さを感じましたし、改めてテレワークを使っていこうと発信したことが素晴らしかったと思います。さらに社長自ら各工場に足を運び、タウンホールミーティングを通じて従業員との対話を進めました。どんな戦略で実施されたのでしょうか。
中楯:経営層がプロジェクトに真剣に取り組んでいることを知ってもらいたい、社員が会社について一生懸命考えることで日本ファブテックのことを好きになってもらいたい、私の思いを直接伝えたいと考え、始めました。タウンホールミーティングでは、特に部署長、管理職レベルの人たちが会社について深く考えてくれていると感じました。また、若い管理職前の人たちも自分の会社や仕事について考えているのがわかり、頼もしく感じました。

滝沢:本当にたくさんの意見が出て、終わった後に「社長と話せることができてよかった」「他部署同士で会話できたことも良かった」という声が多く出ていました。初めは意見が出しづらい雰囲気もありましたが、事務局の皆さんがシュークリームやお茶を用意するなど、会話しやすい状況を作ったところもポイントでした。また、出た意見をエクセルで一覧にまとめ、戦略会議の中で皆さんが回答を考えられているのが素晴らしいと感じています。
今後の取り組み
滝沢:最後に今後に向けての意気込みをお聞かせください。
中楯:働き方改革の取り組みは簡単に終わるものではなく、継続していくことが重要です。最終的には自分たちの力で継続できる仕組みを作り上げていきたいと考えています。そのためにも経営層の意識の継続が大切であり、そういう考えを役員・経営層全員に認識させてくださった御社には本当に感謝しています。
滝沢:今回ご一緒する中で、経営陣が行動で示すことが従業員に対して本気度を伝える上で重要であると確信しました。日本ファブテックさんでは経営陣の本気度が伝わっているかどうかを定期的にアンケートしており、2024年年11月時点では65%、25年4月に67%、11月には81%まで上がっています。まさに経営の皆様の努力のおかげです。本日はありがとうございました。
働き方改革に関する最新トレンド
(株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵)
なぜ「時間外割増率」がポイントなのか
2025年2月、朝日新聞に私の記事が掲載されました(「長時間労働解消なくして 子育てしやすい社会なし」)。日本の少子化解消、経済発展に関して、企業で働く人が時間外労働をしたとき何倍払わなければいけないかという時間外割増率が非常に大きなポイントになっているという記事です。
「均衡割増賃金率」という概念をご存知でしょうか。新たな仕事が発生したときに、今いる人に残業させた方が安くなるのか、新たな人を短時間でも雇用した方が安くなるのか。これが均衡するところが時間外割増率1.5です。時間外割増率が1.5以上であれば、経営者は新たな人を短時間で雇用することにインセンティブがあり、日本のように時間外割増率が1. 25だと、人材を少なめに雇って残業でバッファーを取ることにインセンティブがあります。
日本以外の先進国では、時間外割増率がすべて1.5以上であり、日本だけが1.25です。株主に最大の利益を出そうとするとブラック経営になってしまう構造があります。
高知県庁の新たなチャレンジ
記事の中で時間外割増率を変えないといけないと解説したところ、高知県の濱田省司知事からお問い合わせがあり、「高知県の県庁内の時間外割増賃金率を1.5倍にします」と宣言いただきました。議会の承認を経て、2026年4月から高知県庁内は時間外割増率が1.5倍になります。県民の税金負担増を防ぐため、残業を6分の5に減らすことを決め、わが社と協定を結び、短時間で成果を上げていくことになりました。
さらに高知県庁では、短時間勤務正職員の採用を打ち出しました。今まで短時間の職員は「会計年度任用職員」という不安定な雇用のもとにありましたが、正職員と同じくボーナスの対象にもなり、1週間当たり10時間を無給で休める、週30時間労働ができる新しい雇用を始めるという画期的な取り組みです。
時間の短い人たちが当たり前に活躍できるような仕事の仕方をすれば、日本はまだまだ伸びしろがあります。こうした考えを制度面に落とし込んだのが高知県であり、私どもは全力で支援しています。
日本は2070年まで労働力人口を維持できる
厚生労働省の資料によると、70歳まで当たり前に無理なく働ける職場に変えていくと、実は2070年まで日本の労働力率が変わらないことが示されています。つまり、次世代に重い負担をかけず、しっかり社会を支える側を確保し続けることができます。
私たちがクライアント企業の方たちに聞くと、「60代になって週5フルタイムは厳しい。週1で孫も預かりたいし、船の旅にも行きたい」といった方が多いのですが、誰もが休むことが前提の職場にしたら、旅行や孫との時間を作ることができます。年齢が高くなっても勤労意欲が高いのは日本だけであり、無理なく働き続ける職場にすることが日本の勝ち筋といえます。
「もっと働きたい人が稼げるように」という政策の間違い
図をご覧ください。収入7と7の夫婦が働けば7+7=14の収入になり、子ども2人を持つ生活が成り立ちます。ところが今起きているのは、自社の男性社員だけを見て「プラス3ぶんの労働を乗せよう」という議論です。3の労働を乗せられた夫の妻は、育児家事を全部やらなければならず、仕事を辞めざるを得なくなり、夫婦の収入は10+0=10と減ってしまいます。この差額の4は、1人の女性の生涯賃金に直すと2億円違います。

政府は「時間外も辞さないで働く人の気持ちに応えたい」などと言うのですが、それは1つの家庭において2億円を失うことを意味します。日本は女性の数×2億円分のGDPを増やせる可能性を持っています。2万円の一時給付金やおこめ券よりも、自力で2億円稼げる働き方に変えるほうがはるかに価値が大きいのです。
男性に3の労働を乗せると未来にも禍根を残します。家事育児を一手に引き受けた妻は、「もう第一子でこりごり」となるので2人目を産みません。そうすると現在と未来の労働力は2人(夫と子ども1人)になります。本来、夫婦2人で働き、子どもを2人持つことができれば合計で4人だったはずです。人口減の国が再浮上していくためには、現在の労働力確保と未来の労働力確保が不可欠であり、現在と未来の労働力を失う浅はかな政策をやってはなりません。
今、経団連も同友会も「働きたい人は働かせてもいいのでは」という主張を提言しています。しかし、責任ある経営者として「それは視野が狭いよ。この国を引き上げていくために、経済団体こそ働き方改革を加速させていくべきではないですか」ということをぜひご発言ください。
短時間正社員の採用が出生率向上につながる理由
フランスの出生率は1997年と2000年に跳ね上がっており、それらの年に行ったのが「ロビアン法」と「オブリ法」という法改正です。どちらも労働時間の短い人を雇用した企業に社会保険料の削減をする優遇策です。つまり、短時間正社員の採用を国が推奨していくことにより、時間当たり生産性が非常に高い人たちで仕事していくことを促進しているのです。
私たちの会社が創業以来20年間残業ゼロ、有給消化100%で増収増益を達成しているのは、時間当たりにかける熱意が高いからです。そして約10年前からAIを使っています。1時間かかっていた仕事が10分になった、1分になったなど、ドラスティックなイノベーションが起きますので、ぜひ取り組んでいただければと思います。
全ての国民のための時間と健康と命のために可処分時間改善法 パッケージ
今、全ての国民の健康と命のために私たちが提言しているのは「勤務間インターバル」の義務化です。勤務と勤務の間に7時間の睡眠と前後1時間ずつの通勤時間、前後1時間ずつの食事や睡眠などを足した11時間を空ける勤務間インターバルが重要であり、日本以外の先進国は全て義務化しています。複雑化した仕事をいかに倫理観高くやるかという時代において、倫理観と集中力を担保するのが睡眠です。経営戦略として睡眠を確保できていない状況は非常にもったいないといえます。

また、時間外割増率1.5倍の実現も求められます。そして、過労死ラインが80時間であるにもかかわらず、単月100時間までできるのは上限が高すぎます。単月でも70時間までにすることを提言しています。
「日本でなぜホワイトカラーエグゼンプションができないのか、他国のエリートはもっと長時間労働をしている」と言われます。もちろんそういった枠はあってもよいと思います。ドイツやフランスでも3%程度はホワイトカラーエグゼンプションです。しかし、それが可能なのは97%の人に「勤務間インターバル」「時間外割増率1.5倍」「過労死ライン以下の時間外労働」を徹底しているからです。普通の仕事の仕方をする人が安全・安心に第2子、第3子まで育て上げられる環境を担保した上で、初めて一部の例外を認めるべきです。
現在進んでいる法改正の動きは、「時間外・休日労働の情報開示(残業時間の公表義務化」「テレワーク・フレックスの部分適用」「連続勤務は13日までにすること」「勤務間インターバル(原則11時間)の義務化」「つながらない権利」(在宅時や時間外には、携帯などに連絡がこないという権利)「有給の算定方式の原則化」です。ぜひこれらを進めていく意識を持っていただければと思います。
今急ぐべきは「勤務間インターバル導入」
「働いて働いて働いて…」という言葉が流行語大賞となりましたが、実は着々と法改正が進んでいます。今油断すると、この先の法改正についていけなくなります。 中でも急ぐべきは、勤務間インターバルの導入です。睡眠を守ると、日中の集中力向上、人間関係の向上による離職率の低下、うつ病の予防、脳・心臓疾患の減少、定年後の認知症のリスクが減少することがわかっています。また、インターバルを導入すると仕事の属人化を抱えている部署や人が明らかになります。属人化した仕事をきちんと権限委譲すると、誰が休んでも回る職場作りができ、BCPの対応にもなります。また出生率を上げる効果もあります。そして、若手が安心して就職できるので、中小企業の採用力向上・人手不足解消にもつながります。
長時間労働が可能な時間はたった15%
「若い人が長時間労働をしたがるのですが、どうしたらいいですか?」というご質問を受けることもあります。私は若い人向けの研修で自分の人生を俯瞰した図を見せているのですが、実は仕事人生の中で時間外がいくらでもできる時期はたった15%しかありませんでした。

若い方は大体30代でお子さんを持ち、男女ともに育児にコミットをします。子どもが小学校3年生ぐらいになると中学受験や不登校が始まる可能性があります。その対応を乗り越えた頃に親の介護が始まります。「若いうちに長時間労働をしてスキルを身に付けろ」などと言いますが、40年通用するスキルなどありません。時間外に学び続けるほうが重要であり、学ぶ時間を確保するためにも、最初から時間内で成果を出すスタイルを身につけていくことが重要です。時間外を前提としたスタイルを身につけた場合、残り85%の時期に思うように働けない自分に苦しみ、家族に対してネガティブな気持ちを持つようになります。
「こうなったのは家族のせいだ」と思うと、育児や介護がますますつらくなります。こうした状態にならないように、時間内で本気で仕事を終えるスタイルを確立すべきです。時間内で仕事を終えることで、キャリア離脱を回避し、生涯賃金2億が家計にもたらされることを教えていただけたらと思います。
若い人のために「真の課題」を解決すべき
若い方が「もっと働きたい」と発言しているとき、その背景に収入が足りないことがあります。この場合、目指すべきは基本給を上げる経営です。残業時間がしっかり見えると、毎月の固定費がわかるので、私どものコンサル先は10〜15%のベースアップを実現しています。
また、「成長したいから残業したい」と言う方がいますが、成長感に酔わせないことが大事です。睡眠を削って量をこなしていると疲労します。疲労すると成長したような気がしますが、必要なのはベテランが情報を共有し、早くから重要な仕事ができるようにしてあげることです。「評価されたいから残業しています」という心理が見え隠れすることもありますが、それは社内に長時間労働が評価される風土が残っていることを意味しています。そこを変えていくことが大事です。
私たちが今、ぜひご一緒したいこと
私どもが皆さんとご一緒したい1つ目が「真の働き方改革」です。従業員の残業を管理職に付け替えるのではなく、やらされ感もなく、職場が主体的に動く働き方改革です。そのためには、想像以上に役員の発言が鍵となります。ワーク・ライフバランス社は忖度せず、役員層に「あなた方はこう思われていますよ。現場ではこういったことが現実に起きていますよ」とお話しながら現場に伴走します。そこでパイプ役となって皆さんの組織の改革を進められればと思います。残業削減は通過点でしかなく、その先の業績、採用力、女性活躍の結果を一緒に出していければと思います。
2つ目は「多様な働き手の意欲を最大に引き出す環境整備」です。「いろいろな事情を抱えた方が増え、マネジメントが複雑化して大変」とおっしゃる方が多いですが、真の課題は職場全体の働き方や風土、知識が欠けていることです。今、産後の妻の死因1位は自殺です。女性が産後2時間おきの授乳をしながらたった1人で育児をしていると、産後うつがひどくなって最悪の場合自殺に至る。こうした知識があれば、「男性が1、2カ月育休を取るのは当たり前」というマネジメントができます。弊社ではオンラインのサブスク研修を提供していますので、知識・風土改革に使っていただければと思います。
3つ目は「社内外に信頼される経営の支援」です。私たちは各種の「宣言」を通じて社内外に発信するプラットフォームを用意しています。まずは「働き方改革加速宣言」で「働き方改革にぶれずに取り組みます」と意思表示をしていただければと思います。ほかに「介護離職ゼロ宣言」「男性育休100%宣言」「勤務間インターバル宣言」「女性の再就職応援宣言」「時間外割増賃金率1.5倍賛同宣言」があり、一緒にリリースできればと思います。お時間ありがとうございました。

