2026.07.22
開催レポート
オンラインイベント「在宅で!短時間で!業績を上げ続ける“持続可能なハードワーク”の最高峰から学ぶ
2026年6月8日、弊社は【無料オンラインセミナー】「在宅で!短時間で!業績を上げ続ける“持続可能なハードワーク”の最高峰から学ぶ」を開催し、1,000名を超えるご参加をいただきました。当日の内容をご紹介します。
目次
登壇者紹介
(登壇者)
サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久 氏
サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 恩田 志保 氏
(モデレーター)
株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室 淑恵
(司会)
株式会社ワーク・ライフバランス コンサルタント 田川拓麿
オープニングトーク株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵
◎「ハードワーク」のルールが真逆に変化
「ハードワーク」の概念は時代とともに変化していて、人口構造とシビアに結びついています。
日本は1960〜90年代に、高齢者に対して若者の数が多く、経済発展しやすい「人口ボーナス期」を経験しました。人口ボーナス期には男性が働き、長時間労働を行い、同じ条件の人をそろえることでスピーディな大量生産が実現し、経済発展ができました。
一方、少子高齢化で人口構造が負荷となる人口オーナス期の働き方は真逆です。労働力が足りなくなるので男女ともに働く必要があります。そして、育児や介護を抱える人だらけになるので短時間で働くことが重要です。さらに違う条件の人をそろえてフラットな議論を行い、イノベーションを起こせる組織だけが再浮上できます。
また、人口オーナス期には現在の労働力だけでなく、未来の労働力も確保しなければなりません。そのためにはワーキングペアレンツが2人以上の子どもを持てる社会環境・働き方にすることが重要です。そして、多様な人が意思決定層に残り、イノベーションを起こすための働き方改革を行う必要があります。
◎労働力人口は過去最多! 思考のハードワークに切り替えた企業が勝つ時代
今、人手不足が叫ばれていますが、実は現在の労働力人口は過去最多です。特に働き方改革関連法施行の年(2019年)に跳ね上がりました。これは、今まで労働市場に残れなかった育児中、介護中、残業、転勤不可の人材が労働市場に戻ったからです。逆にいえば、人材不足に悩む企業は「選ばれていない」ということです。

新たに労働市場に戻った人たちは、働き方を重視して職場を選びます。この労働力を活用できるのは働き方改革が進んだ職場だけであり、勝つためには体力的ハードワークから思考のハードワークに切り替える必要があります。
「持続可能なハードワーク」サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久 氏サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 恩田 志保 氏
◎サイボウズの働き方改革を振り返る
青野:私は3人の子を育てながらサイボウズの社長をしています。サイボウズは「チームワークあふれる社会を創る」というパーパスのもと、「1.理想への共感」「2.多様な個性を重視」「3.公明正大」「4.自主自律」「5.対話と議論」という5つの文化を大事にしています。
恩田:私がサイボウズで働き始めたのが、離職率が最も高かった2005年です。当時は長時間労働の中で多くの人が辞め、メンバーが疲弊し、雰囲気が悪くなっていました。そういった状況下で1人1人の働き方に向き合い始めました。

2005年の大量離職を受け、1人1人に話を聞き、「どうすればより多くの人がより長く、より成長して働いてくれるのか」を考えました。そこで最初に行ったのが、働く時間の選択肢を増やす施策です。
ワーク重視型のPS制度に加え、ライフ重視型のDS制度を導入。当時流行していたゲーム機の名称になぞらえ、「ゲーム機を選ぶように、本当に望む働き方を選んでほしい」というメッセージを込めました。当時は「長時間働くほうが偉い」という雰囲気もあり、そうではないことを強く伝えました。

◎テレワーク制度導入での気づき
恩田:その後、短時間勤務のメンバーから「帰宅後に家で働きたい」という希望が出ました。アウトソース先とグループウェアで業務を行えること、障害者雇用や育児介護の就業機会創出の可能性も踏まえ、テレワーク導入に踏み切りました。
当時、印象に残ったことが2つあります。1つは「制度を作るときに何を大切にすべきか」です。在宅勤務を提案した際、社内の不安を踏まえてルールを細かく定めたのですが、そのとき青野が「目的を明確にすれば、ルールは後からどうにでもなる。目的だけ明確にして始めてみましょう」と言いました。それ以降、制度を作る際は目的を明確にして伝えることを重視しています。
もう1つが、テレワークの議論を進める中で、「自分の業務は書類の取り扱いも多くてテレワークしづらい。業務によってテレワークしやすさに差があるのは不公平ではないか」との意見が出たときです。それに対して、当時の副社長が「在宅勤務を望む人が希望を実現できるように制度を作ることが大切です。あなたが在宅勤務をやりたくないのであれば、やれないことは問題ではないでしょう」と言いました。これも私たちの考え方のベースになっています。
私たちは1人1人のメンバーが何を望むかを聞き、100人100通りのマッチングを意識して制度を整えてきました。私たちが作りたい社会に共感し、一緒に実現したいと思ってくれるメンバーに、どうすれば自分自身の幸福と両立しながら貢献してもらえるかを探究していきたいと考えています。
◎働き方を変えようと思った原点
小室:先進的なサイボウズにもひどい時代があったとのことですが、改めて働き方改革を始める前の状況を振り返っていただければと思います。
恩田:私が入社した頃は多くのメンバーが疲弊していて社内の雰囲気が悪く、隣同士の部署が悪口を言い合うこともありました。朝、会議室を開けると、ソファーで寝ている人がいるのも珍しくありませんでした。「私の有給はあと何日残っていますか?」という問い合わせを受け、「この人は辞めるかもしれない」と推測し、離職を踏みとどまらせようとしたこともあります。
青野:当時は週末になると部署の人が集まり、辞める人に花束を渡す光景が日常茶飯事でした。社内に「次は誰が辞めるのかな?」「自分は残っていいのかな?」という空気が広がっていたのを覚えています。
次々と辞めるので、絶えず人を補充する必要があります。採用広告をたくさん出し、面接に時間を取られ、入社した人を教育しても半年くらいで離職する…の悪循環が続いていました。「辞めさせないためにどうすればいいか」という課題意識が働き方改革の原点です。

◎徹底的な個別対話を実施
小室:まさかサイボウズ社にもそんな時代があったなんて、今日聞いていらっしゃる 1000社の皆さんはさぞかしほっとしています(笑)。まだ希望がある!って。その後、働き方改革に取り組んでから業績が跳ね上がり、離職率が下がっています。この間、どんなことが起きていたのでしょうか。
青野:短時間勤務で働きたい人には「短時間でいいですよ」、在宅勤務したい人には「できる方法を探しましょう」といった具合に、個別に対話をしてできることから取り組みました。
私が全員と対話するのは難しいので、当時の副社長や恩田さんに対話してもらい、そこで出た情報を経営で共有し、改善につなげました。それを繰り返すうちに「自分の意見で会社を動かせる」という成功体験が生まれ、事業においてもメンバーからいろいろな提案が出るようになりました。その中の1つがクラウドへの転換であり、キントーンを含めた新しいサービスが出てきました。
ですから、働き方の多様化はボトムアップ型の文化に変えていくことであり、それが働きやすさだけではなく、働きがいや幸福感・チャレンジにつながり、最終的には業績にもつながると思います。
恩田:対話にあたっては、材料作りも意識しました。例えば制度一覧を作り、そこに全てコンセプトを書いています。メンバーから「こんな制度を作ってほしい」「この制度を変えてほしい」と提案されたときに、制度のコンセプトを伝えた上で、コンセプトを実現するために提案をどう活かせるかを対話しています。
青野:サイボウズでは対話に相当な時間を割いており、その時間をコストではなく投資と捉えています。きちんと時間かけて対話をすれば、モチベーションが上がり、主体的に動いてくれると信じているからです。対話に時間をかけたくないと思うと、メンバーに「適当に終わらせようとしているな」と気づかれます。徹底的に向き合う姿勢を示すことが大事です。
◎健康維持・増進の施策を導入
小室:最新の働き方改革の取り組みを教えてください。
恩田:「すこやかマイル制度」を導入しました。1人5000円までを対象となるスマイルアクションに利用できる健康関連の施策です。この制度が健康維持・増進に必要なアクションを取るきっかけとなり、個人の健康増進とプレゼンティーズム/アブセンティーイズム改善により、チームの生産性の向上とメンバーの幸福につなげるというコンセプトを掲げています。

私たちは「チームワークの土台を支えるのが健康である」という前提のもと、メンバーには健康になることの意味に向き合ってもらいたいと考えています。そのため、制度を利用する際に、「なりたい姿」を書いてもらっています。制度はただあるものを使うのではなく、目的を理解して使ってもらいたいと思いながら取り組んでいます。
◎短時間で勝てる技を見つけることが重要
小室:「残業や転勤などハードな経験をしないと人は成長しない。短時間で働くことはハードではない」という考え方について、どう思われますか。
青野:確かに、世の中にはやればやるほど上達することはあるので、それは時間かけて上達すればいいと思います。一方で、時間をかけなくても身につく方法があるなら、その方法を選んだ会社が勝つのは当然です。今はさまざまな道具も進化しているので、これまで以上に短期間で上達する技を編み出す必要があります。そこの努力不足がありませんか?と問いかけたいです。
恩田:私たちは個人が理想に向かって変化すること=成長と考えています。経営者やマネージャーがやらせたいと思うことについて、本人が共感してやりたいと思えたら成長につながるでしょうが、そうでないことを強要しても結局は成長につながらないと思います。
◎出社回帰の前に考えたいこと
小室:現在は出社しない人とのコミュニケーションに難しさを感じ、出社回帰する企業が多いと聞きます。この問題について、サイボウズではどうクリアされているのでしょうか。
恩田:今、出社率は2割程度です。私たちはグループウェアの会社でもあるので、時々は集まりつつ、オンラインでコミュニケーションを補いながら業務を継続しています。新人が入ってきたときにランチに補助が出る「ウェルカムランチ制度」や、オンボーディングのときに出社のタイミングを作るなど、いくつかの仕掛けを用意しています。
出社回帰の選択肢があってもいいですが、決めるときには1人1人がどう思っているのか、それによって何を実現するかを対話する必要があると思います。
青野:出社・リモートはいずれも手段であり、1つの手段しか使えない人より、時と場合に応じて使い分けられる人のほうが効率的に働けるはずです。あくまでも目的から考えて手段を選択することが大事です。
小室:私たちの会社も社員の4割は移住していて、毎日離れた場所で仕事をしています。新人が入社したときだけ2週間の「出社ウィーク」を設け、一堂に集まる機会を作っています。イベント感覚で楽しみながらコミュニケーションを活性化させる仕組みになっています。部署によっても仕事の内容が違うのに、一律に出社回帰するのは非常にもったいないと感じます。

【質疑応答】
◎質問①「働きたい人が働けない問題」への考え方
小室:一つ目のご質問をいただきました。「ワーク・ライフバランスが整った会社では、働きたい人が働けない」という風に言われることがあります。サイボウズでは、どのように対応されていますか。
青野:働きたい人はガツガツ働いてもらえばいいと思います。ただ、私たちは長時間労働をすると給料が上がる仕組みではなく、スキルを身につけて実績を出した人の給料が上がる仕組みにしています。社員は別に長時間働きたいわけではなく、できるビジネスパーソンになりたいと考えているので、それを支援していけばいいと思います。
小室:ご質問いただいた企業の評価や報酬・成長が時間と結びつく仕組みになっているということですよね。これでは本人が育児や介護で時間制約を持った瞬間にもうそれ以上成長できないことになります。サイボウズでは、時間に関係なく成長できて稼げる仕組みにしているわけですね。
青野:中根弓佳(サイボウズ株式会社 執行役員 チームワークあふれるまちづくり室長)が出産を経て短時間勤務になったとき、パフォーマンスは落ちていなかったのに、「短時間だから」という理由だけで給料を下げてしまいました。今にして思うと失敗であり、悔しい意思決定です。それを機に「長時間働く人が偉い」という文化を変えました。
小室:弊社は創業時から全員残業ゼロ、有給消化100%ですが、創業から10数年にわたってトップの成果を出してきたのは短時間勤務の女性です。社員が時間と無関係に成果を出せるようになると無敵ですよね。
◎質問②評価軸の作り方
小室:次のご質問です。「営業等の仕事では、お客様と多く接点を持てたほうが成績が出やすい傾向があります。短時間勤務でも成果を出せばいいとなると、結局は短時間勤務者の努力次第になり、当事者が苦しくなる気がします。何か良い手があるでしょうか。」
青野:サイボウズで働き方の多様化が一番遅れたのが「営業部門」でした。というのも営業は自分が見つけたお客さんを自分でクローズまで持っていきたい。そのため個人戦になり、長時間労働派が勝つ構図になっていました。そこからチーム戦に変え、1人のお客さんをチームで見るようにしたところ、ぐっと生産性が上がりました。ですから、まずチームとして生産性を上げることを考え、その中で誰が活躍したかを評価するプロセスが重要だと思います。
小室:本当にそれですね。個人戦の働き方をすると、本当は他社と競わなければいけないのに、チーム内のメンバーと競っている感覚になってしまいます。私たちの会社も全員チーム戦で仕事をしており、「チーム全体の生産性にどれだけ寄与する情報共有や育成をしたか」が重要な評価軸となっています。ご質問いただいたかたの会社にそういった評価軸が入ると、チーム全体の生産性向上に向けて正しく取り組めるようになります。
◎質問③対話をするときのポイント
田川:次の質問は「対話で大事にしていたこと、後ろ向きなメンバーに対する接し方の工夫について教えていただければ」ということです。
恩田:私たちは「質問責任」という言葉を使っています。説明すべき人には説明する責任があるのと同じように、質問する責任が全員にあるという考え方です。また、経営会議の議題・議事録を公開し、そこに全社員が助言できるようになっており、助言に向き合う様子を見てもらう積み重ねを通じて対話の文化を作ってきました。
青野:質問責任と説明責任だけでスムーズな対話が実現するわけではありません。ただ、土壌作りとして、まずは言うべきことを言うことを明文化することが肝心です。
◎質問④チームで評価するための仕組み
田川:チームで評価することについて、どのように工夫されているのでしょうか。
恩田:ポイントとなるのは給与評価であり、チームへの貢献度をマネージャーが評価して決定しています。一定のレベル感を言語化していますが、最終的には対話で個別に決めていく形であり、マネージャーの対話のスキルが求められます。
青野:マネージャーと本人だけの関係にすると、マネージャーの当たり外れがあると受け取られてしまいます。そこで、サイボウズではマネージャーをチームにして、各本部の本部長が、お互いの部の評価を相互にチェックしたり、アドバイスを交換しながら評価を進めています。学校でいうとクラス担任制にせず、チームで連携しながら受け持つイメージです。
持続可能なハードワークのポイント 小室淑恵
最後に私から、持続可能なハードワークを実現する上でのポイントを整理しておこうと思います。
◎「お互い様職場」を作ることの意味
残業ができる特定の数人に頼る、体力的ハードワークで支える職場は、日本全国で限界を迎えています。なぜなら、若年層の人口が減っていくからです。しかも、「子持ちの人が休んでいるせいで、自分はギリギリまで働かされている」と恨めしく思う【ギリギリ職場】となり、子持ち対それ以外の分断が生まれます。

一方で、育児中、介護中、残業・転勤不可といった人材は本格的な仕事を受け持てずにいます。そういった人たちに情報を共有すれば、仕事のパス回しで成果を上げられるようになります。誰もが休むことが前提になり、お互いに助け合う【お互い様職場】になります。
ギリギリ職場では残業代が読めず、ベースアップ・デジタル投資も後回しになります。一方、お互い様職場では残業代のコストが浮くのでベースアップができ、短時間で働いているのに給料が増えます。条件がいいので、いい人材を獲得できるようにもなります。
日本の人口を見ると、2070年には労働力人口比率が約10%下げることがわかっています。しかし、70歳までの人が無理なく健康に働ける職場を作れば、2070年まで現在と同じ労働力人口比率を維持できます。支える側と支えられる側のバランスをキープしながら2070年までソフトランディングできます。

◎思考のハードワークを支える鍵、睡眠
思考のハードワークを支える鍵は睡眠にあります。
集中力は朝起きてたった13時間しか持ちません。6時に起きた人が19時以降に仕事をすれば、酒酔い運転と同じ集中力となります。また、人の睡眠は前半6時間目までに体力を回復させ、ラスト1時間で脳のストレスを解消することがわかっています。睡眠不足は怒りの発生源である扁桃体を活性化させ、パワハラ・セクハラ・不祥事等のモラル崩壊の引き金になります。
睡眠不足の上司ほど部下に侮辱的な言葉を使うことも明らかになっています。睡眠不足の上司が日常的に虐待行動を取ることにより、部下のワーク・エンゲージメントが低下し、部下の離職でさらに仕事が増える悪循環が進みます。
カリフォルニア大・ウォーカー氏の研究によると、睡眠が少なくなった人の脳では他者を助ける機能が下がります。アメリカではサマータイムが始まる週に睡眠が1時間短くなり、この週の寄付額が1割減ることがわかっています。
慶應義塾大学の山本教授が700社の上場企業を調査したところ、睡眠が長い企業ほど利益率(ROS)が高く、2年後もその傾向が続いていることが示されました。また、平均睡眠時間と1人あたりGDPの相関を示す国際比較を見ると、よく寝る国のほうが稼いでいます。単純にグラフに当てはめると、日本が睡眠時間を1時間増やせばGDPが倍増することになります。
◎働きがいは夫婦合算の人生幸福度と報酬
今、働きがいは夫婦合算の人生幸福度と報酬で考える時代へと変化しています。
産後の妻の死因の1位は自殺です。7時間睡眠が取れないと、産後のホルモンバランスの崩れが回復しません。また、妻が1人で育児をするようになってから児童虐待の件数が伸びています。つまり、妻と子2人分の命を救うのが男性育休です。
子どもが生まれる前、夫に向いていた妻の愛情は、出産直後に100:0で子どもに向かい、その後回復する群と低迷する群に2極化します。回復するかどうかは、産後の育児参画の度合いに関係しています。ですから、男性の育児休業は産後すぐに一度取ることが重要です。しかも、産後うつ改善のためには1か月以上取ることが求められます。
出産後の1年に夫婦の愛情度が開く場合、20%の差がその後一生埋まらないことがわかっています。この時期は取り戻せない大事な時期であり、育休取得に迷ってはいけないということです。
◎男は若いうちにもっと働け、の落とし穴
今、年配の男性経営者が、若い男性に向かって「長時間働けたほうが幸せだ」と発言することがあります。しかし、日本では男女ともに同じ仕事ができる能力があります。男女が7ずつ働けば収入は7+7=14。一方、男性に3の残業を乗せると、妻が一手に育児家事を負担して仕事を失い、収入は10+0=10となります。この減少した4は、約2億円に相当します。夫婦が家事育児を協力できる働き方になれば、自力で2億稼ぐことができます。

また、たった1人での育児を体験した妻は、2人目の子どもを持つことを断念します。この場合、現在と未来の労働力は合計2人にとどまります。一方、夫婦で育児家事を協力して2人の子を持つと、現在と未来の労働力は合計4人となります。つまり「男性は若いうちにもっと働け」というのは、現在と未来の労働力を半減させ、日本経済を衰退させる浅はかな政策といえます。
◎「仕事をやりきる」の概念は個人単位から職場単位へ
「仕事をやりきる」というとき、個人単位で考えるケースが多いですが、職場単位で考えることが重要です。全員で時間内に成果を上げるためには情報共有が不可欠です。
グループウェアなどをうまく使い、全員の仕事を見える化・共有化できると、チーム内で助け合いながら成果を出せるようになります。私たちは「カエル会議」という手法を通じて成果を出せるチーム作りを行っています。ぜひ、心理的安全性高く職場の課題を出し合えるツールを上手に使っていただきたいと思います。
◎「長時間労働をしてでも成長したい」若手に伝えたいこと
最後に、「長時間労働をしてでも成長したい」という若手に対する答えを授けておきましょう。
私は31歳で出産し、時間制約付きになりました。その後は不妊治療や親族の介護、子どもの大病、夫の転勤に伴う海外生活などが重なり、ビジネスパーソン人生のうちで長時間労働できた期間はたった15%です。
私だけが特殊ではなく、今は小学校中学年から不登校や受験を経験する家庭が増えています。また、育児中に親の介護が始まるケースも珍しくありません。そうなると「若い頃に長時間労働してでも一気にスキルを身につけろ」というアドバイスが疑わしく感じられます。
そもそも頻繁に新しいAIが登場する時代に、40年通用するスキルはほとんどありません。キャリア初期の15%の時期に長時間労働で成果を出すスタイルを身に付けると、その後85%の期間は不本意な働き方が続くことになります。
若い人のためを思うのであれば「もっと働きたい」という発言の奥にある真の課題を解決すべきです。「収入が足りない」ことを課題にしている場合は基本給を上げるべきであり、生活残業を奨励するのは間違っています。
また、「成長したい」という気持ちから「働きたい」と訴えるケースがあります。この場合、睡眠を削って疲弊したことで成長感に酔わせるのは不誠実です。重要なのは、若手を育成すべき立場にある人が、きちんと日中に育成の時間を作ることです。
若手が「時間が短くなったことで評価されない」という不安を抱えている場合は、社内に長時間労働が評価される風土が残っており、個を見て評価していない可能性があります。若手を個別に見る時間を増やし、長時間労働が評価される風土がないことを伝えていく必要があります。
ぜひ本日の資料を活用し、持続可能なハードワークへの構造転換を加速させていただければと思います。
◎まとめ
小室:最後に恩田さんと青野さんから一言ずつお願いします。
青野:「サイボウズはIT企業だし、やりやすい」と思われるかもしれませんが、昨年はプロバスケットボールチームが子会社化し、DXや働き方改革に取り組んでいます。「IT企業でなくてもこんな工夫ができる」ということをお見せできればと思いますので、ぜひ皆さん一緒にチャレンジしましょう。
恩田:2005年から取り組んでいますが、今も改善するところがたくさんあり、毎年少しずつアップデートしています。まだまだ皆さんからも学びながら改善していきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。
小室:ぜひ働き方改革加速の2026年にしていきたいと思います。本日はありがとうございました。
📌 これまでの「“がむしゃら”から“戦略的情熱”へ。成果を出し続ける秘訣・持続可能なハードワークとは?」イベント
第1弾
もう睡眠不足自慢は終わり!20〜30代必見「燃え尽きない働き方」シンポジウム
(TAZ Inc. 代表取締役社長・ジーンクエスト取締役ファウンダー 高橋祥子 氏、株式会社Cradle執行役員CRO 留目広志 氏 登壇!)
第2弾
情熱を知で磨き、組織を進化させる―歴史の構造からみる、戦略的ハードワーク時代を生き抜く視点を学ぶ(株式会社COTEN代表取締役CEO 深井龍之介 氏、株式会社 Public Shaper Networks 代表取締役 CEO 好本 洋 氏・取締役COO 森山貴章 氏 登壇!)

