Case Study

個人から学ぶ成功事例

「任せる」「見守る」コミュニケーションを大切にしながら
自分たちの“ありたい姿”を、楽しみつつ実現しています。

—— 株式会社シップス 商品管理部 今村祐介さん

株式会社シップスへのコンサルティングがスタートしたのは2016年。以来、画期的な取り組みを続けておられます。店長研修で大きな成果が出たことはこちらの記事でも紹介していますが、今回ご登場いただくのはアパレル業務における物流部門を担当する商品管理部の今村祐介さん。キックオフ当初は課長職、そして現在は副部長として、4名の主任と協力しながら、パートも含む多数の人材をマネジメントしています。スタッフ同士の良好な関係性がひと目で伝わってくる「シップスコントロールセンター」(豊洲)にて、主任のおふたりにも加わっていただきながら、今村さんご自身や周囲の変化について取材しました。


株式会社シップス 商品管理部 副部長の今村祐介さん。弊社の担当コンサルタントを代表して、松尾羽衣子がお話を伺います。

シップスの物流システムを
一から構築する役目を担って

今村さんは22歳のときにシップスでアルバイトを始め、以来17年間「物流」ひと筋。届いた商品にタグをつけたり、各店舗への商品を振り分けたり、ECサイトのお客様に発送したり、不良品やお直しで店舗から戻った商品を管理したりと、業務内容は多岐に渡ります。

「バイトを始めた当時は、いずれ友人たちと3人で服飾のお店を開業するつもりでした。裏方タイプの僕は物流を学ぼうと考えたわけですが、結局3人ともそれぞれの仕事が面白くなって開業の話は自然消滅し、今に至ります」という今村さんに、まずは“改革以前の働き方”を振り返っていただきました。

シップスはかつて自社で物流を管理していたそうですが、今村さんが入社した当時は一部をのぞいて基本的にアウトソーシング。その後、「完全に自社化する」という流れになったとき、上司とともにしくみ作りを担ったのが若き今村さんです。

「当時はアナログ全盛で、たとえば仕分けも紙を見ながらが当たり前でした。多くの方からアドバイスをいただいて、効率化するために必要な投資を会社が認めてくれました。大変さはもちろんありましたが、自分で作りだす面白さをものすごく感じましたね」


プライベートでは4歳の男の子のパパ。「妻が土日に仕事をしているときはふたりっきりで楽しく遊んでいます」

新しいシステムの立ち上げには何かと苦労が伴うものですが、とくに当時は“働き方改革”の概念すら一般的でなかった時代。「僕もまだ独身でしたし、深夜残業も楽しい、という感じで。そういう時代でしたよね。今の若いスタッフのほうが、“仕事を効率的に終えて早く帰ることの大切さ”を知っているような気がします」

パートを含め100人あまりが
勤務する「物流現場」での働き方改革

そんな今村さんが働き方改革の一翼を担うことになったのは、物流管理課の課長だった2018年5月のこと。

弊社代表・小室の講演なども耳にし、「やらなきゃいけないと感じていたし、他部署ですでに取り組んでいるのも知っていました。時間に追われがちな業務環境でどういうことができるのか、何が変わっていくのか、楽しみでした」と振り返ります。

「通常業務をストップさせることはできないので、“カエル会議”に毎回全員で集まったり、多くの時間をかけたりはできません。でも、ともかくやってみようと全体を担当ごとのチームにわけ、それぞれの現場で主任がリーダーになって“カエル会議”を実施。可能な範囲で無理なく行うようにしたおかげで、この会議は今でも続いています」

ちなみに、現場のみなさんで行っていただく日常的な“カエル会議”に加え、弊社のコンサルタントが参加する「定例会」もあります。通常の定例会は「1チーム+コンサルタント2名」といった規模ですが、シップスの働き方改革3期目には、「12チーム+コンサルタント4名」という大規模な定例会を開催。他部署も含めて総勢80名ほどが集まり、成果や反省点、今後の展望をシェアしていただきました。

今村さんの下には主任を務める4人以下、パートも含めて100人ほどのスタッフがいます。「主任たちはみんな、通常業務は完璧にまわしています。今回の取り組みはそういった業務とは全く別の内容ですが、僕は“できるだけ会議に出てもらってね”という話だけして、基本的には主任をはじめとする各チームのリーダーに任せました」と今村さん。

じつはこの「任せる」という行為が、今回の取り組みにおいてひとつの大きなポイントになっていくのです。


主任のひとり、佐藤啓史さん。今回の取り組みを経て、「以前なら話す順序やタイミングを気にしないと話せなかったようなちょっと複雑そうなこと、たとえば部署間の連携などについても、他部署と普通にやりとりするようになりました。なぜこれをやるのか?という目的が明確になると発言しやすいし、実行にも移しやすいと感じています」

業務を抱え込まず、
「任せる」ことの重要性

業務の経験を積めば積むほど、「自分でやったほうが早いから」「○○さんは忙しそうだから自分でやろう」といった理由で、自分以外の誰かに「任せる」ことが難しくなるケースは少なくありません。

今村さんも、今でこそ「誰かひとりに仕事が集中したり、業務が属人化したりしないよう、みんなで分担すべき」と考え、実行していますが、「以前はほとんどの通常業務は主任に任せていたものの、最後の最後に“あとは自分がやるね”と無意識に言ってしまっていました」といいます。

弊社コンサルタントとの面談でも「人に仕事を任せて自分は別の仕事をする必要があるが、うまくできていない」という課題をご相談いただいていたため、「単に仕事を振り分けるだけでなく、主任への“期待”をしっかりと伝えてみては?」などのアドバイスをし、関係性の質を高めながらの改善を試みていただきました。

「御社のみなさんにご相談しながら働き方改革に取り組む中で、“ひとつの業務を最初から最後まで丸ごと任せてなかったな”“経験や成功体験を奪っちゃっていたのかも”と反省しました。現場をまわしてもらうことはもちろん重要ですが、そこだけに特化してしまってマネジメントの部分を任せなかったら、次のリーダーも育ちませんよね。以来、他社との折衝だとか、大切な部分も任せるように心がけています」

元来が忙しい主任たちにマネジメント面も担ってもらうには、主任が抱えていた仕事を別のスタッフに任せる必要があります。今村さんが「任せよう」と決意して行動し、ご自身の期待感なども伝えたことで、主任たちにも同様の変化が出てきました。


主任の朝妻真一さん(写真中央)いわく「若い子は自己主張が苦手なので、コミュニケーション不足を感じていました。“カエル会議”で付箋を使って意見を出し合えたのでみんなの考えがわかり、とても良かったなと。社歴の長い人が先に発言するとそれで終わってしまうし、自分自身も指示をすぐ出したくなるのをガマンして、“意見を聞く”大切さを学びました。各自のキャラを活かして、“ここは○○に言ってもらったほうが下の子が聞いてくれるかな”とか、それぞれの立場でうまく関われるようにもなりましたね」

たとえば朝妻さんは「指示を出すのをガマンするようになった」こと以外にも自分が変化したのを感じています。

「今村からは“現場では手を出さず、見守って”と言われています。つい手伝いたくなる性分なのですが、グッとガマン(笑)。松尾さんからも“それでは下が育たないので、正解が見えていてもガマンして、どうやるかを見てあげては? 若い人ならではの新しいアイデアが出てくるかも”とアドバイスをいただきました。仕事を任せるのって、なかなか難しいですよね。でも、僕も今村から仕事をふられた分、誰かに任せないと物理的にまわらなくなりますし。現場に入ると自分の主観だけで動けちゃいますが、業務を割り振って現場を客観視すると、“この子はこういう仕事に向いていそう”“この作業はこうやればもっとうまくいくかも”と気づくことも増えますよね」

物静かな今村さんが
「空気をぱっと変えた」エピソード

今村さん自身はどのようにしてマネジメントを学んだのでしょうか。

「入社当時は近い世代の先輩がいなくて。ひとまわり以上年上の高橋(現 本部長)が当時からずっと直属の上司です。どこへ行くにも同行して、いろいろなことを経験させてもらいました。状況的に“僕しかいなかった”わけですが(笑)、おかげで自然とマネジメントを学ばせてもらっていたんですよね。自分がいずれはリーダーになるんだと自覚が持てる環境だったと思います」

物腰がやわらかく、丁寧で、照れ屋な印象の今村さん。今回のインタビューも、まわりに推される形でご登場いただいたのですが、そんな物静かな今村さんが周囲をあっと驚かせたエピソードがあります。

それは、物流スタッフ80数名に加えて、ショップの店長、役員などが顔を揃えた働き方改革の「最終報告会」でのこと。店舗と物流の連携などを進めていた今村さんに、そのテーマでの発表を急きょお願いしたところ、「せっかくなので、ちょっと違うことも話していいですか?」という申し出があり、「今後シップスコントロールセンターをどうしたいか」を話してくださったのです。

この自発的な発表に、弊社コンサルタントもシップスのみなさんも大いに刺激を受けました。入社当時から今村さんを知っている人事部からは「彼は普段そういうことをしないキャラクターなので、“今村くんが自分から意気揚々と話してるよっ!”“すっごいリーダーっぽい!”とみんな感動しましたし、あの場の空気が明らかに変わりましたよね」という声が聞かれました。

主任と一緒に考えた“ありたい姿”、
「SCCを楽しく!」とは?

「もともと、別の会合で上長から“3月までに目標を立てておいて”と言われていて、ちょうど僕たちの“ありたい姿”を考えていたんです。あの報告会で“他部署連携の話をしてください”と当日に言われたので、どうせなら一緒に発表しようと。タイミング的にも今かなと思ったんです」

このとき今村さんが発表した“ありたい姿”は、「SCCを楽しく!」というもの。

「物流で重要な要素をSCC(シップスコントロールセンター)にかけて、『S=スピーディ(速く)・C=コレクトリー(正確に)・C=コストセービング(安く)』という3つで表現し、それを楽しく突き詰めよう!という話をしました。速さと正確さは物流の現場で各店舗をサポートする立場として絶対に必要なものですが、日々の業務の中でコスト意識というのはなかなか持ちづらい。でも、物流をいかに安く整備するかは利益に直結するので、そこも意識しようと」

この「SCCを楽しく!」は、主任たちも一緒に考えたそう。「吉野屋の“うまい、やすい、はやい!”みたいな、わかりやすくて覚えやすいのがいいな、と。同時に、楽しくないとダメだよね、というのもあって。社内に英語の得意な先輩がいるので、どの単語がふさわしいかを相談して、SCCを決めたんです」

年齢も立場も違うスタッフ全員の
ワーク・ライフバランス

シップスコントロールセンターは社員とパートが入り交じり、年齢層も10代から50代と幅広いため、業務への意識や関わり方は人によって違います。「それこそ骨を埋める覚悟で会社の利益を本気で考える人もいれば、体を動かしたい!とエクササイズ感覚で来てくださる方も(笑)。そういう違いがあるのは当然なので、全員が同じ意識で働くのは難しいと思っています」と今村さんは分析します。

その分、個々の適性を見ながら仕事を割り振ることは必須で、ある程度のキャリアや年齢になればマネジメントも付き物になってきます。働き方改革を進める中で、今村さん自身がマネジメントについてより考えるようになり、それが主任にも、さらにその下のスタッフにも伝わって、パートタイムも含めた全スタッフにとっての「働きやすい環境」が整っていくのです。


写真を撮られるのは苦手、という今村さん。今回の撮影は朝妻さんと佐藤さんが一緒だったので、「ひとりじゃなくてよかったと思ってるよ、ホントに」とおふたりに向けてつぶやいていたのがみなさんの仲の良さを感じさせ、印象的でした。

「息子と遊ぶのが大好きです。業務が終われば、今はとにかく家族が優先」と笑顔で語ってくださった今村さんを中心に、みなさんのワーク・ライフバランスがこれから先もどんどん充実していくことでしょう。弊社コンサルタントもシップスのみなさんに併走しながら、改革をますます進めていきたいと思っています。

担当コンサルタント

田村優実
松尾羽衣子
永田瑠奈
大西友美子

撮影/SHIge KIDOUE
文/山根かおり