Case Study

社会を変えるイベントレポート

オンワード保元社長 住友生命 香山常務登壇シンポジウム! 「業績が上がる働き方改革・DE&Iとは~ 男性育休 女性活躍 モチベーション向上の具体的事例が聞ける!~ 小室淑恵が解説 2022年の先手を打つ取組とは」

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弊社では2022年4月14日、働き方改革・ダイバーシティ実現の最前線で高い成果を出した企業の経営トップが事例を語る、働き方改革オンラインシンポジウムを開催しました。今回の記事では、シンポジウムの内容をダイジェストでお伝えします。

働き方改革最新トレンドの解説
弊社代表 小室淑恵

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岸田政権の動きとZ世代の意識

今日のシンポジウムでは、岸田政権の働き方に関する動きや法改正のポイント、経営者・人事として2022年はどこに力を入れて、先手を打ったアクションをしていくのかを、一緒に確認していきたいと思います。

岸田政権は「新しい資本主義」というキーワードを掲げています。「新しい資本主義実現会議」が設置され、社会課題の解決に資する資本主義を志向しています。その中で「成長と分配の好循環」という言葉もよく使っており、人への投資に力を入れています。

10代から25歳あたりに相当するZ世代に関心のある社会課題を見ると、男性の1位は「長時間労働」、女性の1位は「ジェンダーにもとづく差別」となっています。また、関心のある働き方について他の世代と比較すると、Z世代は「週休3日制」や「副業、パラレルワーク」「転勤のない働き方」「女性管理職3割目標」などに強い関心を持っています。

睡眠時間は業績と連動している

慶應大学の山本勲教授が発表したデータでは、メンタル不調による休職者が増えると、約2年のラグを伴って利益率に負の影響が現れることが示されています。一方で、健康経営に取り組むと、これも約2年のラグを伴って業績が上がることが分かっています。

メンタル疾患に関して、相談窓口と復職ケアに力を入れている企業も多いと思いますが、疾患が発生してからの改善は時間を要し、コストも大きくなります。業績を考えると、メンタル疾患を発生させない職場づくりが重要であり、それに最も連動しているのが1日ごとの睡眠です。

コロナ禍以降の大きな変化として、2年連続で睡眠時間が増加しています。通勤時間の減少や、深夜営業店の閉店、仕事のやり方の変化を反映しています。この睡眠時間の増加と連動して、長年増え続けてきた労災の精神障害に関する請求件数が微減しています。

働き方改革に関して、月間残業時間の管理を行うことは非常に重要ですが、それだけでは業績向上にはつながりません。メンタル疾患を予防し、業績が上がる働き方改革を実現するためには、1日単位の勤務間にきちんと休息をとる勤務間インターバルが要となります。

睡眠不足がもたらすデメリット

イギリスのランド研究所シニア・エコノミストであるマルコ・ハーフナー氏は、睡眠時間が6時間以下の場合、7~9時間の睡眠をとった場合に比べて生産性が2.4%下がり、6.24兆円の損失を出していると報告しています。日本の睡眠不足による経済損失に換算すると、15兆円に上ります。

そもそもなぜ8時間勤務なのかというと、朝起きて13時間経つと、酒気帯び運転レベルの集中力に落ちてしまうからです。この時間帯に仕事をする職場ではミスや事故が発生し、メンタル疾患が増えることがわかっています。

睡眠不足時の脳は、怒りの発生源である偏桃体が肥大化し、それを抑える前頭前野の機能が低下します。怒りやすくなるので、パワハラ、モラハラ、不祥事、セクハラ、モラル崩壊の引き金となります。さらに現役時代に6時間以下の睡眠を続けていた方は、定年後に認知症になるリスクが1.3倍になるというデータもあります。現役世代の脳をいかに守るかが、人生100年時代を豊かに暮らすことに直結しています。

働き方改革に取り組むとき、部下の残業時間を減らそうとして、上司が仕事を巻き取っていくケースがありますが、これが最も業績につながらないといわれています。睡眠不足の上司ほど、部下に侮辱的な言葉を使うことがわかっているからです。

夜間の睡眠不足によってリーダーが自己コントロールできなくなると、日常的に虐待行動を取り、部下の仕事へのやる気を低下させ、離職率の上昇にもつながります。勤務と勤務の間をあけて睡眠を確保することは、上司も対象に取り組むべきです。

なぜ勤務間インターバルが必要なのか

2016年に高橋まつりさんの過労自殺の事件がありました。まつりさんのお母さまが、政府に訴えかけている中で、「11時間の勤務間インターバル制度が守れていたなら、娘は救えていたのではないかと思います」とおっしゃっています。

睡眠をしっかりとると、脳の機能が回復し、睡眠の後半で脳のストレスが解消されます。特に6時間以上寝ると、ストレス耐性をマックスにした状態で出社できます。つまり、勤務と勤務の間を11時間あけていたら、過労自殺を回避できたのではないか、ということです。

私の見方では、まつりさんに攻撃を加えた上司も、睡眠不足で侮辱的、屈辱的な言葉を使う状態にあったと考えています。被害者と加害者ともに減らしていくためにも、勤務間インターバルが必要ではないでしょうか。

ちなみに医療業界では医師の長時間労働が問題となっていて、3.6%が毎週自殺を考えているとのデータがあります。それに対して、2024年から医師への9時間のインターバル義務化が決定しています。

また、2021年には厚労省が脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しています。今までは月間の労働時間に注目していましたが、そこに勤務間インターバル11時間未満の勤務の有無、時間数や頻度、連続性などの項目が追加されました。

インターバルの導入コストはゼロ

自動車運転者の業界からは、インターバルを8時間から11時間にしてほしいという要請が出され、11時間が努力義務、9時間が義務化されました。また政府は21年5月、「過労死防止大綱」に、インターバル導入企業の割合を2025年までに15%に引き上げるという目標値を設定しました。

働き方改革関連法は2024年に施行5年目となり、法改正のタイミングを迎えます。おそらく努力義務が見直され、義務の要素が強まるのではないかと見ています。

勤務間インターバル制度は、EUすべての国で批准され、法制度化されています。具体的には、前日仕事を終えてから11時間経たないと翌日の業務を開始してはならない。1日当たりの労働時間は上限13時間、1週間当たり48時間と定められています。11時間というと、長くあけなくてはいけないというイメージもありますが、実は毎日5時間の残業ができる計算となり、月間でいうと100時間。平常時であれば全く難しくないルールです。

かつ、今までのさまざまな施策と比べて、導入コストはほぼゼロです。導入時には非常時、緊急事態、お客さま対応時に備え、柔軟な免除規定をつくっておくのが望ましいといえます。

採用で勝つのは先手を打った企業

勤務間インターバルの離職率低下と従業員満足度には高い効果があります。弊社が行った従業員満足度に関する調査では、基本給・賞与アップ施策よりも、実は勤務間インターバル制度を導入している企業の満足度のほうが向上していることがわかりました。さらに離職率低下の効果も最も高くなっています。特に日常的にインターバルを取れていない建設、物流、医療現場では若手社員への効果が非常に大きいことがわかっています。

日本でインターバルを導入している企業は4.2%。導入していない企業78%のうち、約6割が「勤務時間が長くなく、必要性を感じない」と回答しています。今後、おそらく政府はインセンティブ策をつくると思います。インセンティブがあり、採用にもプラスに働くことが認識されれば、6割の企業は意一気に導入に傾くと考えられます。そうなれば先手を打った企業が採用でも勝つようになり、導入していない企業が不利な状況となります。

勤務間インターバルがもたらす好循環

2018年に働き方改革関連法が国会を通過しました。このときも経営者の皆さんに賛同いただき、その声を何度も政府に届けながら法改正を実現してまいりました。

3年後の2021年、男性育休100パーセント宣言を直近では130社にいただきましたが、皆さんの声を届けながら、男性育休周知義務化法が国会を通過しました。次の3年後は2024年ということで、勤務間インターバル制度を一緒に実現するために呼び掛けていきたいと思います。

勤務間インターバルがもたらす好循環を挙げます。 ・職場への信頼・満足度を上げ、うつの悪化による自殺や虐待、離別なども、夫が産後にしっかりコミットすることによって防ぐことができる。 ・上司のパワハラ・不祥事、また部下のストレス耐性を復活させ、うつ病を防ぐ。そして仕事をコントロールできているという自己効力感から、社員のワークエンゲージメントが高まり、意欲的・自発的に仕事に向き合い、創造性・記憶力が向上し、業績が向上する。 ・睡眠不足ドライバーを減らし、加害者も被害者も減らすことができる。 ・夫が育児にコミットすることで第二子・第三子出産につながり、少子化が改善する。

男性育休の取得を進めよう

男性育休に関しては、2022年4月1日と10月1日に、男性産休と産後休業が新しく創設されます。

この法改正には2つのポイントがあります。ほとんどの企業が対応しているのは、個別周知・意向確認の義務化です。「あなたは育休を取れますよ」と個別に周知することについては、すでに業務フローが確立されていると思います。

一方、未対応の企業が多いのが、雇用環境整備の義務化です。これは、男性育休に関する研修の実施、自社の事例の収集・提供、制度と育休取得促進に関する方針の周知を行うというものです。研修に関しては、本人に向けた父親学級だけでなく、上司や同僚の意識改革研修も実施することが重要です。

産後の妻の死因の1位は自殺であり、その背景にある産後うつを防ぐためには、夫が育休を取得し、妻の7時間睡眠を確保する環境をつくることが大事です。こういった知識は自然に身につくものではないので、父親学級を夫婦で受けていただく必要があります。

管理職も事前に知識を持ち、上司からもアドバイスをすることが大事です。上司はすぐに育休取得を打診するのではなく、「父親学級を一度受けてごらん」と提案し、受講後に本打診をしていくとよいのではないかと思います。弊社も3月から男性育休推進研修の定額制サービスをスタートしています。

誰が休んでも回る職場づくりがすべての解決策

今後は、勤務間インターバルの周知義務化が行われると予想しています。これに備えて「勤務間インターバルを運用し、ワークエンゲージメントの高い職場に」というマネジメント研修を必須化していかれてはいかがかと思います。残業時間が45時間を超えている企業の場合は、インターバル助成金が使えますので、ぜひ活用して就業規則に入れましょう。

男性育休を積極的に活用し、業績につなげるマネジメント、無意識のパタハラ(パタニティハラスメント:育児休業などの利用を希望する男性社員が同僚や上司などから嫌がらせを受けること)を防いでいかれるといいのではないかと思います。

究極的には、誰が休んでも回る職場をつくることがすべての問題の真の解決策となります。今日のゲストの皆さまから、そういったヒントを聞けるのではないかと思います。

働き方改革を加速させイノベーティブな新商品で業績好調・男性育休取得率100%
住友生命保険相互会社 執行役常務 香山真様

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3つのステップで取り組みを推進

当社では働き方改革をWork Performance Innovation、「WPI」と称して取り組んでいます。プロジェクト運営の目的は「ステップ1 長時間労働の抑制」から「ステップ2 意識と行動の変革」「ステップ3 ワークライフバランスの向上」へと段階的に変遷しています。 大きく進んだのが、2018年のステップ2です。報告業務の廃止・電子化と並行して、11時間の勤務間インターバルを含めた勤務制度、生産性評価制度などを導入しました。

管理や制度主導の取り組みには限界もあるため、職員自身が生き生きと働くことを目指し、4年ほど前から「カエル会議」による主体的な業務見直しや、社内の別組織にフランクに改善提案をできる意見箱をスタートして、定着してきました。

主な数値変化としては、2016年と比較して2019年の年間総労働時間が1割削減され、月1回の有休取得者も約30%から75%に増加しました。またWPIの理解度が8割以上になり、全拠点でカエル会議を展開しています。

現在はステップ3の段階ですが、コロナ禍によるリモート勤務により、働く場所の自由度は一気に増した一方で、仕事のプロセスやコミュニケーションに新たな課題も出ており、アフターコロナを見据えた働き方を模索しているところです。ただ、職員の自立やチームワークがより一層重要なことは間違いありません。カエル会議等による対話からの行動変容を大事にしたいと思っています。

生産性ポイントの導入効果

総労働時間の削減に大きな効果があったのが、人事評価制度の改正です。従来は業績と行動を点数化していましたが、労働時間に応じて点数を加減する「生産性ポイント」を2019年から導入しました。具体的には、業績と行動の評価点合計に生産性ポイントが反映され、合計点に基づいて順位や評価ランクが決まるという仕組みです。生産性ポイントは、業績と行動が低い人には加算されない、つまり、労働時間が短くてもパフォーマンスを上げていない人は加算されません。

なお、所属長の評価もは、部下の労働時間や休暇の取得に応じて調整されます。生産性ポイントは、導入後2年で大きな効果があり、労働時間が短くなった職員が7割以上となっています。

人件費の削減施策ではないので、時間外手当が減少した分は、賞与に還元する仕組みにしています。また、労働時間が長いけれども事情があった人、パフォーマンスが上がっている人は、機械的にマイナス評価にするのではなく、上司がマイナスしないという調整もできます。制度に対して不公平という声はありませんが、働く場所や時間がより柔軟になってきている中で、時代に合わせた見直しが必要な時期であると考えています。

働き方改革を前進させた原動力

担当コンサルタント・田川拓麿(以下、田川):御社では、お客さまに近い最前線の皆さまがWPIを進めるため、全90拠点ある支社に弊社のコンサルティングをご依頼いただきました。その意図やお考えについてお聞かせください。

香山様(以下、香山):段階を踏んでワーク・ライフバランス社のお手伝いをいただき、現在は全拠点に展開しています。主にカエル会議に参加しているのは、営業現場のバックオフィスのメンバーです。営業現場のバックオフィスには改善の要素がたくさんあり、別々に業務をしている中で共通点もたくさんあるので、それぞれの拠点で生まれた工夫や改善のプロセスを他の支社とも共有し、横展開しています。

拠点によって進捗にムラはありますが、進んでいるところが遅れているところを引っ張っていく仕組みができ、働き方改革が大きく前進していると思っています。

田川:もともと御社ご自身で取り組みをされて、その後弊社にご依頼をいただきました。自社でやる良さと外部に頼る良さ、それぞれどうご覧になっているでしょうか。

香山:社内で取り組んでいたときも、PCのシャットダウンの仕組みを入れるなど、枠をはめるところはできたかと思います。ただ、次のステップとして、職員自身が考え、インセンティブに乗ってもらう仕掛けが必要になっていました。そのときに、ワーク・ライフバランス社さんに管理者の意識改革をお手伝いいただいたほか、現場ごとに気づきを与えていただいたところが大きかったと思います。

田川:私から見る御社のポイントは3つあります。1つ目が、ビジョンや計画策定です。複数年の中期経営計画に合わせて、全90支社に私たちのコンサルティングを導入するなど、会社として言葉だけでなく実際の行動で本気度を示されました。生産性評価、勤務間インターバルなど、制度の整備も素晴らしかったと思います。

2つ目はWPIプロジェクトの専任専属部署であるWPI推進室を、20202019年に新たに設置されたことです。推進室の皆さんがしっかりと仕事ができるような環境を整備し、リソースとお金を投資して弊社の講座を受講していらっしゃいます。

3つ目は、職員の皆さん全員が主体的に取り組んだことです。前半はトップダウンの取り組みでしたが、ボトムアップと融合していったこと、さらにお客さまへの付加価値提供をブレずに追求していたところが素晴らしい取り組みだったと思います。

業界特有の困難を乗り越えて残業時間約10%削減、有給取得率28%アップ
新菱冷熱工業株式会社 代表取締役 阿部靖則様

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建設業における働き方改革の難しさ

新菱冷熱は、空調・衛生・電気設備の設計、施工を行っている環境エンジニアリング企業です。従業員の約半分が建設現場に出ています。

建設業においては「建設プロジェクトには関係する会社が多い」という特徴があり、専門の異なる各社が建設現場単位で連携して一緒に稼働しています。ですから、例えば我々の会社が「今日はノー残業デーだから帰ります」と言うと、他社が困るようなことも起こります。また、建物や設備一つひとつをオーダーメイドで作るため、業務の標準化が難しいという問題もあります。

それゆえ、建設業の働き方改革は、時間外労働の上限規制の適用除外業種になっています。2019年4月1日に改正労働基準法が適用になりましたが、建設業と車両の運転業の方々は適用時期を2024年4月にする猶予期間が設けられています。2024年に向けて業界として本気で取り組んでいかなければいけないと考えています。

働き方さわやかProjectをスタート

新菱冷熱は、2016年4月に働き方改革担当役員を設け、第一段階として働き方さわやかProject、通称「さわP」を立ち上げました。そのとき、小室さんに会社に来ていただき、部長以上の管理職・役員の全員が小室さんの講演を直接聞きました。

そして、「新菱冷熱のありたい姿」を明示しました。働き方さわやかProjectは単なる残業削減策ではありません。「あなたはどんな働き方がしたいですか、どんな人生が送りたいですか」と考えてもらい、「それを実現するための手段として労働時間を縮めませんか」と、社長が節目節目で継続的に発信しました。また、動画や社内ポスター、社内報などでも訴えました。

建設業には、「働き方改革などそもそもできるわけがない」という意識があります。意識改革と風土醸成を行うために、「さわP」の一環として働き方を見直す活動を進め、1年目は7つのトライアルチームで実施し、全社向け発表会を年2回行いました。。2年目は73チーム、3年目は130チーム、4年目はグループ会社、海外の拠点にも広げ、現在は5年目に突入しています。

働き方を見直した成果はガイドブックにまとめて全社に公開しています。その結果、残業時間は約10%、有給休暇の取得率は28%上がり、マインドが大きく変わりました。

業界全体で取り組む必要性

第二段階として開始したのが「45ミーティング」です。会社の仕組みを変えることと管理職によるコミットメントが必要と考え、現場を担当している部長たちに集まってもらい、本音で話してもらう場をつくりました。

その中で2021年7月には残業時間を45時間以内に抑えることにチャレンジする「チャレンジ45」という取り組みを開始。ロゴマークをつくり、バッジや携帯電話、手帳に付けて「45」という時間を意識しながら取り組んでいます。

改正労働基準法の適用まであと2年しかありませんが、まだ働き方改革は道半ばです。「自分ではどうにもならない工期」「残業が減ることによる収入減の不安」「土曜日に働くのが当然といった風土・慣習」「連携によって生じる突発的な事象への対応」が課題となっています。

これまでは個人の頑張りを後押しし、会社の仕組みを変えようとしてやってきましたが、今は業界全体で取り組む必要があると考えています。思いを同じくしている方々と一緒に考えながら、進めていけたらと思っています。

自発的なアクションが改革を牽引

担当コンサルタント・浜田紗織(以下、浜田):初代働き方改革担当役員の阿部さまが、「家族や友人に勧められるようなエンゲージメントの高い会社にしよう」「やるせなさがあれば、なんでも伝えて」とおっしゃっていたことを思い出します。メッセージを受けた社員の皆さんは、具体的にどんなアクションをされたのでしょうか。

阿部様(以下、阿部):「働き方改革なんて絶対に無理」という気持ちはなくなったと思います。なかなか残業時間が減らない状況ですが、有給休暇の取得率は確実に上がっており、休みやすい雰囲気になってきました。思いやりが生まれ、交代で休みながら現場を動かす状況が実現しています。

浜田:若手が成長のためのアクションをたくさんしてくださいました。特に印象的なものはありましたか。

阿部:若手が残業時間を減らす方法を自ら考えていったとき、最終的に出てきたのが「自分たちのスキルを上げる」という答えでした。自分の成長が会社の成長、社会への貢献へと一直線につながったのが非常に良かったと思います。

浜田:多数の企業が関わる建設プロジェクト。その関わりに難しさを抱える中、印象的だったアクションを教えていただけますか。

阿部:ポスターやバッジを現場事務所、他者の方にも見えるところに提示し、「われわれはこういう働き方をしようとしています」「こういう時間の使い方をしようと思っています」とご理解いただく活動を各現場で始めました。必ずしもすべてうまくいっているわけではありませんが、少しずつ話が進んでいます。

浜田:阿部さまからは、「同じように難しい環境にある会社さんとも、ご一緒に考えていきたい」というメッセージをお預かりしています。ぜひご一緒に考えたい企業さまには、お声を寄せていただければと思います。

飲食業界逆風の時代に働き方改革で過去最高益を達成
株式会社銚子丸 代表取締役社長 石田満様

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残業削減から取り組みを開始

われわれが働き方改革に取り組み始めたのは、2016年に創業者が亡くなり、私と創業家の常務と2人体制になってからです。「新生銚子丸」と題した4つの施策を考え、その1つが働き方改革でした。2017年11月から残業削減を第一に取り組み始め、営業時間の短縮や、繁忙期が終わってから休日をつくるなど、営業時間とともに労働時間も減らしていきました。

しばらくすると余裕ができてきて、店長以上の120名で体重を減らすという試みをしました。120名で168キロ、1人平均1.4キロ程度しか減っていませんが、ライザップさんで表彰されました。その表彰式の基調講演で小室さんのお話を聞き、2020年から正式にワーク・ライフバランス社との取り組みを始めました。

朝メールとカエル会議を活用

コロナ禍では働き方改革に加えてDXを進め、オンラインでの店長研修や会議を始めました。また、朝メールやカエル会議を始めるなど、現場の人たちを少しずつ巻き込みながら取り組んできました。

男性育休はまだ緒に就いたばかりですが、少しずつ実績が出てきており、インターバルについては、現状でも現場の店長は10時間ぐらいまではできると思います。11時間への1時間のハードルをどう越えるかを考えています。

成果としては2018年比で総労働時間5%削減、売上6%増加、1時間あたりの売上は15%増加しています。また、2019年比で有給取得率が4倍に増加。離職率が12%から7%へ減少しています。

「アンチ改革派」を説得

現在は、現場のマネージャーを中心に朝メールを活用しており、私も常務も毎日使っています。長い労働時間でスケジュールを組んでいる人に私が電話を掛けたり、コメントをしたりしており、1人1人が自分の仕事の分析できるようになってきました。

朝メールでは主業務や付随の業務などに業務時間が分解されて可視化されます。それを確認しながら自分の仕事を振り返り、改善すべきところを改善する流れができています。

また、「アンチ改革派」に対して小室さんの説得力で理解を促し、その気にさせていただいたことが良かったと感じています。古株の管理職は往々にしてアンチになりがちです。誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで働く人が「働き者」とほめられる状況だったからです。それを変えていくことで動き出し、数年かけて形になってきたというところです。

男性育休取得も加速

担当コンサルタント・田川拓麿(以下、田川):長時間労働による成功体験を積んだ社員さんが、たくさんいらっしゃったと思います。どのようなコミュニケーションをされましたか。

石田様(以下、石田):土日はお店を周って直接会う機会をつくり、私の考え方を伝えていきました。始めの段階で出退勤の正しい打刻をさせる、しっかり休ませるというのを強制的に行うことで、「帰っていいんだ」「休んでいいんだ」と理解してもらえたと思います。

田川:次の段階では、どんなころに取り組まれたのでしょうか。

石田:みんながモチベーション高く働いてもらうためにはお互いのコミュニケーションが必要だと考え、すぐに朝メールやカエル会議、付箋ワークに取り組みました。

田川:銚子丸さんでは、常務自らが男性の育児休暇を取得したというのが、非常に効果的だったと思います。その話を聞き、どう思われましたか。

石田:現場で働く人たちには子育て世代が多く、みんなが育休を取り始めたらどうなるのかという心配がありました。けれども、実際はそんな心配をよそに明るく受け止めてくれました。育休が重なることもそうそうないことがわかってきたので、うまく進められています。

田川:社員間でライフの話が出るようになったのも特徴的でした。エリアマネージャーさんも11時間のインターバルを90%まで達成されています。また、アルバイトの方が、板前さんが出したおみやげに「お客さんは、これではお客様は納得いきませんよ」と指摘されたことがあったのも印象的でした。以前は板前さんの発言が絶対の職場でしたが、遠慮なく皆さんが意見を言える会社に生まれ変わったと思います。また、男性育休の取材など、積極的にメディアに出ていただいたことも素晴らしかったと思います。

「常識」と「こだわり」にメスを入れ、業務の効率化を実現
株式会社テレビ新潟放送網 代表取締役社長 小山章司様

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ライフも充実させながら自由な発想につなげる

新潟には民放テレビ局が4局あり、テレビ新潟は日本テレビ系列の1つです。テレビ業界はメディアの中では広告費売り上げが圧倒的に高く、好況が続いていましたが、インターネットが台頭し、数年前にインターネット広告がテレビ広告を抜くなど、ローカル局にとっては大きな変革期を迎えている状況です。

テレビ局の習性として、目の前の仕事をひたすら頑張るところがあります。まずは既存の業務を圧縮し、ライフも充実させながら仕事をすることで自由な発想を生み出そうと思っていたところ、ワーク・ライフバランス社とご縁があり、2021年から「Happyワークチャレンジ!」という取り組みをスタートしました。

各部署でカエル会議を始め、それぞれのありたい姿や、どのように改革していきたいかについて、定期的に会議で話し合っています。

情報共有により属人化を解消

番組制作に携わる制作部は資料が非常に多く、雑然としたデスク回りとなっていたため、整理を始めました。また、いかに効率よく番組をつくっていくか、放送したものの二次利用をどうするかなどを話し合い、1つずつアクションをしている状況です。

報道部ではチーム間で情報共有できていないとの声が上がっており、Teamsチャットなどを使って情報共有に努めてきました。みんなの課題と、小さいところから変えていこうという動きが見られ、「変えるって意外と簡単だね」といった声も上がるようになりました。

営業部はそれぞれ数十社の担当を抱え、1社につき1人しか担当がいないこともあり、どうしてもスキルや情報が属人化する傾向があります。その結果、人員の替えがきかず、休みを取りづらい状況になっていました。お互いの仕事をカバーするためには情報共有が必要であり、共有フォルダーをつくったり勉強会を行ったりしています。

営業部長は「お客さま相手だから、働き方改革なんて全然無理だよ」と言っていましたが、「やっぱり休みを取って家族で旅行に行きたいよね。ちゃんと取れる部署にしていきたいよね」と、考え方が変わってきました。

コミュニケーションの活性化を図る

2021年7月から本格的に取り組みをスタートしましたが、取り組み当初と2022年2月の調査を比較すると、少しずつ意識が変わってきたのを実感しています。

今後は心理的安全性を重視していくつもりです。社員自身がどうなっていきたいのか、どう変えたいのか、どういう働き方をしていきたいのかを考えて実現してほしいと思っており、研修を継続的に行っているほか、男性育休100%宣言も行いました。

コロナ禍でコミュニケーションが取りづらく、部署をまたぐ会話ができない状況の中、2022年4月にはコワーキングスペースを設置し、コーヒーや紅茶を無料で出すマシーンを置きました。そこで集中して仕事をする人もいますし、雑談をするチームもあります。利用率も上がっており、有効なスペースとなっています。これからも継続しながら、いかにチャレンジを増やして実行していくかを考えています。

常識とこだわりをどう変えたのか

担当コンサルタント・原わか奈(以下、原):同じ時間に集まることが難しい中、「15分単位でやってみよう、30分単位でやってみよう」という形で進めていただきました。「変わるって簡単だった」というお声が出るなど、本当に大きな成果だったと考えております。同業界であるメディア業界の皆さまに、お伝えしたいことはございますか。

小山様(以下、小山):テレビ局は新しいことをやっているように見えますが、実は歴史が長い業界であり、過去のしがらみや成功体験にもとづいた仕事を続けているところがあります。

番組やVTRをつくるときも、1秒にこだわり、視聴率や売り上げにこだわり、みんな必死に頑張ってしまいます。それを変えるにあたっては、無理矢理押しつけるのではなく、まず「自分たちがどうありたいのか」を現場で話し合ってもらうことが大切です。10年、20年、30年後のテレビ局を考えたときに、今の業務を効率化し、常識を変えて、こだわりを減らしていくことが必要だと、みんなが気づいていく仕組みづくりが大事だと思います。

労働時間を減らすのはなかなか難しいですが、心身ともに余裕を持ってプライベートも充実させようという意識で取り組んでいます。

原:小山社長が「Happyワークチャレンジ!」を推進していくために重視していることは、どんなことでしょうか。

小山:心理的安全性だと思います。みんなが自由にものが言える雰囲気は、トップダウンでは絶対できません。なるべく全社員と1on1をやったり、グループで話し合ったりしながら、みんなの意識を変えていき、自発的な「Happyワークチャレンジ!」を心掛けているところです。

原:最後に取り組みのポイントを、3つ解説いたします。

1つ目は、小山社長ご自身の言葉でしっかり全社に発信されたことです。従業員の幸せを願う1人の経営者として思いを伝えられたことが、「Happyワークチャレンジ!」の目的や意義をしっかり浸透させるきっかけになっていると思います。小山社長自身も、同じ土俵でワークライフバランスの実現に取り組まれていらっしゃいますし、テレビ局で初の男性育休100%宣言をするなど、本気度を示すという点で、本当に素晴らしい姿勢だと感じます。

2つ目は、全社の機運を一気に高めたということです。モデルチームとして会社の売り上げを担う営業部門と、放送する内容そのものをつくる制作部門という、会社として大切な部署である一方、働き方に課題がある部署を選定されました。その結果、「あの部署でもやっているんだったら、自部署でもできるよね」という雰囲気が生まれました。

3つ目は業界慣習からの脱却です。現在の視聴者は、編集に時間をかけることを求めているとは限りません。テレビ新潟さまではここについてブレイクスルーをして、コンテンツ検討をしていかれたことが、何より素晴らしいと感じています。

2年間で残業時間65%減、男性育休取得率が3倍に!
株式会社オンワードホールディングス 代表取締役社長 保元道宣様

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クリエイティブな会社への転換

私がオンワードの経営を担当するようになり、ファッションの会社として、まず個々の社員がクリエイティブで多様な発想をする会社になるべきだと考えました。社員同士がフラットにコミュニケーションを取り、個人の発想をさらに高めることで商品やサービスにしていく。そういった理想の働き方をイメージしていました。

ところが、現実は前例踏襲というか、少し発想が硬くなっているところがありました。社員同士のコミュニケーションもフラットとは程遠いことが悩みでした。社員1人1人の生活という目線から見たとき、ワークライフバランスを進化させていくことが今後の進化につながると考えました。

創業して100年近くになるファッション企業であり、もう一度創業時の原点に近づける必要があると考え、3年半ほど前に課長以上の全管理職を集め、小室さんのお話を聞く機会をつくりました。そこから3年強、いろいろな取り組みをして変わってきたと実感しています。

コミュニケーションのフラット化を目指す

働き方については、在宅勤務の推進、業務のDX推進は当然ながら、社員同士のカエル会議に私自身も参加し、社長と現場の若手である1年生、2年生が会議をする取り組みを積極的に行ってきました。

取締役会については、約半数はオンラインで開催しています。テレワークも、私自身17日間連続でとった経験もあるなど、積極的に取り入れています。

本社部門のコミュニケーションのフラット化はかなり進みましたので、現在は店頭での取り組みを進めています。全国におよそ900のお店を持っていますが、2022年4月に初めて全店長とデジタルでつながり、表彰式を行いました。これは全店舗から10店舗を選び、その成果を称えた上で、どうやって成功したのかを共有する会議です。私自身と900人の店長、スタッフが直接会議でつながる仕組みを毎月繰り返すことで、本社部門だけではなく、店頭も含めたフラットな組織、コミュニケーションを推進したいと考えています。

こういった取り組みを、会社のブランディングにもつなげていくため、ワーク・ライフバランスさんのアドバイスでプレスリリースを出し、メディアからたくさん取材の依頼をいただいている状況です。プレッシャーもありますが、働き方デザインの先進企業になれるように、引き続き頑張っていきたいと考えています。

軍隊式のカルチャーから脱却

小室:男性の育児休業取得も3倍になるなど、さまざまな変化が出たと思います。保元さんから皆さんに発信していくところに難しさがあったと思いますが、どのようにお伝えになりましたか。

保元様(以下、保元):「個々の社員がまず生活を充実させないと、お客さまに素敵な商品をご提供することもできないし、販売スタッフが笑顔で接客しないと、お客さまが楽しく買い物できないよね」と伝えました。物事を決めていく際に、どうしても会議が多くなったり、資料づくりが増えたりするなど、お客さまや商品に向き合う以前に、社内の仕事が肥大化していたことにみんなが気づいたと思います。3年にわたって粘り強く小室さんたちと言い続けることで、だいぶ意識が変わったと思います。

小室:私たちコンサルタントによる外からの言葉で気付いた課題には、どういったところがありましたか。

保元:小室さんに講演をいただいた後、「非常に軍隊式ですね。スーツの色も同じ、白いワイシャツで、ファッションの会社と思えない」とのお言葉がありました。昭和の時代は洋服が足りなかったので、いい売り場を獲得すれば売り上げが上がるという中で仕事をしてきました。そこで機能していた画一的で軍隊式なカルチャーを誇りにしてきたところもあります。

今は背景が大きく変わり、多様な商品開発が勝利の方程式となっていますが、どうしても画一的なカルチャーを変えられずにいたと思います。それは私も自覚していましたが、小室さんたちから繰り返し指摘を受けることで、忘れずに社内で伝え続けられたと考えています。

小室:軍隊式ではなくフラットにやっていくことが勝利につながるということころに意識が変わられ、ボトムアップになっていたと感じました。私が大きなターニングポイントだったと思うのが、カエル会議の成果を各チームが発表したときに、「保元さんもカエル会議に来てくださいよ」との発言があったことです。気軽に社員が発言し、保元さんが「行くよ」とおっしゃった。あれは劇的な変化の瞬間だったのではないかと思いますが、いかがですか。

カエル会議がもたらした変化

保元様:本当は私もカエル会議に出たかったのですが、邪魔ではないかと遠慮していました。誘ってもらえたのは素直に嬉しかったです。若手を中心に入社年次ごとに少人数のカエル会議を行うなど、通常とは違う切り口の会議を発想したところが非常に面白かったです。今年度は、店頭のスタッフと直接話すことに力を入れています。それが業績向上にも直結すると思うので、まめにやっていきたいと思います。

小室:リアルで店舗を回ることにこだわってきましたが、実はオンラインのカエル会議に5分ずつでもどんどん出ていくと、現場が非常に盛り上がります。女性活躍についても、保元さんが現場を見たことによって、より必要性を感じ、強く発信されたと思っています。

保元:当社はデザイナーをはじめ、技術職、販売スタッフといった職種では、すでに女性が中心となって大いに活躍されています。今後は会社の経営、運営全般についても女性の参画をもっと拡大したいと思っています。現在役員は、社外取締役の小室さんと、ロンドンに本社を持っているJOSEPHというブランドのCEOのお2人ですが、まだ1割にも満たない状況です。これを2030年までに3割に引き上げていくことを、1つのベンチマークにしたいと思っています。

小室:これにコミットされて、本気で取り組んでいらっしゃる保元さんが非常に印象的です。今後も加速していただければと思います。

質疑応答

生産性評価導入時のポイント──住友生命 香山様

担当コンサルタント・村上健太:生産性ポイントの具体的な運用や懸念事項への対応についてご質問をたくさんいただきました。可能な範囲でお答えいただけますでしょうか。

香山:賞与への還元については、実際に残業が減り、その分時間外手当がトータルでどれぐらい減ったかという計算ができますので、その計算に基づき、評価の高い人に還元していく仕組みにしています。したがって、時間外を減らしながら高いパフォーマンスを出した人は給与が上がります。一方で、長時間働きながらパフォーマンスが変わらない人は給与が下がります。「こういうときには変わらない」「こういう人は上がる」「こういう人は下がる」といったことを組合交渉や制度の導入時に管理職を通じて説明していくことで、一定の理解が進んだと思っています。

実際にそれほど不満の声が出たことはなく、むしろ「やってみよう」という意識が強かったと思います。当時の社長からトップダウンで、「まずはやってみる」「みんな本当に8時まで働きたいの? それより時間を有効活用したいんじゃないの?」と、職員目線でメッセージを発信したことで、スムーズな導入につながったと思います。

これからの2年をどう進めるか──新菱冷熱工業 阿部様

担当コンサルタント・浜田:建設業では2024年に残業上限がつきます。これからの2年を進めていく上で、新菱冷熱さんが社内で大事にしていかれたいことはなんでしょうか。また、これから働き方改革に取り組む企業さんにもメッセージをいただければと思います。

>阿部:残り時間が少なくなってきた中で、我々が大切にしているのは社員同士、あるいは経営者とのコミュニケーションです。現実には意識の高い人と「これでいいじゃないか」という人たちがいます。意識改革を図りながら、後者の人たちとコミュニケーションを取っていくことで、足並みを揃えてみんなで幸せになることにつながると考えています。

「どうしてやらなければいけないのか?」という腹落ちを飛び越してしまうと、誰もが幸せになれないということになりかねません。これから始める会社さんには、ぜひ膝詰めで社員の方とお話しするところからスタートされると良いのではないでしょうか。

改革の原動力となったもの──銚子丸 石田様

担当コンサルタント・田川:コンサルを導入した決め手と、どう動かれたかをお話いただけますでしょうか。

石田:強いカリスマ性を持ったオーナー創業者が亡くなり、手探りで2代目としてやっていく中で、創業家の常務取締役と二人三脚で組めることになり、働き方改革というテーマに取り組むことができました。

また、偶然にも小室社長の話を聞く機会を得て、私自身、長時間の弊害についてこのように説明していくとわかりやすいと理解ができ、常務に「小室さんの話を聞いた方がいいよ」と話をしました。さまざまな局面で小室社長の影響力と田川さん、原さんの深い関与があってその気になったことが大きかったと考えています。やはり、創業家は全社員に対する発信力があります。そこをいい意味で利用させていただき、改革の原動力としたことがポイントだと思います。

自己研鑽や外部とのつながりをどう加速させるか──テレビ新潟 小山様

担当コンサルタント・原:「変化が加速する時代には、自己研鑽や外部とのつながりも必須になってくると思います。その必要性をどのように浸透させていったらいいのか、ヒントがあればお教えください」とのご質問いただいております。いかがでしょうか。

小山:社員に今の状況をよく知ってもらうことが大事です。年に2回の決算報告会で業界の状況と会社の状況をガラス張りにした上で、「今までは業界が良い状況で、周りの局との競争をひたすらやっていればよかったが、今はそうではなくなってきている」ということを、特にこれから会社を背負う若い人たちに伝えています。その話の中で、外部とのコミュニケーションの重要性についても伝えていますので、そこで腹落ちをすればやってくれると思っています。

オンライン取締役会の感想──オンワードホールディングス 保元様

担当コンサルタント・大畑:「オンワードさんの取締役会のオンライン化は素晴らしいと思いますが、やってみての問題点などはあるでしょうか」とのご質問をいただきました。ぜひ、お教えいただければと思います。

保元:結論から申しますと、良かったことしかないです。当初は「重要な会議は対面でやるべき」という慣習に基づく意見もありましたが、コロナ禍での感染対策という大義名分ができました。実際にやってみたところ、全く課題はないですし、むしろ臨時の取締役会を短時間でも開くことができるようになり、スピーディな意志決定という面でもプラスしかありません。唯一課題があるとすれば、社外も含めた取締役同士の私的なコミュニケーションも必要ということです。別途、そういった企画をすることでコミュニケーションを補っていこうと思います。

大畑:保元社長は17日間の連続テレワークをやられたわけですが、改めてご感想をいただけますか。

保元:仕事の面では何の支障もありませんでした。一方で、たくさんの時間ができますし、妻と向き合う時間がとても長くなり、これを有効に使えるのか、家事等々で家族に貢献できるのかについては、自分のスキル不足に向き合わざるを得なかったですね。これは17日間では解消できませんでしたので、今後の課題にしたいと思います。

大畑:ありがとうございます。これからも働き方デザインをさらに加速されることを応援しております。

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