Case Study

株式会社オンワードホールディングス様

オンワードが進める働き方改革への挑戦とその成果
2年間で残業時間65%減、管理職の休日取得が119%を達成、男性育休取得率は7.7%→20.0%へ
会社としての思いやきっかけ、苦労したことなどをトップが自ら解説

株式会社ワーク・ライフバランスが提供する「働き方改革コンサルディング」を、2019年より導入した株式会社オンワードホールディングス。この度、既存事業の効率化と未来投資を目的として「働き方デザイン」と名づけたその取り組みと成果をまとめたプレスリリースも出されました。
今回はその際にオンワードホールディングスの保元道宣社長と当社代表小室淑恵とで実施された対談をご紹介します。株式会社オンワードホールディングスが導入した仕組み、環境の整備、経営層の意識改革についてやその成果、さらにはそこから見えてきた新たな課題と今後の展望について語られています。

▼【プレスリリース】オンワードホールディングスが「働き方改革コンサルティング」を導入 2年間で残業時間65%減、管理職の休日取得が119%を達成 ~在宅勤務率約6割、8割以上が「幸福度が高まった」と回答した部署も~

株式会社オンワードホールディングス
代表取締役社長  

保元 道宣 様

「働き方デザイン」を通じた、多様化する消費者に対する経営課題と自分自身の価値観の変革

小室:2018年、出会った当初は軍隊的社風を感じました(笑)。当時社長は、会社のどこを課題視されていたのでしょうか。

保元:一番思っていたのが、当社がお客様の多様化に追いつけていない、ということでした。私たちはそれまで、『一緒になって苦難を乗り越え、まとまることでパワーを発揮する』というやり方が主流でしたが、お客様のニーズはますます多様化しているのに、このままでは多様な意見を汲めず、アパレルとして新たな価値を作れないのではないかという歯がゆさがあったのです。また、実は組織の改革だけではなく、自分自身も省みたいという思いがありました。

私は以前、経済産業省に勤めていました。当時の同省は「休まず働くこと」を美徳としていましたから、まだ自分はその考え方から抜け出し切れていないと感じており、そこも現代的にアップデートしたいと思っていました。

自社の働き方を変える、「ボトムアップ型の新マネジメント」を目指す。部下を見守るという行為に大きな価値を見出す。

小室:先に結果からお話しすると、「働き方デザイン」のおよそ2年の取り組みを経て、 「残業65%削減」「男性育休取得率は3倍増」「休日取得5日増(管理職は18日増)」 という成果が出ましたね。また、社風も以前に比べてかなりフラットになったように感じられます。他社事例と比較しても、極めて大きな成果でした。 スタート当初は、「上層部と現場に溝がある」「若手が自発的に意見できない」などの課題があると頭を抱えられていたかと思います。

保元:そうですね。それらの課題は、マネジメント方法に問題があるのと、コミュニケーション不足により引き起こされていると小室さんはじめ、ワーク・ライフバランス社の皆さんより教えていただきました。

そこで、管理職には「心理的安全性*1を高めるマネジメント手法」の定期的な研修を導入しました。この研修では、「トップダウン型のティーチング」から「ボトムアップ型のコーチング」にマネジメント手法を変えていくことを狙いとしました。また、現場は、コミュニケーションの活性化を助けるカエル会議*2を継続して実施することにしました。

小室:当初カエル会議では、若手が意見を出しやすいように、付箋を使って意見を共有するスタイルから始めていただきましたね。リーダーには、「出た意見を否定しないこと!」と何度もお伝えさせていただきました。

保元:否定しない、つまり見守るということは、受動的な行動のようでものすごく価値があるのだと「働き方デザイン」を通して学びました。

若手社員が主体的に「自分たちで変えられることからやってみよう」と動くように

保元:若手の変化がめざましく、「自分たちで変えられることからやってみよう」と主体的に動くようになりました。そのアクションで、実際に成果も出てきています。 その一つの例として、デジタルを商品企画に生かした新ブランドが立ち上がりました。商品の制作段階からお客様に携わっていただき、その声を落とし込みながら作っていくのが特徴です。生産量などもお客様と決めていくので、過剰在庫問題の解決策の一つになるかもしれません。 ファッションのプロがトレンドを作る時代から、お客様と一緒にファッショントレンドを作る時代がくるのだと、手応えを感じています。

デジタル活用の新ブランド>『#Newans(ハッシュニュアンス)』 2020年9月にスタート。オンワード初の試みとして、お客様の声を聞きながら商品企画をする「共につくるプロジェクト」を始動。デジタルを活用し、さまざまな場所にいるお客様とオンライン上で直接対話をするなど新しい試みを続けている。 URL:https://crosset.onward.co.jp/shop/newans/

▲『#Newans』オンラインツールを利用して消費者と座談会を行う様子

社長自ら、全国各地のカエル会議へ毎週参加

保元:うれしかったのは、2020年度の最終共有会で社員に「社長もカエル会議に!」と、誘われたことです。今ではほぼ毎週オンラインで全国各地のさまざまなチームのカエル会議に顔を出しています。現場の方の生の声を聞くだけでなく、時には私自身も悩みを相談しています。フィードバックを現場の人にもらえるという、これまでにない距離感が本当にうれしいです。

小室:社長自らカエル会議に参加するのは本当にいいことだと思います。社長はより現場に近い新たな視点を経営判断に生かすことができますし、社員は「社長も悩むんだ!」と気づきが得られますから。ワーク・ライフバランスとして他社にもおすすめしていきたいと思います。

社内SNSのヤマーでは、社員の投稿に保元さんが積極的にコメントされていますよね。そういう努力や、経営層・管理職のマネジメントへの意識変化などが実を結び、組織の心理的安全性*1がぐっと高まったのかなと思います。

17日間連続のテレワークにチャレンジ。経営陣の働き方変革へつなげる。

小室:新しい働き方にチャレンジしましたか?

保元:はい。2,3日テレワークするのでは意味がないということを小室さんから言われ、テレワークを17日間連続で実施しました。

小室:全社員にスマホを配布するなど現場のデジタル化を進めているにも関わらず、役員だけ働き方のデジタル化をしていないことがすごく疑問でした。「取締役会をオンラインでやりましょう!」と当たり前のように発言したら、大きな議論になった(笑)。当時は役員クラスの働き方は別、という考え方が残っていることを感じていましたが、今はどうですか?

保元:ここ1年で、取締役会の3分の1はオンラインへ変わりました。臨時の取締役会も開きやすくなり、経営のスピード化につながっています。大事な意思決定は対面で、という感覚は自分にもありましたが、実際にオンライン会議を実施して、対面でのコミュニケーションと大きな差がないことを実感しました。

小室:大事なことだからこそ日程調整に時間をかけるのではなく、すぐにオンラインで集まって意思決定をすることが大切。もし災害が起こった場合でも、すぐに指示が出せる体制になれたことは大きな変化ですね。 誰しもが生まれた時から対面なので、対面スキルが高いのは当たり前。今はオンラインコミュニケーションスキルも多くの人が高くなってきていると感じます。

ワークライフバランスから、ワークライフシナジーへ

小室:最後にぜひ、今後の展望とともにメッセージをお願いします。

保元:2年間の「働き方デザイン」改革プロジェクトで、ワークライフバランスがとれてきたように感じます。次に目指すのは、ワークライフシナジーです。生活を楽しんでいるから、自分の個性を生かした仕事ができる/仕事の成果につながる、というようなシナジーを生み出したいと思っています。

当社のビジネスは生活文化産業なので、生活者の感覚を常に持っていなくてはなりません。業務を効率化することにより、社員一人一人が生活を楽しむ機会が増え、素敵な商品・サービスに結びつくという形にしていかなくてはならない。時には趣味が広がってビジネスにつながることもあるかもしれない。バランスをとるだけでなく融合させていくところへ進んでいきたいと思います。


*1心理的安全性・・組織において、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、組織は安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態のこと。

*2カエル会議・・部署ごとに週1回実施、自分たちはこうなりたいという「ありたい姿」を部署ごとに話し合って決め、現状の課題の抽出、それを解決するためのアクションプランについて議論する会議。 「カエル」には早く帰る、働き方を変える、人生を変える、などの意味が込められており、「絶対に否定しない」「何を言っても大丈夫」というルールのもと、役職・年齢に関係なく和気あいあいと、自由闊達な意見交換がされています。

事例紹介一覧へ戻る

その他のサービス