Case Study

新菱冷熱工業株式会社様

「長時間労働が当たり前」の建設業界で、いち早く改革に着手!
若手からベテランまでが自ら問題に気づいて改革に向けて行動し、業界にも働きかけ

新菱冷熱工業株式会社(従業員数2,193名)は、大型の商業施設やホテル、医療施設、空港などの建設に不可欠な空調、給排水、電気設備といったさまざまな設備の設計・施工を行い、快適な環境を提供する企業です。建物の中で人々が活動するのにふさわしい「環境」を整え、維持するのが事業の柱ですから、建物完成後も重要な業務が続きます。“さわやかな世界をつくる”という経営ビジョンのもと、より快適な労働環境、心地よい生活環境、信頼性の高い生産環境を目指す同社らしく、「長時間労働が当たり前」と思われがちな業界において、いち早く働き方改革に取り組んでいます。

建設業界において「働き方改革を実行するのは難しい」といわれる理由とは?

建設業はいつの時代にも重要な役割を担ってきました。しかし、大型施設の施工となれば、ダイナミックな印象がある反面、実際の現場には「暑い・寒い・きつい」といったハードな労働環境がイメージされるせいか、建設業に従事したいという若者は減少傾向にあります。重要な業務でありながら、現在の建設業界は高齢化が進み、次世代の担い手が不足しているのです。

建設業全体のイメージを向上させ、良質な人材を確保するには長時間労働の是正が大きなカギなのですが、状況はなかなか改善されない・・・。その背景には現在の労働基準法も影響しています。というのも、2018年現在、建設業は「36協定」※による時間外労働上限規制の適用除外業種となっているのです。
※「36協定」=正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」・・・法定の労働時間を超えて労働(法定時間外労働)させる場合、または、法定の休日に労働(法定休日労働)させる場合には、あらかじめ労使で書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。この協定のことを、労働基準法第36条に規定されていることから、通称「36協定」といいます。

2020年の東京オリンピックに向けて建設需要は増えているにも関わらず人手は不足している。この状態は、安全な労働環境が保てない事態を引き起こすことさえあり、働く環境の改善は緊急の課題といえます。

大型案件をいくつも手がける同社ですから、建設現場の繁忙は容易に想像できます。しかも実際の建設現場では複数の会社が連携して工事を進めていくもの。1社の工事が遅れてしまうと他の工事も遅れ、「連帯」で工事が進むため、土曜も稼動する現場が多いのです。そのため、「1社だけでは労働時間を調整できない。建設業の働き方改革は簡単ではない」といわれてきました。

そうした働き方の現状に強い危機感を持ち、改革に向けていち早く踏み出したのが、今回ご紹介する事例なのです。

改革に懐疑的だった経営層を「働き方改革」へと向かわせた小室淑恵の講演会

社内に「働き方改革担当役員」を設け、ノー残業デーの取り組みなどを開始したのは2016年4月のこと。そして同年9月には、経営層71名を集めた講演会に講師として弊社代表・小室淑恵が招かれました。

※弊社がご提供する「講演」についてはこちらをご覧ください。

実はこの講演前に、「働き方改革にはまだまだ懐疑的な声が多い。コンサルティングを正式に依頼できるかどうかは、小室さんが経営層を説得できるかどうかにかかっているからね」と言われていました。小室も、いつも以上に身の引き締まる思いで臨んだのです。

数日後、「講演を聴いて経営層の議論が白熱しました。働き方改革に社内の注目が集まってきています。ぜひ、コンサルティングをお願いします」と正式に依頼をいただくことになりました。とはいえ、大変なのはここからです。

社内では「建設業界で働き方改革が行えるのか。うちだけが改革だなんて言っても、どうにもならない。できるわけがない」といった懐疑的な声も依然としてありました。実は以前にも、ノー残業デーを導入しようとしたが定着しなかったという背景があったそうです。

最初から現場を巻き込み、気鋭のメンバーで改革を遂行した「会社の本気度」

そんな中、いよいよ本格的な働き方改革「働き方さわやかProject」が立ち上がりました。通称「さわP」です。

働き方さわやかProjectの推進体制と3つのPDCAサイクル

コンサルティングは現在の働き方を把握することからスタートしました。まず、全社員に「働き方」に関するアンケートを行い、組織診断を実施。浮かび上がってきたのは、現場の各社連帯構造による長時間労働の状況と、技術的に追いつこうとする若い世代の労働時間が長くなりがちな傾向でした。

次に、働き方改革にチャンレンジするトライアルチームの編成を検討していきました。通常、技術(現場)は事業の中核となるからこそ繁忙を考慮され、「現場は難しいから外そう」とトライアルチームを設けないことが多いのですが、「現場」を大事にする同社らしく、「技術(現場)」「設計」「営業」の部署からそれぞれ2チーム、バックオフィスの中核となる総務部門から1チームの計7チームを選出。技術チームには、各現場のリーダー(現場代理人)が集まり、改革に積極的でポジティブなリーダーやメンバーのいるチームが選ばれました。

また、プロジェクトを進めていく事務局機能を、組織を代表する気鋭のメンバーに担ってもらうことにしたのも同社の本気度を表しています。「さわP12」と呼ばれる12名のリーダーが、7つのトライアルチームとともに働き方改革を進めながら、組織横断的な課題を抽出し、解決策を会社に提案していく仕組みを作ったのです。

担当コンサルタント

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