Case Study

新菱冷熱工業株式会社様

「長時間労働が当たり前」の建設業界で、いち早く改革に着手!
若手からベテランまでが自ら問題に気づいて改革に向けて行動し、業界にも働きかけ(2ページ目)

時間を圧縮するだけでなく「仕事の質を上げるための議論」へと自ら到達した意義

2017年3月のキックオフでは、トライアルチームのメンバー全員に再度、小室による講演を実施。会社の本気度を伝え、やる気を高めてもらいました。

働き方改革担当役員の阿部靖則常務執行役員(当時)は「社員の皆さんの不満ややるせなさ、猜疑心みたいなものを全部拾って、その解決にメスを入れないことには働き方改革は進まない。どうせできないと思考を停止させず、一緒に改革しましょう」と語り、メンバーを勇気づけました。

トライアルチームは、2週間に一度実施する“カエル会議”でそれぞれが抱える課題を共有。月に一度、メンバーが集まる定例会(コンサルタント同席)でも情報を共有しながら議論を重ねていきました。

その頃の“カエル会議”では、「働き方改革といっても何から始めたらよいのか」という戸惑いがメンバーにあり、「こんなことやっても意味がない。この時間に仕事をさせてほしい」という意見も出ていて、「やらされ感」「あきらめ」などメンバーの温度差が感じられました。

それでもリーダーがあきらめずに目標を掲げ、その達成に向けて何から始めようかと議論を続けました。その結果、見えてきたのは「業務効率化」と「スキルアップ」の必要性です。特に若い世代がスキルアップを強く望んでおり、「技術力を高めれば、仕事が速くなる」「もっといい仕事がしたい」という声が上がり、仕事時間を圧縮するだけではなく、仕事の質を上げていくための議論へと深まっていきました。

それは、働き方改革の定石ともいえる目標に思えるかもしれません。しかし当たり前の課題であっても、誰かに指摘されて取り組むのと、自分たちで考え、気づいたうえで、難しさを熟知しながらも勇気を持って取り組むのとでは、大きな違いがあります。トライアルチームは、自分たちの力で「業務効率化」「スキルアップ」の目標を掲げたのです。

現場・営業・総務の各グループで時間管理を見直し、残業は大幅に削減&業務効率もUP!

時間の使い方を棚卸ししてみると、多くのトライアルチームで、突発業務の発生によりスケジュール管理が困難になっている現状が浮き彫りになりました。そこで、朝・夜メールやスケジューラーを活用し、計画と結果を比較しながら無駄をなくし、平準化を図っていきました。

その結果、開始当初は1カ月の業務計画と実際にかかった時間との差が37時間もあった設計のメンバーが、半年後には7時間にまで減少し、ほぼ計画通りの業務ができるように変わったのです。 現場でも開始当初と6カ月後の平均帰社時間を比較したところ、メンバー6名合計で1日あたり1時間43分、残業時間が短くなりました。1カ月換算で約34時間の残業が削減されたのです。チームで仕事分類ボードを作成し、各メンバーの仕事内容を書き出して仕事を“見える化”したことで、仕事がバランスよく振り分けられ、効果を発揮しました。振り分けの見直しは、一部のメンバーに頼るマネジメントからの脱却にもなりました。 外出の多い営業チームは、出先での待ち時間や移動中にモバイルPC・携帯電話を有効活用して事務処理を進め、事務所に戻らずに作業ができるようにしたほか、お客様から資料や見積もり依頼があったときもタイムリーに対応できる体制を整えました。また、本社と現場をつないだテレビ会議システムを活用し、現場・営業・設計が同じ場所に集まることなく打ち合わせができるようにしたことで、移動時間が大幅に削減され、出席者の調整に時間を取られる状況も改善しました。

総務チームは社内の問い合わせを効率化するためにFAQデータベース(よくある質問に対する回答を掲載したデータベース)を作成し、全社にリリース。問い合わせに対する時間を削減し、社内業務の効率改善に寄与しました。

スキルアップして生産性を高めたい! 若手メンバーの発想から発展した数々のアイデア

現場や設計など技術系のチームでは、若手のメンバーから「業務効率化のためにスキルアップしたい」という声が多く出ました。自分たち若手がもっと仕事ができるようになれば、さらに生産性は上がると言うのです。

最初に実施した「組織診断」の結果でも、技術的に追いつこうとする若い世代の労働時間がより長くなってしまう傾向が見られました。「現状を改善するには積極的に勉強し、技術力を身につけて、忙しい現場代理人をサポートできるようになるしかない」。これが、若手メンバーが考えた答えだったのです。

そこから、数多くのスキルアップアイデアが出ました。たとえば、各自が自分に足りないスキルを“見える化”してチーム内で共有する、ベテランの知識を継承するために勉強会やOJTの機会を増やす、などです。中でも特筆すべきは、スケジューラーを活用し、日々の業務の中に「スキルアップタイム」を導入した点です。1人あたり週1.7時間をスキルアップに充てられるようになり、身につけたスキルを普段の業務に活用することで、技術力向上を図りました。

さらに、若手の中に日々の業務で学んだことをまとめるノート術に優れたメンバーがいることもわかり、学ぶプロセスを共有することで取り組みは加速しました。

“カエル会議”でスキルアップタイムの成果について確認したところ、仕事の量や質が向上したことに加えて、職場環境やモチベーションの向上なども挙げられました。そして、仕事に対する満足度は74%まで高まりました。

若手の真摯な考えを知り、育成方法に戸惑っていたベテランにも大きな変化が!

一方ベテラン層には「技術は先輩の背中を見て覚えるもの」という意識が強く、具体的な若手の育成方法が分からないという状況が見られました。もしくは「いろいろと教えたいのだが、若手が聞いてこないから・・・」という声もあり、事務局である「さわP12」が「若手の意見を聞く会」を開催しました。そこで出てきたのは、ベテランのメンバーと同じように会社に貢献したい、モノづくりで活躍したいという若手からの真摯な声だったのです。

さらに、若手からベテランへの要望も出てきました。スピード感を持って成長したいし、仕事に貢献したいからこそ「見て覚えろ」だけではなく「指導」もしてほしい、と。こうした声を聞いたトライアルチームのリーダーたちは、ベテランと若手が目指す方向性は一緒だったことに安心するとともに、育成の「やり方」に問題があったのだと改めて認識したのです。

若手からベテラン層に向けては、「ほうれんそうのおひたし」という要望も上がりました。いわゆる「ほうれんそう=報告・連絡・相談」はもちろん実施します。が、その上で、「(お)怒らないで・(ひ)否定しないで・(た)助けて・(し)指導して」というものです。これは、部内の全体会議で発表され、今や部内全体に広まっています。

それまで「コミュニケーションは取れている。育成もしている」と思っていたものの、スピード感の増すビジネス環境にあっては従来の踏襲だけでは不十分だった、まだまだ改善できる余地があった、と気づいたのです。それも、カエル会議の効果といえます。

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担当コンサルタント

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