社会を変えるイベントレポート
コンサルタントの数だけ、乗り越えた困難と成果がある
~第2回WLB認定コンサルタント事例共有会~
弊社が2009年から開催している「ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座」。 現役コンサルタントが働き方改革を進めるために必要な知識とノウハウ・実例を惜しみなくお伝えし、4日間で働き方改革コンサルティングを実践できる力を身につけます。 養成講座の卒業生は約2000人。このうち弊社の規定をクリアした「認定コンサルタント」「上級認定コンサルタント」の皆様が、講座でお伝えしている内容を、各々の職場やコンサル先でどのように活用し、どのような成果につなげているのか。その成果を発表し、お互いの活躍をアピールする場として、2021年10月「第2回事例共有会」を開催、50名以上にご参加いただきました。
Casa1:小さな営業チームが奮闘!目の前のチャンスを掴んで踏み出した一歩
■株式会社永田メディカル
仙石祥枝さん(第58期WLBコンサルタント養成講座卒業)
永田メディカルは富山県の医療機器販売卸業や介護事業を手掛ける企業。2年前、メイン事業が子会社化という大きな変化があり、会社としての方向性を立て直す節目の中、小さな営業部門では従業員同士がお互いのことをよく知らずコミュニケーションを取れていないことや、介護部門では従業員が忙しさを理由に会議の集合時間に集まれない、といった現状をみて取締役の仙石さんは危機感を覚えていました。
そんなとき、富山県の事業で「富山働き方改革実践企業」に選出されるという機会に恵まれます。
仙石さんはこれをチャンスと捉え、まずは4名の営業と2名の本社で「営業本社チーム」の働き方改革に着手することにしました。大切にしたのは、メンバーに「働き方改革は楽しい」と感じてもらうこと。
そこで、メンバーといきなり業務改善の話をするのではなく、ランチミーティングを通してメンバー同士の対話の機会をつくり、お互いを知ることから始めました。そうして徐々にチームワークを高め、行動が変化していった結果、新規事業としてECサイトへの出店するというイノベーション創出に加えて、粗利率は前年比123%になるなど、定量変化も起きたのです。講座でもお伝えしている、「結果の質を上げるためにはまず関係の質を良くしよう」をまさに体現された成果です。
永田メディカルの挑戦はここで終わりではありません。次は介護部門の働き方改革実現に向けて動き出しているという報告もあり、初めは6人で、小さな一歩としてスタートした取り組みが、全社レベルへと大きく動き出しています。
Case2:企業担当者とコンサルタントが「最強のチーム」に
■株式会社宇部情報システム
高村香織さん
認定上級コンサルタント福成有美さん(第13期WLBコンサルタント養成講座卒業)
認定上級コンサルタント藤原千晶さん(第37期WLBコンサルタント養成講座卒業)
宇部情報システムの人事・総務部の高村さんは、「自分たちが働き方改革推進の旗振り役であるにも関わらず、自分たち自身の残業時間が多いこと」に課題を感じていました。そこで、上司とのコミュニケーションの在り方を見直したり、ノー会議デーを設定しそれを全社でカレンダー共有するといった施策を実行することで、残業時間の34%削減に成功。この取り組みをサポートしたのが、認定コンサルタントの福成さん、藤原さんのお二人でした。
コンサルをスタートしたのが2020年。3人の拠点は山口・佐賀・熊本と離れており、コロナ禍において対面でのコンサル提供が難しい状況であったためオールオンラインでのコンサルティングを決意。スムーズに会議を行えるよう、事前にツールの使い方を説明する資料を送付するなどの工夫をしながら、一歩一歩取り組みを進めていたのです。それだけではなく、コンサルタントの役割は「共に働き方改革を進めるチームをつくること」と捉え、取り組みを進めるメンバーと同じ目線に立って背中を押し、しっかりと信頼関係を築いていったことが、取り組み成功の要因だったと振り返りました。
高村さんとコンサルタントの福成さん・藤原さんのチームワークの良さは発表スタイルにも表れていました。発表の一部をレポーターと回答者という形式で行い、息の合った掛け合いを披露。参加者も思わず顔がほころぶ発表となりました。
高村さんからは子カエル(社内推進者)の育成に力を入れているという発表があり、今後の宇部情報システム様での成果にも注目です。
Case3:一人あたり、約250時間/年間の残業削減予定!本音を大切にする、学校の先生の働き方改革
■豊田市堤小学校
認定上級コンサルタント西尾果小里さん(第5期WLBコンサルタント養成講座卒業)
豊田市教育委員会では学校の働き方改革を推し進めていましたが、取り組み開始から数年経ち、もう一歩進めたい、という課題を持っていました。 それをサポートしたのがNPO法人ブルーバードの西尾さんです。西尾さんは、実は元専業主婦という異色の経歴の持ち主です。
発表の冒頭から削減、削減、削減、の文字。こちらは今年度の見込み数字ではあるものの、取り組みを開始したばかりの昨年度もすでに時間外在校時間が減少しているいという驚くべき成果を発表してくださいました。
一般的に「教員の業務時間は個人の自由度が低く、なかなか減らせない」という意識も強い中、西尾さんは推進担当者だけで取り組みを進めるのではく、先生たち全員に意見を聞き、話し合い、全職員の「本音」と向き合うことを徹底して行い改革を進めました。一度決まりかけた施策にも「推進メンバーに遠慮して本音が言えてないのではないか?」というひとりの推進担当者のつぶやきをキャッチし、一度立ち止まり、再度全体に意見を聞き、教育的意義を徹底的に見つめ直し、「何ならやれるか?」「どうすればできるか?」と前向きな議論に導いていったのです。
そうして出た施策の一つに「夏休みの課題の全員提出をやめる」があります。全員分の提出のチェックが先生の負担になっていたのです。 課題をやらせる目的は何?と深く掘り下げたところ、「やりたい生徒だけ取り組めばいい」という結論になり、結果、やる気のある生徒の作品だけが集まり、先生の確認のための時間は減り、作品の入賞率は上がるという成果に繋がりました。
Case4:私たちらしい、働き方改革の取り組み方
■株式会社オンワードホールディングス
大竹智恵美さん(第58期WLBコンサルタント養成講座卒業)
昭和2年に創業し、もうすぐ創業100年を迎える歴史ある同社。多様化するお客様のニーズに応え、これからもアパレル企業としての価値を提供していくためにも、これまでの人口ボーナス的な働き方から脱却すべく、2019年から働き方改革の取り組みをスタートさせました。事務局の3名に養成講座を受講いただいただけではなく、保元社長自らも旗振り役となりトップダウンで取り組みを進めてきました。
オンワードならではの工夫のひとつとして、ネーミングにこだわった点が挙げられます。例えば働き方改革を「働き方デザイン」としたり、解決したい課題には「せいりせいとん★」「会議のお作法」など親しみの湧くフレーズに言い換えたり。働き方改革を「なんだか難しいもの」としてしまうと、取り組むことに躊躇してしまいがちですが、随所に遊び心も入れて「楽しい」と感じながら取り組みを進めることで、着実に成果へとつなげていきました。ちなみに連続10日の休暇を取ることを推奨する新制度「マイゴールデンウィーク」は、保元社長が提案したのだとか。
このようにオンワードでは、取り組みメンバーの「まずは自分たちでできるところからやってみよう」という前向きな気持ちを大切にしながら、事務局としても、メンバーの気持ちを丁寧に拾い上げていくことを心掛けてサポートをされているそうです。
オンワードが進める働き方改革への挑戦とその成果2年間で残業時間65%減、管理職の休日取得が119%を達成、男性育休取得率は7.7%→20.0%へ会社としての思いやきっかけ、苦労したことなどをトップが自ら解説
苦手意識からの脱却!「新しいことをやってもいい」という自信
■東芝プラントシステム株式会社
株式会社ワークライフ・バランスコンサルタント原
弊社コンサルティングのご支援が3期目に入った東芝プラントシステム様。今回は担当コンサルタントより事例の発表させていただきました。東芝プラントシステムは、発電所や上下水道、交通、工場・ビル施設といったインフラ設備の建設を主力事業としています。その業務の特性上、決められた規格や指示の通りに仕事を遂行するのは得意でしたが、自分たちで新しいことを始めたり、テーマを設定して自由に意見を出すことへは、とても苦手意識があったのだそうです。
これまで弊社とのお取組みを進める中で、若手の仕事の組み立て方がうまくなったり、マイクロマネジメントの傾向があった管理職の方が傾聴承認型のマネジメントに変更したことでチーム力がアップしたりといった定性成果があったほか、現場の完全閉所日の実現やテレワーク率の上昇など、定量的な成果もしっかりと出ており、メディアから取材されるまでになりました。
また、現在は事業部ごとに「10年後の在りたい姿に向かって今なにができるか」の議論を深めている最中です。かつては苦手意識のあった「新しいテーマへの議論」に対してもどんどん意見が出て、自分たちで考えながら前に進んでいく風土が確実に醸成されています。