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CASE STUDY

相馬市の導入事例

相馬市働き方改革推進プロジェクトが始動 ~人手不足を解消し、仕事の成果も上がる。「選ばれる職場」づくりへ ~

相馬市

業種
官公庁・自治体
事業規模
1000名以上

相馬市では、人口減少や若年層・若年女性の市外流出、市内企業の人手不足といった地域課題に対応するため、令和8年度から「相馬市働き方改革推進プロジェクト」を開始しました。その第一歩として、6月24日(水)にキックオフを相馬市民会館大ホールにて講演会という形で実施しました。企業・団体の経営者や管理職、人事・職場環境づくりの担当者、関心のある市民など173人が参加しました。

開催概要

項目

内容

日時

令和8年6月24日(水)13:30~16:30

会場

相馬市民会館 大ホール

参加者

173人

内容

第1部 基調講演:二瓶美紀子氏(株式会社ワーク・ライフバランス 上級コンサルタント)

第2部 パネルディスカッション:阿部勝弘氏(相馬市長)、村松直子氏(信幸プロテック株式会社 専務取締役)、風間正彦氏(株式会社ワーク・ライフバランス 上級コンサルタント/モデレーター)

地域の人材課題を「職場の魅力向上」から解決する

相馬市様の事例

令和8年度 相馬市働き方改革推進プロジェクト キックオフ講演会チラシ

相馬市では、市民から「働く場所が少ない」という声が聞かれる一方、市内企業からは「人材を確保できない」という声が上がっています。この二つの声の間にあるギャップを埋めるには、雇用の量だけでなく、働く人が「ここで働きたい」「働き続けたい」と感じられる職場を地域の中に増やしていくことが重要です。

本プロジェクトでは、働き方改革を、残業時間の削減や福利厚生の充実にとどまらず、業務プロセスの見直しを通じて、多様な人材の活躍と生産性の向上を実現するための「経営基盤づくり」と位置づけています。

また、働き方改革を個々の企業だけの課題とせず、地域全体の共通課題として捉え、市、地域企業、支援機関が連携しながら取り組むことで、「働きやすさ」と「働きがい」を両立した職場づくりを推進します。若者や女性をはじめとする多様な人材から選ばれる企業を地域に増やし、相馬市全体における人材の定着と地域イメージの向上につなげることを目指していきます。

基調講演:働き方改革を「経営戦略」として捉える

第1部では、株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタントの二瓶美紀子が、「人手不足を解消し、成果も上がる働き方改革~秘訣は、若者や女性に選ばれる職場づくり~」をテーマに講演しました。

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基調講演を行う弊社コンサルタント 二瓶美紀子

人口減少時代に必要なのは、誰もが力を発揮できる職場

講演ではまず、人口減少が進む中でも労働力人口は増えており、育児・介護などの事情を抱えて、長時間労働ができない人でも活躍できる職場をつくることで、人手不足を解消できることが示されました。働き方改革の対象は、育児や介護などの事情がある一部の人だけではありません。すべての人にライフはあるという前提で、組織全体の働き方を見直すことで、多様性が付加価値を生み、結果として企業の競争力を高めていきます。

人口構造が変化した現在、長時間働ける同質的な人材をそろえる従来型のマネジメントから、多様な人材が時間や場所の制約を抱えながらも力を発揮できるマネジメントへ転換する必要があります。特に、若年女性の地域外流出を抑え、若者の定着を進めるうえでは、性別役割分担の見直しや男性の家事・育児参画、育児休業を取得しても業務が回る体制づくりが重要であることを提言しました。

「睡眠」「心理的安全性」「対話」が成果の土台

生産性を高めるためには、月単位の残業管理だけでなく、日々の睡眠時間を確保する視点も欠かせません。講演では、十分な休息が集中力、判断力、対人関係に影響することや、幸福度やエンゲージメントの向上が創造性・生産性や離職率に影響を与えること、勤務間インターバルの導入が従業員満足度や定着に寄与することを紹介しました。

また、多様な人材が活躍する組織では、役職や経験、立場の違いによって見え方や判断が異なることを認識することが必要です。そのうえで、「なぜそう考えたのか」を互いに問い、相手の受け止め方を確認することで、安心して意見を伝えられる関係を築いていきます。組織内の心理的安全性を高め、現場から改善提案が生まれやすくなる環境づくりについても説明しました。

現場が主役となる「カエル会議」

経営層からのトップダウンで一方的に働き方改革を指示すると、現場ではやらされ感が蔓延し、継続的な取組に繋がりません。職場のメンバーが「ありたい姿」を共有し、現状とのギャップを見える化して、解決策を自分たちで考え、行動し、振り返る「カエル会議」の手法を紹介しました。

  • チームとして実現したい「ありたい姿」を言葉にする
  • 現在の時間の使い方・仕事の進め方を把握する
  • ありたい姿とのギャップから課題を抽出する
  • 具体的な改善策を決め、小さく試して効果を検証する

経営層や管理職に求められるのは、すべての答えを出すことではなく、現場の取組に関心を寄せ、問いかけ、承認し、挑戦を後押しすることです。業務の複数担当化、スキルマップ、集中タイム、会議の効率化、仕事の受け渡しルールなど、各職場に合った施策を選び、トライ・アンド・エラーを重ねることが、自走する組織づくりに繋がっていきます。

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(講演資料より抜粋)人手不足を解消し、若手が定着する職場づくりの要点

企業事例:信幸プロテックの「小さな成功」を積み上げる改革

第2部のパネルディスカッションでは、岩手県矢巾町で空調・電気・住宅設備工事などを手掛ける信幸プロテック株式会社の専務取締役 村松直子氏が、自社の働き方改革とDXの実践を紹介しました。同社は従業員47人の企業で、改革前には、女性社員が出産・育児を経て働き続けた前例が少ないこと、サービス担当者の長時間労働、管理職のプレイングマネジャー化、今後の介護との両立などの課題を抱えていました。

社員が自分たちで考え、まず試す

同社は2016年から2019年にかけて働き方改革とIT活用に取り組みました。出発点は、大規模なシステム導入や制度変更ではなく、スタッフが「なぜこの仕事をしているのか」「どのような状態になりたいのか」を率直に話し合い、自分たちで考えた取組を進めることでした。小さな成功体験を積み重ねることで、自信とモチベーションが高まり、チームワークが強化され、次の改善へ進む土台がつくられました。

  • スキルマップと手順書を作成し、重複業務を見える化・削減する
  • 技術職とサービス担当者が現場に同行し、互いの業務と課題を理解する
  • 必要な知識・スキルを就業時間内に学ぶ勉強会を実施する
  • 経営者との面談や「ライフビジョンシート」で、個人の専門性と将来像を明確にする
  • 集中できる時間を確保する「がんばるタイム」を設ける

業務の棚卸しからDXへ。年間27日分の時間を削減

業務の棚卸しでは、受付処理、見積書・請求書の登録、経理伝票の入力に多くの時間を使っていることが明らかになりました。そこで、現場の課題に即して業務システムを整備した結果、依頼受付業務を80%、見積書・請求書登録作業を93%削減。受付から入金確認までの作業時間は、累計で年間27日分削減されました。DXを先に導入するのではなく、働き方改革によって課題を特定したうえで必要な仕組みを選んだことが、大きな成果につながりました。

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信幸プロテック株式会社の資料より。業務システム導入による削減効果

一部門の改善を全社へ広げ、採用にもつなげる

取組は、経営管理部門の成功事例を全社員の交流会で共有し、各部門が自分たちに合う方法を考える形で全社へ広がりました。工事部門では工事ごとの手順書や損益の見える化、サービス部門では負荷の大きい業務の共有、技術講習会や資格取得支援、住宅設備部門では短時間のミーティングなど、画一的なルールではなく、部門ごとの課題に応じた改善が進められました。

その結果、平均有給休暇取得日数12.2日、男性育児休業取得割合75%、月平均残業11.1時間、過去5年間の平均離職率2%というデータが示されました。また、採用では高額な就職媒体に頼らず、「すでにいるスタッフ」を大切な資源とし、自社の強みや職場の様子を継続して発信したことで、2019年以降、毎年のように新卒・中途採用に困ることなく、2026年には3人の優秀な人材を採用しています。

同社が働き方改革から得た最大の学びは、効率が上がることで、新しいことを始める「余地」が生まれるという点です。その余地が、DX、健康経営、社屋整備、ブランディング、SDGsなど次の取組を生み、互いに作用しながら企業価値を高める循環につながっています。

パネルディスカッション:行政と企業が地域の未来をともに考える

後半のパネルディスカッションには、相馬市長の阿部勝弘氏と村松直子氏が登壇し、株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタント風間正彦が進行を務めました。

相馬市様の事例
パネルディスカッション。左から風間正彦(弊社コンサルタント)、阿部勝弘相馬市長、村松直子氏(信幸プロテック株式会社)

相馬市が今年度からプロジェクトを立ち上げた背景、働き方改革を始める前の企業課題、大きな制度変更ではなく最初に踏み出した「小さな一歩」、社員を巻き込み前向きな取組へ変える方法、そして若者や女性に選ばれる企業が地域に増えることの意義が説明されました。

相馬市では、市民の「働く場所が少ない」という認識と、市内企業の「人手が足りない」という実態をつなぎ直し、地域内に魅力ある職場を増やす必要があります。市内人口を直ちに増やすことが容易でないからこそ、官民が同じ課題認識を持ち、企業の変革を地域全体で後押しすることが重要です。

信幸プロテックの実践からは、改革を現場に定着させるためには、社員自身が課題を見つけ、取組を考え、成果を共有するプロセスが欠かせないことが伝えられました。制度や福利厚生を整えるだけでなく、日々の仕事の進め方、職場の対話、成長機会、将来を描ける環境を一体として整えることが、「ここで働き続けたい」と思える職場につながります。

キックオフから始まる今後の継続支援

キックオフ講演会は、相馬市働き方改革推進プロジェクトの入口です。今後は、働き方改革推進リーダー養成講座(全3回)と、専門コンサルタントによる伴走支援(2社)を実施します。養成講座では、働き方改革の本質、取組の進め方、実践内容の振り返り、全社展開・定着に向けた方法を学びます。伴走支援では、企業が自ら課題を整理し、解決策を考え、実行するプロセスを重視し、支援期間の終了後も自律的に改善を続けられる組織づくりを目指します。

人手不足が深刻化する時代において、働き方改革は一部の従業員のための配慮ではなく、企業の持続的な成長と地域の未来を支える経営戦略です。

相馬市は、市内企業の皆さんとともに、働きやすさと働きがいを備え、多様な人材が力を発揮できる「選ばれる職場」づくりを進めていきます

※本稿は、当日の講演資料、信幸プロテック株式会社の発表資料、パネルディスカッション進行要領、事業チラシをもとに構成しています。

担当コンサルタント
二瓶美紀子
風間正彦
高安千穂

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