社会を変えるイベントレポート
働き方改革最新情報をキャッチせよ!ワーク・ライフバランスコンサルタント「ドリームサミット2022」開催レポート
ドリームサミット(通称ドリサミ)とは?
弊社主催の「ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座」を受講後、「認定上級コンサルタント」や、「認定コンサルタント」としてご活躍中のみなさまとの、年に一度の交流イベントです。
私たちワーク・ライフバランス(WLB)コンサルタントは「誰もが主体的に働ける世の中を実現したいという想いを持つ仲間」だと自らを定義づけています。例年通り、全国からコンサルタントが集まり「今私たちが何を考え、これからどう世の中を動かそうとしているのか」、ここでしか話せないような思いや情報をめいいっぱい共有したイベントでした。ほんの少し会場の熱気をお見せするイベントレポート、ぜひご覧ください!
祝・男性育休義務化!そして次なる戦いへ
ドリサミ最初のアジェンダは、弊社代表小室淑恵から、ワーク・ライフバランスコンサルタントのみなさんへのメッセージをお送りしました。2022年は改正育児介護休業法が施行され、企業には従業員が育児休業を取得しやすくするための環境整備や個別周知・意向確認が義務付けられるほか、「出生時育児休業制度」が創設され、男性の育児休業取得を後押しする施策が段階的に施行されます。小室は冒頭でこのことに触れ、これからの展望についてお話しました。
「人々の実生活に直接関わる法改正は、そんなに多くないと思います。だけれどこの法改正は違う。実社会での、具体的な大きな変化を起こしています。
企業からは『男性育休について専門家の話を聞きたい』というニーズが高まっていますから、皆さんも、様々な場面で依頼をいただくことが増えたのではないでしょうか。男性育休推進は、”誰もが休みやすい職場環境を整えることが、サスティナブルな働き方に繋がる”という働き方改革の本質を話せるチャンスです。
法改正に対応できないと諦めてしまいそうな企業こそ、鼓舞して、伴走して引っ張っていきましょう。
そして日本の企業でもこんなに変化が起きているよということを、積極的に発信していきましょう。
というのも、現在就職活動中の学生は、日本企業の働き方にネガティブな情報を沢山もっていて、日本の未来に希望を失い「海外でしか自分らしい働き方ができない」と考えている人も多いのです。
そんな若者を国内に引き留めるためにも、先に持ってるネガティブな情報を覆すような、希望ある日本企業の情報を届けることが大事なのです」
2019年の弊社主催のシンポジウムを皮切りに男性育休義務化へ向けて走ってきた私たち。 日本の働き方を変える戦いは、これで終わりではありません。「次の戦いは、勤務間インターバルと給特法の改正です。 みなさんの力を借りないと戦えない。だから、ぜひみなさんにもその必要性を広めていただきたいのです」
勤務間インターバルの必要性:「寝ている国ほど儲かっている」という事実
「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。
2019年施行の「働き方関連法案」によって企業の努力義務になりました。
これを、2024年の法案見直しのタイミングで「義務化」することが私たちの目標です。
私たちが勤務間インターバルの義務化を目指す理由は、「日本の労働環境が”ゆがめられた社会構造”を前提として成り立っているであること」への危機感からです。
ゆがめられた社会構造とは、例えば、
・時間労働ができ家庭的責任を放棄できる人が、評価も報酬も得る状態
・世界的に見て、経営者が労働者の生活時間・健康維持時間を不当に安く搾取できる状況
・育児介護治療など、事情を持つ人だらけの社会であるにも関わらず無限定労働者像を前提としたまま
のような、「健康でライフに何の事情もなく長時間労働が可能な人」が労働者の標準とされているということ。
多様な人が生きるこの社会で、このほとんど幻のような人材像を基準とした仕組みはあちこちで崩壊しつつあります。
だからこそ、事情がある人もない人も誰もが主体的に働けるよう、長時間労働を前提とした働き方を見直していく必要があるのです。
従業員の労働時間を減らすことで、企業の業績に影響するのでは?と心配する方もいらっしゃるでしょう。
その点については、様々な調査から平均睡眠時間は7時間前後の国では、そうではない国と比較して国民一人あたりのGDPが高いことや企業単位で見ても平均睡眠時間が上位の企業ほど利益率が高いことがわかっています。
つまり「寝た方が儲かる」のです。
現在、新型コロナウィルスによる経済への影響や世界情勢悪化による円安進行など、日本経済は危機的状況にあります。
日本の持つ本来の力を取り戻し、この困難を乗り越えるていくために今本当に必要なこと。
それは「女性や子どもへの保護策の追加」ではなく、”ゆがめられた社会の構造”を認識しそれを阻止打開する仕組みをつくり「労働者がしっかりとライフの時間が取れ、休息時間を確保でき、明日への希望を持ち続けること」だと私たちは考えます。
この信念をもとに、これまで財務省の税制調査会など各方面に勤務間インターバル義務化の必要性を訴えてきました。
その結果、政府の今後の重要な施策方針「新しい資本主義実行計画」のP10に勤務間インターバル普及の必要性が記載されたり弊社が主催する「勤務間インターバル宣言」に、多くの企業のトップが賛同いただくなど、少しずつ、だけれど確実に、社会は動き出しています。
給特法改正の重要性:「定額働かせ放題」=「給特法」から、教員を守りたい
日本の教育現場が抱える深刻な課題をご存知でしょうか。
日本は、OECD加盟国中、「最も教員の労働時間が長く、授業・授業準備にかける時間は低い国」です。
さらに公立学校では、平均残業時間が過労死ラインを超える一方、残業代は支払われません。
それは給特法によって、残業代は給与月額の4%しか支払われないと決められているから(※)です。
※給特法とは、正式には「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」。
公立学校の教員の給与について定めた法律で、1971年に制定された。教員の仕事は勤務時間の管理が難しいという特殊性を考慮し、休日勤務手当や時間外勤務手当などを支給しない代わりに給料月額の4パーセントを教職調整額として支払うことを定めている。法律が成立した当時の平均残業時間が月8時間だったことから4パーセントが妥当とされたが、その後、教員の仕事内容が年々複雑化し、勤務時間が長引く一方であることから、この法律が実態と合わなくなったと指摘されている。
過重労働を背景に教員志望者は減少し教員不足が深刻化、さらに過労死ラインの残業が続く中で心身のバランスを崩し精神疾患から休職する教員も後を絶ちません。
このままでは、日本の未来を担う子供たちに、良質な教育の機会を与えることが難しくなってくるでしょう。
そうならないためにも、給特法の抜本的改善と教員の働き方改革を進め教員の過酷な労働をなんとしてでも食い止めていかねばなりません。
メディアによって問題が取り上げられることも増え、認知は広まっていますがさらに世論を高めて議論を深めていくためにも、もっと多くの方に周知をしていく必要があります。
弊社としてもすでにいくつかのアクションを始めており、その一つが署名活動です。
2022年4月には弊社代表小室も呼びかけ人の一人として給特法改善を求める署名活動を開始しあっという間に4万筆近くの署名が集まりました。
また夏から秋にかけては文科省による教員の勤務実態調査も行われるため、その結果も注目を集めることでしょう。
▼教員5,000人が休職!子どもにも影響が…。月100時間もの残業を放置する「定額働かせ放題」=給特法 は抜本改善して下さい!署名キャンペーン
▼2022年7月26日文部科学省にて給特法の改廃を求める署名活動の中間報告について会見
3Kから新3K、4Kへ向けて!建設業界の”今”
続いて建設業界のクライアントを多く持つ浜田からは、建設業界の働き方改革についてプレゼンをしました。
「働き方について、建設業界が今HOTなのはご存知でしょうか?
というのも、2019年の労働基準法改正の際「1日8時間、週40時間労働」「残業の上限は月45時間かつ年360時間」と定められた一般則が、5年の猶予を経て、2024年には建設業に適用になるからです。
建設業界は他の産業に比べて「担い手不足、労働者の高齢化が進行している、休みが取りづらい」”課題先進業界”であり、かつては一般則の適用は難しいと言われてきました。
それでも「やらなければ」となっているのには他の業界と同水準、さらに良い環境にしていかないと本当に人材の確保ができないという深刻な問題があります。
地域の建設業は災害が起きたときにいち早く駆け付けるという役割も持つ、国民のインフラの機能です。
このまま担い手不足が続くと、国民の命が守れなくなってしまうのです。」
(国土交通白書2020より:持続可能な建設産業の構築
これまで数多くの建設業のコンサルティングに携わった浜田はこう言います。
「日々お仕事をする中で、ちょっとした”変化の兆し”を感じることがあります。
例えばある対談の場で、建設業界団体会長が、「これまでの自分のやり方が通用しなくなった。過去の当たり前から脱却が必要」と振り返り、また別の会長が「長時間労働を美徳」として過去発信していたことを失敗談として話したり。
またある土木関連会議のパネルディスカッションの場で登壇者の半分が女性ということもありました。」
プレゼンでは、私たちのクライアントの事例として、
■安全神話、安全に関するルールは変えられないという暗黙の了解も考え直した東芝プラントシステム様
■事務と現場の仕事の根を超えて働き方改革に取り組んだ信幸プロテック様
■発信を強化して採用に繋げているフクヤ建設様
のご紹介もしました。
3K(きつい、きたない、きけん)というイメージから、新3K(給与、休暇、希望)、さらにかっこいい!を足して4Kへ。
建設業界の今後に注目です。
難しいけど、無理じゃない ~医療プロジェクト活動報告~
医療の働き方改革に関心の高い認定コンサルタントと弊社コンサルタントとコラボレーションプロジェクトです。2020年にプロジェクトがスタートして以来、月数回のミーティングや、ゲストを招いてワークショップを開催してきました。
プロジェクトは、医療現場での働き方改革コンサルティングにも取り組んでいます。
長崎大学病院のコンサルティングは3年目を迎えました。
スタート当初に比べると、働き方改革を単なる残業削減と捉えるメンバーも減ってきており職種や診療科の枠を超え、医療の質の向上という本質的なところに早い段階で着手できるようになりました。
3回目となるシンポジウム(成果発表)は、長崎県・長崎市共催で開催。
地域ぐるみで医療を支え、その先の住民の安心を支える取り組みへと発展しています。
▼2021年度病院の働き方改革シンポジウム 開催レポート
また昨年から弊社が働き方改革のご支援をしているのが、新潟県の糸魚川総合病院です。
糸魚川市唯一の総合病院であり、市の中核医療を担っている同院。
しかしながら県内で優秀な医師・看護師を確保することが難しくなってきており、そのため医療現場特有の緊急対応を柔軟に行うことが難しいという課題がありました。
院長自ら看護師や医師にインタビューをし、職場の抱える課題に向き合う中、コンサルティングもスタート。メンバー同士の意見を尊重し、議論し合うことの大切さをお伝えしました。
約半年間のコンサルティングの結果、
・内視鏡チームでは院内FAXの廃止で月間作業時間が9割減
・手術ごとの立ち合い看護師数の見直しをして平均3名から2.5名に減
・手術件数が31%増えたのにもかかわらず、平均時間外勤務時間が16%減
・医事課は9連休が取れる体制を構築
など、大きな変化が起きました。
この変化を受けて、系列の病院でも何かできるのでは?と検討が始まるなど変化の波が広がっています。
▼人手不足の悪循環を断ち切り、地域の医療崩壊を防ぎたい 「北陸一働きやすい病院」を目指す糸魚川総合病院
うまくいくことばかりではありません。
実はある病院ではうまく進まず苦戦していることも率直に共有しました。
忙しさを理由に断られたり、連絡がつかなくなったり、働き方改革の必要性をなかなか理解していただけなかったり…
担当コンサルタントも、この先どうクライアントと向き合うか正直悩んでいた時期もありました。
けれども、ある時そんな空気が一変する出来事が起こります。
これまでの定例会でほとんど発言をすることがなかったある若手医師が「僕はこの取り組みをやりたいと思っています。」
と取り組みチームの前で想いを伝えてくれたのです。この出来事をきっかけに、これまで八方ふさがりかのように見えた取り組みに一筋の光が見えたのは言うまでもありません。
医療現場に関わらず、働き方改革の取り組みは一筋縄ではいかないことばかりです。
けれど私たちがクライアントの成果を諦めずにいられるのはこんな風に、同じ想いを持った仲間に出会える瞬間があるから、働き方改革の実現は、決して簡単ではないけれど無理じゃない。
そう思えた出会いでした。
<予告>ドリームサミット2023
そして2022年度ドリームサミットは、20近いブレイクアウトセッションに分かれて関心の高いテーマごとにディスカッション。それぞれの最新情報や課題、成果を出した喜び、たくさんの思いを交換し合って、最後は私たちワーク・ライフバランスコンサルタントのクレド(絆)を確認。名残惜しく終了いたしました。
参加者の方々からは
・最新の動きのシェアに勇気をもらい、時間や場所にとらわれない自由な働き方を体現する皆さん、全国のコンサル仲間からエネルギーも凄いました!
・内容が盛りだくさんで、3時間では短いくらいでした
・久しぶりに皆さんと全国の仲間のお顔を見れて同窓会気分でした。と同時にこの日本を真剣に向かいあっている皆さんの行動に私もやらねば!と再確認。準備も含め皆さんの温かさは素晴らしいです。いつもありがとうございます!
といったご感想を頂き、私たちもまた、大きく励まされています。
もちろん、2023年度もドリームサミットは開催予定!
参加条件は「認定コンサルタント」「認定上級コンサルタント」であること、のみです。
まずは養成講座を受講し、私たちと一緒に、自分の、職場の、日本の働き方を本気で改革しませんか?
▼ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座について