Case Study

信幸プロテック株式会社様

バックオフィス部門が現場の生産性までアップ!オープンな取り組みでスピーディーに改革した好事例

岩手県紫波(しわ)郡にある信幸プロテック株式会社は空調・給排水・照明、産業設備の設計・施行・修理・保守等を行う“設備の総合クリニック”です。1974年創業で、社員数は現在35名。「毎日の暮らしに関わり、快適な環境を提供することで、会社も社員も社会もすべてが良しとなる『三方良し』」をモットーにビジネスを展開しています。岩手県・盛岡市の事例紹介でも同社の名前を挙げたように、働き方改革に対して非常に熱心な企業でもあります。自治体が提供する機会を最大限に活かしながら改革を推進するすばらしい取り組みをご紹介します。

働き方改革は社員の人生を充実させ、雇用・採用の切り札となる!

信幸プロテック株式会社では、創業者である会長の時代から社員のキャリア開発を行い、ワーク・ライフを考えてきました。一方で、ベテラン世代と若い世代の仕事に対する価値観の違いや、結婚・出産・介護など人生の節目を迎える社員が多くなったことなどから、多様化する社員の要望に会社としてどう応えていくかに頭を悩ませていました。

働き方改革に取り組むきっかけは、盛岡市が企画した弊社の「働き方見直しコンサルタント養成講座」に同社の専務が参加されたこと。「働き方改革は社員の人生そのものの充実につながり、雇用の確保や採用難の切り札となる!」と確信し、全社員を集めて弊社講師による講演会を実施しました。

営業部の部長から「“できるか?”と不安だったが、講演を聞き終わって“できればいいな、できそうかな”という気持ちに変化した」という感想が寄せられるなど、全社の意識統一が図られました。

その後、岩手県が募集した「働き方改革モデル企業」に手を挙げ、弊社のコンサルティングを6カ月間受けることになったのです。

市と県が用意した機会を最大限に活かし、働き方改革を推進

トライアルチームには経理・財務管理や総務機能を持つバックオフィス部門である「経営管理部」が選ばれ、主任が県主催の「働き方改革アドバイザー養成講座」を受講するなど、働き方改革に関する最新の知識を得ながら取り組んでいきました。

経営管理部門では問い合わせや修理依頼などの受付業務も担当しているため、日中はひっきりなしに電話がかかってきます。“カエル会議”も、その電話対応で中断することがしばしば。私たちが訪問した際は、メンバーがまだ会議の進め方に不慣れで意見が出てこず、担当役員である専務が見かねて議論を引っ張っていくという様子もたびたび見られました。

そんな中でも“朝メール・夜メール”を活用し、“カエル会議”を進めることで、「誰が何を担当しているか分からず、業務が属人化している」「会社や現場のサービスマンが何を求めているか分からない」「集中する時間が取れていない」「技術的な知識が少なく、問い合わせへの回答に時間がかかっている」といったさまざまな課題を見つけていきました。

情報共有と業務効率化で54項目もの業務体制を見直し!

初回の“カエル会議”では、ゴールイメージを「チームワークと情報共有により業務を効率化することで、余裕を持って仕事が完結でき、一人ひとりが最大限の価値を提供し、頼られながら成長していくチーム」としました。中でも 「情報共有」と「業務効率化」に焦点を当てて取り組むことに。

業務内容を明らかにするために、まずはスキルマップを作成しました。スキルマップとは、縦軸に部署内で行う業務、横軸に人の名前を書き、◎○△等の記号を書き入れることで、誰がどの業務をどのレベルで行うことができるのかを“見える化”するツールです。

すると、属人化している業務が多いことが明らかになりました。それに関しては「もう1名担当を増やすもの」「手順書を作るもの」など今後の対応を決めて、メンバー同士が助け合える体制を作り上げていきました。

最終的には「1人担当から複数担当に見直した業務」が27項目、「業務移管を実施した項目」が9項目、「全員が担当できるようになった業務」が10項目、「手順書を作成した項目」が7項目、合計54項目もの業務体制の見直しを行うことができました。

小さな工夫を積み重ねて大きな変化に。関係性の質も向上!

取り組み開始当初は、“朝メール・夜メール”に対して専務と主任だけがコメントを返していましたが、これを当番制に変更。立場に関係なく以下のようなコメントをし合うことで、関係性の質を上げていきました。

「営業さんから頼りにされ、いろいろな仕事をお願いされている姿をよく見ます。よい関係で連携・支援ができているんだなぁと感じます」
「外出が多くなると、どうしても手元の作業の時間が取りづらくなると思います。外出時に手伝えることがあれば教えてください」
「いつも素早く電話対応してくれるので助かっています。今朝の長い保留中の対応もすばらしかったです!」

また、“朝メール・夜メール”の集計結果をもとに分析を行い、時間をかけたくないと思っていたはずの「見積・請求書の登録作業」に34.5%も使っていることが判明。時間の見える化をしたことでクラウドシステムの導入に踏み切ることができ、それまで複数のツールを使っていた状況を1つのツールに集約。処理時間を年間で177時間削減することができました。

一方“カエル会議”は、司会進行・タイムキーパー・書記など必ず全員に役割を振るという主任の工夫により活性化していきました。付箋も併用することで、当初おとなしくて意見があまり出なかったメンバーが見違えるくらい活発に発言するようになりました。

さらに、議題ごとに時間を割り振ってタイマーでカウントし、時間意識も向上。途中で電話がかかってきても、交代で電話に出て、できる限り議論を中断せずに進めるなどの工夫も凝らしていきました。議事録の作成や必要な作業もできる限り会議の中で終え、短時間で多くの議題を話し合うことができるようになったのです。

同行をきっかけに、バックオフィス部門が現場の生産性向上に貢献

次に、「自身の知識・スキルの向上と、現場に赴くサービスマンの抱える困りごとの把握」のために、経営管理部の社員が現場のサービスマンに同行し、作業の様子を写真や動画に収めていきました。

同行後は報告書を作成し、“カエル会議”で他のメンバーに共有します。サービスマンからは「同行して現場の業務を理解してもらったことで、頼みごとの範囲も広がり依頼内容の取り違えも少なくなった」と好評でした。

この現場同行が、思わぬ形で現場の生産性向上にもつながりました。同じ作業内容でも担当者によって所要時間が違うことに気がついたのです。そこで、ベテランが作業している様子を動画に撮りチーム全員に共有することで、現場全体の技術向上と生産性向上をサポートすることができました。

就業時間内にスキルアップ勉強会を実施し、全社の業務を効率化

トライアルチームの取り組みは、まず自部署の働き方を見直し、小さな成功体験を積み重ねて、浮いた時間を使って他部署も巻き込んだ難易度の高い大きな取り組みに発展させていくほうが、結果としては近道です。

経営管理部門では、自分たちが現場のサービスマンに依頼内容を的確に伝え、簡単な技術的質問はサービスマンの手を止めず自部門で完結できるように、スキルアップ勉強会を就業時間内に開催することに。9〜11月の間に4回開催し、1人あたり7時間、合計28時間分もの学びの時間を捻出しました。


スキルアップ勉強会の様子。事前に「学びたいこと」のアンケートを取って集計し、“先生”となるサービスマンとも事前打ち合わせを行ったうえで、アンケートへの返答など必要な情報を共有していきました。

「がんばるタイム」と「プロ宣言」「ライフビジョンシート」

電話が頻繁にかかってきて集中が途切れてしまうという課題を解決するために、「がんばるタイム(集中タイム)」も設けました。「がんばるタイム中」というポップを掲示したメンバーには一定時間、電話を取り次がず、集中して仕事に専念できる環境を協力しながら作っていったのです。

「普段だと何時間もかかってしまう作業が、集中してあっという間に終わらせることができました」と、利用したメンバーの評判も上々です。


「がんばるタイム中」のメンバーには一定時間電話を取り次がないようにし、集中して仕事に専念できるよう協力しあっています。

さらには、個人が専門領域として身につけたい分野を考え、「プロ宣言」として明確化。社員と社長との個別面談も実施し、会社の方針とずれないようにしたうえで、シートにまとめていきました。

余暇や就業後にやりたいことも、雑誌の切り抜きや写真などを使って「ライフビジョンシート」としてA3用紙1枚にまとめ、メンバーのプライベートやバックグラウンドまで共有。ワークだけでなく、ライフの面もサポートしたいと心から思える関係を作っていきました。

こうしたさまざまな工夫や積み重ねが奏功し、取り組みを開始した5月から10月までの半年間に、業務の依頼受付件数は昨年度よりも180件増えたにもかかわらず、残業時間は全社で13.2%減らすことができました。

働き方改革をスピーディーに進める「オープンマインド」

同社の専務とメンバーは、働き方改革に取り組む他企業の見学にも行きました。すると、今度はその企業が同社の見学に訪れ、モデル企業同士の交流が生まれて、お互いの取り組みを取り入れていくようになりました。

モデル企業の3社が合同で行った弊社との「最終報告会」では、同社の専務が「県の事業が終わっても、自主的に3社合同で定期的に集まって報告会をしましょう」と呼びかけました。自社の取り組みをオープンにした意義を感じたからこその発言だと思います。

働き方改革は組織の課題を解決していくものですから、詳しく発信すると自社の問題が露呈することにもなり、抵抗感があるものです。それでもオープンに情報を発信していくからこそ情報が集まり、企業同士の交流も生まれて、1社では到底なし得なかったスピードで取り組みを発展させていくことができたのです。
※同社はホームページ上で、これまでの取り組みを分かりやすく紹介しています。

最終報告会では、参加者から「信幸プロテックさんの取り組みがすばらしかった」「具体的に理解できた。ぜひ真似したい」など多くの反響があり、出席した社長からは「本当に自分の会社の社員なの⁉と驚いてしまうほどすばらしい発表だった。みんなのことを誇りに思います。この取り組みを全社に広げていきたい」と力強い宣言もなされました。

現在は現場部門でも取り組みがスタート。トータルエンジニアリング部では、「作業手順書の作成」「完了時の損益計算書作成による見積りと実際の誤差検証・改善案検討」等を行いました。取り組み開始直後の3カ月間と2018年度最後の3カ月間の平均利益率を比較すると17%もUP。前者の期間中、目標利益率を下回っている工事案件は8件でしたが、後者の期間中は0件となりました。

経営管理部から始まった取り組みは全部門に発展し、2018年には『いわて働き方改革AWARD 個別部門賞 業務改善部門』を受賞。県外からも視察が来るなどますます注目が高まっている信幸プロテック株式会社。岩手県はもちろんのこと、日本の働き方改革をリードする存在になってくれたらと期待しています。

信幸プロテック株式会社の成功ポイント3
  • ツールを活用しながら、客観的な課題把握と取り組みの優先順位づけを実施
  • バックオフィス部門から現場部門へと対象範囲を広げていった戦略的な段取り
  • 情報を出し惜しみせず、他社との交流を積極的に図るオープンマインド

※こちらの事例は、弊社代表 小室淑恵の著書『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』からまとめ直したものです。


担当コンサルタント

事例紹介一覧へ戻る