フクヤ建設株式会社様
効果検証を行いながら、着実に残業時間を削減。営業チームでは10.3時間の残業時間削減、新卒応募者数3.5倍の成果。設計チームでは会議時間50%削減をはじめ業務効率化・チーム協力体制の強化に成功。取り組みを発信し、人材確保→生産性向上の好循環サイクルを構築!
高知県では、働き方改革を実現できる企業を増やすべく、2020年から「働き方改革実践支援事業」を開始。株式会社ワーク・ライフバランスの働き方改革コンサルティングを導入し、ワークライフバランス実践支援事業を進めてきました。今回は、対象企業として約8か月間にわたり働き方改革の取り組みを行ったフクヤ建設株式会社様に、取り組み内容をご紹介します。
1971年設立。社員数50名(2022年4月現在)。高知を拠点に建築の提案・設計・施工管理を行う。2022年3月、高知県ワークライフバランス推進企業に認証(次世代育成支援部門・女性の活躍推進部門/2022年3月~認証、健康経営部門/2019年9月~認証)される。
フクヤ建設の社員の社員の皆様による「カエル会議」の様子もご覧いただけます。
・動画はこちらからご覧ください。
※2021年当時のもの
フクヤ建設株式会社は、2021年7月、高知県が実施する「ワークライフバランス実践支援事業」の対象企業に選定され、 2021年7月〜2022年2月まで「働き方改革コンサルティング」を導入。働き方改革を通じて、課題の解決や生産性の向上に取り組んできました。2022年2月21日にオンラインで開催された、「令和3年度 高知県ワークライフバランス実践支援事業 最終報告会」の内容を中心にお届けします。
目次
【発表1】 フクヤ建設株式会社営業チーム 平岡美香さん
女性が活躍する職場 / 残業時間の短縮」と「整理整頓」に取り組む / 大掃除とレイアウト変更の効果 / 人材の確保・育成の取り組みも加速! / 人材確保から生産性向上へ / 担当コンサルタント 滝沢雄太の総評
【発表2】 フクヤ建設株式会社デザイン課設計チーム 竹村春香さん
4つの取り組みを実践 / メンバーの感想とメッセージ / 今後に向けたアクション / 担当コンサルタント 滝沢雄太の総評
【発表1】 フクヤ建設株式会社営業チーム 平岡美香さん
女性が活躍する職場
フクヤ建設は女性の割合が50%であり、建設業の平均(14.2%)と比較して女性の割合がとても多い建設会社です。また女性役員は50%、女性管理職も40%、女性の現場監督は2名。建設業での女性管理職の平均が2.4%(2021年7月~2022年6月時)ですから、女性が多く活躍している会社といえます。
育休取得者は今まで100%でしたが、2021年末に男性1人が育休を取得し、男性も取得率100%となりました。このようにフクヤ建設は変わり始めています。
「残業時間の短縮」と「整理整頓」に取り組む
営業チームでは、まず「残業時間の短縮」と「整理整頓」に取り組みました。
■残業時間短縮では、以下の取り組みを行いました。
- ・「カエリMonday」の設定…月曜日にみんなで定時に帰る取り組みです。
- ・「集中ボード」の作成…仕事に集中しなくてはならない時間帯を見える化しました。
■整理整頓では以下のような整頓術を実践しました。
- PCのモニターを棚に設置…デスクトップPCがスペースを取って邪魔になっていましたが、棚に収納することで、画面をみんなで共有できるようにしました。
- 書類をPDF化してiPad内で管理…ファイル作成・管理の手間が省け、ペーパレス化で地球環境にも優しい取り組みです。
- ゴミ袋一杯になるまで捨てるTime…ゴミ捨て競争のようになりゲーム感覚で断捨離ができました。
- 「デスク採点表」の作成…「机の乱れは心の乱れ」を合言葉に全員で机の整頓度をポイントで評し、最低得点者は周知されやすい場所に公表することを決めました。見せしめのように受け取られることも危惧しましたが、生産性向上につなげたいという意図を共有でき、他社様にも共感していただきました。
大掃除とレイアウト変更の効果
社員数が増え、手狭になってきたため、全社で大掃除とレイアウト変更を実施。結果として移動しやすく、チーム内はもちろん、他部署とも連携が取りやすくなり、フリースペースも確保できて作業しやすくなりました。
会社内でも整理整頓が加速したのですが、一部の人が改善しないという問題を抱えていました。ところが、ある日突然きれいになっており、何か心境の変化があったのかもしれないと思っていたところ、なんと2か月後に土地家屋調査士の試験に合格するという出来事がありました。
机が整頓されたから合格したわけではないかもしれませんが、残業時間短縮を中心とした働き方改革の取り組みが合格につながったと考えています。現在は全社的にもみんなで定時に帰る「カエルデー」の設定など「早く帰る意識」が浸透しているのを実感しています。
人材の確保・育成の取り組みも加速!
人材確保と育成ができないために、個々人の負担が大きくなるという課題を解決するため、ハローワークの求人票やホームページの見直しを行いました。
求人票に「高知県ワークライフバランス推進企業」と追記し、今回の取り組みをホームページに掲載したほか、WEBエントリーを導入し、中途採用フローなども明確にして公開したところ、中途採用者の応募者が急増しました。ハローワーク経由の応募は10倍近くにもなっています。
ただし、履歴書や面接だけではお互いのことがわかりません。そこでNMT(ノット・ミスマッチ・ツアー)を開催。いわゆる転職者向けの職場体験であり、このツアーに参加してもらうことで、転職者の不安解消やミスマッチ防止につなげる意図があります。
人材育成に関しては、全職種の業務を洗い出して見える化しました。マニュアルやスケジュール、スキルマップを作成し、みんなで会社全体の業務を共有することで、属人化を解消する試みです。そのほかにも、メンター制度やセルフ・キャリアドック制度など人材育成につながる各制度の導入が決定しています。
人材確保から生産性向上へ
上記の取り組みを開始して以降、4か月半のあいだに22名の応募をいただき、10名の中途採用につながりました。UIターン者2名、全国的にも人材獲得が難しいと言われる有資格技術者も5名入社しています。
これは会社として非常に大きな成果であり、財産となりました。面接などでは、働き方や生活スタイルを見直したいという方が多く、そのような方々にフクヤ建設を選んでいただけたことをとても嬉しく感じています。
また新卒採用のエントリーも増え、県外の大学生からの応募が3.5倍に増加するなど、反響の大きさを実感しています。
働き方改革の取り組みは思い通りにならないことも多いですが、面白がりながら誰でもできることから取り組むと周りも巻き込めますし、皆も共感してくれて結果的にうまく進むと感じました。今後も楽しみながら人材確保、業績・生産性向上へつなげていきたいと思います。
ワークライフバランス実践支援事業前と比較して10.3時間の平均残業時間の削減に成功
担当したコンサルタント 滝沢雄太の総評
営業チームは、平岡さんが当初から働き方改革に熱意をお持ちで、最初のカエル会議*でも積極的にファシリテーターをしてくださり、チームの皆さんが話しやすい雰囲気を作ってくださっていました。
ただ、当初から順調だったわけではなく、みんなで集まってカエル会議を実施できない期間もありました。そんな中でも、集まりやすい時間を話し合い、フレキシブルに時間を捻出しながら取り組みを進めてこられました。
働き方改革の取り組みを社会に発信されたことで、採用が大きく変わったことも大変素晴らしい成果だと思います。建設業で採用が増えた事例は珍しく、いかに優れた取り組みであるかを示していると思います。今後とも期待しております。
【発表2】 フクヤ建設株式会社デザイン課設計チーム 竹村春香さん
4つの取り組みを実践
「個人の目的・目標を明確にして楽しみながら仕事をする」「作業効率を上げ、定時に帰るとともに、プライベートを充実させる」。この2点を目標に取り組みを行ってきました。以下、4つの取り組みについて発表します。
①共有フォルダの整理
共有データがフォルダ管理されているものの、どこに何があるのかわからず、同じ資料がいろいろなところに散在していました。そこで内容ごとに番号をつけて整理し、フォルダの作り方も周知徹底しました。
結果として、他部署も含めてデータを共有しやすくなりました。自分の担当物件以外でも目的のファイルを見つけやすくなったのが良かったと思います。
②標準仕様の整理と図面の標準化
設計の仕様や図面の書き方などの標準が定まっていなかったため、新人が入ってきたときの育成に時間を要していました。
そこで標準仕様の内容を整理・見える化し、お客様にもお見せできる資料として作成しました。またベースとなる図面も作成することで、新人スタッフも仕様と仕上がりイメージを共有しながら図面を書くことができるようになりました。
③「火曜日帰るデー」と「目標退社時間宣言」
定時に帰れないという課題を改善するため、早く帰る日と、目標時間の設定を行いました。
火曜日帰るデー…設計チームは比較的水曜日の休みが多かったため、前日の火曜日を帰るデーに設定。目標退社時間を18時に設定し、18時になったら帰る雰囲気を作っています。取り組み開始後、意識が高まり、他部署に認知されたこともあり、早く帰る人が増えたと感じています。設計スタッフ全員の平均残業時間も、半年で約20分減少しました。
目標退社時間宣言…朝礼時に行っていた作業予定の発表に加え、目標の退社時間を報告するようにしました。
効果としては、
- その日のゴールを設定することで、時間軸でのスケジュールを考えるようになった
- 皆の目標退社時間を知り、周りもその時間を意識することで帰りやすい雰囲気になった
- その日作業が詰まっている人の作業分担や、作業の優先順位の調整ができるようになった
が挙げられます。時間に対する意識が高まり、チーム内での協力体制もできてきました。
④設計会議の役割分担
会議時間の短縮と全員の参画意識を上げるため、会議に必要な役割(司会進行、議事録、スケジュール表の更新・修正、会議室事前準備)を決めて毎週ローテーションで作業分担を行いました。
「役割を持ったことで会議での発言回数が増えた」「若手社員でも役割を持って会議に臨めた」「時間の設定をしてから会議を始めるため、スムーズに会議を進行できた」という効果が挙げられます。
それまでは会議に平均2時間かかっていたのですが、最近ではおおよそ1時間で終わるようになりました。
メンバーの感想とメッセージ
取り組み後、次のような感想が寄せられました。
- 「特に実感したのは、目標退社時間宣言です。毎日目標を設定することで作業内容の把握や管理がしやすくなり、忙しい人をフォローすることでチーム力が上がったと思う」
- 「火曜日帰るデーができ、火曜日に対するモチベーションが上がった。就業後のプライベートを楽しむ時間を確保できるようになった」
- 「会議時間の短縮につながり、帰宅時間が自然と早まった。帰りやすい雰囲気ができてよかった」
- 「図面の標準化を行ったことで、図面の整合性が取れ、全体をまとめやすくなった。図面に統一感が出た」
今後に向けたアクション
残業時間は以前よりも減りましたが、定時退社はまだ難しいところがあります。引き続き時間に対する意識を高め、作業効率アップを目指していきます。また、現状の作業の見直しと作業の単純化、アウトソーシングの検討を進めるつもりです。
取り組みをオープンにすることで、会社全体への周知、個人の意識付けにつながり、時間を少しずつ生み出すことができました。この機会を利用して取り組めば、少しずつでも何か変わることがあると感じています。
担当したコンサルタント 滝沢雄太の総評
「目標退社時間の宣言」や「火曜日帰るデー」といった施策の効果検証をきちんとされているところが素晴らしいと思います。平均で20分残業時間が減少し、一番多い月と少ない月で平均51分も下がったとのことで、意識することで変えられる部分がかなりあり、他部署への好影響もあったと感じました。
カエル会議の雰囲気も当初とは大きく変わり、皆さんが次々に意見を言い合い、確実に良い変化が生まれたと思います。ほかにも、会議で紙を一切使わずにiPadを活用されているのが印象的でした。入社されたばかりの方もiPadを使いこなしておられて、素晴らしいと感じました。
*カエル会議…働き方について議論する会議。最初に「どんな働き方を目指すのか」「どんな成果を作っていくのか」について意見を出し合い、「ありたい姿」を決め、そこに向かって、「課題となっていることは何か」「できることは何か」を議論しながら取り組みを進めていきます。
2022年、2021年に引き続き、高知県ワークライフバランス推進企業に認証(次世代育成支援部門、女性の活躍推進部門、健康経営部門)されたフクヤ建設さん。ここからは2023年2月22日に行われた最終報告会での発表と2022年度の事務局平岡様へのインタビューをご紹介します。
【フクヤ建設様最終報告会発表】
フクヤ建設は大きく 4つの事業部に分かれています。主に新築住宅を扱う戸建事業部、民間公共建築物や公共工事を扱う民間公共事業部、建物を蘇らせるだけではなく買取再販などの事業も行うリノベーション事業部、さらには新しく Eat&Goods 事業部も立ち上げ、仁淀川のほとりにカフェをオープンさせ、ドッグランを併設するなどの事業を行っています。
今回の働き方改革の取り組みにより、人材確保が順調に進み、男女比の割合では建設業の平均が14.2%のところ約半数が女性。女性管理職の割合が平均3.1%のところ33%。さらに新卒新入社員の離職率は2.2%であり、厚生労働省発表平均値(高校 36.5%、短大 41.4%、大学 31.2%)を大幅に下回っています。
私たちはコミュニケーションが重要であるとの認識のもと、以下のチーム目標を設定して取り組んできました。
「コミュニケーション力を高め、相互理解(情報共有・役割分担)をすることで時間を効率よく使い、健康的で働きがい・生きがいのある会社。プライベートの充実・キャリアアップを目指す」
主な取り組み
疲労・ストレス対策
従来はそれぞれの机で休憩を取っていましたが、「周りが気になってゆっくり休憩できない」「休憩中もつい仕事をしてしまう」といった声もあり、仕事と休憩を分けられないところに問題がありました。そこで倉庫を改造して休憩室を設置。ソファーもあり、ゆっくり休めるスペースになっています。
さらに、人事課では「パワーナップ」と呼ばれる短時間のお昼寝制度を試行しました。頭がすっきりして仕事に意欲的に取り組めた一方で、物音や周囲が気になって寝られないといった声も出ましたが、社員同士が意見を出し合い楽しみながら取り組んだことでコミュニケーションの活性化につながりました。また、パワーナップを試した結果、周囲の理解や休憩室の必要性に気づくこともできました。
有給休暇取得率の向上
中間報告時に、有給取得率を向上させる目的で導入したGG(ジージー)・BB(ビービー)休暇についてお話ししました。これは全社員対象ですが60歳以上の社員は無条件で取得でき、家族のためなどに使える有給休暇です。
この休暇をお孫さんのために活用し、孫活の模様を動画で送ってくれる社員が出るなど、普段コミュニケーションを取ることがなかった方ともコミュニケーションを取るきっかけができました。
さらに若手社員向けのキャッチーな休暇制度がほしいとの声を受け、より有給を取得しやすくなるよう全社員対象で20代は無条件に取得できる「フレッシュ休暇」という制度を導入。利用者からは「楽しみがあるからこそ頑張れたし、次の始まる業務にすっきりした状態で臨むことができたのでよかったです」といった感想をいただいています。
コミュニケーションの向上
コミュニケーションの基本は挨拶からということで「挨拶強化週間」を設けました。もともと挨拶のある職場でしたが、朝の出勤時はタイムカードに向かって挨拶をする方が多く見受けられましたので、社内のデザイナーがオリジナルのポスターを作成。各所に貼って挨拶強化週間をアピールしました。
ただ、初めは楽しく取り組んでくれるムードもありましたが、しだいにポスターの存在に慣れてしまい、当初よりも意識が薄れてきたようにも感じています。取り組み自体はとてもよいので、また違った形で継続していければと思います。
コミュニケーションの向上に関しては、人事課としてハラスメントの問題にも取り組もうと考え、全員がオンライン研究講座を受講し、受講証明書を取得しました。
その上でハラスメントの具体例を紹介するポスターを制作しました。問題意識を高めるきっかけになったと思っています。また、お子さんを持つメンバーがハラスメント相談窓口に名乗りを上げてくれ、気軽に相談できる環境も作りました。
さらに、「感謝の気持ち・良いところ・素敵なところを認め合おう!」というテーマで「ありがとうボード」の制作を企画。ちょうどクリスマス期間と重なっていたことから、「ブラボーツリー」と名づけたクリスマスツリーづくりに社員全員で取り組みました。ツリーをきっかけに、新たな社員同士のつながりが生まれたり、雪が降った日にお子さん連れで出勤し、勤務することを認め合えるなど、より社内のコミュニケーションが深まったと感じています。
まとめ
成果としては、有給休暇取得率が昨年度と比較して1月末時点で40%増加しています。新しい休暇制度などを設けたことで、休みやすい環境になったのは間違いありません。
さらにはブラボーツリーなどでお互いを理解し合うだけでなく、みんなのために学んで貢献しようという学びの意識も向上しました。また、私たちの取り組みを社外に発信することで、先日行われた合同企業セミナーの訪問者数が他社様と比較して1.9倍となりました。今回の取り組みを通じて、いろいろな楽しさや嬉しさを実感しています。
決して全部がうまくいったわけではなく、断念したこともたくさんありますが、自分たちが楽しむことで周りの人も巻き込むことができ、このような成果につながったと思います。
担当コンサルタント・滝沢雄太のコメント
フクヤ建設の皆さんは、やらされ感ではなくて楽しんで取り組まれている姿がとても印象的で、皆さん自身が出されたアイデアをしっかりと実現されていたと思います。昨年度もお取り組みいただきましたが、今年度はさらに成果につながったポイントが3点ありました。
1点目は、1人のリーダーが頑張るのではなく、チーム全員で頑張る取り組みへとステップアップされたことです。皆さん1人ひとりが役割分担をされ、発言量も増えるなど主体性が上がり、チームの関係性も向上したと感じます。
2 点目は有休取得の推進です。休暇のネーミングを変えることで取得しやすさを向上させるなど、本当にセンスが光る施策でした。建設業では、工期がある中でなかなか有給を取りにくい現状があります。その中で、工期と工期の間、工期が終わった後など、機会をうまく作って連続休暇を推奨されていたのもよかったと思います。
3 点目は承認し合えるような組織風土の醸成に取り組まれたことです。ブラボーツリーのビジュアルイメージも非常に素敵でした。仕事で感謝をされて嬉しくない人はいません。承認することは仕事のモチベーション向上や関係性向上にもつながります。日常から行えている組織は少ない中で、フクヤ建設さんは上手に組織風土を醸成されたのではないでしょうか。
今後は人事チームとして全社展開の施策を考えて実行していただきつつ、まだ働き方改革の取り組みに意識が薄い方や興味をお持ちでない方を巻き込んでいってほしいです。この働き方改革の意識をさらに広げていくことを期待しています。
2022年度のお取組みを振り返って、事務局平岡様へのインタビューを実施しました。その内容をご紹介します。
WLB 滝沢:2022 年度も事業に応募しようとされたのはどんな経緯からでしたか
平岡:1年目の効果がすごく高かったというのが一番の理由。2年連続の機会がいただけたので応募しました。
1年目の効果が大きかったことを社内でも実感し、人事チームも大変興味を持ってくれて自分たちが目指しているものとかを実践事業を通じてできるんじゃないかと考えたんです。
WLB 滝沢:1年目は営業設計で取り組まれて、2年目は人事課を対象チームとされた。何か理由や思いがあったんですか?
平岡:1年目に関しては私がその営業に所属してたというのもあったので営業チームを推薦し、弊社代表から設計チームもやってみたいという想いがあり、どちらかというと事務局が決めたといいう経緯がありました。しかし2年目は人事メンバー自らがみんなでやっていこう、やりたいね、との声が上がって決まりました。
WLB 滝沢:なるほどから皆さん主体的に取り組んでくださった。
2年目にやりたい、と声が上がったのは、やはり1年目の結果があり、社内への周知、またフクヤ建設さんの場合は社外への発信も大変うまく活用されていましたね。それもとても効果的だったのかと思います。
2年目が始まる当初は、期待とか、逆に不安などはありましたか?
平岡:2年目に関しては1年目の取り組みに関して社内が理解し良く受け取ってくれていたこと、また、滝沢さんや県庁の方からのサポートも引き続きいただけて、その都度ご相談できたりご提案いただいたりしたことで不安はありませんでした。人事メンバーでもあり、事務局としても動いていた私自身も含め、メンバーがやりたいようにやらせてもらえたと感じています。
特にライフ・スイッチに関してもご提案をいただけて、実施できたことも、嬉しかったというか新しいことができたという達成感ありました。
※「ライフ・スイッチ」は、 別の人生を疑似体験しながらダイバーシティ、タイムマネジメント、心理的安全性、チームビルディング等を楽しみながら学ぶことができる、シミュレーションゲーム型研修です。
WLB 滝沢:はい、実際に貴社で実施いただいたライフ・スイッチですがプレスリリースでの発信もありましたが、高知テレビさんでも放送されたりと大変反響がありましたね。
社内での研修の効果に加え、そういった形で社外への発信に繋がった事はお取組みの熱をさらに高めることにつながったのではないかと思います。
平岡さんからご提案いただいた実施場所も蔦屋書店というオシャレできれいな場所で、改めて私たちも場の雰囲気が大変良かったなと実感しています。
平岡:ご一緒に企画ができて良かったです。
WLB 滝沢:さて、一方で取り組みを進める中で苦労した点や難しかった点はありましたか?
平岡:人事のメンバーが想像以上に頑張ってやってくれた。特に若いメンバーはそれまでは人事部の中では発言していてもそれぞれの部署や全体の場では発言が少ないことが多かったが取り組みに主体的にかかわり始めたことで、各部署に持ち帰っての発言などがすごく増えたと感じています。
WLB 滝沢:確かに、私の目から見ても若手の方々の発言力が増しましたね。特に1年目設計チームでお会いし、2年目は人事として参加された方は初年度は躊躇されてる雰囲気でしたが2年目からは驚くぐらい発言量が増えてらっしゃいました。
平岡:そうなんです。彼女はもともとすごく意思を持っているんですが自主的に発言する事が少なかった。でもきっかけを作ることで報告会の際など影響力のある言葉でしっかり伝えてくれた。
若手だからこそ周りがきっかけを与えてあげることでグッと伸びていくんだなっていうのをすごく感じさせられた。
どんどん殻を破ってき始めているなっていうのは感じます。
WLB 滝沢:なるほど、意識して役割を与えたりとかその機会を与えるとしっかりと活躍してくださる。
平岡さんや周りの上司の方の気づきがものすごくいいなと思います。貴社のマネジメントされてる方でしたら同じように考えて、どんどん若い方に任せるとか、機会を作るっていうことをこれからも続けられていくと益々、新しく入られた方が活躍しやすい職場になるのかなという感じがしますね。
平岡:はい、実践事業というきっかけを通して実現したのだと思います。他の部署でも同じようにできればいいですが伝え方が難しいですね。
WLB 滝沢:言葉だけで説明すると難しいかもしれないですが、マネジメントとか管理職の方が実際にその変化を体感してみられる場を作って、本当にメンバーが発言してくれたと実体験できる機会が作れると良いですね。
平岡さんは事務局として、また人事のリーダーとして、この期間工夫してこられたことや意識してやってこられたことはありますか?
平岡:そうですね、自分自身が楽しんでやるという事ですかね。雰囲気づくり。ライフ・スイッチも場所を変えて書店でやったりだとか、一度滝沢さんにもお越しいただいた仁淀川のCOCAGE Villa FUKUYAでやったり、ランチミーティングを社内じゃなくて社外でやるなど、雰囲気を変えることで発言の質も変わってくる。社内でやるよりも、社外でやった方が、「ここだけの話と思って聞いてもらえますか」とかいう意見もあったり。場所を変えるだけでもいろんな意見がすごく出てくる実感があったので極力そういった機会は設けたいなと思い今もそれは続けています。なかなか時間が合わすのが難しいですけど。
また、とにかく楽しそうにやる、という事を心がけていました。そうすると周りの人たちも「何?何?」と興味を持ってくれやすい。啓蒙のポスターを張るにもキャッキャッと盛り上がりながら。笑
後は周りを巻き込むためにGG休であったりだとかもターゲットとなる人には積極的に普段話す機会を作るように心掛けた。普段は60歳以上の現場監督と話す機会も人事としてはそんなに多くはないのですが常に相談しに行ってみよう、報告しに行こう、と心がけていました。
WLB 滝沢:実際に報告会で拝見した休暇の様子なども本当に楽しそうで、いろんな方々をうまく巻き込まれてきたんだのというのが伝わってきました。
平岡:自分たちの働く環境やライフスタイルはだれしも気になることだと思うんです。仕事だけでいいとは思っていないし、そういう話題を本当は話したいけれどどうしたらいいのかわからない方が多かったのかと。でも実際に話してみて皆案外ノリがいいことに気がつきました。笑
WLB 滝沢:報告会の発表会に参加した他社の建設業の方からも後日「楽しみながら色んなアイデアや発想が出てくる取り組みって本当に素晴らしい。自分たちもそんな風に取り組みたい。楽しそうにやれるポイントにすごく興味がある」という感想をもらいました。
平岡:私たちもできる範囲での事しか実はやっていないんです。できないような目標は掲げないですし。ポスター作るのとかデザインの得意な社員がいるので任せてみたり。
出来なかったことは無理に続けずにやっていないです。お昼寝タイムなども案に出ましたが結果すぐにできないなと判断してやめてしまったし。
有給取得も何割あげるぞ!と最初から大きな目標を掲げていたらできていなかったかもしれないけれどやれることをやれる範囲で継続してみたら結果的にできていたこともありました。
そもそも1年目なんて、机の片付けから始めた、ゴミ捨てから始めたんです。大きな目標でなくて何でもいい、目についたこと気になった事は何でもとりあえずやってみたらいいんじゃないかなと思います。
WLB 滝沢:確かにPDCAサイクルの循環を早く回されていた印象です。試しにやってみて違ったらそれはやめて次にこれをやってみようと大変柔軟に取り組まれていた。
平岡:そうなんです。無理なものをいやいや頑張るんだよ、乗り越えてやろうよ、みたいなことは全くなかったです。
音楽を流すとかもそうでしたよね。いいねって始めたけれど人によっては集中できない人がいたりするので、じゃやめて次に、という感じで進めました。
WLB 滝沢:いいですね、切り替えだったり意思決定を早く進めていらっしゃったのですね。あとは議論の中でもポジティブな議論がすごく多かった事が印象的でした。「これはできないかも」とネガティブな発言が皆さんだから少なかったのでは、そこが特徴だったかなと感じます。
平岡:ありがとうございます。どちらかというと判断基準が面白いか面白くないか。面白いですねっていうことは大体うまくいったんですよね。有給なども恥ずかしいぐらい取得率が少なかったんですけど、GG休などに関しては張り切って取ってくれるようになったし、面白いことが基準だったと思います。
WLB滝沢:なるほど、面白いから取り組もうと自分たちも思えたのですね
平岡:GGの方たちが有休を取得するっていうのはなかなか難しく、20日与えられてもなかなか取れないとかいうような職人気質の監督さんだったんですけど、あんなに率先して毎週火曜GG休ですみたいな、あんなノリで休みを取ってくれるなんて、はい驚きです。時間給とかも使い始めたりだとか。
それも最初は「有給なんて、振替休取るのが精一杯だ」と言っていたのが「面白い」と思ったら人があれほど変われるんだというのも驚きでした。
WLB 滝沢:それはぜひ他社さんでも参考にしていただきたいポイントだと思います。
あとは人事課のメンバー皆さんの取り組まれての反応を教えていただけますか?
平岡:取り組んでみてすごく達成感を感じたようです。ポスターを担当したものに関してもみんなからの反応がうれしいとか、特に新しい部下が入ってきたりして上に立つようになったりしたときに仕事だけじゃなく働く環境の事を考えてあげられるようになったり、今いる人事メンバーも本当に社員に寄り添って考える力が付いたなと感じます。
WLB:業務、タスクだけでなく人にも関心が行くようになったと。
平岡:そうなんです。普段忙しくて余裕がない中かと思いつつ、自分だけの事だけではなく周りへの配慮できるようになりました。本当にいろんなことに気が付いてくれるようになったんです。
WLB 滝沢:皆さん兼務でやられていますもんね。
平岡:私が入ったばかりの頃は人事は嫌な部署というか、面倒な業務も多い部署というイメージで実際に担当になってもすぐに辞める人が多かった。
でも今取り組みを通してコミュニケーションが増えてからは大変ながらも楽しくやってくれているのを感じてうれしく思います。
新人が入ったときなども、あえて他部署の会議に出てもらっていますし、人事課の会議に来てもらったりして発言し合うところや雰囲気づくりを見て学んでもらいたいと思っています。
WLB 滝沢:オブザーブして実際に体験されるのはいいですね。あとは新人の方だけだと自部署に帰ったら上司の方がファシリテーションして中々場づくりしにくいこともあるかとは思うので、リーダーや上司とかマネジメントの方にもそういった雰囲気をつかんでもらう機会もあるとより良いなと思います。
平岡さん自身今年度の成果はどのように感じていますか?
平岡:何よりも楽しかったですし、やりがいもありました。社内だけでなく社外の方にも認めていただけるんですよね。これをきっかけにセミナーへの登壇機会が増えたり商工会のYoutubeに出させてもらったりだとかもありました。会社としても成長はもちろん、社員の成長ももちろん感じられました。
私個人としてはこういうふうに自分のやりたいことなどをやったことに対して認めてもらえたりだとか、声をかけていただけるっていうのがすごく嬉しかったです。
先日読売新聞の全国版でGG休を取り上げてもらったこともすごい成果だと思います。
報告会などで発信したことが県外の方から巡り巡って伝わっての事でした。
テレビ局からの問い合わせがくるなど社外へのPRとしても大変効果的だったと感じています。
WLB 滝沢:ここまで終えられて今後の抱負などありますか?
平岡:人事などが主体的にやりましょう!と言わなくても社内の皆が何かしら自発的に声を上げていってほしい。それを私たちが応援していくというような形にしていきたいです。
WLB 滝沢:いいですね、他社さんだとWEBのフォームを使って目安箱みたいなものを使っていたりします。全社員から働き方を良くするためのアイデアをたくさん意見を出してもらうことをやっています。
HPをご覧になっている、これから働き方に取り組もうとされている方へのメッセージをいただけますか?
平岡:すごく働き方改革って難しいだとか、何から初めていいか、何をしたらいいのかわからないとかいう方多いかと思います。でもまずは本当にできることだけから始めてみてください。ちょっとふざけてるかなって思われるような取り組みだとかも面白いと感じたらまずはやってみる。最初は確かに抵抗勢力がかなり強かったこともありました。でもそれにひるまず、めげずに乗り越えてもらえると状況が激変し、周囲の理解や協力がえられ楽しいことが待ってるので、大きな目標というより、まずはできることを気軽にやってみてもらえたらと思います。