Case Study

経営層連続対談企画 第4弾「忙しいのは勲章」という価値観からの大転換

JERA様トップ中村様

【対談】株式会社JERA 常務執行役員 最適化管掌 中村直様×株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵

 

自然体で取り組むだけでは変わらない

中村:昨年はご講演いただきありがとうございました。具体的なデータをもとにお話いただけたので、取り組みの意義が腹落ちできたと思っています。

小室:ありがとうございます。

中村:改めて、私が今課題に感じていることの1つは「自然体で取り組むだけでは、なかなか変わらない」ということです。

私自身は男女をフラットに見ているつもりですし、マッチョな働き方を推奨するタイプでもないと思っています。ただ、私のような男性が組織の上にいて、自然体で「男も女も関係なくいい人はいい」と言っているだけでは、変革の起爆剤として弱いと思うんです。本当に変えるのであれば、多少なりとも無理を承知でやる部分が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

小室:まさにおっしゃる通り、現状の延長線上で取り組むのでは変革は難しいんです。例えば、日本では「女性議員が少ないから、もっと増やしましょう」という話を耳にすることが多いですが、今の日本の政治姿勢で女性議員が自然に増えるのに任せていたら、他国の水準に追いつくまでに200年かかるそうです。

変革する上で一番大きなポイントは、「これは有限な資源を取り合う競争なんだ」という認識を持つことです。「女性活躍推進はダイバーシティ施策であり、男女同権のための取り組みなんだ」という視点で捉えると「やらなければいけないのはわかるけど、なぜそんなに優先順位高く、スピードを上げてやらなきゃいけないのか分からない」という話になります。けれども、「他企業と資源の争奪戦をしている」と認識すれば、いち早く取り組まなければ意味がないことが理解できます。

中村:資源の獲得競争であるということは明確に意識する必要がありますね。

 

女性たちの「日本大脱出」が始まっている

小室:私は今、夫の転勤を機にシンガポールと日本の二拠点生活をしていますが、びっくりするのは、シンガポールに「日本を脱出してきた」という女性が山ほど仕事で活躍しているということです。男性は転勤で他国に行くことが多いですが、自分の意思で日本を脱出しているのは圧倒的に女性なんですね。

さらにいうと、「日本ではお付き合いしても結婚には至らなかったけど、結婚相手=日本人という条件をやめた瞬間にあっという間に結婚できた」という人が多いんです。話を聞くと、日本以外の男性とは一緒に働くとか一緒に家事育児をやるという価値観をすぐにすり合わせられたのに、日本の男性とは全くすり合わせができなかったと言います。実際に、シンガポールで出会う素敵な日本人女性たちは、誰一人、日本人の男性と結婚していなかったので衝撃をうけました。

中村:そうですか。それはまずいな……。

小室:私は女子高、女子大出身なので女子高校生向けに講演する機会が多のですが、ある学校の講演後のアンケートを読んだら「私は、日本の女性があまりにも働きにくい話を聞くので、もう大学から海外に行き、海外で働こうと思っていたけど、今日小室さんの話を聞いたら日本の企業もちょっと変わろうとしてるみたいだから、日本の大学も一応受けようと思いました」と書いてありました。

つまり、日本は「女性活躍が進んでいない」のレベルではなくて、もはや優秀層の女性から「日本大脱出」が始まっているんです。普通に情報収集をして物事を考えている女性ならば、小学生とか中学生くらいの時点で、「国内では自分の努力が報われないけど、国外に出ればいくらでも報われる可能性がある」と気づいてしまうわけですよね。人材は日本の企業同士だけで取り合っているわけではない。そういうことが現実に起きているとお話しいただければ、危機感も高まるのではないでしょうか。

中村:本当にそうですね。変革というからには、「これまでのあり方を否定する」みたいな強いスタンスで取り組まないと駄目ですね。

小室:女性が日本を脱出しようとする背景には、日本の教育への絶望もあります。働く女性たちの中で「自分の子どもを、日本のような一律に管理してみんなに同じことをさせる教育環境に留めておくこと自体が危機である」「英語を習得できて、多様性が尊重される教育環境に自分の子どもを連れて行きたい」という意識が高まっているのを感じます。

中村:実際に、最近そういった理由で日本の企業を辞めて海外に転職された方の話を聞きました。日本もここまで劣化しているのかというのがショックでした。

小室:教育に絶望して日本からの大脱出が起きているのも、実は働き方が大きく関係しています。というのも、日本の教員には残業代が給与の4%しか支払われないという法律があって、4%というのは月額1万円です。残業時間はなんと100時間もあって、残業代は1万円ですから、時給100円で残業をしている計算です。先生たちは疲弊してメンタル不調に陥っています。

疲弊してイライラしている先生から毎日怒られるような学校に子どもを通わせていいわけがない。そんな危機感から日本の教育を見限る人も増えているんです。

 

現場の抵抗感にどう向き合うか

中村:変革を進めていく上で、もう1つ課題だと感じているのが、表には出て来ない何とも言えない抵抗感です。JERAでは女性を上位のポジションに配置することがありますが、登用した結果うまくいくケースもあれば、そうではないケースもあるわけです。男性を登用して失敗したときには「本人が良くない」とか「配置した人が悪い」という話になるのですが、女性の場合は「制度が悪い」「無理に管理職比率の目標達成を図ろうとした結果でしょ」といった話になりがちです。こういった女性登用の抵抗感に対して上手に説得する材料が、自分たちにはまだ足りないと感じています。

小室さんの講演では人口ボーナス・オーナスについてのお話を伺い「まさにそうだな」と感じたのですが、その一方でそれだと若干ハイレベルな説明になってしまうので、社内の各階層に対して「もっと女性を活用していこうよ」と説得するときに、人口ボーナス・オーナスの話だけでは大きすぎてなかなか響かないところがあります。どう伝えてアプローチしていけばよいのかと悩んでいます。

小室:現場でも上手く受け止められている企業の手法をお話すると、まず女性を登用する際に「結果を出せるマネジメント能力がある部署にしか期待の女性を配置しない」という点についてしっかりとお伝えしています。つまり、「女性登用は会社として重要な取り組みだからこそ、どの部署にでも任せられるわけではない。そんな中で、あなたはマネジメントとして、他部署と比べても人材育成能力がある。この部署のマネジメント能力、人材育成能力を非常に評価しているから、そこを見込んで、期待の女性を配置するんだ」ということを、その部署のトップに丁寧に説明するということでした。

すると「うちの部署は、会社から人材育成能力で評価されているから、今回女性を配置されたんだ」ということが認識できるので、認められている安心感から、配置された女性人材を責任もって育成するようになるのだそうです。

中村:最初に伝えておくことが重要なんですね。

小室:次に、うまくいったかどうかの評価に関しては、密なコミュニケーションでフィードバックすることが大切です。

「女性がうまくハマっていない」「制度が悪い」と言い出す部署のトップには、「上からうまくいっていないと思われているんじゃないか」という疑心暗鬼が生じています。様々な別要因も絡んで部署の実績が出ていない時などに「うまくいっていないことを責められたくない」という不安が高じた結果、自分を守る防衛策として「女性を無理に登用させられたから苦労している」と周りに言い始めるわけです。

ですから、女性を登用した部署のトップには「あなたは十分うまくやっているよ。彼女はまだ経験値が浅い点を分かった上で登用しているので、本来ならもっと難しかったはずだけど、あなたがうまくフォローしているから結果が出ているね。マネジメントとしてしっかり評価しているよ」などと、安心につながるフィードバックをしつこいくらいに継続して行うことが大切です。新しいことを先陣切ってやる部署は本当に不安なのです。

こうした不安をしっかり取り除くことで、女性が育っていないとか制度が悪いといった声が上がらなくなるはずです。

 

ダイバーシティの必要性を実感した原体験

小室:では、ここで視点を変えて中村さんご自身についてお聞きしたいと思います。中村さんはD&Iに関しての理解が深く、前々から社を引っ張ってくださる存在だと伺っています。何かダイバーシティの必要性を実感したきっかけのようなものがあったのでしょうか。

中村:遡ると随分前の出来事ですが、妻が約10年勤めていた会社を辞めて専業主婦になるという選択をしたことがありました。そのとき、妻とは「イコールフットでなくなる」という感覚があり、個人的には寂しく思いました。

ただ、当時の私達は、要するに忙し過ぎたんです。私も残業が多かったですし、妻もそこそこ残業をしていて、夫婦とも土曜日は12時間ぐらい寝ないと回復しないという感じ。週末は二人ともほとんど家事に追われて、生活がつまらなくなっていました。私は家事が得意ではないので、どうしても妻の負担が大きくなり、最終的に続けられなくなって辞めてしまったわけです。だから、やむを得ないと納得すると同時に、「これで本当にいいのかな?」という疑問が残ったんです。

小室:今振り返ると、中村さんと奥様の働き方さえ違えば奥さまは辞めなくても済んだわけですね。奥さまが働き続けることで社会に発揮できる価値も大きかったはず。そう考えると、日本が忙しさによって労働力を半分にしてしまったともいえます。

中村:労働力が半分なくなったというのは、本当にその通りだと思います。

小室:1人が仕事から脱落すると、もう1人が2倍稼げるわけではないので、経済はシュリンクしていきます。1社1社は自分たちの利益を多くしようとして従業員に残業させていますが、全体で見れば日本経済をシュリンクさせる結果につながっているわけです。

世界のトレンドを見ると、共働き率が増えた国ほど出生率は上がっています。なぜかというと、女性の社会進出に伴って男性が家庭参画せざるを得なくなるからです。男性が家庭参画すると、育児の手が単純に2倍になります。1人で育てると、子どもは1人か2人が限界ですが、2人で育てると2人から3人、4人ぐらいまで育てることができます。ですから、育児の手が倍増するかどうかは、社会全体にとってとても重要なことなんです。

いま日本では女性の社会進出は、アメリカを越えました。他国の傾向では社会進出が進むほど出生率が上がっているのに、なぜ日本では出生率が改善されなかったのかというと、働き方改革を行ってこなかったからです。他国では保育園は18時までなので、18時にお迎えに行くために、労働時間を改善する必要に迫られました。つまり、「女性の社会進出と働き方改革がセット」で行われたわけです。

けれども、日本だけが延長保育を行い、「女性を男性並みに働けるように」しました。その結果、日本は夫婦で疲弊する方向に向かい、女性の社会進出に伴って少子化が加速してしまったということです。

中村:根本的な問題は働き方にあったということですね。

それでも長時間労働が良くないと断言できる理由

小室:その後、中村さんの働き方はどのように変化したのでしょうか。

中村:1つの転機となったのが東日本大震災時の経験です。当時はLNGの短期やスポットの契約を担当していたため、LNGの所用量が増えたことで急に忙しくなりました。

最初の1か月は土日もないくらいのめまぐるしさでしたが、しばらくすると意外と午前中は静かであることに気づきました。というのも、相手は海外なので、時差の関係で電話やメールは午後に集中するんです。ですから、午前中は早くから事務作業をしたり社内の打ち合わせをしたりして、午後は顧客対応に専念し、夕方以降は電話やメールにも対応しないことに決めました。

朝7時半ぐらいに出社し、16時半頃には退社するようにしたので、毎日自宅で夕食をとり、家族と仲良くなることもできました。震災対応自体は大変な経験でしたが、家庭内コミュニケーションは良くなったんですね。そういうリズム感のようなものを、それぞれの仕事でみんなが見つけることができるようになってほしいと思っています。

ただ、会社全体で見ると「早く帰ろう」とか「無駄な仕事はやめよう」という掛け声はあるものの、そこまで魂がこもっていたわけでもなかったと思います。「忙しいということが、ある種の勲章」みたいになっていて、長時間働ける人=コミットしている人というイメージは今に至るまで大きく変わっていないようにも感じています。

小室:「忙しいのは勲章みたいなもの」「残業している人はコミットしている人」という良いイメージがあって、それは否定するほどのものなんだろうか。否定したらモチベーションが下がるんじゃないかと悩んでいるマネジメントはまだまだ多いかもしれません。

そこで重要なのは「組織で仕事をしている」という視点です。自分1人で仕事をしているなら、時に長時間労働をして疲れてもいいかもしれません。けれども、組織の中では1人ひとりが周りに影響を与えているわけですから、シビアに万全なコンディションが求められます。

会社は、その人の毎日の働きに対してお金を払っているので、お金を払うに値する脳の働きを保つ必要がありますし、周りに良い影響を与えなければなりません。仮に与えられた仕事をこなしたとしても、周りにネガティブな影響を与えてしまったら、本人は一生懸命仕事をしているつもりでも「職場全体の生産性はダウン」します。つまり、出社するだけ迷惑ということになります。「睡眠不足の上司ほど部下に侮辱的な言葉を使う」「それによって部下の日常的なワークエンゲージメントが低下する」という研究結果もはっきりと出ているのです。

ですから「長時間労働は良くないとまで言えるのか」という悩みに対しては、はっきりと「良くない」と言い切らなければ駄目です。長時間労働に関しては、どんなに本人が会社にコミットしていると自負していたとしても、360度いろんなところから検証してみると、誰かと協力したり効率的に進めたりすれば、その時間までやる必要のなかった仕事が大半です。コロナみたいな突発的な問題や災害が起きた場合の残業は防ぎようがないですが、だからこそ、平常時はしっかりと健康を維持して突発時に対応できる余力を持っておかなくては組織が崩壊してしまいます。

すでにGoogleが解明しているように、生産性の高いチームは心理的安全性が高いことが明らかになっています。やはり、徹底して「どうしたら長時間労働をしないで終えられるか」を進め睡眠時間を確保することで、多様性を受容し、おだやかなコミュニケーションの取れるチームの状態を維持することが大切です。

マネジメント視点でシビアに評価する

中村:おっしゃる通りであり、みんなが疲弊したコンディションで長時間職場にいたところで、意味があるのかな、と疑問に感じます。朝、万全の体調で仕事を始めなければ、良いパフォーマンスにならないと思うんです。

今日お話を伺って「忙しいのは勲章」という価値観を変えていくには、マネジメントする側の視点からアプローチしていく必要があると感じました。1人ひとりが頑張ってくれるのは全然OKなんですけど、頑張っている1人に依存するようになったらチームとして非常に危険ですし、サステナブルとはいえません。マネージャーの視点から、「1人が頑張ればいいわけじゃなくて、チーム運営の観点から働き方を変えていかなければならない」ということを、はっきり打ち出していかないといけないですね。

小室:言い換えると、実はこれまでのマネジメントは「その仕事の内容で残業代を出していたら、経営が成り立たない」というレベルの甘い判断をしていたということです。今までは甘い判断が黙認されてきたわけですが、これからはシビアに判断いただきたいのです。

しかしシビアにマネジメント視点で判断することが労働者の視点を無視しているかというと、そんなことはありません。どんなにワーカホリックだった人でも働き方を変えることで、家族が困っている時にさっと休みが取れて家族からの信頼を取り戻したり、人生が豊かになる上に何も失わないということに必ず気づきます。ですから、マネジメントは心を鬼にして「今ここで切り替えないと、あなたは全然通用しない人になってしまうよ」と言ってあげることが大事だと思います。

中村:頑張っている人に同情して終わり、という現状から抜け出さなければならないですね。

小室:仕事で忙殺されている方は、長期視点で学びができていないことも多いんです。本人は会社にコミットしてすごく頑張っているつもりだけど、実際には仕事に逃げてしまっているケースが目立ちます。何年も家と会社を往復するだけの生活をしていると、業界用語が通じないコミュニティーに出ていくのが怖くなり、自分の名刺が通用しそうな場だけで偉そうに動いてしまう傾向があります。名刺がなくても未知のコミュニティーに飛び込めるような人にならなければ、会社にいろいろな情報や人脈を持ってくることはできません。ですから、仕事に逃げている人を転換させることも重要です。

また、一部の人に偏っている仕事の見直しを徹底しておかなければ、コロナみたいな機会が起きたときに一瞬で仕事が回らなくなります。そういった観点から見直していけば、誰も苦しまず、経営的にもメリットが大きく、労働者にとっても長期的な成長につながる働き方が実現すると思います。

 

「1日8時間1本勝負」に徹する

小室:では現在、中村さんはどういうリズムでお仕事をされていますか。

中村:震災の時の経験から朝早く出社すると効率がいいと感じているので、朝は早く来て、夕方は特別な用件がない限り早めに帰るようにしています。

小室:早く帰るのは素晴らしいですが、できれば出社時間は皆さんと同じぐらいにしたほうがいいかもしれないですね。役員が早く来ると、1人で放置するわけにはいかないので、やっぱりちょっと気を遣うんです。今は会社にいなくても仕事ができる時代なので、近くのカフェでテレワークをしてから9時に来ていただくというのはいかがでしょうか。

中村:いや、そんな誰も気にしてないと思いますよ(笑)。

小室:いえいえ、役員というのは、いるだけで気を遣わせる存在です(笑)。自然に早朝に来ていると思っている社員の何割かは、中村さんに合わせて早めに出社しているのです。その社員は妻から「そんなに朝早くに出社せず、保育園の送りをやってもらいたい」と思われているかもしれません。

私は1日8時間1本勝負にしているのは、社員とフェアな戦いをするためです。「小室さんだけ10時間かけてでも成果を出せることになったら不公平です。小室さんも同じ1日8時間で勝負していただければ、私たちが頑張って抜いていきますから」と社員が言ってくれているので、いつも1日8時間1本勝負にこだわっているんです。

7時からカフェで仕事を始めたなら16時で仕事を終える。あるいは途中2時間中抜けして友人とランチをしたり、ジムで走ったりする時間の過ごし方もあります。そんなふうに8時間で仕事を終了していただき、周囲に「1日8時間1本勝負でやっている」とかっこよく発信していただければと思います。

中村:朝早く出社すると、そこで雑談をする機会が生まれて、それが良いコミュニケーションになっていることがあります。5分程度、たわいもない話をしているだけですが、階層を飛び越えてフラットに会話ができるので、私にとっては貴重な機会だと思っているんです。でも、早く出社している私の存在が周りの人を巻き込んでしまっているんでしょうか……。

小室:朝早く出社する人は、朝早く来る部下を評価しがちです。だから「トップが早く来るなら自分も早く行く」というスタンスのサラリーマンは非常に多いので、自然と「早く行く競争」が始まることがあります。

また、子どもの送りがある人、女性だけでなく男性にも増えていますが、そういったかたは朝早く出社できないので、肩身が狭くなるということもあるわけです。朝早くからコミュニケーションを取りに行ける人は、朝の育児家事を妻にお願いできる人なので、結局似たような価値観の人に偏ってしまう恐れもあります。雑談を増やす取り組みは非常によいと思うので、いろんなタイプの人と雑談を増やすために、例えばランチの時間などいろいろな時間帯でコミュニケーションを取られたほうがよいかもしれないですね。

中村:なるほど。コミュニケーションの偏りというのは、少し感じているところはあります。

 

リアル・オンラインのコミュニケーションを使い分ける

小室:今はリアルでの雑談が難しくても、チャットべースでコミュニケーションの場を作ることもできます。オンライン上に雑談の場を設けると、時間と場所の制約を超えられるので、多様な人との接点を持てると思います。

私の場合も1年の半分はシンガポールに住んでいるので、社員とリアルな雑談はなかなかできないのですが、その代わりSlack内に「コムラジオ」というチャットスペースを持っています。私がそこに今日の出来事などを書き込むと、いろいろな返事が返ってきます。またオープンな場なので、特定の社員だけが私と親しいという状態にならないので、心理的安全性を高めるために効果的です。心理的安全性の高い組織の特徴は、全てのメンバーのコミュニケーション量が同じであることが分かっています。

他には、社員が「朝メール」(自分の仕事を30分単位で組み立てて、朝いちばんに社内に公開するアプリ)で始業時に業務予定を発信する際、コメント機能で、自分のプライベートの話題も書くので、それを見に行って「へー、キックボクシングやってるの?試合に出るの?凄いね、頑張ってね」といった雑談をしています。

終業時には「夜メール」で1日の振り返りを行うわけですが、短時間勤務の人は4時半とかに夜メールを書くことになります。リアルの職場で4時半に帰る人は、忙しくしている人の邪魔をしないように静かに帰るしかないですが、オンラインで夜メールのコメントに「今、帰ります。今日実は◎◎を受注したんですよ」などと書き残しておけば、18時にみんなの業務が終わった後で、「受注したんだ、おめでとう!」といった称賛の言葉をかけることができます。時間や場所が多様なメンバーで働く時は、むしろオンラインツールのほうがコミュニケーションが取りやすいことがあるので、リアルとオンラインを使い分けられるといいですね。

中村:ぜひ参考にしたいと思います。

小室:ぜひトライアルしてみていただき、ぜひ変化があれば教えてください。中村さんとは、とても具体的な意見交換が出来て、とても有意義な時間となりました。本当にありがとうございました。

中村:どうもありがとうございました。

 

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