Case Study

株式会社大谷興産様

健康で働きやすい環境をつくる。~環境改善・受動喫煙コスト300万円削減など社員の健康を考えながらスピーディな働き方改革の実践と粘り強い周知活動で浸透を図る~

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高知県では、2020年から「働き方改革実践支援事業」を開始。株式会社ワーク・ライフバランスの働き方改革コンサルティングを導入し、ワークライフバランス実践支援事業を進めてきました。今回は、対象企業として約8か月間にわたり働き方改革を実践された株式会社大谷興産様のお取り組みのポイントをご紹介します。

株式会社大谷興産

高知市内の建設会社。社員数44人。高知県内で土木工事、舗装工事、建築工事、運送業、砕石販売業を営み、「大きくはないが強い施工能力を持ち質の高い企業」を目指す。2021年、高知県ワークライフバランス推進企業に認証(次世代育成支援部門)される。

株式会社大谷興産は、2021年7月、高知県が実施する「ワークライフバランス実践支援事業」の対象企業に選定され、 2021年7月〜2022年2月まで「働き方改革コンサルティング」を導入。働き方改革に取り組み、課題の解決や生産性の向上を目指してきました。2022年2月21日にオンラインで開催された、「令和3年度 高知県ワークライフバランス実践支援事業 最終報告会」の内容を中心にお届けします。(登壇者:株式会社大谷興産 多田芳郎さん

4つのアクションを実施

「お互いに協力しながら全員が守れる社内ルールを構築し働きやすい環境を作る」という目標を掲げ、現在の達成度は80%程度と判断しています。実施したアクションは次の4つです。

①タバコのポイ捨て・受動喫煙の防止

ポスターによる啓発、清掃活動、社内完全禁煙、喫煙者への毎月の状況確認を行いました。

「会社としては皆さんの健康を考えているので、タバコを1本でも少なくするようにお互いに努力していきましょう」「タバコをやめた分のお金で、お子さんやお孫さんに何かしてあげれば喜ばれますよ。老後の蓄えにされてもいいのではないですか」などと地道な説得も繰り返しました。

その結果、喫煙者が1人減り、全体の喫煙本数も約510本→350本にまで減少しています。離脱時間を1本7分とすると、510本×7分=3.57時間。1年間の人件費に換算すると約1100万円のコストに相当していましたが、これを約800万円にまで減らすことができました。

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②報・連・相の徹底

従来は口頭・電話での報告がメインでしたが、上司から「聞いていない」という声が上がることが多かったため、「ホウレンソウボード」を作成。給料袋を活用して周知徹底を図りました。 欠勤届についても記入しやすい選択式に変更し、申請方法の説明も行いました。結果、現在の提出率は100%近くに達しています。

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③BCP安否確認

当初2021年12月の時点では84%の達成率でしたが、1月は94%、2月は97%まで向上しました。安否確認については、30分以内を目標としています。仕事の関係上、手が離せないこともありますが、連絡がない人にはその都度、個別に確認・指導を行いました。現在では45分以内にほぼ安否確認が届くようになっています。

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④制服について

検討の結果、現状の制服の色・形状を維持する一方で、ベストの新調を決定。従業員に支給を終えています。

今後のアクション

タバコについては禁煙会を発足し、グループで喫煙を減らしていきたいと考えています。取り組み後のメンバーの感想は以下の通りです。

  • 「社内に高齢者が多く、ワークライフバランスを理解してもらうのが非常に難しかったと思います。タバコのポイ捨てという身近なところからの一歩でしたが、次のステップになったと思います」
  • 「従業員の健康を考え、人生100年時代に長く勤務していただきたいという思いから、身近な事柄から少しずつ従業員の健康と定着を図りました」
  • 「従業員個々のライフステージに寄り添い、柔軟で活用しやすいワークライフバランスの浸透が今後の目標になれば良いと思います」

今回の取り組みを通じて、同僚や上司の考えを聞くことができました。また、その考えを集約して全員に周知し、協力を仰ぎながら実践できたことで、それまでの不安が晴れました。これからも意見を出し合い、集約して取り組んでいきたいと考えております。

担当したコンサルタント 横山真衣の総評

キックオフのときに、タバコのポイ捨てを課題に挙げられていましたが、1カ月後にはすでに敷地内全面禁煙を実践されていました。決定してからの行動がとても早かったという印象を受けています。

また、多田さんが喫煙者1人ずつに「何本吸っているのか」を毎月ヒアリングされ、減ったかどうかの数字を記入されていたのが素晴らしいと感じました。ご自身も喫煙者だった経験を踏まえ、いろいろなデータや喫煙コストをお伝えしながら、徐々に考え方を変容させた取り組みに心を打たれました。

意識改革は、一朝一夕にはできないものであり、話し合いを重ねるしかありません。それを諦めずに粘り強く続けることが重要であり、熱意を持って実践したからこそ成果が出たのではないでしょうか。

ホウレンソウボードや欠勤届についても、作成し、仕組み化し、周知を徹底するまでのスピードが非常に速かったと思います。プランから行動までのワンサイクルが速ければ速いほど成果につながりますし、従業員が行動を改めるスピードも加速します。

ぜひ引き続きトップスピードで走っていただき、健康企業として走り続けていただきたいと思います。

 
 

令和4年度高知県ワークライフバランス実践支援事業最終報告会

高知県では県内企業の働き方改革サポート事業として、当社がモデル企業の伴走支援を行う「高知県ワークライフバランス実践支援事業」を実施。2022年度は3社がモデル企業となりました。

キックオフではそれぞれの企業のありたい姿を決定。働き方について考える「カエル会議」を通じ、ありたい姿に向けて現状とのギャップや課題は何なのかを議論し、自分たちで考えた施策を実行して結果を振り返るPDCAサイクルを回していただきました。

2023年2月22日、約半年の取り組みを通じて得られた成果や気づきを報告・共有する最終報告会を開催しまし株式会社ワーク・ライフバランス大谷興産様でも今年度のお取組みの発表をされましたのでその内容をご紹介します。


当社はこれまで、従業員が必要な資格を取得したにもかかわらず、他社に引き抜かれていくという問題を抱えていました。その最大の原因は休みが取れないことにあると考え、以下のチーム目標を設定して取り組んできました。

「お互いに協力しながら、休める環境を創出し、働きやすい会社を目指す。」

主な取り組み

休日に関する周知文書を作る

職長から現場作業員等に就業規則が伝わっていないという課題を解決するため、休日に関する周知文章を作成し、玄関に張り出しました。あわせて部長・社長から有給取得を促す発信も行いました。

月間休暇予定表も作成し共有

予定表に社員の名前を記載し、自分が休みたい希望日にしるしを付けてもらうとともに、休暇の実績表を作成。予定と結果を参照しながら、有給取得を推進しました。

各現場2人体制にする

休みやすい環境を作るために1現場2人1組体制にしました。

段階確認をオンライン実施する

段階確認のために現場まで移動すると、市内でも往復1時間程度かかります。どうしたらそのロスを削減できるかと考え、オンラインで行うことにしました。仮に往復1時間、週2回、8か月分、時間給2000円で計算すると、1年で12万8000円のロスを防ぐことにつながります。

整理整頓

当社の従業員は38名。1日に1人が1回10分の探し物をしたとすると、1年間で280万円ものロスが発生します。整理整頓を実施することでロスの軽減に努めました。

休日出勤の代休を取れるようなルール作り

これまでに遅刻・早退・欠勤届の様式を作成していましたが、これに加えて代休届も作成しました。これにより代休取得がスムーズになり、申請の頻度も高くなったと感じています。

全体で有給取得8割を目標とする

有給休暇管理表を作成し現状の有給休暇取得率を確認しました。請負業においては、どうしても工期を意識するあまり有給取得が後回しにされがちです。社内には有給を取りにくい雰囲気もありましたが、有給取得は法律で定められており、守らなければ会社に対して課徴金が発生してしまいます。「会社として有給を取得してほしい」と再三にわたり取得を促したこともあり、徐々に協力していただけるようになりました。

「休みに何をしたいか?」というアンケートを実施

アンケートを行ったことで、みんなが休みに何をしたいかがわかると同時に、「休んでもいいんだ」という雰囲気が広がり、有給取得への抵抗感が少なくなってきたと感じています。具体的には「ゆっくり寝ていたい、温泉に行きたい、旅行に行きた5い、美術館に行きたい」という希望が多く見られましたので、時期を見て社員研修として温泉や美術館に行くような企画を構想しています。

大谷興産様最終報告会1

ストレスチェックの受診

労働安全衛生法の改正により、労働者が50人以上いる事業所では2015年12月からストレスチェックの実施が義務化されました。当社は50人未満の企業ですが、産6業医の先生の協力を得てストレスチェックを実施しています。義務だから行うのではなく、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことはリスク管理として重要だと認識しています。

ドローンの活用

当社にはドローンが2台あり、着工前とか施工中に現場の障害物などを確認する用途で活用しています。

大谷興産様最終報告会2

まとめ

有給休暇については他の従業員から理解や協力を得られるか不安がありましたが、毎月の職長会などで説明することで理解や協力を得ることができ、取得率も目標とする8割に近づいてきました。あと3か月の間に1人1.5日ずつ取得していただければ8割は十分クリアするところまで来ています。今回の取り組みを通じ、少しの人数でも社内環境を良くしていこうと取り組んでいけば天井が開けて明るくなっていくことがわかりました。

担当コンサルタント・滝沢雄太のコメント

大谷興産様が今回の取り組みで得られたことは大きく3つあると感じています。

1点目は、休日に関する周知をすることで着実に休みやすさにつながったところです。これに関しては根気強く何度も啓発を行い、意識付けしてくださった成果であると思います。取得の実績にもあらわれているように、取得推進をされてから休暇数も顕著に増えています。これまで従業員の皆さんには有給休暇を取得するという意識が薄く、有給残日数を把握されていない方も多いと伺っていましたが、「有給が残り何日あるのか」「先々までのスケジュールでいつ取るのか」「実際に取れたの8か」「取れなかった場合はいつリスケジュールするのか」などを見える化して意識づけされたことが非常に大きかったのではないでしょうか。

2点目はITの活用です。これまで発注者と日時を調整して現地で行っていた段階確認について、Zoomを使ってオンラインで実施。日程調整の手間や移動時間をなくすことができたのは大きな削減効果だったと思います。

3点目は整理整頓です。ある調査ではビジネスパーソンが年間で探し物にかけている時間は150時間にも上るという結果が報告されています。日数にすると年間19日程度となります。整理整頓は地道かもしれませんが、どの職場でもできて、ちりも積もれば時間削減効果は非常に大きいものになります。まだ取り組めていない企業は、ぜひ整理整頓から取り組んでいただけたらと思います。

今回は事務局が本当に一生懸命取り組んでくださったと思いますが、今後はもっと周りを巻き込み、この取り組みが続けられるような体制作りを進めていただけることを期待しています。

担当コンサルタント

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