(参加者)
株式会社テレビ新潟放送網(TeNY)取締役 経営推進本部長 上原 小百合 様
株式会社テレビ新潟放送網(TeNY)経営推進本部 経営推進局長 芝 至 様
※所属は2025年12月時点
テレビ新潟放送網様(TeNY)では、長時間労働で既存事業に全力を注ぐ従来の働き方から脱却し、働き方を見直すことで新たなコンテンツや新規ビジネスの創出につなげる組織への変革を目指し、2021年に働き方改革コンサルティングを導入。「Happy ワークチャレンジ!」と銘打った取り組みを進めてこられました。取締役 経営推進本部長の上原小百合様と経営推進局長の芝 至 様に、株式会社ワーク・ライフバランス コンサルタントの原・松尾がお話を伺いました。
▽テレビ新潟放送網 「Happy ワークチャレンジ!(HWC)」5年の軌跡


▲写真左から
株式会社ワーク・ライフバランス コンサルタント 原わか奈
株式会社テレビ新潟放送網(TeNY)取締役 経営推進本部長 上原 小百合 様
株式会社テレビ新潟放送網(TeNY)経営推進本部 経営推進局長 芝 至 様
株式会社ワーク・ライフバランス コンサルタント 松尾羽衣子
原:まず、2021年に働き方改革を始めた頃、社内の課題をどう感じていましたか?
上原:当時は、仕事がかなり属人化していて、長時間労働も当たり前という空気がありました。放送局として売上も先行き不透明で、「このままではもたない」という危機感がありましたね。民放連で小室さんの話を聞き、「テレビ局も本気で変わらないと」と強く感じました。ただ、すぐには社内で理解を得るのが難しく、一度は引き出しにしまうことになりました。それでもいつか必要になると信じて、機会を待っていました。
松尾:その機会が満を持して来て、「働き方改革の必要性」について貴社向けに、小室の講演を実施させていただきました。社内の反応はいかがでしたか?
上原:あの講演は、本当に大きな転機でした。アンケートで「非常に良かった」と「良かった」が9割近くと、社内研修ではなかなかない数字になったんです。「働き方改革の意味が初めて腹落ちした」「自分たちが何を変えないといけないのか分かった」という声も多くて、会社全体が揺さぶられた感覚がありました。「過去を否定されたようだ」という受け取りも一部にはありましたが、それも含めて、本気で向き合い始めた証しだと感じましたね。この反応を見て、「今度こそ本格的に取り組みたい」と覚悟が決まりました。
▲ 取締役 経営推進本部長 上原小百合様
原:この講演がきっかけで、テレビ新潟様での取り組み「Happy ワークチャレンジ!」がスタートしましたね!芝さんは、当時は報道制作の現場にいらっしゃいましたが、働き方に関して、現場の雰囲気や課題をどう見ていましたか?

芝:報道部門について言えば、近年はテレビ離れもあってニュースを視聴する環境が変化し、現場は従来の仕事に加えて、ニュースのネット配信やYouTube展開など、新しい業務がどんどん増えていました。本当は、業務を整理して空いた時間で新しいことに挑戦するのが理想とは分かりつつ、現実には”足し算の仕事”になってしまう。だからこそ、働き方そのものを見直さなければいけないと感じていました。
松尾:そんななか、社内で働き方改革を始めた当初は、どんな反応がありましたか?
芝:若手は比較的すっと受け入れられたと思いますが、年齢が高い人ほどマインドチェンジが難しかったと思います。長く続けてきた働き方を変えるのは簡単ではありませんから。私自身、2022年に現在の部署に異動し、働き方改革の旗振り役になりましたが、その時は、まずは自分の意識と働き方を変えなければいけないと強く感じました。
管理職など社内からは「働き方改革のために時間を取られるのは本末転倒ではないか?」「カエル会議のために集まること自体が難しい」「やらされ感、負担感が強い」といった不満や反発の声もありました。それでも管理職の面々と話をすると、みんな会社の将来、自分の部署やメンバーのことを真剣に考えているんですよね。でも、もう昔の働き方に戻すことはできないし、マネジメントも従来の手法では対応しきれなくなっている…。悩みながら取り組んでいました。
原:働き方改革の推進には、マネジメント手法の変革が欠かせませんから、現場の管理職の意識変革が必要な局面でしたね。弊社が提供している、心理的安全性を高める働き方改革の手法、「カエル会議」を導入したことで、現場にはどんな変化が生まれましたか?
芝:カエル会議では、いきなり大きなテーマを扱うのではなく、例えば報道部門なら「記者クラブの不要なものを片付けよう」「取材の引き継ぎのやり方を変えよう」といった、すぐに着手できる改善から始めました。その頃はコロナ禍で、取材メンバーが日々入れ替わることもあり、情報共有のやり方を見直したり、原稿を書きやすい環境づくりを進めたりしたんです。中心になって取り組みを進めてくれたニュースキャスターの女性が、「変えるって意外と簡単」と話してくれたのが印象的でした。身近な改善を積み重ねることで、「自分たちで変えられる」という実感が生まれたのは大きかったと思います。

松尾:営業部では、管理職の方の変化が印象的でしたね。どのようなことが起こったのでしょうか?
上原:管理職全体の考え方に変化があったのですが、営業部は特に変化が大きかったです。営業は顧客相手の仕事なので、「働き方改革」は正直無理!と言っていた部長が、「本当は長期休暇を取って家族と海外旅行に行けたら良かった。部員のそういう希望が叶う部にしていきたい」と語ったのは驚きでした。

原:素晴らしい変化ですね!
若手からは、「本音が言えるようになってきた」との声もありましたが、その変化を具体的に教えてください。
上原:以前は、上司に対して「言っても無駄」「怒られるかもしれない」という空気があったと思います。今は、「あの上司には本音を言いづらい」「若手に改革案があり、良くしたいと思っているのに伝えられない」といった”言いにくさ”自体が、相談として上がってくるようになりました。それは、決してネガティブなことではなく、見えなかった課題が可視化されてきたという意味で、一歩前進だと受け止めています。本音が出てくるからこそ、「どうやってフラットに議論できる場をつくるか」「マネジメント側がどう受け止めるか」を具体的に考えられるようになりました。

松尾:まさに「Happy ワークチャレンジ!」の取り組みが目指す理想に近づいてきていらっしゃいます。そして、最近では、従業員の女性比率の上昇という変化が生まれてきていますよね。
上原:女性比率は全体で3割弱ですが、20代では5割を超えています。特に報道部門では20〜30代の女性が増え、「以前より物が言いやすくなった」「働きにくさを感じない」という声が多く聞かれます。社外の系列局の女性たちと話すと、「TeNYは働き方改革の取り組みが進んでいますよね」と言ってもらえることがあり、自分たちでは気づきにくい変化を外から教えてもらうこともあります。10年後には今の20代が30代になり、さらに”景色”は変わっていくはずです。上の世代がきちんと役割を果たしてバトンを渡していくことが大事だと感じています。
芝:会議や雑談の雰囲気も少しずつ変わってきました。若い世代や女性のメンバーが、以前なら遠慮して言わなかったような意見が、自然とテーブルに上る場面も増えています。もちろん、まだまだなところもありますが、心理的安全性の大切さが少しずつ管理職の間に浸透してきたのかなと思います。「言いたいことが言える」「自分らしくいられる」と感じる人が増えていくのは、組織にとって大きな財産だと思います。
▲経営推進局長 芝 至 様
原:若手の育成についてはどう考えていますか?
上原:「最近の若手はとがっていない」と言われることもありますが、私はそうは思っていません。どの世代も、本質的にはあまり変わらない。ただ、今は寄り添うコミュニケーションが重視される時代なので、見え方が違うだけです。大事なのは、”自分でグイグイ行ける人だけがスターになる”環境ではなく、”少し背中を押せば光る人にもチャンスが回る”ような仕組みを作ることだと思っています。そのために、公募型のプロジェクトを立ち上げたり、意図的に「出番」を設計しています。活躍の場さえあれば、「やってみたい」と手を挙げる若手は必ず出てくるんですよね。
松尾:新番組「おにぎりハウス」も始まりました。ここでも若手が活躍中とのことですね。ほかにも若手中心の取り組みがあれば教えてください。
上原:2025年4月から金曜19時に「新潟炊きたてバラエティー おにぎりハウス」という番組をスタートしました。そこでは31歳の女性がチーフディレクターを務めています。ほかにもプロジェクトには、若手をどんどん巻き込んでいます。社屋のリノベーションプロジェクトには、グループ会社も含めて10名が手を挙げ、その8割が女性という構成になりました。通常なら「部長が仕切って若手はサポート」という形になりがちですが、「あなたは部を代表しているのだから、部の意見を集約してきてね」と、若手に責任ある役割を渡しました。チャレンジの場づくりが次の意欲につながっていると感じます。
原:そのチャレンジの場づくりを支えるために、5年目にあたる2025年はコミュニケーションとフィードバックに着眼して、社内の組織風土づくりをしています。
これらの取り組みが、若手の育成や女性活躍につながっているかもしれませんね。


原:テレビ新潟放送網様では、取り組みの途中で、トップが交代するという出来事がありました。「Happy ワークチャレンジ!」をどのように継続してきたのでしょうか?
芝:小山前社長は、「働く人が幸せでなければ良いコンテンツは生まれない」という強い想いを持って、ご自身でHWCを立ち上げました。その後、正力社長に代わるタイミングでは、まずは正力社長ご自身が、仕事や働き方についてどんな考えを持っているのか、じっくりと話を聞きました。すると「仕事はワクワクしてやろう」というのがご本人のモットーで、就任挨拶でも全社員にそう呼びかけられたんです。その言葉を聞いたとき、これまでの取り組みを、良い形でさらに発展させていけそうだと感じたのを覚えています。
上原:トップが変わると、前任者の色をそのまま継承するのは難しいものです。しかし、トップの言葉は重要です。芝も話した通り、トップの考えをよく聞いて、トップの想いを改革に結び付け、「Happy ワークチャレンジ!」は良い形で継承することができたと思っています。
原:最後に、TeNYのこれからの未来像について、それぞれお聞かせください。
芝:私たちには、「TeNYは新潟を幸せにしているか?」というパーパスがあります。

この問いを常に自分たちに投げかけながら、仕事をしていきたいと思っています。変化の激しい時代だからこそ、新しい発想やイノベーションが生まれる組織であり続けたい。そのためには、失敗を恐れずに挑戦できる風土と、挑戦した人をきちんと評価する仕組みが欠かせません。働き方改革はゴールではなく、その土台づくりだと捉えています。社員一人ひとりが自分の仕事の意味と価値を感じながら、「ここで働いていて良かった」と思える会社にしていきたいですね。
上原:パーパスは一見すると抽象的ですが、「新潟を幸せにする」には、外に向けた取り組みだけでなく、中で働く人が機動的に動ける組織であることが不可欠です。そのために、意識改革と同じくらい、制度や環境を変えることも重視しています。オフィスリノベーションを通じて、部署を越えて意見がクロスするような物理的な環境をつくり、座り方やスペースの使い方からもフラットさを体感できるようにしたいと考えています。経営陣は、一人ひとりと1対1で対話しながら、それぞれの世代で活躍する人材を増やすのが役割だと思っています。5年で「景色」は変わりました。これからの5年で「文化」として根づかせていくことが、次のチャレンジだと感じています。
原:「景色が変われば行動が変わる」という上原さんの力強いお言葉を「Happy ワークチャレンジ!」にのせてぜひ伝え続けていっていただきたいです。引き続き、応援をしています。







