目次
導入
働き方改革は、なぜ続かないのか。工数削減、効率化、会議削減——
やるべきことは分かっている。それでも現場は変わらない。その理由は、「やり方」ではなく、もしかすると「土台」にあるのかもしれません。
MYカエル3活動に参加した30代4人が、本音で語った働き方のリアル。
そこから見えてきたのは、組織が本当に変わるためのヒントでした。
登場メンバー プロフィール
■ 廣田 悠也 様(写真:右から二番目)(以下敬称略)
本社工場 総括課/係長
MYカエル3活動(※)1期目メンバー。工場の”何でも屋”ともいわれる総括課で、突発業務対応からシステム導入まで幅広く担当。2025年2月に昇進し、初めて部下を持つ立場になったことで「忙しさの質が変わった」と語る。家庭では6歳と4歳の2児の父。仕事は忙しいが深夜まで働く状況ではなく、切り替えながら両立している。
■ 館山 大輔 様(写真:左から二番目)(以下敬称略)
調達部 部品調達室(現GL※)
MYカエル3活動 2期目メンバー。昇進を見据えた立場でチームを支え、前任GL不在の影響もある”半分GL”のような役割を担う。新システム導入ではリーダー的立ち位置で関わり、突発業務の多さも実感している。家庭では7歳と5歳の2児の父。上の子の小学校進学など、家庭側の変化も含めて「この世代ならではのリアル」を語る。
■ 山梨 寛士 様(写真:一番左)(以下敬称略)
人事部 Well-being 推進室
MYカエル3活動 事務局担当。制度改定や評価制度の見直しなど、長期テーマを中心に担当し、計画から学習まで手探りで進める日々。説明会の設計なども含め「今を突き詰めて働かないと回らない」と語る。中途入社としての外部視点も持ち、制度と現場の間で葛藤しながら支援を続けている。私生活では引っ越しなど生活面の変化も控えている。
■ 和田 正人(写真:一番右)
株式会社 ワーク・ライフバランス
MYカエル3活動の伴走支援を担当。これまで2年間、現場と事務局と伴走しながら活動を支援してきた。今回の座談会では、支援者としてだけでなく同世代の一人として問いを投げかける立場で参加。2026年春より第一子誕生に伴う育児休業を予定している。
※「MYカエル3活動」とは?
豊田鉃工株式会社で行われている働き方改革の取り組みの名称。
MYは「”み”ずから”や”ろう」の意味が込められ、カエル3には「①仕事の仕方、意識を変える」「②早く帰る」「③仕事を振り返る」の3つの意味が込められている。
※GL(グループリーダー):グループという組織のライン長=係長のこと。

今回の座談会の位置付け
働き方改革というと、「工数削減」「時短」「効率化」といった施策を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、それだけで本当に職場は変わるのでしょうか。
多くの企業が取り組みを始めながらも、「続かない」「現場が動かない」という壁にぶつかっています。
その原因は、制度ややり方だけの問題ではないのかもしれません。
豊田鉃工では、働き方改革の取り組みを「MYカエル3活動」と名付けて進めています。
MYには「”み”ずから”や”ろう」という意味を込めています。
働き方は、上から与えられるものではなく、自らつくるものだからです。
そして「カエル3」には、「仕事の仕方や意識を変える」「早く帰る」「仕事を振り返る」という三つの意味が込められています。
目指しているのは、心理的安全性を高め、本音が出る職場をつくること。
心理的安全性とは、立場や年次に関係なく、率直に意見や不安を口にできる状態のことです。
それがなければ、「やめる」「変える」という議論は始まりません。
一人ひとりが「自分にとって働きやすい状態」を言語化し、それを実現できる組織へと変えていくことです。
これは、どの会社にも共通するテーマではないでしょうか。
制度や仕組みだけでは、働き方は変わりません。
現場で実際に動く人がどう感じ、どこで壁にぶつかり、何に価値を見出したのか。
そこにこそ、続く改革のヒントがあります。
今回は、MYカエル3活動に関わったメンバーと伴走支援を行ってきた私が、あえて”座談会”という形式で、本音を語り合いました。
なぜなら、働き方改革のリアルは、きれいな成果報告だけでは伝わらないからです。
ここからは、活動が始まった当初の率直な気持ちから振り返っていきます。

【Part1】「また業務が増えるのでは?」現場にあった本音
期待と同時に、不安や懐疑もあったMYカエル3活動のスタート。その率直な気持ちから見えてきたものとは。
和田:ここからは、「MYカエル3活動」に関わることになった当初の気持ちについて聞いていきたいと思います。最初に話を聞いたとき、正直どんな印象でしたか。
「また業務が増えるのか…」という不安が正直あった
廣田:正直に言うと、不安の方が大きかったですね。私は工場の総括課という、いわゆる事務職なんですが、他の事務職に比べても突発業務がかなり多い部署なんです。入社したときに上司から言われたのが、「総括課は工場の何でも屋だよ」という言葉で。何か起きたらまず声がかかる、という立ち位置なんですよね。そんな中で、「MYカエル3活動をやります」と聞いて、正直、「また業務が増えるのか…」という気持ちがありました。
廣田:これは自分だけじゃなくて、メンバーも同じように感じていたと思います。何かが削られるわけじゃなくて、プラスされる、という印象だったので。「改善活動」と聞くと、「やらなきゃいけないことが増える」というイメージが先に立ってしまって、本当に業務改善につながるのか、という不安はかなりありましたね。
和田:館山さんはいかがでしたか。
館山:僕自身は、「こういう活動はやった方がいいんじゃないかな」と、割と前向きに捉えていました。ただ、職場全体が同じ空気だったかというと、そうではなかったと思います。
積極的に「やりましょう」という雰囲気では、正直なかったですね。
館山:というのも、これまでの改善活動って、どうしても「資料作り」になりがちだった印象が強くて。
誰かが時間をかけて資料を作って、でも実際には仕事のやり方が大きく変わった実感はなくて、年々それが繰り返されてきた、という感覚がありました。
館山:だから、「また新しい改善活動か」という空気は、正直ありましたね。発表会や資料作りに時間を取られることへの抵抗感もありました。
本音を言えば、「できれば、そういうところに時間は使いたくないな」という気持ちは、最初はありました。
和田:事務局の立場として、山梨さんはいかがでしたか。
山梨:私自身は中途で入社していることもあって、これまでの改善活動を外から見てきた感覚もあります。
正直、これまでの改善活動は「結果」にかなり重きが置かれていたな、という印象がありました。
それ自体はもちろん大切なんですが、その過程で「どう考えて」「どう取り組んだか」というプロセスが、あまり評価されていないように感じることもありました。
山梨:なので、「MYカエル3活動」については、結果が出たかどうかに関わらず、
「みんなが前向きに取り組めたか」とか、「どんな考え方でそこに至ったのか」を大切にできる活動になればいいな、という期待がありました。
ただ一方で、心配もありました。
山梨:事務局としては、「皆さん自身が主役で、活動を続けていってほしい」という思いが強かったんです。
でも、こちらが思っているほど現場に伝わらなかったり、「手取り足取り教えてもらわないとできない活動」になってしまったりすると、それはそれで違うな、と思っていて。
かといって、「じゃあ全部自分たちでやってください」と距離を取りすぎると、「押し付けられている」と感じる方もいるかもしれない。
山梨:このバランスは本当に難しくて、どこまでフォローするべきか、どこから任せるべきか、今でも悩みながら取り組んでいる部分ですね。

それぞれの立場だからこそ見えた「最初の壁」
和田:Part1で見えてきたのは、活動は歓迎ムードから始まったわけではない、という事実でした。業務が増えるのではないかという不安、これまでの改善活動への懐疑、そして事務局としての葛藤。それでも、どこかに「何かが変わるかもしれない」という期待があった。改革は、こうした揺れの中から始まるのだと感じました。
【Part2】なぜ数値目標では職場は変わらないのか
MYカエル3活動は、「ありたい姿」から考えるところから始まりました。まず変わったのは業務そのものよりも、対話の空気と関係性からでした。
和田:ここからは、実際に活動を進めてみて感じた「これまでとの違い」について伺います。何が従来の改善活動と違っていたのでしょうか。
「ありたい姿」から始めた違い
廣田:正直に言うと、最初は「MYカエル3活動って、何をするんだろう?」というところからでした。ワーク・ライフバランスさんの活動だという話は聞いていましたけど、具体的に何をやるのか、どんな成果を目指すのかが、最初ははっきり見えなかったんです。
廣田:でも、活動を進めていく中で、「自分たちは何に困っているのか」「本当はどういう状態で働きたいのか」というところを、最初に整理する時間があったのが大きかったですね。いわゆる「ありたい姿」を考えるところから始まったことで、「何を改善するか」をいきなり決めるのではなく、「なぜ変えたいのか」をメンバー全員で共有できたのが、これまでと全然違いました。
廣田:これまでの改善活動だと、どうしてもベテランの考えが強く出てしまったり、「こうすべき」という意見が先に決まってしまうことが多かったんですが、MYカエル3活動では、それがかなり減ったように感じています。結果として、形として残ったものは一部かもしれませんが、「考え方」や「話し合い方」が、総括課の中にしっかり根付いた感覚があります。

和田:館山さんは、これまでの改善活動と比べて、どんな違いを感じましたか。
館山:一番違ったのは、やっぱり目標の立て方だと思います。これまでの改善活動って、「工数を減らす」「リードタイムを短くする」みたいに、最初から結果が決まっていることが多かったんですよね。
館山:MYカエル3活動では、最初の目標が、いい意味で”ふわっと”していました。私のチームのありたい姿は「ワーク・ライフバランスを大切にしながら、笑顔あふれる職場にしたい」という、業務数値だけでは表せない目標でスタートしました。活動を進めていく中で、最初はどうしても「業務をどう整理するか」という話になるんですが、途中から、「工数が減ること自体が目的じゃないよね」という認識に、自然と変わっていったんです。
館山:そこから、「質問しやすい空気をどう作るか」「質問できる時間をどう確保するか」といった、職場風土の話が中心になっていきました。若手や経験の浅いメンバーが、不安を感じずに働ける状態を作ることが、結果的に仕事を楽にして、生産性を上げることにつながる。そういう考え方にシフトしていったのは、これまでの改善活動とは大きく違う点だったと思います。
変わるための“土台”を整える
和田:山梨さんは事務局として、少し外から全体を見ていた立場でもあると思いますが、どう感じていましたか。
山梨:私の印象では、MYカエル3活動は、「仕事そのものを直接変える活動」というより、「変わるための土台を整える活動」だったと思っています。たとえば、働きやすさを高めることで、質問がしやすくなる。質問がしやすくなることで、無駄なやり取りが減る。結果として、仕事が楽になり、生産性が上がる。そういう間接的なアプローチが、この活動の特徴だと感じました。
山梨:普通の改善活動と比べると、時間もかかるし、プロセスも多いかもしれません。でも、日本の企業がこれまであまり向き合ってこなかった、「心理的な部分」や「考え方の前提」にフォーカスできている点は、すごく価値があると思っています。
山梨:あと、目標設定の話で言うと、日々の業務に追われていると、「ありたい姿」そのものが出てこないことって多いんですよね。「できなくて当たり前」「今さら変えられない」そういう前提が、いつの間にか当たり前になってしまう。MYカエル3活動は、その前提を一度壊して、「もっと広く考えていいんじゃない?」と投げかけてくれる活動だったなと思います。
和田:Part2で浮かび上がったのは、業務を直接変える前に、関係性を整えるというアプローチでした。「ありたい姿」から始めることで、考え方や対話の質が変わった。心理的安全性が高まることで、本音が出る土台ができる。その積み重ねが、結果的に業務改善につながっていくのだと実感しました。
【Part3】なぜ仕事は減らないのか?立ちはだかる「過剰品質」という壁
やめたいのにやめられない——その背景には品質を落とせないという「思い込み」がありました。善意が生む“過剰品質”、「本当に必要なものは何なのか」を議論する場が必要でした。
和田:活動の価値が見えてきた一方で、「まだ足りない」と感じる部分もあったはずです。仕事そのものは本当に変わったのか、率直に聞かせてください。
変わった実感と、変わらない現実
館山:そうですね。MYカエル3活動を通して、職場の雰囲気や、話しやすさは確実に変わったと思っています。ただ、その変化を「仕事が減った」「早く帰れるようになった」といった、分かりやすい成果に、まだ直結できていない、という感覚があります。
館山:職場風土が整ってきた分、「この土台を、もっと業務改善に結びつけたい」という気持ちが、正直なところですね。若手からも、「もっとガラッと変えられると思っていました」という声が出たことがあって。確かに、考え方や話し方は変わったけど、自分たちの仕事そのものは、そこまで大きく変えられていない。そこが、これからの課題だと感じています。
和田:すごく大事な視点だと思います。そこで一つ、私からよくお伝えしている話があって。業務改善を進めるとき、まずは「やめる」「なくす」「減らす」を徹底的にやってみる、という考え方です。一度やめてみて、「やっぱりダメだったね」と思えば、また戻せばいい。そうやって初めて、「本当に必要な仕事」が見えてくることが多いんですよね。
館山:その考え方自体は、実はコロナの時期以降、結構ありました。ただ、やっぱり「品質を落とせない」という前提が、すごく強いんですよね。やめたら、絶対にクオリティは落ちるはずなんです。でも、それを許してもらえない、という感覚がある。
館山:今の品質や生産量をそのままにして、何かを減らそうとするから、結局、無理になってしまう。「落ちるけど、それでいいよね」という発想に、なかなか切り替えられないんです。
和田:そのとき、ちょっと立ち止まって考えてほしいのが、「品質を落とせないと言っているのは、誰なのか」という点なんです。上司なのか。経営なのか。それとも、自分たち自身なのか。
館山:正直、上に説明する場面を考えると、「品質を落としますけど、いいですよね」とは、なかなか言えないなと思います。上に行けば行くほど、現場の大変さが見えにくくなる部分もあって、「なぜそれをやめるの?」と聞かれると、説明のハードルが高いんですよね。

「品質を落とせない」という思い込み
山梨:人事の立場から見ても、「思い込みで守っている品質」は、結構あるなと感じます。誰かに言われているわけではないのに、「これは絶対に必要なはずだ」と思い込んで続けている仕事、ありますよね。
山梨:たとえば、人事の書類って、「書いてないと困る」「後で言われたら嫌だ」という思いから、どんどん情報が増えていく。人事にいるときは当たり前だと思っていたものが、他部署に異動したり、外から見たりすると、「正直、何が書いてあるのか分からない」と感じることもあります。
館山:ありますね。人事にいたときは全く思わなかったけど、外から見ると、本当に情報が多くて見づらい。「全部書いてある」こと自体が目的になっていて、「伝えたいことが伝わるか」という視点が、抜けてしまっている。
和田:今の話、すごく大事だと思っていて。多くの場合、過剰品質って、「ちゃんと応えたい」「迷惑をかけたくない」という善意から生まれているんですよね。お客さんや他部署の期待に応えたい、プロとしていい仕事をしたい、そういう思いがあるからこそ、品質を落とす決断ができなくなる。
和田:でも、他部署や関係者から「それはもう十分だよ」「そこまでしなくて大丈夫だよ」と一言もらえると、初めて手放せることも、実は多いんです。
館山:実は以前、部署をまたいだMYカエル3活動をやれないか、という話も出たことがありました。考えとしては、すごくいいと思うんです。でも、現実的には難しさも感じました。
館山:製造業って、どうしても部署ごとに「力の強さ」みたいなものがあって。たとえば、生産に直結する部署や、その先にいるお客様の声は、どうしても揺るがない存在になります。そうなると、「それ、やりすぎじゃないですか」と意見すること自体が、難しくなる。
館山:表立って言わなくても、「悪く言いたくない」「波風を立てたくない」という空気は、確実にあります。部署をまたぐと、その壁はさらに高くなるな、と感じています。
和田:だからこそ、部署をまたぐときほど、最初に「この話し合いで、何を目指すのか」という共通のゴールを置くことが大事だと思っています。いきなり「この業務、おかしくないですか?」から入ると、どうしても力の強い部署の意見が通りやすくなる。
和田:「お互いに感謝している点は何か」「最終的に、どんな状態を目指したいのか」そういうところから話し始めるだけで、心理的安全性は全然違ってきます。そのための型や考え方として、MYカエル3活動でお伝えしているフレームは、こういう場面こそ活きるんじゃないかなと思います。
和田:Part3で明らかになったのは、「やめたいのにやめられない」という構造でした。品質を守ろうとする善意が、過剰品質を生んでいる。その前提を疑わなければ、業務は減らない。次のフェーズは、この思い込みをどう超えるかにあると感じました。
【Part4】全部背負っていないか?中堅世代のリアル
答えを出すことも、育てることも求められる30代。管理職と若手の間で揺れる中堅の苦悩が、はっきりと見えてきました。
和田:ここからは、中堅世代としての立ち位置に焦点を当てます。管理職と若手の間に立つ今、どんな葛藤がありますか。
管理職と若手の間で揺れる立場
廣田:まさに「板挟み」という言葉が、一番しっくりきますね。管理職からは、「これ、やっておいて」「結果出してね」と期待される。一方で、若手や後輩からは、「これ、どうしたらいいですか?」「助けてください」と頼られる。その両方を受け止める立場になると、「これ、もう自分がやるしかなくない?」って思ってしまう瞬間が、正直あります。
廣田:本当は、「これは自分で考えてやってみて」って言った方がいい場面もある。でも、それを待っていると仕事が進まなかったり、結局、締切に間に合わなかったりして、「じゃあ俺がやるか」となってしまう。その積み重ねで、気づいたら全部自分が背負っている、という状態になりがちだなと感じています。
館山:廣田さんの話、すごく分かります。後輩に聞かれると、つい答えを教えてしまう方が楽なんですよね。その方が仕事も早く終わるし。でも、それって本当にその人のためになっているのか、最近よく考えるようになりました。
館山:自分の経験を振り返ると、「もう無理かも」「やめようかな」と思った瞬間に、一番成長していたな、という感覚があるんです。だからこそ、すぐに答えを渡すのではなく、「一回、自分で考えてみてほしい」「一回、やってみてほしい」と思うようになりました。
館山:もちろん、丸投げはしないですし、線引きは必要なんですけど。頼りたい気持ちをグッと我慢して、あえて任せる。その積み重ねが、自主性につながるんじゃないかなと思っています。
廣田:僕自身が若手の頃を思い返すと、結構、放置されて育ったタイプなんですよね。決して冷たいわけじゃないけど、「自分で考えろ」というスタンスの先輩が多かった。その中で、自分なりに考えて、失敗して、成長できた実感はあります。
廣田:ただ、今の若手に同じことをしていいかというと、正直、難しいなと思っています。育ってきた環境も違えば、転職のしやすさも、当時とは全然違う。下手をすると、「ここ合わないな」で、あっさり辞めてしまう可能性もある。だから、どこまで任せるか、どこまで支えるか、そのバランスが本当に難しいです。
廣田:あと、構造的な問題として感じているのが、中堅層が少ない、ということです。僕らの世代って、リーマンショック後で採用が絞られていた時期でもあって、そもそも人数が多くない。そこに最近は、転職が当たり前になってきて、同世代がどんどん抜けていく。結果として、若手を育てる人も足りないし、管理職の期待を受け止める中堅も足りない。そのしわ寄せが、今、まさに自分たちに来ているな、という感覚があります。
世代間ギャップは、さらに上にもある

和田:人事の立場から見て、どう感じていますか。
山梨:皆さんの話を聞いていて、「世代間ギャップ」は、若手と中堅の間だけじゃないなと思いました。実は、中堅と管理職の間にも、考え方の差は確実にある。
山梨:上の世代が「こうやってきたんだから、こうやればいい」と教えてくれることが、今の現場感覚とズレていることもあります。それをそのまま下に伝えると、さらにズレが広がってしまう。その間に立って、「どう翻訳するか」を考えているのが、今の中堅世代なんだと思います。
山梨:もう一つ大きいなと思うのが、「役割認識」が共有されていないことです。若手からすると、「早く答えを出すことが評価される」と思っているかもしれない。でも、中堅としては、「自分で考えて、プロセスを踏んでほしい」と思っている。このズレがあるままだと、お互いにストレスが溜まってしまいます。
山梨:だからこそ、会社として「今、この役割の人には、何を期待しているのか」を、もう少し言葉にして伝える必要があると思っています。人事としても、そこを明文化できないか、今まさに考えているところです。
和田:Part4では、中堅世代が抱える構造的な重さが浮き彫りになりました。上と下をつなぐ役割を担いながら、育成にも向き合う。違いは前提であり、その翻訳者になることが中堅の役割なのかもしれません。その負荷をどう組織で支えるかが、これからの課題です。
【Part5】全てを巻き込み、全員主役へ
部署の壁を越え、役員も巻き込んだとき、働き方改革は一気に進むかもしれません。組織全体が主役になる未来が、少しずつ見えてきました。
和田:ここまで、MYカエル3活動を通して感じた変化や課題、そして中堅世代としてのリアルな悩みについて話してきました。最後は少し視点を未来に向けて、「こんな働き方ができたらいい」「組織として、こんな状態を目指したい」という話をしていきたいと思います。突拍子のないアイデアでも構いません。今、思っていることをそのまま聞かせてください。
忙しさに偏りがない、助け合える組織でありたい
廣田:どうしても、部署や係によって「めちゃくちゃ忙しそう」「ちょっと余裕がありそう」という差は出てくると思うんですよね。実際、本当に暇かどうかは分からないんですけど、そういう見え方によるストレスは、どこの会社にもあるんじゃないかなと思っています。
廣田:理想を言えば、「今、ちょっと忙しいんだよね」「じゃあ、手伝うよ」みたいなやり取りが、もっと自然にできる状態になったらいいなと思います。部をまたぐのはハードルが高いかもしれませんが、せめて同じ課の中だけでも、そういう助け合いが当たり前になるといいなと。
和田:その助け合いが、「評価される行動」になったら、一気に加速しそうですよね。
館山:今回のMYカエル3活動で感じたのは、普段あまり話さない人と話すことで、自分の視点がすごく広がった、ということでした。たとえば、知的財産室の方と話したときに、「外に向けて、もっと何か発信したい」という話を聞いて、「そんな考え方もあるんだな」と思ったんです。
館山:調達の立場だと、どうしても自分たちの役割だけで物事を考えがちですが、外からどう見えているのか、他部署は何を大事にしているのかを知るだけで、仕事の捉え方が変わるなと感じました。部署間のMYカエル3活動や、世代を越えた対話の場が増えたら、もっと面白い会社になるんじゃないかなと思います。
館山:もう一つ思ったのは、経営層や役員の方々も、MYカエル3活動の「参加者」になったらどうだろう、ということです。今回、モデルチームの活動を見て、コメントをいただく場はありましたが、どこか「外から見ている」印象も正直感じていました。
和田:たしかにそうですね。たとえば、8か月の活動で「達成度70%」だったとしたら、残り30%は、現場だけではどうにもできない部分かもしれない。その30%を埋めるために、「自分たちにできることは何か」を、役員の方が考える場があっても面白いかもしれないですね。
属人化ではなく、「開放」が評価される組織へ
和田:山梨さんはいかがですか。
山梨:私は、仕事や人が、少し専門に閉じすぎているように感じることがあります。専門性が高まるのは良いことなんですが、その分、「これは自分の仕事じゃない」という意識が強くなってしまう。
山梨:本当は、「ちょっとそれ、手伝うよ」「自分の仕事じゃないけど、やってみるよ」という関わりが増えた方が、知恵も集まるし、最適な答えにたどり着きやすいと思っています。そのためには、制度だけでなく、「そういう行動が歓迎される」というマインドを、もっと伝えていく必要があるなと感じています。
山梨:具体的に考えているのは、社内向けの「求人板」や「仕事紹介」のような仕組みです。他部署が何をやっているのか、どんな人が活躍しているのかが、実はあまり知られていない。人が足りなくなったとき、すぐに社外に求人を出す前に、「社内でやりたい人はいないか」と声をかけられる仕組みがあれば、もっと人の流動性が生まれると思います。
和田:今の話を聞いていて、キーワードとして浮かんできたのは「属人化」でした。自分の中にノウハウを溜め込む人が評価されるのではなく、それを開放して、誰でもできる仕組みを作った人が評価される。そういう価値観にシフトしていくことが、これからの働き方には欠かせないと思っています。
廣田:もう一つ、個人的に思っているのは、その時々で、もう少し融通の利いた判断ができるようになりたい、ということです。うちの会社は、品質や安全に対して、とても真面目です。それ自体は、すごく大事なことだと思っています。
廣田:ただ、その姿勢があるからこそ、他の部分でも「全部100点じゃないとダメ」と思い込んでしまっているところもある気がします。これは100点を目指す、これは80点でもいい、そういう判断ができるようになると、もっと楽になる部分もあるんじゃないかなと思っています。
和田:先ほどお話しした過剰品質の話にも通ずるところですね。「本当に必要な水準はどのくらいなのか」「必要ないなら減らす、やめるを原則にする」というだけでいろんなことが変わっていきそうですね。
和田:Part5で語られたのは、現場だけでなく組織全体を巻き込む未来でした。部署や世代を越え、経営層も当事者になる。属人化ではなく、知恵を開放する文化へ。その積み重ねが、「変わった」と胸を張れる組織につながるのだと感じました。
和田:今日は本当に、率直で、前向きな話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。皆さんが感じている悩みや葛藤は、きっと多くの職場で共通するものだと思います。MYカエル3活動が、みなさんそれぞれのありたい姿に近づく、その一歩を踏み出すきっかけになれば、これ以上嬉しいことはありません。本日は、ありがとうございました。

担当コンサルタント







