株式会社昭和コーポレーション様
トップ対談 成長し続けるための未来を作る働き方改革
2023年4月、株式会社昭和コーポレーションでは働き方委員会が立ち上がり、2024年の労働基準法改正を見据えた取り組みを実施しています。その取り組みの1つとして、弊社がサポートしトライアルチームによる働き方改革の取り組みを進めていただくこととなりました。第一歩として弊社取締役の浜田紗織が講演させていただき、あわせて藤井社長と対談もさせていただきました。その内容をお届けします。
株式会社昭和コーポレーション 代表取締役 藤井雅美様(左)
株式会社ワーク・ライフバランス 取締役 浜田紗織(右)
仕組みをつくって変化を促す
浜田:本日のセミナーでは、働き方改革について他社事例も交えながらお話をしました。ぜひご感想など、お聞かせいただければと思います。
藤井様:業務の見直しと属人化排除が重要であり、それが生産性向上につながると再認識しました。業務の見直しと属人化排除をしないことには、会社は成長しないし、人も成長しません。どうしても人間は変化を嫌うものですが、働き方改革の取り組みは、変化のきっかけになると考えています。
浜田:藤井様ご自身にも変化を嫌う気持ちはありますか。
藤井様:ありますよ。ただ、少子高齢化を含めた社会の状況を見ていると、もはや変えざるを得ない状況下にあります。組織として変化を受け入れていかないと、10年後の未来はありません。
浜田:皆さんが変化を受け入れる上では、心理的なハードルも大きいと思いますが。
藤井様:おっしゃる通りですが、変化したことできちんと評価されれば、やりがいや成長を実感できるはずです。ですから、当社では自ら変化できるように、評価制度を含めた人事制度を変えました。具体的には、管理職や専門職の役割を明確にして、業績評価と連動させる仕組みです。
浜田:チームワークの重要性や属人的な業務の排除に関しては、評価とどのように関係するのでしょうか。
藤井様:個人で取り組むだけでは絶対に達成できない目標数字を設定しています。達成するためにはチームで成果を出す必要があります。成果が出ればきちんと評価されます。
浜田:仕組みから変えていかれるところは素晴らしいです。まずは一歩を踏み出して行動することで、成長が実感でき、会社もそれに応えてくれるという好循環を目指しているわけですね。
藤井様:経営側から言うと、仕組みを変えることしかできないと思うんです。もっとこじんまりした会社であれば、社長が1人ひとりをフォローできるかもしれませんが、その手法にはどうしても限度があります。やりがいは個人個人で違うので、会社がそれを与えるのではなく、結果を出している人をきちんと評価して、きちんと賃金を上げたいと思っています。
リーダー・管理職の役割は大きい
浜田:御社では、働き方改革の委員会を作るなど、働き方改革推進に向けた仕組みづくりも進んでいます。働き方改革については、皆さんにどのようにイメージしてほしいとお考えでしょうか。
藤井様:生産性の向上がプライベートの充実にも結びつき、なおかつ収入が下がらないという状態にできたらベストだと考えていますし、そうイメージしてほしいです。
浜田:皆さんそれぞれが幸せを実感できるようなイメージですね。建設業界では2024年問題が注目されていますが、属人化の排除と本人のやりがい・充足感がつながるとよいですね。
藤井様:そうですね。業務の見直しということでは、長時間労働をして帰れない人は配属を変えればいいと考えています。属人的なやり方で成果を出している人に対しては「本当に仕事ができているのか」という観点から業務の棚卸しをしてもらい、それでも変わらない人はリーダーの判断で配置を変えてほしいです。変えてあげることが、本人の成長にもつながると思うんです。
浜田:その意味では、リーダーの役割がかなり大きいと思います。
藤井様:まさにリーダー・管理職の役割がキーになると考え、昨年度から育成の研修にも力を入れています。リーダー・管理職の意識が変わらないと、下の人間は絶対変わりません。管理職の中には「この人がいないと困る」と私に言ってくる人もいますが、いないと困る人こそまず動かしてあげるべきです。動かしても業務が困らないようなやり方を考えるのが、リーダーであり管理職の仕事です。
浜田:「あの人がいないと困る」ということ自体がリスクですからね。
藤井様:その人が病気にならないとも限りませんし、そうなれば業務が止まるわけですから、非常にリスキーです。しかも、その人の負荷が大きい状況が続くと、モチベーションも下がり、最終的には退職にもつながります。そんな事態は避けなければなりません。
浜田:リーダーにはどのようなコミュニケーションを期待していますか。
藤井様:これまでは、リーダーが自分の成功体験を部下に押し付けるパターンが多かったと思います。部下に考えさせずに、「とりあえず言った通りにやっておけ」「こうやっておけば間違いない」と押し付けてきた。そうやって、やり方を押しつけられたほうが部下は楽です。「はい、言われた通りやりました。やったけど成果が上がりませんでした」と言い訳ができるからです。けれども、もはや過去の成功体験を押しつけるやり方は通用しません。部下には部下のやり方があり、目標に対してどう動くかを自分で考えてもらう必要があります。
浜田:ある意味で厳しいやり方ですが、それが部下の成長のためにもなるということですね。
藤井様:そうしなければ成長を実感できないと思います。部下がやり方を考えてリーダーと共有するときには、数値化することが重要です。例えば、計画の段階でお客様のところに何回行くと決める。また、目標となる成約率を共有する。数値化すれば、齟齬が生まれなくなりますし、明確に評価できるようになります。
自律的に考えることが大切
浜田:時間に頼らずに利益を上げる構造に変えていく、新たな価値を発揮していくにあたって、今後はどんな力が大事になってくると思われますか。
藤井様:やはり“考える力”だと思います。先ほどの話と重なりますが、私が「ああしろ」「こうしろ」と指示した場合、指示された人間は他責思考に陥ります。そこで失敗しても「社長が言ったことだから」となってしまうわけですが、大切なのは社員1人ひとりが自ら考えることです。だから、私は「こうしろ」と直接的に言わないように心掛けています。
浜田:自ら考えていただくために、そうされているわけですね。
藤井様:今までは、社員ができない理由を挙げることが多かったのですが、できない理由はいくらでもつくり出すことができますし、できない理由を言った時点で上司も部下も成長が止まってしまいます。そうではなくて、「やるために何をしなければいけないか」という思考に変えてほしい。それを常に言い続けています。
浜田:これまで御社の中で「ここは考え方が変わった」「この人、成長したな」と思えたような出来事には、どんなものがありますか。
藤井様:目標達成に向けては、それぞれが考えて動けるようになってきていると思います。前期は目標をすべて達成していますので、明らかな結果にも出ています。働き方改革にしても、きちんと目標を設定して、「どうすれば目標を達成できるか」を考えて取り組んでいけば、確実に結果につながると確信しています。
浜田:皆さんの中には、すでに働き方改革を成し遂げる力があるということですね。
藤井様:まだ満点ではないと思いますよ。ただ、会社の業績というところから見ると、徐々に考える力が養われてきているのを実感しています。
藤井社長のキャリアを振り返る
浜田:ここで視点を変えて、藤井様のキャリアについてもお聞きしたいと思います。これまでどのような働き方をされてきましたか。
藤井様:私が入社した当時は事業別の採用が行われていたので、エンジニアリング事業に採用され、ずっとその業務に携わってきました。エンジニアリング事業というと、理系のイメージがありますが、私はもともと大学の文系学部を卒業しています。理系・文系というより、「現場で仕事を覚える」という昔ながらの建設業の働き方をしてきたわけです。
浜田:現場でどのように仕事を覚えられたのでしょうか。
藤井様:当時の建設業界には、現場に行けばお客様や協力会社様が仕事を教えてくれるという空気感がありました。会社は違っても、1つのものを作り上げるという目的の下、「こうやった方がいいよ」などと、いろいろ教えていただくことができたんです。
浜田:それは非常に恵まれていると思います。
藤井様:不思議なもので、1つの現場で会った人とは、別の現場でも会うことがあるんです。だから、一緒にものを作り上げる中で、どのように良好なコミュニケーションを取っていくか、それをいかに次の仕事につなげていくかを学びました
浜田:プライベートではいかがでしょうか。
藤井様:ずっと忙しいわけではないので、タイミングを見て1週間などのまとまった休みを取るようにしていました。私が20代の頃はスキーがブームで、私もスキーにハマっていました。オンオフをはっきりすることが仕事のモチベーションにもつながっていたと思います。とにかく「よく働き、よく休み、よく遊ぶ」という感じでしたね。
浜田:仕事はうまくいくときもあれば、いかないときもあります。その中でもしっかり貢献していく上では、プライベートが支えになったりします。
藤井様:現場は分業制で仕事をしているので、自分ができることはたかが知れていますし、協力会社の職人さんなどにいい仕事をしてもらえれば、そこまで悩まなくても仕事は回ります。ですから、真剣に取り組むことは大事ですけど、あまり自分を追い込まなくてもいいと思います。特に最近の人たちは真面目であるがゆえに悩みすぎてしまうことが多いので、その意味でも、個人で抱えるのではなく、チームワークで業務を進める形を推し進めていきたいと思っているんです。
組織も人も、適度な緊張感が大事
浜田:いろいろな会社さんを見ている中では、「社員が社長に緊張してしまう」という組織も結構あります。「自分の生きがいとか働きがいなどを社長に話してもいいんだろうか」と身構えてしまうケースも少なくないので、藤井様のライフのお話も伺えて非常に良い機会となりました。
藤井様:確かに社長に何も話せないというのは問題ですけど、組織にはほどよい緊張感も必要です。だから、今は適度な緊張感を意識しています。そうしないと、どうしても社員に寄り添いたくなって、いろいろなことが指示しにくくなるんです。
浜田:なるほど。
藤井様:本音を言えば、フランクに社員に寄り添うほうが楽です。人間は楽なほうに流されがちなので、ついついそうしたくもなります。でも、楽なほうに流されていたら待っているのは衰退だけです。後になって社員から「給料を上げてほしい」などと言われても、その期待に応えることは難しくなります。私は会社の売上、業績、将来に対しての責任を負っているので、あえて無理をして緊張感を意識しているんです。
浜田:藤井様の厳しさは社長という役割としての厳しさで、その奥には優しさがあるんだということが、よくわかりました。
藤井様:人事制度や評価制度を通じて、社員もそれを実感してくれていると信じているのですが……。
浜田:緊張感の重要性を意識されるきっかけはどこにあったのでしょうか。
藤井様:やはり現場で覚えましたね。それぞれの現場には、それぞれの利害関係があるわけです。その中で1つのものを作っていくためには、どうしても適度な緊張感を持つ必要があります。特に、当社の仕事は最終工程に入るものが多いので、事前にしっかりコミュニケーションをとってから進めないと、結局自分に問題がはね返ってきます。そういう経験則から得た学びなんです。
トライアルチームに期待したいこと
浜田:今回、私たちは4つのトライアルチーム(首都圏第一、首都圏第二、大阪事業所、製販大阪 ※2023年5月31日時点)と取り組みをご一緒させていただくことになります。それぞれのチームへのご期待をお聞かせいただければと思います。
藤井様:東京のチームのリーダーには、メンバーの本音を引き出して、どう解決していくかを一緒に考えていってほしいです。首都圏第一は目標を設定して、それに向かってきちんと動いていく期待を持っています。首都圏第二は、所長の年齢が私と近いこともあるので、リーダー自身も考え方を変える場面もあるかもしれません。ただしどちらも、リーダーが先回りしすぎると、現場の若手が主体性を発揮できないので、「何のためにやるか」「原因は何なのか」「どうしたらできるのか」というところを丁寧に議論しながら進めてほしいですね。
浜田:大阪の2チームはいかがですか。
藤井様:大阪は本音を言ってくれるメンバーが揃っているので、コミュニケーションについてはあまり心配していません。製販のほうは、ここまでも取組みをしてくれているので、さらに効率良く仕事をすることにチャレンジしてもらえればいいですね。大阪事業所のほうは、ベテランのリーダーとともに、チームの意識の変革からどれだけ行動変革に移せるかがカギになるのではないでしょうか。
浜田:それぞれに期待を寄せていただきありがとうございます。最後に社員の皆さんにメッセージをお願いします。
藤井様:よく働き、よく休んで、よく遊ぶ。そして充実した人生を実現してほしいと思います。自分からアクションを起こさない限り、会社が動いてくれるということはありません。というより、会社はそこまで1人ひとりの人生に立ち入ることはできないので、どうすれば人生が充実するかということを自分自身で考え、自分で動くことが大切です。
浜田:委員会などから意見が自発的に上がってくれば、会社側としても取り組むということでしょうか。
藤井様:もちろん、できることはやりますよ。
浜田:今回の4チームからも、自分たちで考えていただいた結果、「会社にここを協力してほしい」とか「こんなふうに考えたけれど、どうですか」といった相談や提案が上がってくることを期待したいですね。そういった反応を藤井様にお伝えしたり、皆さんからのリクエストについてご相談させていただいたりすると思います。これからどうぞよろしくお願いします。
藤井様:こちらこそ、よろしくお願いします。