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CASE STUDY

株式会社大本組の導入事例

現場だからこそ求められる心理的安全性とマネジメント力~モデル現場の取り組みと管理職対象ソフトマネジメント研修で現場所長たちが感じた本質的な変化

株式会社大本組

業種
建設・不動産・物流
事業規模
300名以上1000名未満
成果
経営層の意識変革 働き方改革の意識向上 社員のコミュニケーション活性化 心理的安全性の向上 若手層の意欲向上 管理職層の意識向上 管理職層のマネジメント能力向上

目次ー
●【前編】心理的安全性に挑戦するマネジメントインタビュー 建築本部長青木さん・舩越さん・佐々木さん ―働き方改革への閉塞感が変革への意欲に変わる
●【後編】高利益体質は仕組み化がカギ ワーキンググループのみなさんのご様子

【前編】心理的安全性に挑戦するマネジメントインタビュー 建築本部長青木さん・舩越さん・佐々木さん ―働き方改革への閉塞感が変革への意欲に変わる

株式会社大本組では、2021年に神奈川県平塚市と岡山県岡山市の2現場をモデルチームとして働き方改革のコンサルティングを導入されました。また、現場単位での取り組みに加えて、部長以上の上層部が集まって建築本部全体で扱うべき取り組みの方向性を決めていく推進グループの立ち上げや、そこで決まった方向性にそって実際に取り組みを進めていくワーキンググループを実走させ、営業段階での人員状況などの情報共有や時間当たりの年間生産量という新生産性の導入などを実装されました。2023年には年に2回ある所長会議の一部をマネジメント研修にあて、各現場の部下がモチベーション高く意欲的に働くためのマネジメントスキルについて実戦形式で学んでいきました。


■建築現場ならではの難しさ

2018年に働き方改革一括法が公布されたタイミングで、責務として取り組み始めた大本組。中でも建築本部では、民間建築工事において特に短工期が求められ休日出勤や長時間労働が常態化していたほか、全国に拠点があり短いサイクルで部署と勤務地が変わるなどの難しさ、時間の意識よりも完成度を高めることで評価されてきた文化もありました。

「働き方改革WGを2018年に立ち上げ、いちはやくICTツールを導入して移動時間を削減したり、社内の情報伝達やデスクワークの業務量削減にも取り組みました。」社内の推進活動で一定の成果を得たものの、しばらくすると意見出しに難航するようになり模索をはじめたところへ、2020年ACe 建設業界の特集記事「働き方改革の針路を探る」で弊社取締役浜田紗織の『追い込まれた働き方改革ではなく先手を打つ働き方改革へ』を目にし、各部署の主体性を導く手法にこれだ!と、弊社に問合わせをいただいたことからコンサルティングがスタートしました。

■現場を知り尽くした青木本部長が取り組んだこと

「まずは幹部が腰を据えて社員と対話する関係の質の向上が必要なテーマでした」と青木さん。各部部長以上のメンバーが集まる推進グループでは、長時間労働削減に焦る状況と、これまでの慣習から一方通行の指示命令になりがちだったところから、社内に向けた発信を地道に変えていきました。

「業務を短時間で遂行する意識を持ってもらうため、物件ごとに労働時間を使った生産性を算出し、作業所評価に加えました。また、これまでのやり方では評価しきれない、働き方改革の推進・人材育成・社会貢献などの活躍に対しても評価軸に加えていくよう全社に働きかけを行いました。」こうしたメッセージや、青木さんたち推進グループとの対話の場づくりによって、意欲・不満を併せ持ち将来へ向け改善したい現場からの率直な声や、間接部門メンバーの内なる行動意欲が形となって返ってきたのです。

大本組様インタビュー

「みんながよくがんばってくれて、雰囲気は変わりましたよ。いままでのように一部のスーパーマンに業務を集中させる働き方ができなくなり、バックオフィスを含めた多くのメンバーが効率よく業務を分担して、再び競争力を高めていかないといけない。今後の変化を考えると、もっと人的資本を活かすような経営にしていく必要があります。会社として未来のありたい姿もビジョンを示しました。まだ課題はたくさんあるけれど、変化の兆しは十分でてきています」と今後への期待も語ってくださいました。

先行して具体的な変化を体現してくださった現場メンバーの中から、今回は、初年度モデルチームとして選ばれた平塚市の現場の舩越智紀副所長(当時)と、所長研修に参加されて多くの気づきを現場に広げてくださっている佐々木亮介所長に、お話をお伺いしました。

■現場の改革案をまとめた「127の業務削減リスト」で本部と取り組みを連携

浜田:舩越さんとは、平塚イオンのコンサルティングでご一緒させていただきました。当時、所内のメンバーとのお取組みでLow残業デーや工事写真の外注ができたことも大変印象的でしたが、現場で働く所長として、本部へ「127の業務削減リスト」という業務改善アイディアの一覧を出されていたことも非常に印象深いです。どのようにして削減リストを作られていったのでしょうか?

舩越:一人で作っていったわけではなく、部署内で重要ポジションを担う何人かを中心に「つくってみない?」と声を掛けて、浜田さん達に教わった付箋に書いて貼りながら共有していくやり方でアイディアをまとめていきました。

大本組様インタビュー

■みんなの共通認識で、先に帰ることへの価値観に変化が

浜田:127ものアイディアが出てきたのは大変素晴らしかったですし、これまでの舩越さんの想いと取り組みが合わさって、メンバーのあきらめの気持ちがなくなり本質的な議論をはじめたのが大変印象的でした。取り組みを進めていく中で、メンバーの変化をどのように見ていましたか?

舩越:実は心理的安全性がもともと少ない現場でした。ですが、モデルチームとして取り組みを進めていく中で、働き方改革に共通認識を持てたことは非常に大きかったです。また、「上司が帰らないと帰れない」ということがよくありますが、そのような雰囲気は全くなく、「外での仕事が終わってないから帰れない」という雰囲気もなくなりました。仕事がある人は仕事をする、ない人は帰るというのが、みんなとの共通認識の中で取り組みを進められたことで、当たり前になってきた雰囲気があります。現場が忙しいときには、メンタル的に追い込まれてワーッとなる場面も過去はありましたが、今はそれもなくなったんです。業務は厳しい状況なのに、メンタル的には追い込まれずに、現場を終えることができましたね。

浜田:忙しい大型の現場に来たのだからせめてギスギスせずにやっていきたいといった声や、メンタル的にも健康で終えたいといった声は、私自身も伺っていました。皆さんの意識もありますし、舩越さんのマネジメントの力もありますね。

川本:ご一緒した期間は、工期の一部分でしたので、私たちが工期の最後まではご一緒していなかったわけですが、私たちのコンサルティング期間が終わった後のご様子はいかがでしたか?

舩越:いい流れのまま進みました。早く帰るアクションは最後まで続きました。とはいえ、人の状況は変わりますから、パッと見てメンタルが折れたらダメだなと思っていましたので、私自身は注意深く部下を観察するようにはしていました。

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■現場だけで取り組むのではなく、本部も巻き込んで大きく展開へ準備

川本:舩越さんはモデル現場の取組みと、所長向けのソフトマネジメント研修に取り組んでいただきました。今後、この取り組みを広げていくことを考えたときに、会社や本部へはどういったリクエストがありますか?

舩越:今回実施いただいた研修は、純粋に部下育成スキルを知りたいという想いもあったのですが、こうして所長たちが研修で学び、気づき、行動していることを、事務局の安達さんを介して本部にも伝えていきたいという強い目的がありました。現場では色々やってきているつもりだけれども、本部側の評価や意見をあまり聞けなかったので。そうなるとどうしても現場からは、本部への不満が出がちだし、本部には積極的に現場に関わってほしい想いもありました。

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永田:研修の受講は所長がメインでしたが、第1回目と第4回目の実施時には本部の方や上層部の方も参加されていて、部下に対してのマネジメントチェック項目については「半分くらいしかつかなかった」という声も聴きましたから、「自分達も所長がやっていることに対して、一緒になって取り組まなければ」といった感覚はお持ちになっていただけたのではないかと思いました。

舩越:全員がそのような感覚をもって、何かしら主体的にアクションを起こしてくれることを、引き続き期待したいですね。

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■所長が研修の効果を感じた部下との個別面談

永田:今回所長の皆さんにご受講いただいた研修は、これまでの座学形式の研修ではなく、実践形式で部下のモチベーションを高めるコミュニケーションスキルを身に付けていくものでしたが、いかがでしたでしょうか。

佐々木:大本組では、これまでこうした部下の接し方などを学ぶ研修はなかったですし、悪い見本のような先輩方が多く、若い人が言っても何も変わらない会社でしたから、こうした研修があったことは凄く良かったと思います。部下一人ひとりとコミュニケーションをとるための個別面談を実施して、若いメンバーと向き合うことを取り入れられたのは、今の私の現場がうまくいっている要因でもあると感じています。周囲の所長を見ても、面談をやってみるという雰囲気が生まれたということなんですよね。自分が若い頃は、先輩方がこういうことをやると思っていなかったですから。所長によってバラツキはありましたが、個別面談をやってみた人は、やって良かったと思っていますし、特に成果が見えるので、やって良かったのだなと思います。

大本組様インタビュー

永田:集合型の研修では、私たちから様々なノウハウをお伝えして学んでいただくだけでなく、取り組みに後ろ向きだろうと思われるような方が、研修の進行に乗せられながらも取り組んでいく姿を、周囲が肉眼で見ることができるので、「これまでこうだったあの人が…!」という刺激を受けられることや、もともとマネジメント力の高い方がより高みを目指して熱心に受講されている姿からも、刺激を受けて取り組みが後押しできるメリットがありますね。部下から佐々木さんに対して、何かフィードバックはありましたか。

佐々木:今の現場は研修の時期に着工したので、今の現場のメンバーは特に私の変化を感じないかもしれないのですが、過去の現場で一緒だったメンバーに聞くと「激変」と言われると思います。私実は、パワハラの権化のような感じだったので…(笑)

大本組様インタビュー

永田:私は研修中の佐々木さんしか見ていないので、全くイメージできないです。パワハラの権化だったとおっしゃる佐々木さんが、こうした集合研修を受けると通知がきた際に、面倒だといった印象はなかったのでしょうか?

佐々木:私は現場で若手に対して遠慮せずはっきりと指導する立場でしたが、ある程度の歳になって大きい現場の2番手になったときに、同じマネジメントの立場で凄く怒っている他の社員の様子を一歩引いて見る機会があり、「それは良くないかもしれない」と思うようになっていました。そのあと所長になってから、外からではあのように見えるのかと思い返して、変えなければいけないと思い始めた頃にちょうど研修が始まりました。

永田:なるほど。研修の中で、佐々木さんとご一緒するワークがあったのですが、大変印象的だったのは、佐々木さんの言語化スキルの高さです。部下のモチベーションを高めるマネジメントでは、部下をよくよく観察し、頑張りを承認していくための言語化スキルも大切ですが、厳しく指摘しなければならないような場面でも、部下が受け取りやすいようにより具体的に伝えていくことが求められています。今後日本の多くの組織においてはこの具体的な言語化で相手の行動を変えていくスキルを高めていくことが大変重要なキーを握っていると感じています。是非佐々木さんの部下には、そうしたスキルを伝えて将来の有望所長を育てていっていただきたいと思っています。本日はありがとうございました。

【後編】高利益体質は仕組み化がカギ ワーキンググループのみなさんのご様子 ―

上層部が集まって組織全体の働き方改革を議論する推進グループとは別に、実際に現場で起きている問題の解決や現場目線でのアイディアを吸い上げるべく、2022年12月から現場も含めた各部署のベテラン層を集めたワーキンググループが立ち上がりました。部署ごとの想いが嚙み合いづらかった走り出しは、内勤メンバーで改革すべきことは既にやり切っているという議論もありましたが、徐々に成功体験を積んで機運が高まってくると、上層部のディスカッションでは出てこない、ワーキングメンバーだからこそのアイディアが次々に出され、大きな成果へと繋がっていきました。自分たちの課題感を自分たちで解決していくというワーキンググループでの取り組みのスキームを使って、ベテラン層でセットされた1期目は継続して取り組みつつ、2024年6月からは2期目として大本組の今後を担う中堅層が選ばれ、新たな取り組みに着手しています。

■社員に無理をさせない「計画受注」の実施

年間施工量において、急激な変動なく安定した施工量にすることを目的に、各部門のキャパシティを見える化し、計画的に受注していくことに取り組んでいます。社員にはそれぞれのライフステージがあり、且つ常にその希望は変動することから、離職防止の観点からも勤務地の希望を取得するアンケートを実施し、その結果を踏まえて、地域バランスを考慮した計画的な受注を目指し、他本部である営業本部とも連携を図りながら調整を進めています。結果、2022年度は名古屋以東の案件が約60%、大阪以西は約40%だったところから、2023年度は名古屋以東55%、大阪以西45%にと、地域バランスを考慮した計画的な受注が進み、継続しています。

大本組様インタビュー

■見積段階から「4週8閉所、1日8時間、週40時間」で計画

2024年3月に著しく短い工期での契約締結を禁止するという建設業法の法改正が閣議決定されたことや、日本建設業連合会からも「適正工期確保宣言」が出されたことなどを受け、大本組では、見積段階から4週8閉所、で対応し切れる計画を立てるように動き出しました。工務課で全体工程表を作成し、大型案件においては見積提出前の段階で、仮設・計画確認打合せを実施する仕組みを作り、打合せには、関係者だけでなく類似案件を担当したことがある所長にも参加を依頼することで、本当にこの計画で問題ないかという視点をあらゆる角度から的確な計画ができるような仕組みを整えています。

■「当たり前」になっていた自社ルールの緩和トライアル

工事期間において作業所職員がコア業務(施工計画や現場管理など)に注力できるようノンコア業務(書類作成やデータ管理など)の削減や集約化、圧縮にチャレンジしています。例えば安全関係の帳票や様式については、現在の労働安全衛生法から再確認をし、それぞれ帳票の目的を踏まえて本当に必要なものにそぎ落としていく対応を進めたり、様々な場面で設定されているチェックリストなどはそもそも何を目的として作られたものかから確認し、設定された当時とは異なる現在に合わせて改訂を進めたり、今まで使っていた「当たり前」の自社ルールを改善していくことでコア業務への時間を捻出しています。

■人が育つ組織づくりへ 教育内容と展開方法の見直し

時間外労働時間の上限規制に伴いOJTの機会が減少したり、その時々での現場配置状況などにより、期待したいスキルと現実に乖離が生まれつつある状況を鑑み、OJTと集合教育の連携を強化し新教育体系を構築、「5年で1人前に育てる」テーマで育成を加速していく取り組みも行われています。一般的に教育の取り組みは長い目で見るものとされ変化が感じづらいことがありますが、その中でも大本組ではWGの本質的な課題解決力が特筆で、「知っトク情報」と呼ばれる大本組のノウハウの蓄積と展開の多様化により半年後には現場のメンバーからも「理解が進んだ」「いざというときに思い出した」と声が寄せられるほどの変化が生まれました。現場を終えるごとに振り返りを仕組み化し、技術のノウハウを会社の財産として、しっかり蓄積されています。

■「着工前支援検討会」の実施で問題の早期発見を

工事着工直後に現場で決めなければならないことが多くて負担になっているという声が多く挙がっていたため、着工よりも前の段階でどういった支援が可能なのかという議論の場を設けることにしました。各担当から着工前に情報共有することで問題を未然に防ぐことができるだけでなく、人員配置や業者の選定も早期に決定することができるようになっています。2024年からは組織体制がかわってバックオフィス体制を整備したため、今後はバックオフィスへ支援を依頼する業務を整理し、より工期を円滑に進めていけるよう体制を整えていく予定です。

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■メンバーのクリエイティビティで作るゲーム型ワークショップ「タテテミ!」

建設業の魅力を広く発信するため、建築工事現場における施工管理、「現場監督」の仕事を体験しながら技術者の想い、現場の雰囲気を感じ取れることができるゲームを開発しました。責任が大きく重要な仕事で、手がけた建造物が完成した時の喜びには素晴らしいものがあり、スケールの大きな達成感が味わえる仕事の醍醐味を伝えていくためにゲームを開発するというプロセスもユニークなものです。興味を持つ学生にむけたインターンシップでも好評を得ています。

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担当コンサルタント
浜田紗織
川本孝宜
永田瑠奈

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