Case Study

福井県様

テレワーク、フリーアドレス、ペーパーレス…そしてさらにその先へ。有志によるシステム開発、スキルマッチングで変革を起こす福井県庁

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コロナ禍をきっかけに、さまざまな業種でテレワークやデジタルワークが加速しました。各地の行政機関でも、働き方改革の取り組みが進んでいます。今回ご紹介するのは福井県。若手職員のアイデアを活かした「Life Style Shift」を展開し、一丸となって「変化に合わせ、行動を変えていく」ためのアクションを続けています。弊社ではコンサルティングと管理職研修という形で福井県の改革をサポート。これまでの活動とその成果を伺いました。

●福井県にて開催した管理職研修の開催レポートはこちら

福井県庁の働き方改革「Life Style Shift」

○テレワーク

2021年から自宅以外でも仕事が可能に。テレワーク推進月間の実施率は47%を達成。全国の先進事例を表彰する一般財団法人日本テレワーク協会が主催するテレワーク推進賞 実践部門「奨励賞」を受賞。

○フリーアドレス

現時点で6部署が実施。2025年には本庁所属の約75%、58部署に拡大予定。働きやすい環境づくりを推進中。

○ペーパーレス

2018年下期比で、現状44%削減(2023年2月末時点)。

○業務スクラップ計画

各部署で業務削減の年間計画を策定。2023年1月末時点で12,800時間削減。

○業務改善タスクフォース

「ふくい式20%ルール」(事前に所属長に届出したうえで、勤務時間の一部(20%)を創造的活動※に充てることができる制度を利用した職員がITスキルを活用して全庁的な業務課題を解決。不要物品の交換システム「ぶつりゅう」、有スキル職員と各職場の課題をつなぐ「スキルマッチングシステム」の開発。

「創造的活動」とは、担当業務以外の県政推進に寄与する政策の企画・提案等の活動のこと

 

県庁の中でも多忙な職場「子ども家庭課」をモデル部署として、外部コンサルティングの伴走支援を導入

▼【プレスリリース】福井県庁が効率的な業務運営と県民サービスの向上をめざし働き方改革コンサルティングを導入 長時間労働の削減と男性の育児休業取得率・有給休暇取得率の上昇により、 高い創造性と生産性を発揮できる組織へ 〜カエル会議オンライン®を用いて楽しく効果的なカエル会議®と着実なアクション実施を目指す〜

弊社でコンサルティングを担当したのは2021年のこと。事務局として働き方改革を牽引する人事課 行政改革グループの東村光さんと協働する形で、着実に進めていきました。

コンサル終了後も、東村さんたちが中心となって取り組みを自走。前年の内容を参考にしながらカエル会議を活用し、さらなる改革を実現していきました。まずは、そうした経緯を東村さんに振り返っていただきます。


2021年度、政策トライアル予算を活用して「プロの知見・ノウハウ」も取り入れるべく、株式会社ワーク・ライフバランスにコンサルティングを依頼。非常に忙しい「子ども家庭課」(現在は「こども未来課」と「児童家庭課」に分課)の4チームをモデル部署として、カエル会議®を導入するなど、改革を推進しました。

福井県事例資料1

福井県事例資料2

福井県事例資料3

子ども家庭課は県庁でも多忙な職場の1つであり、松本副部長からは当初、「毎日忙しいのに、本当にできるかな」という不安をお聞きしていましたが、カエル会議の実施を決断し、毎月のミーティングや職員への声掛けを欠かさず実施いただく中で、職員同士の会話が増えて、メンバー同士が思いやりの気持ちを持ちながら仕事をする雰囲気ができていたように思います。

以前、私も子ども家庭課に在籍していたことがあり、何かと心配で頻繁に様子を見に行っていたのですが、皆さんが忙しそうにしながらも、和気あいあいと楽しそうに仕事をしていたのが印象的でした。松本副部長の温かな指導の下、カエル会議を通じて職場に「やってみよう」の精神が根付き、結束力が一層高まったように感じました。

福井県事例写真2

翌年度はそのノウハウを活用し、「障がい福祉課」「労働政策課」「高校教育課」にてさらに取り組みを続けました。

主に以下のような成果が出ています。

①所属長をはじめ全員で「これをやろう」と方向性を共有し、目標を決めて取り組んだおかげで、これまで担当者個人が「やりたくてもできなかったこと」を所属単位で達成できた。

  • 国−県−市町の通知発送ルールの簡素化(子ども家庭課)
  • スケジュール共有をOutlook予定表に変更(子ども家庭課)
  • 所属全体の統一マニュアル、よく使うリンク集の作成(高校教育課)
  • グループ全体の業務内容洗い出し(障がい福祉課)

②忙しい部署で定期的にカエル会議を開催することは実際問題として難しい場合もあったが、口頭もしくはTeamsを使ってコミュニケーションを積極的に取ることで、職場内に助け合いの意識が生まれた。

  • 1週間の予定や進捗状況を共有(子ども家庭課、障がい福祉課、労働政策課)

③各自の仕事の予定や業務内容だけでなく、休暇の予定なども共有することで安心感が向上。休みやすい職場の雰囲気づくりにつながった。「実際に休んでみたら、休んでも大丈夫ということがわかった」という効果も。

  • マイ定時退庁デーや年休取得日をあらかじめ共有(子ども家庭課、労働政策課)

上記の内容を一部、具体的にご紹介したいと思います。

学校から出向している教職員など県庁経験のない職員が多い「高校教育課」では、仕事の内容や進め方が「わからない」ことでストレスや非効率が生まれていました。そこで「わからない」ことを前提にしてマニュアルなどを整備。たとえば、頻繁に行う各種システムのリンク集や、予算・議会など県庁に初めて来た方にはなじみのない情報を中心に全体像が把握できるよう、わかりやすさを重視した「お仕事早わかり本」を作成するなど、現在進行形で取り組みを続けています。そのほか、RPAなどのデジタル技術も活用して事務作業の削減に取り組んだ結果、2022年度の1人あたりの超過勤務時間が前年度比で25%縮減しました。


カエル会議を通じたマネジメントのポイント

働き方改革において、管理職の役割は重要です。カエル会議を活用して日常業務を改善するにあたり、福井県庁では以下のようなポイントに留意しました。

●心理的安全性を高めるため職場内のコミュニケーション活性化

・安心して仕事の相談ができる環境をつくる

●働き方に関する年間目標と進め方の共有

・職場全体で「ありたい姿」や業務の年間スケジュール・目標を共有し、実現に向けて全員で行動する

●定期的な進捗確認と業務分担の柔軟な見直し

・各自の担当業務に固執せず繁忙に応じて柔軟に役割を分担する


有志職員と担当課が協力し、全庁の課題を自主的に改善

「子ども家庭課」がモデル部署としてさまざまな課題に取り組んだことを皮切りに、さまざまな成果を生み出している福井県。その中から、「20%ルール」を活用した有志職員が全庁に共通する業務課題を改善した例をご紹介します。実際に関わった職員のみなさんに、苦労した点・変化があった点などを伺いました。

福井県事例資料4

福井県事例資料5

■物品マッチングシステムの開発に関わった職員の感想

システム開発の経緯:

「仕事をやめる、減らす、変える」というタスクフォースの中で、庁内の不要物品を利活用できないか?という課題を発見。解決のためにプロジェクトを立ち上げ、5人の有志職員が「20%ルール」に沿って参加を希望、不要品のマッチングシステム「ぶつりゅう」を開発した。

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▲湯浅さん                      ▲小西さん

会計局 審査指導課 主任 湯浅一基さん

『人事課の東村さんと話をしていて、会計局会計課がこのタスクフォースに取り組むことを知りました。私も同じ会計局ですし、庁内向けにポータルサイトを立ち上げていることもあり、お手伝いができるのでは?と。

実際に参加してみて、各部署で余っていたものを眠らせたままにせず循環させていくきっかけを作れてよかったと思っています。業務のつながりがなかった人同士で「これ余ってるよ!それちょうだい!」と声をかけ合えるのもよかったですね。

最初に集まったのが7月の終わりで、9月までに作りたいというタイトなスケジュール。しかも20%ルールの中で取り組むので、かけられる時間は限られています。なので、むしろ深く考えず、とにかく思ったことをTeamsのチャットツールを使いながらやり続けた感じです。

メンバーのみんながすぐに反応してくれて、自分の考えだけで突っ走ることもなかったですし、「一人じゃない」と実感しながら進められました。余計なことを考えすぎないという点で、時間がなかったことが逆によかったのかもしれません。(笑)

通常業務はじっくり考えて正確を期しますが、今回の取り組みは真逆で、スピード重視。100点満点でなくていいからとにかく進めるという、通常と違う経験をさせてもらいました。

項目の流れを小西主任が考えてくれて熱い想いを共有してもらったり、ほかのメンバーからはおもしろいアイデアをもらって、少しずつイメージがかたまっていきました。8月中旬、インターンの学生さんと話す機会があって、本番を想定したものを試用してもらったら「使いにくい」と厳しい意見が。そこからまた急いで作り直して、改善点や着地点を相談しながら今の形に仕上がりました。

すべてが手探りで、利用者(職員)に受け入れられるか不安を感じながらのチャレンジでしたが、とにかく9月にリリース。そして、出したらおしまいではなく、どのように広めていくか、どう使ってもらうかを9月中の課題と考えながら、仕組み自体もより使いやすくなるよう改善を続けました。

今回の活動を通じて、本来の業務の取り組み方にも変化が出たと思います。たとえば問題が起こったとき、よく考えることも重要ですが、「まずは今すぐにできることは今やる」ことを今まで以上に意識するようになりました。それを進めながら関係メンバーとの会話を続け、意見を重ねながら対処していくようになりました。

今後も新しいプロジェクトが立ち上がるようなことがあれば、ぜひまた手を挙げてみたいですね』

地域戦略部 未来戦略課 主任 小西富美子さん

『SDGsの推進を担当しています。県民のみなさんにSDGs推進を呼びかけるうえで、『私たち県職員も取り組んでいます』と打ち出せるものがあるといいね、と話していたとき、不要物品をリユースする今回のタスクフォース募集を知りました。

システム構築の経験は皆無でしたが、「SDGs推進の一環になれば」と思って参加したところ、みなさんとても前向きで、湯浅主任のようなシステム構築のできる人材とも出会えたのでとてもよかったです。県職員にもいろんなスキルを持っている人がいるんだなと改めて気づきました。

通常業務よりもスピード感があり、タイムマネジメントが難しかったです。でも、今回のプロジェクトを通じてみなさんの活発なやり取りに参加できたことで大きな刺激を受けました。これまでは自分の中でしっかり組み立てたものを用意してから上司に相談することが多かったのですが、もっと早い段階から話した方がいい場合もあると実感したので、今それを少しずつ変えていこうとしています。

県庁で使えるようになっているデジタルツールだけでも、うまく活用すればさまざまなことができるということも実感したので、担当業務の中でも、自分が使ったことがないからといって嫌厭せず、DXの担当課や詳しい人に相談しながら積極的に活用するようにして、効率化をはかっています。

今回のタスクフォースが目指すゴールは不要物品リユースのシステムを構築することだと捉えていましたが、システムをリリースした後も、メンバーはそれぞれ工夫を凝らして、お友達紹介カードやカタログ風のチラシを作ったり、アンケートで寄せられた意見を反映してシステムを改善したりと、システムの良さをどう伝えていくか、どうやってアクセスを増やすかを次の課題にして活動を続けました。どんどん登録者が増え、マッチングが成立していく状況を見て、創意工夫をし続けることの重要さを痛感し、この経験を自分の今後の仕事に活かしていきたいと思いました』

福井県事例資料6

■スキルマッチングシステムで「チラシ作り」に参加した職員の感想

スキルマッチングシステム活用の経緯:

福井県庁が2021年から実施している「ふくい式20%ルール」(勤務時間の一部を担当外の業務で使える)を活用して、スキルマッチングシステムに参加。普段は土木関連の業務に携わる3人の職員が、有志でチラシのデザインを手がけた。

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坂井農林総合事務所 農村整備部整備保全課 企画主査 笠松諭さん

『私たち3人は、総合土木職という専門職で、私は普段は出先にある農林総合事務所で公共工事の発注やヘルメットを被って工事の監督業務などを行っています。今回のチラシ制作に手を挙げたのは、自分たちが持っているデザインのスキルを使うというよりもデザイン思考で課題解決をしてみたいなと考えたためです。ほかの2人とは普段の職場は違いますが、同期という関係なんです。個人で挑戦するよりチームで受けたほうが面白いかなと思って、一緒に仕事をしてみたかった2人を誘いました。

ポスターのデザインは基本的に私が担当しました。普段の仕事でも、Teamsで計画案なんかを投げかけると、普通の人は「いいね」で終わってしまうことが多いんですけど、この2人はいろいろ言ってくるので(笑)、それが逆に「あ、そういう視点って面白いな」という発見につながって、だんだんブラッシュアップされていきました。チーム力ですよね。一人ではできなかったと思います。

会ったことのない他部署の人とやり取りをすることになるので「仰々しい感じになるのかな?」と思っていましたが、実際はあっさりいけたというか。オンラインでチャットを使って「こんな感じでどうでしょう?」とやり取りをする。それだけで本当に完結したので、普段の仕事の「ちょっとわからないんだけど教えてよ」という延長線上の立ち位置がいいんじゃないかなと思いました。

20%ルールに関しては捉え方にまだまだ温度差があって、職場内で理解を得ることがまず大変だったというのはあります。そんな仕事をする余裕があるのか、余分な仕事をもらってくる、というふうに思われる可能性もありますしね。

20%ルールの活用もスキルマッチングも、絶対にやらなきゃいけないものではありません。普段の仕事を続けているだけでも何も問題はないんです。もちろん、やってみることで発想の転換や発見があるし、周りから刺激をもらって成長していることも実感できます。でも、一番大切なのは自分が楽しいかどうか。楽しそうだからやってみる、ということで始める理由は十分だと思います。チャレンジなので失敗してもいいですしね(笑)

人事課を中心に働き方改革をしてきたことで、以前より残業は少なくなっていますし、有休も取りやすくなっています。効率的に働けるようになって、その空いた時間をどう使うか。そういう次のステップに来たんじゃないかなと思っています』

福井土木事務所 河川砂防課砂防グループ 主査 銭井秀予さん

『私は土砂災害から人命や財産を守るため、対策工事の設計・発注・監督という仕事をしています。デザインのことは全くわからないですが、おかしいことはおかしいとハッキリ言えるタイプなので、このチームの中ではご意見番みたいな存在かなと思います。

私の職場では20%ルールもスキルマッチングのことも認知度が低くて、「何それ?」という反応だったんですが(笑)、今回の話をしてみると快く送り出してくれました。

実際にやってみると、とにかく楽しかったです。関わっている最中もそうですし、今日のこういう機会をいただいたことも、新しい景色を見られた感じですね。

自分が意見を出すことで成果物がブラッシュアップできてよかったと言ってもらえていますし(笑)、私はとにかく「楽しかった」という感想しかないです。参加して良かったなと心から思っています』

土木部土木管理課 技術管理グループ 企画主査 朝井範仁さん

『現在は建設業者へのPRの仕事に関わっていまして、そのための素材や動画を作ったりしています。資料を作る中でいろいろな人の意見をもらう重要性を感じていますので、今回もチームで意見を交わしながら形にしていくことができてよかったと思います。

20%ルールの限られた時間の中で、さらにTeamsを使ってチャットで進めたというのは、働き方の改革になりましたね。

20%ルールに関しては、私たちはもともとアニメを作るなど主要業務以外のことも積極的にやるほうなので、所属からもそういう感じで理解されているのかなと思います。そういう人間だけではうまく業務はまわりませんが、でも、そういう考えで動くタイプもいたほうが組織としていいんじゃないかなと私は思っていて。これからもどんどんやっていきたいです。

スキルマッチングシステムでは、今DX系のプログラムを作ってほしいという依頼も出ています。「できない人が多いんじゃないか」と思っていたら、意外と手を挙げてくれる人がいて。埋もれた人材というのがやはりいて、スキルマッチングシステムや20%ルールを活用すれば、それを活かしていけることを今回実感しました。

私自身、動画をけっこう作るんですが、若い人の中にもっとうまい人がいるはずなので、そういう人材も発掘されるといいですよね。

テレワークで業務ができるようになったのもここ数年のことですが、本当に変わったなというのを実感しています。これからもますますいい方向に変化を起こしていきたいです』

 

担当コンサルタント

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