Case Study

株式会社いそのボデー様

研修で学んだ“カエル会議”を自分たちで実践し、残業削減40%!
個人の技術も組織力も向上した「いそのボデー」“チーム魔術師”

昭和39年設立の株式会社いそのボデー(山形県山形市)。トラック車体の製造・架装・修理を担うメーカーとして、高い品質・ユーザー視点のカスタマイズ・細やかなアフターサービスなど顧客満足度を最優先させながら働き方改革に邁進中です。弊社の管理職研修を受講以来、現場での取り組みを継続され、目覚ましい変化を出しています。今回は事務局のみなさんと塗装係のおふたりにお話を伺いました。


ご参加くださったのは、写真左から事務局の金田さん、本間さん、塗装チームリーダーの高橋さん、サブリーダーの伊藤さん、事務局の佐藤さん。弊社の松尾二瓶がオンラインでインタビューを行いました。

●弊社の「管理職研修」を通して学んだ“カエル会議”を活かして

もともと磯野栄治 代表取締役社長が「社員の満足度を高め、より良いサービスをお客様に提供するために」とさまざまなアイデアを出し、働き方改革を進めてきた同社。「やらされ感のない働き方改革を」と弊社に問い合わせをいただき、コンサルタントが出向いて管理職研修を行ったのが2019年。以降、社内の各部署で“カエル会議”を実行され、中でもすばらしい成果を挙げているのが今回ご紹介する「塗装係」です。成功の秘訣、ポイントとは?

やればやっただけ効果がある、それが“カエル会議”の印象

WLB:
13チームにわかれて働き方改革に取り組んでおられる「いそのボデー」さんですが、今回は塗装係で「残業削減40%」というすばらしい成果を出されたということで、いろいろ伺いたいと思います。まずはチームリーダーの高橋さん、取り組み当初を振り返られていかがですか?


右がチームリーダーの高橋さん、左はサブリーダーの伊藤さん。〈以下敬称略〉

高橋(塗装係・チームリーダー):
私は2019年2月に入社して、その直後にくじ引きでリーダーになったので(笑)、最初はわけもわからず、という感じでした。

WLB:
弊社で管理職研修をさせていただいたのが9月ですから、本当に入社間もないタイミングだったんですね! カエル会議の印象はいかがでしたか?

高橋:
やればやっただけ、話せば話しただけチームの雰囲気が変わって、それまでバラバラだったチームが1つになっていく感じがしました。弊社には経験を積んできたベテランが多く、年齢層も高め。それぞれに「こうだ」というやり方がありますので、取り組み始めた頃は新しい提案が受け入れられにくい面もありましたね。

伊藤(塗装係・サブリーダー):
当初は「仕事量を変えずに業務時間を減らすなんてできないでしょ」という雰囲気でしたが、研修を受けてマインドが変化したのが大きいかなと思います。「できない」じゃなくて、「こうしたら変われるんじゃないか」と考えるようになりました。
ベテランとのやり取りについては、何が一番効率的なのか明確な答えがない状態でした。いちいち確認しながら進めるのもムダだなと思っていたので、ベストな方法を探るいい機会だと思いました。

思うところはあっても話せない。でも付箋を使えば意見が活発に

WLB:
研修を通じてカエル会議のやり方をお伝えしましたが、実際にはどのように進められたのでしょうか?

高橋:
毎週、全体朝礼の後にやるようにしました。そのタイミングなら集まりやすいので。最初はみんなめんどくさそうでしたけど、付箋を使うことで思っていたよりたくさん意見が出ました。

WLB:
研修のときも「めんどくさ〜」という空気はありましたね(笑)。でもいざ意見を出していただくと付箋の数が非常に多かったです。会議室に伺った際も、各自がちょこちょこアイデアを出すという“チョコ案”の紙が壁に天井までずらっと貼ってあったのが印象的で。アイデアを出すのがお得意なんだなと感じました。
それにしても、「めんどくさい」から成果を出すまでになったその変化は、なぜ起きたのでしょう?「ここで変わった」というきっかけはありましたか?

高橋:
続けているうちに徐々に、いつの間にか、という感じです。小さなアイデアだとしても実践して、とにかく続けたのがよかったのかもしれません。付箋を使って意見を出すというやり方も合っていたと思います。

伊藤:
思うところはあっても口に出さない照れ屋が多いんです。でも、みんないろいろ考えているので、それをさらけ出すいい機会になっていると感じます。
最初は「仕事のムダ」から探し始めましたが、経験のある人から「これってムダなのか?」と言われたりはしましたね。

WLB:
職歴の長い方ほど「それはムダじゃない、必要なんだ」という話になりがちですね。そういうベテラン勢にはどのように対応されたんですか?

伊藤:
塗装係のメンバーは全部で10人ですが、内訳は
①積極的に変わりたいという、問題意識の強い人
②中立的で、周りに合わせられる人
③自分のやり方を貫きたい人
という3タイプにわけられると思います。人数的には①が3〜4人、②が4〜5人、③は少数派だったので、①と②の人を巻き込んで、「とりあえずやってみっべ」と。

高橋:
動かない人でも動かざるを得ない感じですよね。「う〜ん」と言いながらも、決まったんだからやらざるを得ないっていう。

材料の見直し、方法の統一。小さなアイデアの積み重ねが大きな変化に!

WLB:
具体的には、まず何を改善されたのでしょうか?

高橋:
塗装の工程における「磨き」のムダをなくすことです。塗装が終わると上の人が検査して要修正箇所を指摘し、そこを直して仕上げるのですが、これまでは指摘・修正の作業に1時間半くらいかかっていて、残業につながっていたんです。会議で話し合ってからやり方を変え、完成品として検査を受ける前に、組んでいる相手に都度確認してもらうようにしました。ダブルチェックすることで指摘回数が減って、修正時間が短縮されました。

伊藤:
合わせて材料も見直し、修正しやすい塗料に替えました。というのも、弊社は同業他社と比べて作業が速いのもひとつの特徴で、「塗る→乾かす→磨く」の工程を1日で終えるため、塗装後の乾燥時間をなるべく短くしています。以前は速乾性の高い塗料を使っていましたが、時間が経つと磨きにくくなる一面も。乾燥が速いという従来のメリットを犠牲にしてでも、磨き重視の塗料に替えたことで、指摘後の修正がやりやすくなったので、結果として全体の作業時間が減少。仕上がりもさらに良くなりました。

WLB:
すばらしいですね! ほかにはどんなことを改善されましたか?

高橋:
マスキング法の統一です。以前は、小さい範囲で紙を貼る人、大きくがばっとビニールで覆う人など、やり方が人によって違っていたので。

伊藤:
前者は接合部分のキリのいいところまで塗りながら少しずつ仕上げていき、もう一方は「ぼかし塗装」といってグラデーションで仕上げていきます。ぼかし塗装のほうが技術を要しますが、速くできます。

高橋:
自分は当時入ったばかりでぼかし塗装ができなかったんです。でも、やるしかない状況になればやっぱり覚えていきますよね。大きい面を一気にマスキングしてグラデーションで仕上げる方法に統一したことで全体の技術があがり、仕上がりもさらに良くなりました。「ここからここまで仕上げよう」などいちいち聞かずに進められるというメリットもありました。

WLB:
塗料の変更と塗り方の統一で、技術力も仕上がりも向上したんですね。ほかにもいろいろアイデアがありそうですね?

高橋:
塗った後の小物や道具の置き場所を今まではとくに決めていなかったのですが、バンの後ろにしまえるようにしました。車輪のついた物干し台みたいなものを作ってそこにぶら下げておくんですが、こうすれば一気に運べるし、汚れやキズがつくこともなくなって、作業がやりやすくなりましたね。

前例や習慣に縛られず、良いと思うことはとにかくやってみる!

WLB:
ひとつひとつは小さなアイデアのように思えますが、実践してみたら「これ、いいね!」と思えることがいろいろ出てきたんですね。ちょっとしたことでもコツコツと積み重ねていけば大きな変化につながるという、すばらしい事例だと思います。

高橋:
カエル会議で「普段のムダを考えよう」という議題で意見を出して、それが実践されたらやっぱりうれしいし、そのおかげで仕事がやりやすくなれば、もっといろいろ意見を言いたくなります。小さなことを実践していくのは大切だと思います。

WLB:
そうですね。「そのアイデアはいいと思うけど、こういう決まりがあるから。今までこうしてきたから」となかなか前に踏み出せない組織も多いですが、御社はどんどん実践されていますね。

伊藤:
新しいことをやって失敗したらどうリカバーするの?というような話はやはりありました。でも、まず仮説を立ててみて「こうやったらうまくいくんじゃない?」と思えたらあとは進めてみる。ある程度は失敗するだろうと想定しながらやってみたことも多いです。

WLB:
会社としてもそのやり方に理解があったのでしょうか?

本間(事務局):
社訓に「できるところからどんどんやろう」というのがありますから(笑)。今より良いと思えることならまずやってみて、ダメだったらそこでまた考えればいい。そういう精神が行き渡っているのかもしれません。

WLB:
カエル会議は今でも続けておられるんですよね。細かいところがすでにいろいろ改善されていますが、それでもまだ議題ってあるものですか?

高橋:
枝分かれした末端のほうに進んでいる感じで。まだまだ終わりなく続きますよ。

WLB:
私たちの会社もずっとカエル会議を続けていて、お客様からは「もう話し合うことないんじゃない?」なんて聞かれたりもしますが、常に何かしらありますね。時代も年齢も自分たちの考えも変わるし、新しい人も入ってくるし。カエル会議って終わりがないね、自転車みたいだね、とよく話すんです。こぎ続ければとにかく前に行けます。成果が感じられない組織ほど、「もうやることがない」とやめてしまいがちです。みなさんは実際に行動していろいろ変化を起こしているからこそ、「終わりはない」と思えるんだと思います。

カエル会議のハードルを下げるために、事務局がやった工夫とは?

WLB:
ところで、御社はチームごとのネーミングがおもしろいですよね。今回ご登場いただいている塗装係のみなさんは「チーム魔術師」で、ほかにも「(帰)へるしぃーボデー」とか「Smile Lady with G」とか(笑)。改革を楽しんでらっしゃるなと感じます。チーム名はどのように決められたんですか?

金田(事務局):
今回のアクションには佐藤のアイデアが詰まっています。ユニークなチーム名も、そういう風に働きかけてくれたおかげです。

佐藤(事務局):
単純に「チーム名があったほうがわかりやすいし、おもしろいほうがいいな」と(笑)。あと、いざ働き方改革をやろう、カエル会議で話し合おう、となったとき、「そうはいっても難しいだろう」と思ったので、まずは各自の情報差がない「チーム名を考えよう」という課題から入ってもらって、カエル会議自体のハードルを下げたいと考えました。「これならできる!」ということからやってもらいたいという意味合いです。

WLB:
そこまで考えて実践されたとは、すごい!のひと言です。ちなみに「チーム魔術師」の由来は?

高橋:
魔術師のように、何色にでも塗り替えられます!というイメージです。みんなからアイデアを出してもらって投票で決めました。

WLB:
実際、塗装部門はお客様からも高評価を得ていると伺っています。

金田:
完成品をお届けした際、お客様からいただいたコメントは表にして全員で共有していますが、塗装の評価は以前からとても高いです。

佐藤:
働き方改革を通じて残業時間が削減できた後ももちろんその評価は下がることなく、お客様から「さすがです」などのコメントをいただいています。

現場の実行力と事務局のこまやかな工夫で、改革はさらに進んでいく

WLB:
互いの性質を知ろうということで「16パーソナリティーズ」という性格診断をされていましたが、あれは誰のアイデアですか?

佐藤:
塗装係にサポーターとして入ってもらっていた、別の課の課長です。

WLB:
サポーターをつけるというのはおもしろいやり方ですね!佐藤さんの発案ですか?

佐藤:
そうですね。ファシリテーター的な動き方が得意な人に、序盤だけ併走してもらう感じです。事務局で話し合って、「危ないな」というチームに入って貰いました。

金田:
そう、「サポートしないと危ないかも」というチームにはサポーターが張り付いていたんですよ(笑)。塗装のグループも当初は「危ない」と考えられていましたが、すぐに自走できるようになっていて。

WLB:
なるほど、サポーターが序盤だけ助走するというのは本当にいいアイデアだと思います!
事務局のみなさんから見て塗装チームのすばらしいところはどんなことでしょう?

本間:
20代〜60代まで幅広い年齢層のチームで、しかも山形の男性はもともと口数が少ないので(笑)、最初は会議も進まないんじゃないかと思っていました。でも、付箋を使って進めるやり方が合っていたこともあって、先輩は後輩に教え、後輩も先輩に聞けるという流れが、カエル会議を通じてできてきました。そしてその流れが業務にも活かされているのがすごくよかったと思います。

金田:
職人気質でシャイな人が多いので、「実際、どうなっていくんだろう」と、社長と話していたんです。でも蓋を開けてみたらどの部門もコミュニケーション力が向上しました。塗装係については、この2人の功績がとても大きいです。問題意識を持っていたし、進め方がうまかったので、年配の人たちも引き込まれていったんだと思います。

佐藤:
とにかくアクションが早かったこと、そしてリーダー、サブリーダーふたりのバランスが良かったことがすばらしかったと思います。キャラの立つ高橋さん、パソコンが得意でアイデアや結果を明文化してみんなに広めた伊藤さん。役割分担も決めていたので、他人事ではなく自分事にできたんじゃないかと。

WLB:
役割分担というのは?

高橋:
カエル会議で決めたことを実行するために、2〜3人ずつのグループで役割を決めました。1人だと進まないことも2人以上いれば話し合いながらできますから。グループ分けは仕事上の相手というのが基本です。そのほうが話しやすいので。

WLB:
先ほど高橋さんのキャラが立つという話が出ましたが、伊藤さんからご覧になって高橋さんのどんなキャラがよかったんでしょう?

伊藤:
親分肌で責任感もあって、引っ張っていってくれます。あと、酒を飲むと面白いので、話しやすいです(笑)。

WLB:
高橋さんのところにグチがきたりもしたと思いますが、どんな風に受け止めましたか?

高橋:
受け止めるというよりは、自分も新人だったので、「こういうのはどうなんですか? 自分もわかんないんで」と相談しながら進めた感じです。「あいつは入ったばかりだから教えてやっか」と思ってもらえるように(笑)。ベテランは教えることで自身の仕事を振り返るきっかけにもなったと思います。

WLB:
高橋さんらしい、「さすが」な進め方ですね(笑)。
“チーム魔術師”で実践されたことは、「小さなことが大きな流れへとつながっていく」という好例だと思います。大きなアクション、大胆なアイデアでなくてもいい、身近なことをコツコツと積み重ねていけば、必ず前に進めるんだというのが伝わってきました。ほかの組織の方々にもぜひ参考にしていただきたいと思います。そしてみなさんは今後もカエル会議を続けて、ますますすばらしい成果を挙げていかれると思います。私たちも楽しみにしております!


担当コンサルタント

文/山根かおり

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