Case Study

マニュライフ生命保険株式会社様

成功する「働き方改革の王道パターン」がさらに進化!
残業減少、業績&コミュニケーションUPの「リーダーカエル会議」

多くのグローバル企業において「日本支社だけが突出してエンゲージメント(組織への貢献意欲)スコアの数値が低い」というケースは少なくありません。カナダに本社を置くマニュライフの日本法人「マニュライフ生命保険株式会社」でも、北米・アジア圏を中心とする世界14の国および地域の中で、エンゲージメントスコアが最下位でした。この数値をなんとか改善したいという強い使命感を持っていた、当時の取締役代表執行役社長兼CEOのギャビン・ロビンソンさんと弊社・小室淑恵が初めてお会いしたのは2014年。国際女性ビジネス会議で小室が基調講演を務めた時のことでした。以降、弊社で改革をサポートすることになったのです。

「エンゲージメントスコア」と「ワーク・ライフバランス」の関係性

「マニュライフ生命保険株式会社」は日本での従業員数約4000名、保険料等収入が2018年度決算で1兆円を超える巨大企業です。

2014年、国際女性ビジネス会議で基調講演を終えた弊社・小室淑恵のもとへ、当時の取締役代表執行役社長兼CEOのギャビン・ロビンソンさんがご挨拶に見え、「女性活躍と働き方改革の相談に乗ってほしい」と話しかけられました。

当初、ギャビンさんは「女性の働き方」の改革を検討されていたのですが、お話ししているうちに、ご自身が大きな課題のひとつとして掲げておられた「エンゲージメントスコアの底上げ」を図ることと「社員全体のワーク・ライフバランスの実現」との間に深い関わりがあることに気づかれたのです。こうして、2015年から本格的に弊社にて働き方改革のコンサルティングを行うことになりました。

まず、全社員に向けて小室の講演を実施し、ギャビン社長からは改革の必要性を発信。一度や二度ではなかなか全体に届かず浸透しないので、ギャビンさんは改革に向けたメッセージを繰り返し社内に発信されました。

ちなみに、取締役代表執行役社長兼CEO吉住公一郎さんが新たに就任されてからも引きつづき精力的に改革を推進され、多くの成果が挙がっています。

膨大なプロジェクトを抱えていたIT部門をトライアルチームに選んだ結果

1期目はトライアルチーム6つを選出しました。とにかく業務が多いIT部門、官公庁とのやり取りが多く多様な書類形式と完璧な正確性を求められる経理部門、売上数値目標が高い営業部門、エンゲージメントスコアが低いチームなどが選出されました。

プロジェクト数が多いと悲鳴を上げていたIT部門では、「チーム全体および各メンバーの業務量」が把握されておらず、「すべての案件が急ぎ対応」という状態になっていました。

そこで、まずは全員の担当プロジェクトを書き出して“見える化”することからスタート。膨大な量のプロジェクトを抱えていることが明らかになり、新たに発生する業務を割り振る責任者を決めて、メンバーの状況を見ながら戦略的に新規プロジェクトを割り振るようにしました。責任者を置くことで、案件を依頼する部署とIT部門とで納期交渉が行えるようになったのです。

また、仕様書を作成する際にも設計者目線なのかユーザー目線なのか、メンバーの認識がそろっていないことが分かりました。目線を合わせた結果、「悩む時間」がなくなり、仕様書作成時間が削減されました。

こうして業務を見直すことで生み出された時間を活用して、社内からニーズがあった「テレワーク」環境を整備。自分たちでも積極的にテレワークを試して小さな改善を積み重ね、社員の多くがテレワークを使いやすくなり、全社の生産性向上にも寄与しました。

互いの「ライフの目標」を共有することで、「協力して早く帰ろう」という意識を強化

経理部門では、官公庁とのやり取りが多く様式も多様で煩雑なため、最初のうちは「自分たちでは業務は変えられない」という意識がありました。しかし“カエル会議”を通じてその意識を乗り越え、改めて業務フローを見直すと、「最後にダブルチェックをするのなら、途中でのダブルチェックは不要ではないか」などの細かな改善が進みました。

経理部門やカスタマーサポート部門で全体の意識が大きく変わり始めたのは、「ライフで実現したいこと」の目標を共有してからでした。リーダーも、当初はライフのテーマをどう扱えばよいか迷っていましたが、“朝メール・夜メール”によってチームのコミュニケーション量が増えてから、ライフの目標をお互い公開してみることにしました。

それまでプライベートを詳しく知らなかったメンバーが「仕事が早く終わったら、○○をしたい」と意外な一面を持っていることを互いに知り合うことで、誰かに偏っていたスキルや仕事を“見える化”して共有し、「協力して早く帰ろう」という意識が強く根づき始めたのです。念願の免許取得や洋服を作るなどの夢を実現する人も出てきました。

すでに残業削減に成功していたコンプライアンス部門では、他の部署の残業を減らす貢献をしました。「法律改正時に営業部署が勉強するe-ラーニングが受講しにくい状況にあり、時間を取っている」と考え、e-ラーニングシステムを再構築して、必要なクリック数を5分の1まで削減したのです。おかげで営業部署は残業を削減させる一方で、営業活動を増やすことができました。このシステム改善は会社利益に貢献するアクションとなりました。

全社の改革を一気に進ませた「リーダーカエル会議」

2期目は、一気に全社展開へとスピードを上げました。1期目は6チームで進めてきた“カエル会議”でしたが、2期目はその手法を全リーダーに学んでもらう「リーダーカエル会議」研修を約80名の全管理者に実施したのです。

各リーダーが“カエル会議”の進行方法を習得し、それをチームに持ち帰って実際に“カエル会議”を開催。そして、翌月の「リーダーカエル会議」の場で、効果があった方法や難航している問題などを共有し、お互いにアドバイスをしあいました。他のチームでうまくいった方法が自チームの困りごとの解決ヒントになったり、成果を聞きうらやましくなって同じ手法を取り入れたり、という競争意識で取り組みは加速し、全社の働き方改革が一気に進みました。

「会社への貢献」「生産性向上」を見直しつつ改革を進め、数々の成果を達成!

中でも営業サポート部門では、それまで希薄だったチーム内のコミュニケーションを活性化するために、独自の「エクセル振り返りシート(通称 夕方メールYou’ve got a mail.)を使用しました。メンバーはその日の業務内容を中心に振り返りを入力し、リーダーは必ず全員にコメントを返します。するとシートを通じてメンバーから業務効率化のアイデアが多数寄せられ、メンバー同士の意見交換も行われたため、会議を開催せずとも働き方の見直しが進むようになりました。その結果、2016年下期は1人当たりの月間残業時間が約1時間減少しました。

お客様コールセンターの部門では、オペレーターがそのまま請求書作成をするなどの工夫を重ね、年間の対応件数が前年比9000件増加したにもかかわらず、スタッフ数はそのままで、かつ有給取得率を20%向上させることに成功しました。さらに、応対品質の向上にも着手し、国際基準に基づいたサポートサービスのランク付けを行う「HDI格付けベンチマーク」では、2016年・2017年・2018年と3年連続で最高評価の三つ星を獲得しています。

このように、社内で一気に「本来担うべき業務」や「会社に貢献できること」「生産性向上のためにできること」を足元から見つめ直しながら改革を進めた結果、2016年度は全社平均で残業(所定外)が16%減少したうえで、保有契約高は12%アップ。テレワーク利用者も前年比で76%アップという、すばらしい成果となりました

残業時間(所定外)の推移

スコアカードで目標を設定しつつ、仕事の質とライフも重視

同社では、今回の取り組み時に「残業時間」「月間45時間超え勤務者人数」「有給取得日数」「在宅勤務利用者率」「エンゲージメントスコア」等の目標値を記入する「スコアカード」を作成しました。そして同時に「これらを達成するだけでなく、社員一人ひとりが仕事の質を高め、ライフも大事にするための目安にしてほしい」というメッセージを繰り返し発信しました。

目標数値は達成度合いを測るよい目安にはなりますが、「数値の達成だけ」を目標にしてしまうと、本来理想とすべきチームワークやコミュニケーションの妨げとなるので、このような丁寧な進め方はとても素晴らしいものです。

リーダー全員が「それぞれの働き方改革」を自分の言葉で語れる素晴らしさ

コンサルティング2期目の最終日は、「リーダーカエル会議」に当時のギャビン社長も出席され、通訳を介して各テーブルの議論を興味深く聞き、どんどん質問される姿が印象的でした。

そして私たちが大変感動したのは、約80人のリーダーが「それぞれの働き方改革」を自分の言葉で語れることでした。各リーダーが「何のために」働き方改革をやるのかをぶれずに語れるからこそ、全社に広げてもその中身や意義が薄まることなく成果を出せているのです。

2期目から全社展開を行うというのは、じつは異例の速さです。2016年秋以降、「働き方改革」の実現を求める時代の追い風がどんどん強まっていったことも、やはり大きく影響しているでしょう。

改革への取り組みを一過性のものではなく「文化にしていく」という強い意志のもと、今までリーダーが担ってきた役割を管理職候補のサブリーダーが引き継ぐことで、次世代の育成にも取り組むマニュライフ生命。現在はコンサルティング4期目に入り、フルコミッションの営業職員を抱える多忙な営業支店でも目に見えて成果があがるなど、改革は順調に進んでいます。

マニュライフ生命保険株式会社の成功ポイント3
  • 「全社員のエンゲージメントを底上げしたい」というトップの強い意志
  • スコアカードで目標設定しつつ、仕事の質とライフも重視
  • 「リーダーカエル会議」で全社員の取り組みを一気に進めた

※こちらの事例は、弊社代表 小室淑恵の著書『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』からまとめ直したものです。


担当コンサルタント

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