Case Study

ミサワホーム様

働き方改革は「社員のため」であり、「経営戦略」でもある。
経営陣のコミットメント、社員の自主性を重視しながら改革成功!

ミサワホーム株式会社は「住まいづくり」を幅広くサポートする総合住宅メーカーです。『環境を育む/暮らしを育む/家族を育む/日本の心を育む』という“4つの育む”を理念に掲げ、社員の働き方改革にも積極的に取り組んでいます。とはいえ、最初から順調だったわけではありません。一時は経営状態が悪化し、社員研修などもストップ、従業員満足度は低下して離職率も高まり・・・と、根本的な改革が急務でした。待ったなしの状況で取り組みを成功に導いたポイントは何だったのでしょう? 取締役 常務執行役員(取材当時)の立場から、経営陣と社員それぞれの意見や背景を考慮しつつ改革を推進したキーパーソンにお話をうかがいます。

多くの課題に直面しながら、改革を進めたミサワホーム

ミサワホーム株式会社から弊社にコンサルティングの問い合わせをいただいたのは2017年末。業界全体が深刻な人手不足に直面し、会社としても慢性的な長時間労働で離職率が高まるなど、“混乱期”のまっただ中にあった同社は、働き方改革を早急に進める必要性を感じていたといいます。


ミサワホーム株式会社 取締役 常務執行役員 管理・海外事業全般兼働き方改革推進担当 人財開発部インスティテュート部長 BRシナジー推進室長 堤内真一さん。

課題だらけでスタートした取り組みでしたが、やがて根を張り、実を結び、その成果は全社に拡大していきます。同社の働き方改革を成功に導いた極意はどこにあったのでしょうか。立役者である執行役員・堤内真一さんに、弊社コンサルタントの堀江咲智子高安千穂がインタビューを行いました。

働き方改革をキーワードに、社員満足度を高め、離職率を下げる

コンサルティング開始時、弊社への相談として挙がったのは女性活躍・会議の圧縮・書類削減といった個別のテーマでした。しかし、「長時間労働は当たり前」とする旧体質が根強かったこと、役員のみなさんの中で働き方改革への理解度・姿勢にかなりの温度差があったことから、まずは「役員育成」の研修プログラムからスタート。そうした流れの中で、社内の指揮をとられたのが堤内さんです。当時の様子を振り返っていただきました。
※弊社で提供する研修の詳細はこちらからご覧いただけます。

「もともと、経営会議でも働き方改革が話題にのぼることは多く、“旧来のやり方では社員の意識も生産性もあがらない。早々に着手すべき”という機運はあったんです。でも、何をやるかが明確でないだけに、担当者がはっきりしないまま時間が流れて。それで、僕がやりましょうか、と手を挙げました。

課題は多いし守備範囲も広い。何をやるべきか、役員の中でも意識はまちまちだったので、まずは課題と目的を整理しました。そのとき重視したのは、従業員意識調査の結果です。

  • 会社への満足度や誇りがあまり高くない
  • 若い人たちの離職率が高い

という、早期に改善すべき実態があったんです。

単純に人事制度を見直そう、というようなことではなく、“ミサワホームが変わった!”と社員が実感できて、満足度が高まるような抜本的なテコ入れが必要だと思いました。そのために、働き方改革というのはわかりやすいキーワードになるんじゃないかなと。それが、ひとつのきっかけでしたね」

役員にも社員にも「何をやるか」を明確に伝える三本柱

堤内さんはまず、働き方改革で何をやるのかを役員や社員にわかりやすく浸透させていくために「三本柱」を掲げました。

1つ目の柱は、常日頃から意識しているというES(Employee Satisfaction/従業員満足度)」の向上。「弊社は経営が悪化した時期があり、会社への満足度や期待値がかなり下がっている社員も多かったんです。何はさておき、社員の満足度を上げることが最優先だと考えました」

2つ目は生産性の向上です。「お金をかければ満足度は向上しますが、それでは経営が成り立ちません。ESと会社の競争力を同時に強化するには、生産性を上げることが必須です。単に残業を減らそうと呼びかけるのではなく、ムダな仕事を徹底的に排除していきました」

3つ目は会社全体の制度を整備すること。同社は2015年にグループ会社数社と統合したため、複数の制度が混在したままでした。「同じ会社で働いていても待遇・制度が違うという不具合が起きていて、それらを一気に解決する狙いもありました」

自主性を持って行動すれば、指示で動く以上の効果が出る!

改革は専任制ではなく、通常業務との兼任で実施。メンバーの半数は、取り組みが通常業務と直結しそうな人事・システム・教育・経営企画などから選出し、残りは現場のディーラーや営業など老若男女をバランスよく混在させて、総勢60名ほどが集まりました。

その際、堤内さんからは各部に「キーパーソンをメンバーに入れてほしい」と依頼。改革に向けた提案を実際の制度として広めていくには、そのラインの権限を持つ人、目的意識を持って自分も周りも動かせる人と進める必要性を感じたそうです。

そして、もうひとつ特徴的だったのは「徹底的に考えさせるスタンスを貫きたい」という姿勢です。自主性を引き出し、各自に考えさせることを常に意識されているのが伝わってきました。

「“何をやりたい”“自分がやります”と手を挙げてもらうことが重要です。僕からは “志を高く持ってよ”といった気構えの点を指摘したり、スケジュールや進め方の修正などはしたものの、具体的に何をするかは本人たちに任せました。上の立場から指示を出してしまうと、自主性を持って動くことが難しくなりますから」

コンサルタントとして取り組みに併走している私たちから見ても、時間を経るごとにメンバーが “自分ごと”として課題を認識され、ご自身で考えてどんどん進めていかれたのが印象的でした。

仕事が増えるという「負担感」を「やる気」に変えるために

通常の業務にプラスして兼任するため、とくに慣れない頃は「負担感」を感じてしまうものです。堤内さんはそれを想定し、2つのことをメンバーに伝えました。

「1つ目は、日常業務以外に働き方改革でやったことも査定でプラス評価する、上司だけでなく僕も加点するよ、ということ。2つ目は、延々とやるわけじゃない、期間を決め、社員の代表として、みんなが働きやすくなるように進めてほしい、と。給与面でも精神面でも、動機付けをきちんとしておくことは重要です。結果、今これをやるのは必要なことだと自分たちで感じてやってくれましたね」

取り組みを通じて感じた変化 〜事務局担当者の立場から〜

人財開発部 採用・人財育成課
BR働き方改革推進室 生産性向上課 菊田佳奈さん

『当初、役員育成の研修メンバーからは、「働き方改革は人事がやっているやつだろう」
「業務が忙しいのに人事につきあうのも大変」というように、否定的な声も上がっていました。

1年間コンサルタントのお二人に伴走いただきながら、自部署の生産性向上をテーマに取り組んだ結果、最終報告時には全員が一定の成果を出し、堂々とプレゼンをしている姿が印象的でした。

影響力や発言力もあるメンバーたちの意識が変わったことで、社内の生産性向上の機運もさらに高まったように感じます』


人財開発部 採用・人財育成課 課長 遠藤光男さん

『組織立ち上げ当初は、「働き方改革」は本社内だけの施策で、支社支店の現場には関係ない、との雰囲気を感じました。そこで全支店に足を運びコミュニケーションを密にしながら、現場の意見や提案を本社内で取りまとめ、優先順位をつけて実施施策に反映しました。

たとえば、社員間のコミュニケーション促進のために始めたサークル活動助成制度。このサークル活動を通じて地域をまたいだ交流が深まり、支店対抗の野球試合や複数支店で一緒に山登りなどして、組織にとらわれない横の繋がりが強化されてきました。

今では、社内の約半数の1,000名以上が54のサークル活動に参加して、仕事以外の場で縦横の社内コミュニケーションを深めています。サークル活動写真も全社員が見ることができ、ますますサークル活動が活発になってきました。

働き方改革が身近なことから浸透しているな、と実感しています』

費用対効果を示し、経営陣を納得させるのも重要な役割

一方で、役員には経営面の視点から話を進める必要があります。大手の企業が働き方改革を抜本的に進めるには相応のコストがかかるため、「それだけの費用をかける意義がある」ということを経営陣が理解・納得しなければ、改革はなかなか進まないのです。

「コストはこのくらいかかる、でもそれをやればこれだけのメリットがある、というのを具体的に出して、経営会議、執行委員会、取締委員会の中で共有していきました。

実際、それまで30%もの人材が辞めていて、深刻なヒドゥンコストになっていました。定着率が改善されればそのコストは削減できるし、ミサワホームの土台も強化されます。実際、改革後は離職率が大幅に削減されたので、“働き方改革を実行すればムダが減る、増収する”という理論が証明された形です」

笑顔で淡々と改革を振り返る堤内さんですが、実行する際に障壁はなかったのでしょうか?

「障壁を気にしない性分なのでさらっと語っていますが、いろんな意見や細かい質問はもちろん出てきました。大変でしたよ(笑)。中には“確かに、そこまでしなくてもいいのかもな”と改革の手をゆるめたくなるような意見もありましたが、60人のメンバーの顔を思い浮かべて、いや、ここでやめられないだろ!と決意を新たにしていました」

期間を決めて集中的に取り組み、さらに良い状態に整備していく

働き方改革は期間を決めて集中的に取り組み、大きな流れを作ってから広げていこう、と決めていた堤内さん。「グループ会社にも浸透させていく必要がありますし、期限を決めたほうがスピーディに進むので。課題意識を持ってさまざまな案を考えてもらい、その中で“重要度や緊急度が高いものは何か”と優先順位をつけました」

取り組みは一期と二期にわけて進行。一期では優先課題として「若い世代」と「60代のシニア層」のケアにしぼり、残った課題は二期での解決を目指すことに。

「若い世代の退職率が高かったので、まず優秀な人材を採用し、辞めずにしっかりと定着できる環境を作ることに重点を置きました。シニア層に関しては、設計・施行の人材が慢性的に不足する中で、スキルの高いベテラン技術者が長く活躍できる場を用意するのは急務と考えたためです。若手もシニア層も、取り組みを通じて想定以上の成果が出ています」

「働き方改革は、志が高くさわやかでなければ奏功しないと思います」と結んでくださった堤内さん。「愛情をいっぱい受けた子どもが人に優しくできるのと同じですよ。ESを向上しなければCSも向上しない。長い目で見ると、社員が満足して会社との信頼関係が強くなることが顧客満足につながり、経営面でもメリットになるんです。だから、会社側も利益とか生産性だけでなく会社の将来のために“社員を信頼して任せよう!”というさわやかな志で取り組んだほうがいいし、社員側もやらされ感を持たず“自分のため、みんなのため”という前向きな気持ちになれます。カリフォルニアの青い空!みたいなさわやかな気持ちで働き方改革に取り組んでほしいですね」

社員の満足度向上を最優先課題にかかげ、さわやかな志で改革を進めてきたミサワホーム株式会社。今後ますますの前進を、私たちコンサルタントも大いに期待しております。


担当コンサルタント

撮影/SHIge KIDOUE
文/山根かおり

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