Case Study

株式会社テレビ新潟放送網(TeNY)様

過去の成功体験やしがらみから脱却し、新しい発想でより良いコンテンツを作る!

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テレビ新潟様(TeNY)では、長時間労働に依存して目先の業績や視聴率を追い求め る組織から、新たな事業を生み出していく組織への転換を模索する中、2021年に働き方改革コンサルティングを導入。「Happy ワークチャレンジ!」と銘打った取り組みを進めてこられました。代表取締役社長(取材当時)の小山章司様と経営推進本部長の上原小百合様に、株式会社ワーク・ライフバランスコンサルタント原・松久・松尾がお話を伺いました。


「幸せであること」が原点

株式会社ワーク・ライフバランスコンサルタント(以下、WLB):改めて小山社長が「Happy ワークチャレンジ!」をスタートされたときの想いをお聞かせください。

テレビ新潟 代表取締役社長 小山章司様(以下、小山):最近、自分がこの会社に来て最初に挨拶をしたときの原稿を読み返す機会がありました。そこでは「まず、みんなに幸せになってほしい。楽しく働いて幸せになるためにはどうすればいいかを考えたい」といった内容が書かれていました。それが原点だったと思います。

必死に働くだけの働き方ではなく、ライフ面も含めて心身ともにバランスがよく、新しいことを考える余裕を持てるような働き方を実現したいと考えていました。その中で、御社の小室淑恵社長から伺ったお話や、社内で変革を求める機運が合致し、具体的なプロジェクトとしてスタートしたという経緯です。

WLB:社長に就任した当初、社員の皆さんのお仕事をご覧になって、どのようにお感じになったのでしょうか。

小山:視聴率や売上の競争にさらされていて、とにかく一番になるんだ、一番にならないとダメなんだ、それが自分たちにとっての価値なんだという認識の下、目の前の仕事に一生懸命取り組んでいました。

それは決して間違っていなかったと思いますが、今は時代が大きく変化していて、テレビの見られ方も変わってきています。業界全体が縮小していく中で、今まで通りの働き方を愚直に続けても、せっかくの頑張りが報われないことにもなります。やはり、新しい事業やチャレンジに取り組まない限り、10年後、20年後の未来は厳しいものになるという予感がありました。

テレビ新潟様(TeNY)インタビュー1

WLB:私たちも、小山社長が幸せに働くことを経営戦略の最優先にされる姿を間近に拝見してきました。なぜ経営戦略として重視されたのでしょうか。

小山:私自身、それ以前に在籍していた日本テレビで働く中で幸せに働くことが大事だと、ずっと思い続けてきたというのが最大の理由です。日本テレビという会社には比較的自由に物を言える雰囲気がありましたが、それでも私の中では「もっと自由にできたんじゃないか」という反省を抱えていました。自分が経営のトップになるからには、社員の発言が否定されずにまずは受け入れる環境にしたいという想いがあったんです。

WLB:当初は自由に発言できていない雰囲気をお感じになったのでしょうか。

小山:やはり「最終的な方針は経営トップが決める。上が決めたことに従う」といった風潮があり、「上はどう考えているのか」がすべての前提になっているところがあったと思います。

意識が大きく変化した

WLB:2021年から「Happy ワークチャレンジ!」をスタートし、さまざまな取り組みを行ってきました。これまでを振り返って、どのような感想をお持ちでしょうか。

小山:意識の変化が出てきているのが大きいですね。特に、ワーク・ライフバランスさんとリアルのセッションができるようになってから、だいぶ変わったと思います。印象的な出来事でいえば、カエル会議の経過発表の場で、報道チームの女性社員が、「変わるって意外と簡単」という発言が出たことがあり、そう思ってくれたらやれると感じました。

WLB:社内の意識の変化は、どのようなところでお感じになりましたか。

小山:いろいろなセッションに参加する様子を見ていても、顔つきが変わってきましたし、前向きに取り組むようになってきたと感じています。普段の会話の中でもポジティブな雰囲気を実感しています。

WLB:私たちが定期的に取るアンケートでも、かつては否定的なコメントや、懐疑的な様子が読み取れることもあったと記憶しています。けれども、今はそういった反応はほとんどなく、「やるんだ」という認識が定着していると感じます。

小山:「Happy ワークチャレンジ!」の取り組みの1つとして実施した、役員ワークショップを通じて役員の意識も大きく変わってきました。ワーク・ライフバランスさんのサポートによって、みんな自然と本音を出すことができました。会議の場でも自然な会話ができるようになり、それぞれの意見や疑問も出せるようになってきたと思います。

テレビ新潟様(TeNY)インタビュー2 テレビ新潟様(TeNY)インタビュー3

「Happy ワークチャレンジ!」の様子
左:役員ワークショップの様子 右:制作メンバーへのコンサルティングの様子

WLB:役員ワークショップの中では、それぞれの事業に対しての期待をお伝えいただいたり、期待や感謝を伝えあうメッセージを書いていただいたりもしました。それが話しやすい関係づくりにつながったのであれば、非常にありがたいです。

役員ワークショップの設計に際しては、上原さんとも一緒に伴走させていただきました。上原さんにとって、役員ワークショップはどのような場だったのでしょうか。

テレビ新潟経営推進本部長 上原小百合様(以下、上原):小山に対しては、それまでも言いたいことを言っていましたが、役員ワークショップ以降は他の役員とも距離がぐっと近くなり、本音で言い合える関係になれました。その意味では、非常に重要な場だったと思います。

小山:役員でもキーとなる人が役員ワークショップで本音を出してくれたのはとても大きかったと思います。

WLB:役員ワークショップに価値を感じてくださりありがたいです。管理職の皆様や参加いただいたモデルチームの中で、変化を感じたところはありましたか。

小山:特に営業は大きく変わったのではないかと思います。営業に関わる部署は、ひたすら競争を重視していましたが、今では柔軟な考え方に変わっていたように感じています。営業部でバリバリ働いていた部長が、「自分も本当は家族と休みを取りたかった」という発言が出てきたのは、変化を象徴する出来事だったと思います。

WLB:そうですね。「いかに競争に勝つか」という視点から、ちょっと俯瞰して自分たちの働き方を見直すような場面が増えてきたと思いました。

発信し続けることが大切

WLB:これまでの歩みの中で、経営側として「Happy ワークチャレンジ!」に関連したメッセージを発する際はどのようなことを心掛けていたのでしょうか。

小山:少々気恥ずかしいですが、やはり愛が大事であり、どれだけ愛情を持てるかが大事だと考えていました。また、発信し続けることを意識していました。私自身を振り返っても、最初に就任したときの話を、ずっと繰り返してきたように思います。

WLB:小山社長ご自身が、何度も繰り返して伝えることの重要性を感じる体験をされたのでしょうか。

小山:私が日本テレビにいたときにも、経営トップは同じことを繰り返し伝えていました。ただ同じ内容を繰り返すのではなく、その都度言い方を変えて、想いを込めながら話していました。そうすると、聞いているほうの理解が徐々に深まっていって、「ああ、こういうことだったのね」とピンとくる瞬間が訪れます。

言っているほうは同じことを言い続けることに飽きてくるのですが、そこで飽きずに言い続ける必要があります。聞き手の気持ちは常に動いているので、同じ内容であっても、タイミングによって受け取られ方も変わってくるので、言い続けることが肝心です。

WLB:さまざまな場面で小山社長が同じスタンス、同じ言葉で話してくださっていたのが印象的です。ほかに工夫したことがあればお聞かせください。

小山:会話を増やすことは意識しました。いろいろな機会を通じて会話を重ねることで、だんだん伝わってくることがあります。コロナ禍では飲みに行くことが難しかったので、社内で1対1、数人対1人といった少人数での会話をどれだけ増やせるかを考えていましたね。

WLB:そこからいろんな声が聞こえてきて、新しい取り組みについても考えることができるわけですね。

小山:2022年に社長室を立ち上げ、各職場の代表を集めて会話をしたことも大きかったと思います。現場に近い人たちと生の会話ができたのが良かったですね。

上原:小山は社員と話をする機会が格段に多かったと思います。役員や局長クラスはもちろん、部長・副部長クラスとも定期的なミーティングをしていましたし、経営報告の機会があると、必ず最後にはコメントをしていました。社長がいろんな人の考え方を積極的に聞くという姿勢はこれまであまりなかったので、社員にも「自分たちの意見を聞いてもらえる」という雰囲気が広がっていったのではないでしょうか。

困難を乗り越える上での支えとなったもの

WLB:いろいろな会社で経営者のお話を伺うと、「発信してみたけど社内の反発が多くて、やり遂げられない」ということも耳にします。小山社長ご自身は、実際に困難を感じたことがあったのでしょうか。その場合は、どのように進めていかれましたか。

小山:難しいと思ったことはありました。特に管理職以上の人たちは、長年培ってきた価値観を持っているので、頭では変化の重要性を理解していても、実際に変えるのは簡単ではありません。ただ、上原という推進役がいて、私と考えがかなり合致していたので、その点は心強かったです。

難しいと感じたときの進め方でいうと、やはり地道に会話をしていくのが唯一の方法です。今、テレビ業界は変わらざるを得ない状況にあって、それはみんなが理解していると思います。ただ、どうやって変わればいいのかわからないし、目の前の視聴率や売上を追い求めたいという気持ちが強いので、「5年後、10年後のことを考えて優先しようよ」「いったん業績や視聴率が下がってもいい。それよりもっと大事なことがあるんじゃないの」と地道に言い続けてきました。

WLB:社長自身から「一時的に視聴率や業績が下がってもいい」と言ってくださることが、現場の皆さんにとっては大きな支えになりますよね。実際にやってみたらハシゴを外されるんじゃないか、早く帰ったら怒られるんじゃないかという疑心暗鬼が生じがちな中で、「そうではないよ」「大丈夫だから、長い目線で行こうよ」と声をかけ続けたのが大きなポイントだったということですね。

上原:売上の部分では、営業が最初は戸惑っていました。これまでずっと「量が大事」というスタンスで取り組んできたところに、小山が「質が大事」と言い始めたことで、悩んでいた人も多かったと思います。だから、営業部のチームがモデルチームに選定されたときにも、迷いは大きかったと思います。でも「質が大事」という話を繰り返し聞くにつれて、「そうなのかな」と腹落ちした瞬間があったんです。ですから、会話を続けることは非常に大事だと思います。

もちろん、いまだに腹落ちできてない人たちもいますし、全員が腹落ちできるとも思っていません。ある社員が、「この取り組みがあんまり好きでなく、めんどくさかった。でも部長がみんなを巻き込んで、若い人たちと一緒に考える姿勢を見せているのを目にしたら、協力したいと思った。協力しているうちに、『なんかいいんじゃない』という気持ちになってきた」と語ったことがあったんです。それを聞いて、部長の気持ちが一緒に働く部員にも伝わっているんだな、と思いました。

WLB:今回の「Happy ワークチャレンジ!」では、上原さんが小山社長の右腕のような存在として支持者となったことが本当に心強かったと思います。お2人でも意見交換をする機会が多かったのではないかと想像していますが、具体的にどのような会話をされていたのでしょうか。

上原:私自身は悩むことが多く、壁にぶつかる機会も多かったと思いますが、小山は常にドシッと構えているんです。「みんなが幸せになるためにはこうするから」と全然焦らないし、愚痴も言わないんです。小山の信念が太い幹のようにあって、優秀なチームメンバーもいたので、それが大きな支えとなったんだなと感謝しています。

WLB:小山社長がいてくださったからこそ今があるわけですね。

上原:やはりトップである社長が「こうしたい」という軸をブレずに持っていることで、その下にいる人は、上手くいかずに悩むことがあっても顔を上げることができます。それがなかったら、私は挫折していたと思います。

これから期待する変化

WLB:「Happy ワークチャレンジ!」に私たちワーク・ライフバランスが関わらせていただく中で、どんな感想をおもちですか?

小山:「Happy ワークチャレンジ!」は、我々だけではできなかったと思っていますし、情熱や愛にあふれたワーク・ライフバランスのみなさんが第三者の立場で伴走してくれたのは非常に心強かったです。最初はコンサルという存在に距離感を持つ社員もいたでしょうが、みなさんの情熱や想いがだんだん伝わってきて浸透したことが大きかったと思います。これまでの結果は、本当に御社のお陰だと感謝しています。

WLB: 私たちも、長いお付き合いをさせていただく中で、確かに愛が深まる瞬間を何度も体験できたと思っています。

これから次のステージに期待する行動の変化について、ぜひお聞かせください。

小山:社内の意識は相当変わってきつつありますが、まだまだできることがあるとも感じています。管理職を含め、仕事が属人化していたり、目の前の仕事をひたすら頑張りすぎて効率化が後回しになったりする部分は残っています。そのあたりを、これからどう進めていけるかが課題になります。

制作現場でいうと、新しくコアコンテンツを作ろうという話をしています。金曜日のゴールデンタイムの19時に年数回の放送をする番組を立ち上げ、将来的にはレギュラーにしていきたいという構想です。その試みを始めれば、必然的に現状の夕方ワイドの仕事などの負担を軽くしなければならないので、そのための取り組みも加速するはずです。

単純に負担を軽くしようとすると、目の前の仕事に真剣に向き合っている人の中には「負担を軽くして何をすればいいのかわからない。仕事に張り合いがない」と感じる人も出てきますが、新たに番組を作るという目標を共有すれば、無駄な業務を減らしていくという動きにも注力できるのではないかと期待しています。

WLB:これから「Happy ワークチャレンジ!」に近い取り組みをされる企業さんや、他のメディア系の企業さんに対して、ぜひアドバイスや応援メッセージをお願いします。

小山:偉そうに申し上げることではありませんが、とにかく「思う通りにやりましょう」ということに尽きます。従来型のマスコミの働き方に疑問を抱いている当事者の方もたくさんいらっしゃると思います。ですから、素直な気持ちで「どうしたいのか」を考えることが大切だと思います。あとは、いかにトップを説得して変えていけるかが大きなポイントではないでしょうか。

テレビ新潟様(TeNY)インタビュー4

WLB:小山社長は2023年6月に社長を退任されると伺っています。最後に「Happy ワークチャレンジ!」をこれからも続けていかれる従業員の皆様に対してのメッセージをお願いします。

小山:自分の気持ちを大切にしてほしいです。しがらみや今までのやり方ということは考えずに、「自分は本当は何をしたいのか」「これからテレビやTeNYをどうしていきたいのか」「新潟にある地域密着の企業として何ができるのか、何をしたいのか」を考えてほしい。最終的に仕事を支えるのは個人の想いだけです。ぜひ自分の気持ちを大事にして、自分がやりたいと思ったことを、いろいろな人とコミュニケーションをとりながら進めてほしいですし、新社長にも率直な想いをぶつけてほしいと思います。期待しています。

WLB:小山社長のお言葉をしっかりと胸に刻んで、これからも伴走させていただきたいと思います。本日は貴重な時間をいただき、ありがとうございました。

担当コンサルタント
原わか奈
松久晃士
松尾羽衣子

 

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