Case Study

株式会社えがお様

取り組み前は朝メールにもカエル会議にも懐疑的だったのに・・・!
残業大幅削減、リフレッシュ休暇取得率も100%になった「株式会社えがお」

2016年に発生した熊本地震は、忘れがたい記憶として私たちの脳裏に残っています。道路や電気、ガス、道路などのインフラは一時完全にストップし、県内外に甚大な被害をもたらしました。ここで、みなさんに考えてみていただきたいのです。仮に、あなたの住む地域で大きな地震があったとして、社員の一部が出社できなくなったら、会社はどうなるでしょうか? たとえば「被災してすぐに出社できない仲間のためにも事業を滞りなく進めたい」となったとき、すぐに対応できるだけの職場環境をふだんから作れているでしょうか? 今回ご紹介するのは、働き方改革を進めていたことで、震災時にも事業を継続することができた「株式会社えがお」の取り組みです。

健康食品会社らしく社員の健康管理は万全。でも「休みにくい」という現実

株式会社えがおは、熊本県熊本市にある健康食品・サプリメントの通信販売会社です。「えがおの黒酢」や「えがおの肝油 鮫珠」、青汁などの販売戦略で、2019年に創業30周年を迎えました。

かつての働き方は、まさに「モーレツ型」。代表の北野忠男社長は「5つの事業に取り組んで、1つ成功すればいい。不眠不休で人の3倍働く」ようなタイプだったといいます。


株式会社えがお 代表取締役社長 北野忠夫さん。

とはいえ、同社の業務は「健康食品」の販売です。社員の健康にも人一倍気をつかい、2014年に完成した新社屋には、栄養バランスの取れた食事を1日3食提供する社員食堂を設置、地下には社員なら誰でも利用できるトレーニングジムも完備しました。

自社内にコールセンター機能を有することもあり、従業員約500名のうち、約7割が女性の同社。子どもを持つ女性社員も多く、新社屋には企業内保育所を開設するなど「女性活躍推進宣言」にも取り組んできました。

ところが、2015年までは長時間労働が慢性化し、休みの取りづらさもありました。しかし「そういうものだから仕方がない」という、どこか諦めた雰囲気が蔓延していたといいます。

懐疑的だった朝メールやカエル会議、いざ実践すると顕著な効果が!

私たちが同社のコンサルティングに入らせていただいたのは、2015年11月から2016年3月。まさに熊本地震の直前でした。

トライアルチームとして選出されたのは、コールセンターのサポートを行う「ショップサポートチーム」の11名と、通販Webサイトの運営・販促を行う「Webコミュニケーションチーム」の8名。どちらも、お客様対応や突発的な依頼業務が多く発生するチームです。

「朝メール・夜メール」「カエル会議」に関するレクチャーを受けた当初の社員たちは、チームメンバーだけでなく、リーダーでさえも「日々、突発的なお客様対応や頼まれ仕事が発生するのに、朝メール・夜メールを行うことに本当に効果があるのか」「余計な業務が追加されて、むしろ残業が増えるのではないか」と、非常に消極的で懐疑的でした。

ところが、実際に朝メール・夜メールを実施して見えてきたのは、それまで突発業務だと思っていたことが、じつは準備不足、コミュニケーション不足による不備やミスに起因しているケースが多かったということです。

たとえば、コールセンターのコミュニケーターに向けた勉強会で講義用のDVDが音割れして使用できず、30人分のスケジュールを再度調整し直す必要が出てしまったり、業務には密な関わりがあるのに、席が離れているためにコミュニケーション不足となりお互いの仕事が空回りしていたり。そうした状況が明らかになってきたのです。

突発業務を減らすために行った工夫と、めざましい変化

そこで、日々の夜メールに書かれた突発業務を2週間に一度の「カエル会議」で共有。突発業務が起こった原因と、それを事前に防ぐための対策、たとえば「事前準備をしっかり行う」「スケジュールには1日1時間のクッションタイムを設ける」などを書き込み、実践していきました。

もう1つ、残業発生の大きな原因となっていた「上司の指示による突発業務」に関しては、「残業してでも今日中にやるべきか」をその都度上司に確認することにしました。

他部署や上層部からの依頼など、メンバーから確認するのが難しい場合には、率先してリーダーが確認にあたり、「仕事が与えられたからとりあえず残業する」という姿勢を徐々に、ですが確実に改善していきました。

すると、4カ月目に入る頃には、突発業務とその原因、対策方法を書き出していたシートへの記載自体がほとんどなくなりました。根本原因を解決したことで、突発業務が発生しにくい職場になったのです。

自部署起因ミスによる突発業務の削減
突発・残業要因シートの活用

自部署起因ミスによる突発業務の削減突発・残業要因シートの活用

また、思わぬ改善効果も起こりました。それは「席替え」です。業務で関わりがありながらも2つの島に分かれ、互いに行き来していたものを、より関わりが深いメンバー同士で近くに座ってもらうようにしたのです。小さな変化のようですが、それだけでコミュニケーションがかなりスムーズに行えるようになりました。


残業時間は大幅に削減、業務のシェアが進んで長期の休暇も取りやすく!

さまざまな取り組みの結果、Webコミュニケーションチームでは残業時間において55%の削減に成功。ショップサポートチームでも、残業時間は34%削減、自分たちのミスや不備による突発業務の発生は80%も減少しました。


ショップサポートチームでは、異なるチームが統合されたという経緯もあり、互いの業務を把握しきれておらず、突発業務が発生した際にも助け合うことができない状況でした。そこで、属人化していた業務のシェアを推進し、不在のメンバーがいてもちゃんと仕事がまわる体制を整えていきました。

朝メール・夜メールでお互いの業務を可視化し、属人化していた業務のシェアを推進したことで、「長期の休みは取りづらい」とあきらめていたメンバーたちのリフレッシュ休暇の取得率も、なんと100%になりました。


熊本地震で被災しても、滞りなく業務を遂行できた「働き方」

そんな折、2016年4月に熊本地震が起きました。

震源地に程近い熊本市東区の新社屋では、破損等の被害が発生する中、急きょ1階を緊急の避難所として開放するような状況でした。そんな中でも、「えがおの黒酢」を代表とする健康食品のお客様は全国にいて、中には株式会社えがおが熊本の企業であるという認識がない方もいらっしゃるので、次々に注文は入ってきます。

しかし、働き方改革に取り組んできた同社では、それまで属人化していた業務を徹底して「見える化・共有化」していたことが緊急時にも功を奏しました。

一時的に避難所生活を余儀なくされたスタッフもいた中で、もし働き方が以前のままの属人化した状態だと、業務が滞り、お客様にも多大な迷惑をかけていた可能性があります。両親の世話をするために急きょ1週間の休みが必要となったスタッフもいたものの、快く休んでもらい、かつ業務を成し遂げることができました。また、女性スタッフのひとりは「震災の日、21時26分。私は子どもと一緒にいることができました。以前の働き方をしていたらこの時間に家にはいませんでした。本当に本当に働き方改革に取り組んで良かった」と語ってくれました。

改革の意義を正しく伝え、社員の不安を取り除くための説明会を徹底

震災発生後の半年間は復興に注力し、2016年10月からは再度、本格的に働き方改革の取り組みを再開しました。2017年1月には、執務室への入室を朝8時から夜8時までに制限。深夜・早朝には仕事をさせない仕組みを作ったのです

この改革については、全社員にその意義を直接伝えるため、人事部長自ら10回にわたって説明会を開催。「時間の制限を行う」と同時に「無駄な仕事はやめよう」ということを丁寧に説明し、「もしもこの説明会に欠席したり、遅刻や途中退室をしたりした社員には再度参加してもらう」ということまで徹底されました。

仕事を持ち帰るようになるだけでは?と不安を感じる社員に対しては、「仕事の持ち帰りは正しくない。セキュリティ上も望ましくない。働き方を変えてほしい」と何度も繰り返し伝え、持ち帰り仕事を行う社員が出ないよう、執務室への入退室のログだけでなく、パソコンやシステムへのログイン・ログオフ時間のデータも取れるようにしました。

また「無駄な業務をやめる」ために、人事担当役員・部長立ち会いのもと、各部署全員が出席しての「業務棚卸会議」を実施。「その仕事はいらないのでは?」「それはやめてもいいのでは?」と一緒に判断しながら、仕事を整理していきました。

放っておくと仕事はいつの間にかどんどん増え、現場レベルではやめる判断が難しいものですが、上層部や部署外の視点を入れることで、業務を一気に削減できるのです。

取り組みが奏功し、月の平均残業時間は2016年の13時間から2017年には5時間と67%の削減。2018年11月には3時間10分まで減っています。一方、残業時間の削減が残業代の削減につながると社員のモチベーションは下がってしまいます。そこでみなし残業手当を廃止して基本給に組み入れ、さらに係長以下の正社員を対象に残業削減金額の10%を賞与として還元しました。

改革の成果として「社内の雰囲気がよくなったこと」を実感!

最初はどよ~んとしていた「カエル会議」は回を重ねるごとに明るく積極的な雰囲気に変わり、働き方改革の成果としてみなさんが一番実感されたのも「社内の雰囲気がよくなったこと」でした。朝メール・夜メールでお互いの仕事やプライベートを無理なく徐々に把握することができ、ライフの充実度を表彰したり、業務シェアでコミュニケーションを取ったりする機会も増加。休日の予定についてみんなで楽しく話せるようになり、社内の雰囲気がぐっと明るくなったそうです。

また、執務室への入室時間を制限した結果、終業後の時間を活用して自己研鑽に励む社員が増え、通信販売エキスパート資格取得者が17%増加。ビル内のトレーニングジムやヨガ・ピラティスなどができるスタジオの利用者も20%増えました。

そもそも、株式会社えがおが弊社のコンサルティングを受けることになったきっかけは、2015年に熊本県が推進する「働きやすい職場改善促進事業」に参加されたことでした。熊本県としては「県下の企業で育児や介護・治療などと両立して仕事ができる環境を作ることが地方創生になる」と考えて取り組みを始めたのですが、結果として熊本地震を乗り越えられる強い企業体質を作ることにもつながったわけです。

また、こうした県の事業では通常、県は委託した企業(今回の場合は弊社)に任せっきりにしてしまうことが多いのですが、熊本県の場合、同社の最終報告会に当時の熊本県副知事・小野泰輔さんが自主的に参加されていたことがとても印象的でした。

小野さんは2015年の11月、当時41歳で肺がんが見つかり、手術と療養で3週間公務を休まれた経験があります。こういった経験もあってか、副知事自ら働き方改革に強い関心を持って現場に足を運ばれていたのです。そういった空気も、熊本県下の企業の働き方改革をより促進させてきたのでしょう。

ライフ充実表と表彰システム
ライフ充実表と表彰システム

株式会社えがおの成功ポイント3
  • 「突発業務」はその都度原因を解明することで削減できる
  • 「持ち帰り仕事NG」をシステム面でもサポート
  • 業務の属人化排除が災害時にも強い組織を作った

※こちらの事例は、弊社代表 小室淑恵の著書『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』からまとめ直したものです。


担当コンサルタント

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