Case Study

JSR株式会社様

働き方見直しプロジェクト 最終報告会の模様

JSR株式会社は1957年に合成ゴムの国産化を目指して設立され(旧社名:日本合成ゴム株式会社)、現在社員数は約7,200人(連結)、売上高は約4,200億円(2018年3月)の石油化学メーカーです。設立後は、エマルジョンや合成樹脂、半導体材料、ディスプレイ材料へと社会ニーズの変化を踏まえて先端技術を開拓し、事業領域を拡大してきました。JSRグループの製品は、タイヤ、家電、半導体、ディスプレイなど、日常生活のさまざまな場面で触れている多様な製品を作り出すために使われているほか、現在は、ライフサイエンス分野や環境・エネルギー分野など、さらに深い社会ニーズに応えることを目指して新しい事業領域に戦略的に取り組んでいます。

そんなJSR株式会社では2017年度から「ワークスタイルイノベーション活動」が始動し、活動の一環として8か月間にわたる「働き方見直しプロジェクト」に着手。2018年2月26日に4チームによる、8か月の取り組みを振り返っての最終報告会が行われました。各チームとも、働き方を自律的に変えようとする意識にあふれたハイレベルな成果を報告。発表後には、意見交換も行われ、密度の高いコミュニケーションを感じさせる報告会となりました。ここではプロジェクトに取り組んだチームの中でエラストマー事業企画第一チームの成果発表を中心とした最終報告会の様子、並びにJSR株式会社社長の小柴満信様と弊社小室淑恵、参加チームメンバーとの意見交換会の様子をご紹介します。

最終報告会ダイジェスト!

短期的なチームの目標として、時間の確保を設定しました。最終的な目標である「明るく安心して働ける職場作り」のためには、まずは時間の確保だろうとの考えからです。
プロジェクト開始以降、8か月で11のアクションに着手し、実行できました。また、中間報告会以降、人の異動がいくつかありましたが、朝メールの分析結果から、異動者の引き継ぎ等で一時は「減らしたい業務」のカテゴリーの仕事が増えたものの、「増やしたい業務」も増やすことができたのがわかりました。
本日は11の実施アクション中、特にご説明したい3つを取り上げてご紹介します。

①収益管理方法の標準化……業務の属人化解消と作業効率アップのため、作業範囲と手順を統一しました。その結果、業務の可視化、標準化、マニュアル化が進んだことで、チーム員の業務への理解度が向上し、担当者がいなくても相互にフォローできる体制も構築できました。

②突発業務の分析……計画外の業務が業務効率低下につながっていると考え、「情報感度の強化」に取り組むことで、突発業務にも振り回されないスキルを確立することに努めました。具体的には、周りで今どんな動きがあるかを知る、知りえた周辺情報から自分たちのチームにどんな、どの程度の影響がありそうかを事前予測することで、突発業務の回避・抑制につなげる、というものです。また、突発的な業務が発生したときの対応も定型化する仕組みも作りました。

③職場環境の整備……「Task-Sharing Board」「パーティションの撤去でチーム内フリーアドレス化」をやってみました。「Task-Sharing Board」は、チーム各人が直近のタスク、ヘルプしてほしいことなどを、チームに設置したホワイトボードにポストイットで貼り付け、チーム全員で共有するものです。属人化や業務の抱え込みの解消の他、ノウハウの共有や相互フォローにもつながっています。

プロジェクトに参加して、効率化の必要性・重要性を強く意識するようになりましたが、実際に行動に移せた人、やりきれなかったという人が半々に分かれました。
私たちとしては、意識の変化を一過性のものにせず、きちんと組織に根付かせるため、チーム全員でカエル会議の継続、業務の見える化等を進めていきます。

最後に、プロジェクトの参加を通して、全社的に働き方改革をより推進していくためのポイントとして「全社の行動指針への追加」「改革の経験者を増やすこと」「メンバー含めた各人のリーダー意識醸成」「評価制度の見直し(外側から行動変化せざるを得ない仕組み作り)」を期待します。

質疑応答ダイジェスト

山脇上席執行役員:定量的な数字でいうと、昨年と比較して残業時間が7時間減っています。Task-Sharing Boardの取り組みも非常に素晴らしいと思います。引き続き、先駆者として横展開していってほしいと願っています。

小柴社長:本社の働き方は「個人商店型」の人が多い。みんなが話し合うことで、チームビルディングにつながったところが一番の成果だと感じました。作業の効率化については、投資を通じて支援していきたいと考えています。
空いた時間については、企画業務に充てたり、私生活の充実を図ったりしてほしいと考えています。

総括

小柴社長:JSRでは「働き方改革」という言葉を使うのはもうやめよう、と話しています。世間でいう「働き方改革」という言葉の印象は、「労働時間の削減」にフォーカスされがちです。しかし、我々が目指すのは、それとは別物であることを再確認したいのです。
例えば、働き方を変えて、できた時間を自己研鑽だけにあてるのは、サステナブルではないと考えています。「あれっていいな」「楽しそうだ」とか、「あれをやらないとまずい」と思われるような状況を作らないと、新しいものを取り入れられないだろうと考えるからです。

皆が続けていくために、「これをすることでこの先にこんなにいいことがある」というのを提供できる働き方をぜひ探してほしいと思います。
一方で、「働き方を変えて効率化できたとき、減った残業代はどうするの?」という声が多いのも知っています。課題として認識しており、皆さんのより良い働き方へのモチベーションアップになるような施策を検討していこうと考えています。

小室淑恵コメント

プレゼンを聞かせていただき、非常にレベルが高くて感動しました。

働き方改革については、2019年4月から労働基準法などの法改正が行われます。そのタイムリミットを迎えてから動き始める、つまり対応が後手に回ると、残業削減のみが目的になりがちです。本来の働き方改革は、今日皆さんがプレゼンされたように、ありたい姿に向かって現状を分析し、自律的に取り組むものです。
今回、いずれのチームもありたい姿とは何かを議論し、働き方改革の本質にたどり着かれています。これは大変なアドバンテージです。なかなか自覚しにくいことかもしれませんが、ぜひ「自分たちはイノベーションにつながるような、本質的な働き方改革を進めている」と認識していただきたいと思います。

また、皆様のプレゼンの中で経営層への提案が出てきたこと、そして役員の皆様がそれを受け取っていこうと反応してくださっていたことは、大変素晴らしいと感じました。

役員と社員の皆様との間には、サーバントリーダーシップやコーチングといった手法で、マネジメントを改善したいという共通認識が生まれつつあると思います。

提案する側の方々にぜひお伝えしたいのは、「人は偉くなるとシャイになる」ということです。地位や職位が高くなると、自らがフレンドリーになり周囲に働きかけることがためらわれるのです。「偉い人は偉そうにしようとしているのではなくて、シャイなのだ」と理解して接することがひとつのコツと言えます。相互に対話をお互いに響き合うことが、想像以上に大きな変化を生み出します。

今日は、評価形態に関して大事なポイントが挙がっていました。組織の中でサポートする側のアクションを取る人は目立ちませんが、そういう人がいなければ組織全体の生産性が落ちるという点です。
チームの功労者は誰だったかについて、月に1回でもいいのでお互いに付箋で出し合うだけでも変化が生まれます。チーム内での評価を具体的にどうしていくべきかが明確になっていくことが期待できます。

私たちは、様々な企業で「評価」についてのご相談を受けていますが、1社1社に社風がありますので、組織ごとに「答え」があるというのを実感しています。1回トライしていただくと、社風にあったいいものができあがると思います。

ぜひ、御社にはこの活動を継続していただきたいです。そのためには、1期目に取り組んだ、今日お集まりの皆様の活動を評価することが何よりも大切です。初めて取り組むからこそ、きっと苦労もおありだったことと思います。この取り組みをきちんと認め、承認すること。すると社内で「私たちも取り組んでいきたい」という前向きな声が挙がってくることでしょう。ワークスタイルイノベーション活動のポジティブなイメージが広がっていくことを期待しています。

JSR株式会社

【所在地】東京都港区東新橋一丁目9番2号汐留住友ビル
【従業員】7,055名
【HP】http://www.jsr.co.jp/

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