Case Study

千葉県庁様

他県にできるなら千葉県にできないはずがない! 事務局の細やかなサポートとモデル3課の活躍で大きな一歩を踏み出した千葉県庁

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今回ご紹介するのは、千葉県庁での働き方改革です。「職員一人ひとりが自身の業務に課題感を持ち、業務改善や生産性の向上に意欲を持って取り組める職場環境を構築する」という目標を念頭に、効果的な進め方を探っていく中、改革推進のためのプロポーザルを企業から募集。その際の一社であった株式会社ワーク・ライフバランス(以下:WLB)からの提案を評価いただき、2022年度よりコンサルティングがスタートしました。3つのモデル職場での取り組みを通して見えてきたこと、事務局担当者の工夫や苦労、そして千葉県庁全体に進めていくための課題や方法などを伺いました。

千葉県が抱えていた課題と、取り組み開始のきっかけ

難しいと言われ続けている地方自治体での働き方改革ですが、各地ですばらしい先例が相次ぎ、「私たちの組織でも進めたいと思っていた」「他県にできるならうちでもできるはず」など新たに着手する自治体が増加。少しずつですが確実に広がりを見せています。

今回ご紹介する千葉県では、働き方改革事業を実施するきっかけとして、以下のような課題を抱えていました。

  • 職員の数に比して業務の種類や量が多く慢性的に人手不足
  • 従来業務に加えて災害・新型コロナウイルスなど急を要する対応が少なくない
  • デジタル化を推進したいが、自治体独自のネットワーク構造による制限もあり、現状の見直し方や具体的な対策もわからない
  • どの部署でも日々の業務を振り返る余裕がない

多くの組織に共通するこれらの課題に対し、千葉県では「見直しの必要性は痛感しているが、具体的にどうすればいいのかわからない。効率的に成果を出すには、専門家と一緒に進めるべき」との考えから、企業からのプロポーザルを募ることに。

今の仕事を洗い出した上で外部の専門家から「この業務はここがムダ。こういったやり方に変えれば効率化できます」などのアドバイスを受ける方法もあったでしょう。しかし、事務局担当者となった岡野真理恵さん(以下:岡野さん)はこう考えました。

『解決策を一方的に提案してもらう方法では長続きしないと思っていました。その瞬間、その業務は改善されるかもしれないけれど、別の業務や別の部署で同じようにできるかというと、難しいのではないかと。私たちが身に着けるべきなのは、課題や解決策をどうやって見つけるか、どうやって実行するか、そしてどうやって続けるか、というスキルや手法なのです。そこに重点を置いた事業にしたいと考えました』

 

予算確保に向けた説明と、モデル部署の選定法

WLB:改革を進めるには予算の確保が必須です。そのための庁内調整において、事務局ではどんな工夫をしたのでしょうか。

岡野さん:『どの段階でも必ず説明を求められたのは、モデル部署での取り組みを、どう全庁に展開するのかという点です。やはり「特定の部署だけ改善して終わり、とならないか」という懸念を示されることが多かったので、きちんと横展開をしていくために説得力のある成功事例をまずは作ります、と説明を続けました。先行して実施している他自治体の事例もかなり参考にさせていただきました』

WLB:取り組みが始まってまず着手するのはモデル部署の選定です。どんな組織でも「今でも十分に忙しいのに、さらに働き方改革の一翼を担うとなると、負担を感じてやりたがらないのでは?」と懸念する担当者が多いもの。千葉県も状況は同じでしたが、岡野さんはあえて立候補を募るスタイルで臨みました。

岡野さん:『ゆくゆくは全庁展開するとしても、最初の事例を作る段階では業務改善に前向きな部署のほうが成功しやすい、むしろ成功するための必須条件であるという話を各方面から聞いていたので、「課題感を解決したいと考えている、意欲のある職員」からの立候補制にしました。また、限られた期間で成功事例を作るためには、実施に向けてメンバー(特に室長・班長)を説得することに時間をかけることができないと考えたため、立候補は室長・班長からの立候補または室長・班長の了承を得た室員・班員という条件も付しました。

これに対しては、「自分は業務改善をしたいが、上司の理解が得られないのでこの条件では応募できないが、どうすればいいのか」などの声も聞かれましたが、「今年はとにかく好事例を作りたい、その事例をもとに今後庁内を説得していくのです」と説明をし、理解を得ました。』

 


■岡野さんも参考にされた、他自治体での取り組み事例はこちら


 

初年度に立候補した3つのモデル部署 代表メンバーインタビュー

インタービューを受けてくださった方

  • 中央児童相談所 井上寧子さん(以下:井上さん)、大川竜司さん(以下:大川さん)
  • 建築指導課 松永文彦さん(以下:松永さん)、吉田直矢さん(以下:吉田さん)
  • 総務課 上野裕之さん(以下:上野さん)、一二三(ひふみ)(以下:一二三さん)翔吾さん

WLB:まずは全モデル部署で取り入れていただいた「朝メールドットコム®」(以下、「朝メール」と記載)について。どういった効果を感じられましたか?

千葉県事例1総務課様と担当コンサルタント(三山)

一二三さん:以前、時間割のついた手帳を使ったことがありまして。朝メールも同じような感じなのかなと思っていたので「前に使ってみてうまくいかなかったけど、果たして今回は?」と半信半疑でした。実際に使ってみると、予定だけを立てるのではなく、実績を登録し、結果を振り返るんですよね。

予定をふまえて実際はどうだったのかという比較ができるので、まるで印象が違いました。その意味で、朝メールはとても有効でした。15分刻みで予定を立てること自体がもちろん有益なのですが、予定と実績を比較できるところが、個人的にはすごくいいなと思っています。

上野さん:「朝メール」のコメント機能などを通じて、メンバーの人となりや考え方などをより深く知ることができ、コミュニケーションの活性化につながったと感じています。

WLB:「この取り組みをやりたい!」と積極的に参加してくださった松永さん、実際にやってみてご苦労はありましたでしょうか。

松永さん:ないです。過去2年間の苦労に比べたら、全くないです。過去2年間は、仕事も業務改善も1人でやらなければならない状況でした。周りの愚痴を聞く機会が多かったですし、夜遅くに仕事の相談を受けて帰れなくなることも少なからずありましたね。それを考えたら、今年はもういいことしかなかったなという感じです。すごいな、って思っています。

WLB:最初にこの取り組みをやると聞いたときの印象はいかがでしたか?

吉田さん:最初の印象はマイナスで、現在はプラスに変わっています。松永さんと私は昨年から同じ部署にいますが、取り組み開始当初は、人事異動で室長やメンバーの過半が入れ替わっていましたし、「他にやることがあるのに、働き方改革なんてムリなのでは?」と感じてしまう場面もありました。今思うと、それくらい余裕がなかったんですよね。

今はいろいろな取り組みを通じて、些細なことでも見直す習慣というのが少しずつ芽生えてきて、見直した成果も徐々にですが全員が実感できています。

建築指導課が誇れるのは、7月中旬のキックオフから約7ヶ月間で25回のカエル会議を実施できたということ。カエル会議を通じて何でも話し合える関係性の構築ができました。それは所属や仕事の内容によらずどこでも大切な要素なので、今回参加したことでそれを肌で感じられて、とてもよかったなと思います。

千葉県事例2カエル会議の様子

WLB:事務局の岡野さんとの関わりの中で、「ありがたかったな」」「こういった対応に救われたな」と感じたのはどんなことでしょうか。

井上さん:私たちが挫折しないでここまで来られたのは、岡野さんが影になり日向になり、ずっと背中を押し続けてくれたおかげだと思っています。感謝の一言に尽きます。ほかのメンバーも「岡野さんがそう言ってるなら」と、少しずつ前向きな姿勢に変わっていき、最後は波に乗れたと思っています。

本当にいろいろと大変で、途中で放り出したくなることも度々ありましたが、内部だけでは解決できないことも多くて、些細なことでも岡野さんにチャットで投げかけて、心強いサポートを続けてくださったことが、大きな支えになっていました。

基本的にはチャットでのやり取りが中心で、「今ちょっとこれに困ってます」みたいな感じでポン!と投げかけると、すぐにレスポンスが返ってくる。顔を合わせなくてもタイムリーにやり取りができるというのは、本当にありがたかったです。なおかつ、ワーク・ライフバランス社さんとのオンラインでの定例会をスムーズに実施するために、実際に中央児童相談所までお越しいただくことも何度かあり、そこで顔を合わせて親しくなれたというのも大きかったですね。

千葉県事例3

WLB:顔を合わせてコミュニケーションが取れたことでおふたりの心理的安全性が高まったこと、そして普段はチャットというライトなツールだからこそちょっとしたことでも話しやすかった、という両方の要素がポイントだったのかもしれませんね。

井上さん:そうですね。お忙しい中、何度も申し訳ないと思いながらでしたが、それを苦にせず受け止めてもらえる、こんなこともチャットで伝えて大丈夫なんだ、というのを感じさせてもらえました。本庁との敷居を低くして、できるだけ意見を言いやすい関係にしてもらえたことが大きかったですね。いつも岡野さんの文面や態度からそういう安心感が得られたので、とても助かりました。

WLB:取り組みに参加して良かったことと、大変だった・難しかったことを教えていただけますか?

千葉県事例4建築指導課様と担当コンサルタント(山﨑)

吉田さん:7月のキックオフの際、チームの「もったいないところ」を付箋で出しあうワークがあり、考え方ややり方が古い、というのが挙がっていました。具体的には前例踏襲、紙の作業で書類が散乱しているなどの課題を全員の共通課題として認識していました。

それが現在では、まだ完璧ではないにしろ、簡易決裁でチャット機能を使ったり、執務室がびっくりするぐらい綺麗になったり、在宅勤務が増えたり。そういう全てのことが、この取り組みに参加する前の自分たちのチームでは考えられなかったことばかりです。この事業に参加して、こういう環境に身を置けるようになったことに今はとても感謝しています。

大変だと感じたことは、あまりないです。通常業務の一環として取り組むので、いろいろと考えることが増えました。でも「みんなで同じことをやっている」という感覚があったので大変さを実感せずに済んだのかなと思います。みんなそれぞれに各自の仕事をしているわけですけど、考えてみたらみんなで取り組む業務はあまりなかったなと思います。そういう意味では、みんなで一緒に進めることができたのが楽しかったし、とくに大変ではなかったですね。

松永さん:いろいろな成功体験を積めて視野が広がりましたし、関係者と知り合いになれたので、困ったときに誰に聞きにいくとよいのか?という選択肢が増えました。

自分自身は先ほどもお話ししたように大変さは皆無で、良いことばかりだと感じていましたが、やはり他のメンバーも巻き込んでいかないとスムーズに進みません。実際に自分がどうしていたかな?と振り返ってみると、やっぱりギブアンドテイクなんですよね。まずは自分が誰かの仕事を手伝って、そこから、「あ、この取り組みに参加したらお互いにサポートし合えるんだな」という雰囲気がつくられていきました。それが、カエル会議を加速させた要因のひとつでしたね。

そして、保管場所の整理というのが、私が長年抱えていた課題でしたが、それが解決できたので、今まで他のメンバーに貢献してきた分を取り返せたかなと思っています(笑)。自分がこれまで投資してきた時間や労力よりも、ちょっと大きいものが返ってくるという印象があります。

上野さん業務が立て込んでいる時期など、カエル会議を行う時間をとることや、アクションを実行する時間をとることが難しく、なかなか取り組みを進めることができない焦りを感じました。それと、 はじめのうちはカエル会議も手探りだったので、テーマの選択や議論の進め方を考えるが大変でしたね。個人単位で行う業務効率化にはどうしても限界があるので、室全体で何が必要かを意見交換し、共通認識を持って取り組むことによって、より大きな成果を得ることができたと思います。

一二三さん:取り組み前は、「改善できるところなんてないだろう」と思っていたのですが、やっぱり改善するところがあると気づかせてもらえました。もともと風通しの悪い部署ではないし、いかにも無駄な業務だというのがパッと見た感じでは見当たらない印象でした。でも、いざ取組みを進めてみると、けっこう改善できることが出てきました。この取り組みをやって、本当に良かったなと思っています。

大変だったのは、まずカエル会議の時間を合わせるのに難儀したことですね。優先順位を下げているわけではないのですが、あえて言えばこの取り組みは「室の中の話」であって、どうしても他所属との打ち合わせなどを優先して「ちょっと後にしようね」ということが続いてしまいました。株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタントの方からアドバイスで、「ちょっともう意識を切り替えて強引にでも入れないと何もできないよね」と気づかされ、そこから少しずつ定期的にカエル会議の場を持てるようになりました。

その切り替えが、意外と大変だったかなと思います。割り切って臨まなくては、というのはみんなわかっていたと思いますが、実際に行動に移すのは結構大変だったという印象です。

WLB:それは、たくさんの方が共感される点だと思います。優先順位が低いわけではない、やらなきゃいけないのはわかっているけれども、「とにかく絶対にやるんだ」という覚悟を決めない限り、やっぱり進まないですよね。井上さんはいかがですか?

井上さん:今回のモデル事業に応募する際に、「今回の取り組みで自所属でこういうことをやりたいです」と自分が送っていた内容を、つい最近見直してみました。そうしたら、書いたことが全部できていて、それが私としては非常に満足できたというか、良かったなと思っています。

具体的には、それまで紙ベースで管理していた作業のデータ化や、業務上何度も同じような内容を手で入力していた工程を減らしたり、スケジュールを所員全員がすぐに見られる状態にしたことです。

それと、所属長や次長に改めて問題意識を持ってもらえたことも大きかったです。もちろん今までにも管理職の立場として問題意識はあったと思いますが、それを肌で感じてもらえたというか、具体的に何かやらなくては、と思ってもらえたのは大きかったですね。他県の取り組みをいろんな場で知ることができたので、「他県でできることが千葉県でできないわけがない」という、私の勇気というかモチベーションに繋がったのも良かった点ですね。

大変だったのは、今回の取組に対して、“やらされ感”を強く感じているメンバーが少なからずいたことです。いろいろ段取りをしたものの、最初はなかなか足並みが揃いませんでした。その調整が本当に大変で、岡野さんや株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタントの皆様にたくさん相談にのっていただきました。
この取り組みをやり遂げて、楽になった業務がある一方で、しわ寄せが来てしまう業務もありますので、それは今後も改善していきたい点です。

WLB:県庁全体にこの取り組みを広げるにはどんなことが必要だと思われますか?

千葉県事例5中央児相様と担当コンサルタント(永田)

大川さん:結論から言うと、気さくに話ができる環境が整っていて、なおかつ、確実に情報伝達ができるシステムがあれば広まっていくのではないかなと思いました

働き方改革においては、最初の段階で「大きな目標を決める」ということが重要だと思うんです。うちの課であれば「探し物を減らす・データ化する・残業を減らす」とか、そういう目標を明確にして取り組むと、やるべきこと・省くべきことが見えてきます。でも、それをいざ実践していこうとなると、周りに対して気さくに話ができる環境を作っておくことが不可欠です。さらに、デジタルの活用で確実に情報を伝えていくことも必要だなと。他愛もない話をしてコミュニケーションを取りながらも、必要な情報に関してはやはりチャットやメールできちんと残しておく。そのためのシステムを構築することが重要だと感じました。

あとは、働き方改革が進めば職員の仕事もプライベートも充実していく、より良い業務ができるようになるんだよ、というのが良い効果が伝わっていくと、全体として「やってみよう」と思えるのではないでしょうか。

一二三さん:今回の取り組みを通じて「自分たちで考えて実践する」ということが重要だと痛感しました。誰かが教えてくれたやり方で改善しようという受身の姿勢では成功しないかなと実感します。全庁へ広げていくためにも、自分たちで課題を見つけて自分たちで直そうという主体的な心構え、「絶対にやるぞ」という強い覚悟が必要です。その意志がないまま、何となく改善してみよう、誰かが教えてくれるのを待とう、という心持ちでは企画倒れに終わるのではないか、というのが個人的な感想です。

吉田さん:他県の取り組みでもトップダウンで進んでいくケースが結構多いようなので、とある課の一担当が何をどうやっていくかというのはなかなか難しい部分もあるとは思います。でも、今回たまたま松永さんから今回の取り組みに手を挙げたい、やってみたい部署を募っている情報を知り、実際にメンバーと一緒にやってみて、貴重な体験ができたので、できれば全ての所属課で一つのチームが何か常に同じような取り組みをしているという状態を作れたらいいのかなと思います。

松永さん:まずは来年度に取り組むメンバーにつなげるために、新旧メンバーで一度集まって、一緒にカエル会議をやってみたらいいと思っています。経験者が残る場合は「これを繋げていく」と改めて思えますし、新しい人は「こんな感じなのか」という見本になるし、雰囲気がわかっていたほうが取り組みやすいと思います。

WLB:それはぜひ実現していただきたいです。来年度にご自身がどの部署にいらっしゃるかまだわからない状況かと思いますが、残ることになった場合には、新しいメンバーを入れて、ぜひ「ありたい姿」をもう一度考えてみてください。 今のありたい姿は今のメンバーと決めたことなので、後から来た人は“蚊帳の外”になってしまうケースも多いです。新しいメンバー皆さんで共感できる「ありたい姿」について一緒に考えていく、一緒にスタートさせていくことが重要です。もう一度スタートアップをしていくイメージですね。

機会さえあれば挑戦したいと考えている方はきっと少なくないと思います。「場」があれば取り組みは進んでいきますし、今後もみなさんが取り組みを継続されること、いつかは県庁全体の改革が進むことを願って、私たちもサポートさせていただきたいと思います。

 

働き方改革の事務局担当者による振り返り 〜:デジタル推進課 岡野真理恵さん〜

WLB:事業の初年度は軌道に乗るまで不安もあったと思いますが、実際に取り組みを進めてみてどんな感想をお持ちですか?

岡野さん:まずは、「千葉県でもできたぞ」というのが、率直な感想です(笑)。

これまで、テレワークやペーパーレス化を推進する中で、うまく必要性を伝えられないこと、なかなか理解が得られないことなどがあったので、今回もうまくできるかなという不安がありました。しかし、朝メールドットコム®やカエル会議のしくみ、月一の定例会、それ以外でのサポートなどを通じ、全てのモデル部署で着実に進んでいく様子を見て、さすがワーク・ライフバランスさんだな、と思いました。

事務局として定例会やカエル会議に参加する中で、私のほうから働きかけをしなくても、「この作業が手間なんだけど…」「こういうことができるのでは?」という発言がメンバーから自然と出てきて、みんなで「じゃあ、どうしていこうか」という議論がされる様子を目の当たりにしたときは、とても感慨深かったです。「千葉県庁でこういう景色を見られてうれしい」と思いました。

千葉県事例6事務局様とWLB

WLB:どのような点を意識してサポートされましたか?

岡野さん:思い返すと、3つのモデル課が求めるサポートは異なっていました。チームによって状態が異なるので、必要なサポートもやはり異なるわけです。そういう意味では、同時に走らせることができるのは3チームが精いっぱいかもしれません。

まず、共通して実施したことは、下記3点です。

  • スタートで迷いが多いと進みづらいのではないかと思い、キックオフ直後に、リーダーの不安や不明点を解消するための場を設けた。具体的には、各チームのリーダーを加えたチャットルームを作り、連絡や雑談などこまめなやり取りをした
  • 中間発表前に各リーダーを集めて意見交換の場を設けた(自分からは各チームの取り組みが見えているが、参加者からは他チームがどうなっているかが見えていない状況だったため)
  • 回を重ねるごとにどのチームも会議運営がうまくなっているのを感じていたので、そういった感想をしっかりと伝えて、自分たちの成長・前進を実感してもらうようにした

 

モデル所属それぞれについては、以下のような点を意識しました。

〇総務課
リーダー(上野さん)に、「無理せず、できる範囲で大丈夫です」というのをとにかく伝えていました。当初「朝メールがつけられなくてすみません」「カエル会議が開催できず申し訳ありません」ということをよく口にされていたので、「申し訳なく思うことは全然ないので、できることを少しずつやっていきましょう」と繰り返し伝えていました。

〇中央児童相談所
オンラインで実施する定例会ですが、当初は県庁内のインターネットの関係でなかなか円滑に実施できなかったので、Web会議が利用できる端末を別途用意し、毎回中央児相に伺いました。また、すでに千葉県でも使えるツールや方法で解決できるものがあれば、「こんな機能がありますが、使えそうですか?」と提案するようにしていました。

〇建築指導課
具体的な業務改善方法に関する相談が寄せられることが多かったので、それに対してデジタル推進課で実施する業務上で必要な知見を活用し、時には本事業の担当でない他の班員にも助言を求めながら対応しました。「紙を減らしたいのですが、簡易決裁はどうやっていますか?」「電子化したいのですが、いいツールはありますか?」「簿冊管理は、デジタル推進課はどうやっていますか?」などです。デジタル推進課はペーパーレス化がかなり進んでいるので、執務室の様子を室長や室員数名で見学されたこともありました。いいイメージを持たれるきっかけにもなったようで、よかったです。

WLB:今後、県庁全体に広げていく際、上長や県幹部からのメッセージが継続的に発信されていくことが大きな支えになります。今年度、知事や担当部長等と一体になって進めていくうえで、事務局として工夫された点、難しかった点はありますか。

岡野さん:2月に実施した成果報告会では知事から冒頭あいさつがありましたので、その過程で、幹部に取り組みの内容を知ってもらい、どのような感想をお持ちか、どのようなことを期待するか、どのような懸念があるかを直接聞くことができたのは良かったです。

一方で、説明するにあたり、「モデルチームが前向きに業務に取り組めるようになった」ということも非常に重要な成果ではあるものの、やはり定量的な結果を求められて、それをきちんと算出することが当初は難しいと感じました。ただ、そのあたりも朝メールのデータを活用したり、御社からアドバイスいただいたりして、明確にすることができました。

定量的な成果を求めようとするとそちらが目的になってしまいそうで、あまりこだわっていませんでしたが、「あるべき姿」に近づいたうえでの定量データというのは、やはり必要だと痛感しました。定量化から逃げてはいけませんね。

WLB:今後の抱負を教えてください。

岡野さん:

  • 「自分の仕事を見える化し、同僚や上司と共有する。」
  • 「コミュニケーションをしっかりと取る。」
  • 「やってみたいこと、変えてみたいこと、考えていることを口にする。」
  • 「口にすると、ほかの人も何とかしたいと考えていた、と気づく。」
  • 「そして行動に移すことを応援してもらえる。」
  • 「行動すればモチベーションがあがり、やりがいをもって仕事に取り組める。」

 

です。当たり前かもしれませんが、こういったことが実現していれば、効率化できたり、改善したりする仕事はたくさんあるのだと感じていました。一方で、そのような考えが頭にあっても、現実としては、業務量が増えているので、抱えている業務とは別のことを行う余裕がなくなってきており、「ほかの人も忙しいし」と考えて一人で抱え込んでしまったり、「自分が配属されるずっと前からある方法だから」としてしまい、やり方を変えられない、というのが当初の状況だったのかなと思います。

今回の事業を通じて、ITやコミュニケーション方法などの特別な知識がなくても、室員・班員との対話を通じて、仕事のやり方をいい方向に変えることができる、ということが分かりました。

デジタル化や業務効率化を担当する私たちデジタル推進課から「こうしてはどうか」と提案するよりも、ずっといい解決策は現場の職員の中にあります。私たちは、そういったことが引き出される環境づくり・仕組みづくりと、相談があったときにアドバイスをすることが役割なのだと思います。今後は、こういった「チームで業務について話し合う時間を持つ」ということを念頭に、今回のモデルチームの成果をしっかりと周知し、取り組みを広げていきたいと思います。


【プレスリリース】千葉県庁が業務効率化の推進と県民サービスの向上をめざし、 株式会社ワーク・ライフバランスの働き方改革コンサルティングを導入 ~朝メールドットコムでの働き方の見える化、カエル会議オンラインでの仕事の属人化・偏りの改善を実施予定〜

 

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