衆議院議員「国光あやの事務所」様
議員事務所での働き方改革
パートタイムやテレワークなど適材適所の働き方で多様な人材を確保。
残業を減らしながら多大な効果!国会議員でも「やれば、できる!」
「医師であり厚生労働省出身、現在は国会議員。長時間労働が当たり前のブラックな環境ばかりで働いてきましたが、そんな私にとって働き方改革はライフワークです」とにこやかに、かつ力強く語る国光あやの 衆議院議員。“ブラックな永田町”をホワイトに変えたい!という一心で、「まずは足もとから」とご自身の事務所に変革をもたらしておられます。2019年3月には弊社にコンサルティングのご依頼をいただき、約8ヶ月間で多様な改革を実現。今期を振り返る「最終報告会」では他の議員や秘書、官僚、経営者、そして小泉進次郎 環境大臣にもご出席いただいて、熱い議論が交わされました。その様子をご紹介します。
国会議員事務所の成功事例を周囲に伝えて、改革の波を広げたい
2019年11月、衆議院第二議員会館にて行われた「国光あやの事務所」の最終報告会※。「国会議員事務所での成功事例を伝えることで、改革の波を議員や官僚全体に広げていきたい」という思いから、弊社の小室がモデレーターを務めるシンポジウム形式で開催しました。
※「最終報告会」:弊社のコンサルティングをお受けいただく全組織で必ず実施している期末ごとの会議。さまざまな形式で、取り組みの集大成を発表する場としています。
登壇者には、国光議員ご本人のほか、めざましい改革を次々と実施しておられる大塚倉庫株式会社の大塚太郎 代表取締役会長、厚生労働省改革若手代表チームを代表して久米隼人さんをお迎えし、さらには小泉進次郎 環境大臣も急きょ駆けつけてくださって、それぞれの立場から非常に有意義な発言をしていただくことができました。
この日、会場にお集まりいただいたのは現役議員や秘書、中央省庁職員といった顔ぶれ。「長時間労働を減らす」というテーマで議論すること自体、「国民のみなさんに申し訳ない」とする風潮があり、働き方改革が進みにくい組織といえます。しかし実際は、国会こそ、議員こそが、早急に働き方を変えていかなくてはなりません。
なぜなら、国会での無理な働き方は、永田町・霞ヶ関だけでなく、関連企業やマスコミも巻き込んで、さまざまな面で疲弊を引き起こしているからです。また、政治や福祉の中枢を担う組織に多様な人材が必要なのは言うまでもありませんが、“ブラックな働き方が当たり前”の職場に、若く優秀な人たちが集まるでしょうか? せっかくやる気に満ちて飛び込んだとしても、日々の業務に忙殺されてその想いが摘まれてしまうのではないでしょうか?
国光議員のキーメッセージは「やれば、できる!」
国光あやの議員事務所へのコンサルティング第一期は2019年1月から8月まで。ご自身でさまざまな取り組みを続けてこられましたが「やはり1人で改革するには限界がある。さらに深めたい!」との思いから、旧知の仲である小室にご依頼をいただいたのです。
国光議員は、働き方改革が進みにくいことを痛感しながらも積極的な改革を続けています。「私が伝えたいキーメッセージは“やれば、できる”。これに尽きます。できないと思うからできないんです。やり方を間違えることはあっても、それは正せばいいんです。とにかくやってみる。私もまずは自分の足もとから改革しようと事務所の改革をスタートさせました」
働き方改革に関心を抱くようになったのは、出産・育児がきっかけ。「医師・厚労省職員・国会議員と“長時間労働が当たり前”の環境に身を置き、そうした働き方に疑問も持たない“モーレツ社員”でしたが、子どもが生まれると時間の有限性を強く意識するようになります。結果、時間当たりの生産性を上げるしかないと気づいたのです」
スピーチの冒頭、「今年4月に施行された働き方改革関連法、2020年4月からはいよいよ中小企業にも適用されます。国会議員の事務所も例外ではありません。われわれの仕事は膨大です。国会では予算、制度設計、地元ではみなさまのご意見をヒアリングして実行に移すなど、それこそ無尽蔵。霞ヶ関も状況は同じです。でも、“しょうがない”と野放しすることはできないんです。ライフとワークの両立に頭を悩ませる必要のない社会を作っていきましょう」と力強く呼びかけた国光議員。
実際にどういった取り組みをされているかを詳細にご紹介くださいました。
国光あやの事務所で行ってきた対策と実際の効果
■スタッフはパートやテレワークを多用して適材適所に
国光事務所のスタッフは総勢13名。議員事務所にしては多いほうです。ただし、フルタイムはごく一部の方だけで、パートタイムやテレワークを活用し、多様な人材をそろえています。
「地元・茨城県は、他の地方都市と同様、深刻な人手不足。ブラックなイメージの強い議員事務所にフルタイムで勤めたいと言ってくださる人は稀です。ではどうするか。子育て中・介護中の方、リタイア後も社会に役立ちたいシニア層、できる範囲で働いて家計の足しにしたい方、ダブルワークをしたい現役バリバリの方など、“個々の事情を考慮すれば働ける”という状況の方たちを集めて、働き方を工夫するのです。そうすれば、各スタッフの持ち味を活かしながら時間当たりの生産性をぐんと上げることができます。これからも人手不足は深刻化ます。フルタイムだけ、画一的なパートタイムだけ、ではなく、各々の状況に合わせた働き方を推進していく必要があります」
■“カエル会議”と“カイゼン”を繰り返す
弊社が考案した“カエル会議”のページの該当箇所に飛ばすの手法で、「困っていること」を全員が書き出して貼りだし、目標やビジョンを共有しながら具体的な改善策や役割分担をしていきます。
「それぞれの立場から付箋に書き出すと、できているようでできていなかったことが具体的に見えてきます。課題が“見える化”できたらすぐに改善する、そしてそれを繰り返すことが重要です。もうひとつ、“心に秘めた悩み”というのが誰しもあります。それに対しては必ず1対1で相談に乗るようにしています。これでコミュニケーションが良好になりますし、状況もかなり良くなったという実感がありますね」
■具体的に行ったことの一例
- 資料のクラウド化(ペーパーレス化)
- 「朝メール.com」でその日やること、やったことなどをすべて共有
- テレワーク、男性育休取得など、働き方改革の推進
- プロに頼んだほうがいい部分はアウトソーシング
- 徹底的にICT化
「一般企業で活用されている営業支援ツール「cyzen(サイゼン)」やマッピングのアプリなども、議員事務所では広まっていません。私の事務所ではそれらを積極的に取り入れて効率化をはかっています。たとえば、ふと1時間の空きができたとき、“誰に会おうか”と頭で考えてもムダが出ます。アプリを使えば、“今いるこの場所に近く、今会うべき人物”をスマホがわかってくれている。迷う必要がないんです」
■さまざまな取り組みのおかげで達成できた効果の数々
- 残業時間→前年に比べて3割減!
- 地元からの要望への対応→前年に比べて4割増!
- パーティ券の売り上げ→前年に比べて1.3倍、しかも前年は4ヶ月かけたところを1.5ヶ月で達成
「時間当たりの生産性を上げることは、結局、国民のみなさんのためになります。私どもも、“しっかり応応援するからね”と常に言っていただけるよう改革を進めて、最善を尽くしたい。そのための働き方改革だと考えています」
平成から令和へ。「人口オーナス山」に団結して飛び移るために
●株式会社ワーク・ライフバランス
代表取締役社長 小室淑恵
日本は人口ボーナス期を終えて、人口オーナス期を迎えています。この時期に経済発展させる働き方のポイントは
●なるべく男女ともに働く
●なるべく短時間で働く
●なるべく違う条件の人をそろえる
ということ。
時間については、育休だけでなく介護や病気の治療など多様な要因で制約を持ちながら働く人がどんどん増えていきます。最後まで時間制約なく走り抜けられる人のほうが珍しいでしょう。こうした中、“気合い”だけでイノベーションは起こせません。多様な人材がフラットに働ける組織を作り上げることが必要です。
「人間の集中力が発揮できるのは起床後13時間以内。それ以降は酒気帯びと同程度に、さらに15時間を過ぎると酒酔い運転と同じくらいしか集中力が保てないというデータがあります。また、睡眠は6時間以上とらないと精神の疲労が回復されないこともわかっています。短時間の睡眠しか確保できない状態で長時間労働を続けたら、ミスや事故につながるのは当たり前。そのカバーで翌日も費やし、クレーム処理でストレスをさらに抱え、メンタル疾患や過労死を引き起こす。まさに悪循環です。長時間労働をなくすことと同様にインターバル規制の義務化が重要といえます」
3年前と現在を比較すると、「時間制約を持つ人をいかに活用するか」の重要性も明らかです。仕事の属人化を排除し、かつては“スーパーマンタイプの人”がひとりでこなしていた業務もしっかり共有する。1人でやらず、チームでのパスまわしを上達させていくイメージです。
平成から令和へと時代は変わりました。今すぐ働き方改革に着手し、スピーディに成果を上げなければ、この国は財政破綻に一直線です。しずみつつある「人口ボーナス山」から、男女が効率よく多様性を持って働ける、青々とした「人口オーナス山」にうまく飛び移るためには、今のやり方から決別することです。
ますます深刻化する少子高齢化の現実を目にすれば、猶予がないことは明らかですが、今ならなんとか間に合います。みなさんの組織が、そしてこの国が人口オーナス山に飛び移れるよう、一致団結して動いていきましょう。
撮影/SHIge KIDOUE
文/山根かおり