岡山県教育委員会様
PTA・地域住民・教員が一緒になって改革を進める意義とは?
岡山県の取り組みに学ぶ、効果的な「学校の働き方改革」
未来を担う子どもたちに質の高い教育を提供するには、教育現場の働き方改革を早急に進めていく必要があります。今のままでは、過重な作業量と「過労死ライン」を超えるほどの長時間労働で教員たちが疲弊し、教育の本質を高めることは難しいためです。学校における働き方改革は難しいといわれますが、だからこそ早急に実施する必要に迫られています。日本の未来を左右するといっても過言ではないくらい、緊迫した急務なのです。今回は岡山県教育委員会の取り組み事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
※現状を詳しく知るために、まずは「中央官庁・学校で働き方改革が進まない理由。コンサルタントにできることは?」もご一読ください。
教職員自らが改善点を提案し、実践後の評価は数値で“見える化”
別の記事でご紹介している静岡県教育委員会及び4つの小中学校の事例の最後にも記してあるように、静岡県での先進的取り組みと成果は新聞に取り上げられるなどして注目を集め、他県の教育現場に好影響をもたらしました。弊社にも全国の教育委員会や学校から問い合わせがあり、実際に各地で働き方改革を支援しています。今回ご紹介する岡山県の事例も、岡山県教育委員会からのご依頼で実現したものです。
教育委員会主導のもと、まずは2017年5月に岡山県高梁(たかはし)市立高梁小学校にて取り組みがスタート。校長、教頭、働き方改革担当教諭、教務主任、養護教諭等をメンバーとする“カエル会議”は「ぐっじょぶMTG」と命名され、その中で、教職員から改善に向けたさまざまな提案が出てきました。内容は学校行事や業務の軽減、ICTの活用、時間を作り出す工夫など多岐にわたっており、優先順位をつけて実施していきました。
高梁小学校での取り組み。
教員にとって取り組みの評価が最も高かったのは、「学期末の成績処理週間実施」でした。学期末の1週間、通常よりも早く児童を下校させることで、通知表作成などに充てる時間を確保したのです。また、期間中は放課後に会議を入れず、成績処理に集中できる環境づくりを徹底しました。
さらに、この取り組みを行った後、教員による評価を具体的な数値にして“見える化”したことで「自分たちの考えた取り組みで働き方が変わった!」と効果を実感することもできました。
水泳の指導方法を見直したことで、教員にも児童にも多くの効果が!
学校行事の軽減という部分では、まず、夏休み前の「放課後水泳指導」を廃止しました。夏休みに行われる地区の水泳記録会に向けた練習のことで、岡山県内の多くの小学校で6〜7月の放課後に行われ、教員の長時間勤務の原因の一つとなっていたものです。
高梁小で昨年度の状況を確認したところ、その実施回数は5回。これは通常の体育授業の時間割、指導体制や方法、夏休み中の指導の工夫によって置き換えられると判断し、放課後水泳指導を廃止したのです。
この取り組みにおいてすばらしい点は、前年度の実績が5回だったという具体的な数値を挙げたことです。誰しも、やめることに対する抵抗はどうしてもあるもの。「児童生徒がこう思うのではないか?」「保護者がこう言うのではないか?」「どこもやめていないのに、うちだけ?」といった影響を想像して、戸惑ってしまいがちです。しかし、「事実」と「思い込み」をしっかりと区別し、5回という数字から「他の方法で代替可能だ」と決断したのです。
もう一つのすばらしい点は、限られた授業時間を大切にし、授業改善に結びつけたことです。具体的には、水泳を2時間の連続授業に変更することで、授業の前後にそれぞれ発生していた着替えや移動時間を1回にまとめることができ、児童の活動時間が増加しました。
「効果的に水泳指導を行うにはどうすればよいか」という視点で教職員が知恵を絞ったおかげで、水泳指導の工夫・充実という授業改善が図れるとともに、教職員の負担を軽減させ、さらに児童の下校時刻が統一できたため安全面の確保にもつながりました。
しかも、大会への参加標準記録突破による出場者数は、昨年度に比べて2.5倍に増加したそうです。
残業時間が減っただけでなく、教職員の満足度も向上
上記以外にもさまざまな取り組みを行った結果、2017年9月の学校全体の残業時間は、2017年4〜6月平均と比較して22.6%減少しました。
残業時間が減っただけでなく、教職員からの評価も上々。2017年12月に行った全職員へのアンケートでは、4月当初と比べて「最終退庁時刻の設定に意味がある」と答えた割合は19%増加、「負担を感じている業務がある」と答えた割合は15%減少しました。