Case Study

PHCホールディングス株式会社様

社員の満足度を向上させる本質的な働き方改革に挑戦!
ムダな業務を徹底的に排除、コミュニケーションも円滑化して、社員も会社も幸せに

2018年4月、「パナソニック ヘルスケアホールディングス株式会社」から「PHCホールディングス株式会社」へと社名変更した同社。医療機器・ヘルスケアIT・ライフサイエンスの3つの事業を核に、画期的な製品を次々と世に送り出してきた“モノづくりの精神”を継承しながら、精緻な技術を活かした機器やサービスを提供しています。働き方改革でも注目すべき結果を出している新生・PHCホールディングス株式会社の事例をご紹介します。

グループごとにスタートした働き方改革が全社に浸透し、自走可能な組織へ

働き方改革には多様な側面があります。「残業削減」を主軸に置いて改革に乗り出すのもひとつの大きな流れですが、「従業員満足度を向上させたい」という目的の働き方改革も増えています。今回ご紹介するPHCホールディングス株式会社は、まさに後者を見据えて取り組みを続けてきました。

同社は積極的な研究開発(R&D)がもたらす高い技術力に定評があり、血糖値測定システムに代表される体外診断機器や超低温フリーザーをはじめとする研究・医療支援機器、電子カルテなどの医療ITシステムの開発・製造・販売を行い、世界125カ国以上で商品が使われています。

そんなPHCホールディングス株式会社から初めて弊社にコンサルティングのご依頼をいただいたのは2014年。組織として順調に成長する中で業務量が増え続けており、従業員満足度(ES)の向上を目指して働き方改革に着手されたのです。その後も取り組みは続いており、2017年7月には、女性活躍推進法「えるぼし」の最高段階である三つ星企業として認定されています。

弊社の働き方改革コンサルティングは5期目となりました。まず1,2期目では「コンサルタントがサポートする4チーム」と「自走する4チーム」の計8チームずつで働き方改革に挑戦。3期目から、それらの経験や実績を活かして全社展開をスタートしました。そして現在では、コンサルタントの関わりを必要に応じて薄めていきながら、“自走”を続けられる体制を強めています

「残業は苦ではない」「取り組みに時間をかけたくない」という意見も“カエル会議”で一変

同社では、各業務の立役者ともいえる優秀な人材を中心に、「残業は苦ではない」「この取り組み自体に時間を取られては、本末転倒ではないか」などというネガティブな意見もありましたが、“カエル会議”の冒頭でゴールイメージを話し合っていくうちに、各チームのゴールイメージが明確に見えてきました。

あるチームでは、「生き生き元気よく、積極性と協調性を持って、情報共有・スキルアップ・無駄の排除、業務分散して、突発業務もなんのその!と片づける。自己研さんのWednesday、家族と自分のためのFriday」とゴールを決めました。また別のチームでは、「一人ひとりが自立し、助け合える強い集団へ。効率的な仕事で、新規技術・商品の着実な創出と時間的余裕を見出し、生活の充実を目指す」といったように、独自の目標を自分たちの言葉で個別に立てることで各自がすとんと“腹落ち”し、活動が本格化していったのです。

やる気やコミュニケーション能力を魔法のように向上する「ありがとうカード」

「とくに効果が高かった」と評判だった取り組みのひとつに「ありがとうカード」があります。

正方形の手のひらサイズの付箋などにメンバーに対する感謝の気持ちを書いて渡していくもので、たとえばカードを書く相手がAさんだとすると、
「いつもチームを楽しく盛り上げてくれるAさん、ありがとうございます」
「仕事でミスをした時、さりげなくフォローしてくれてうれしかったです」
「Aさんが率先して取りまとめてくれる資料に、いつも助けられています」
など、チームメンバー全員からAさんに「ありがとう」を伝えるのです。

このカードの交換により、「オフィス内の雰囲気が柔らかくなる」といった声や、渡される側のメンバーからは「仕事に前向きになる」などの感想があがりました。

このカードの交換を続けるうちに、こんなすばらしい効果も見られました。定年間際で仕事への意欲やチャレンジ精神を失いかけていたベテラン社員のCさんが、「残された会社生活の中で、自分がチームに貢献して感謝される行動を取りたい」と意欲を高め、積み重ねてきた人脈や知識を後進育成のために伝える行動を自発的に増やしたのです。後日、このCさんのノウハウが必要だという応援要請が他部署からもあり、そこでもCさんは精一杯に尽力。後進の育成に大活躍されました。

「ありがとうカード」は、互いの感謝の気持ちを気軽に伝え合うだけのちょっとした活動に過ぎません。しかし、個人のモチベーションやチームのコミュニケーション向上に驚くほど大きなプラスの変化を与えてくれる魔法のようなツールなのです。

やみくもに蓄積された共有フォルダの情報を整理し、ムダな作業と時間を大幅削減

また、あるチームでは、資料づくりや資料探しに膨大な時間がかかっていることが判明しました。たとえば、製品のメーカー向け研修会の資料をつくって共有フォルダに格納するも、類似研修を行う他のメンバーは、もともと保存されていたデータ量が膨大すぎたため肝心の資料を探し出すことができず、一から作成し直して類似資料がまた増えていく・・・という、なんともムダの多い工程を増やす結果になっていたといいます。

そこで、“カエル会議”では「過去の研修会資料はそもそもすべて保存する必要があるのか?」「類似・派生資料は共有フォルダから削除して、資料を探しやすくしたほうがよいのでは?」といった意見が出て、共有フォルダの片づけを敢行。ファイル数は約60%減となり、求めている資料にすぐに辿り着けるようになりました。

また、ペーパーレス化を目指し、以前は年間18,000枚にものぼった会議資料を半分の9,000枚にまで削減することに成功した部署も。さらにタブレットを利用して、現在では印刷物はゼロに近い状態になりつつあります。

業務の効率化を図ったことで個々の勉強時間が充実し、全体のスキルも向上

コンサルティング開始から前半4カ月は、目の前にある一つひとつの業務フローを改善してムダな業務の排除や効率化を図り、後半になるとそれらの取り組みによって浮いた時間を個々のスキルアップに充てるようになりました。

そうして、個々人が社外の勉強会に積極的に参加し、学んだ知識をチーム内で共有してもらうなど全体的なスキルの向上に努めた結果、たとえば開発部門では化学実験に対して積極的な計画法を取り入れることができるように。「特性値の最適条件」を導くためにこれまで256回必要だった実験が、なんと約90%減の27回で済むようになりました。

もともと技術力に定評のある同社ですが、その後も社外勉強会に参加してはチームにすぐ共有することが習慣化し、組織内の技術力が加速して向上しています。

システム開発部門では、ソースコードの登録時にエラー検出すると自動的にテストを行う、という仕組みを構築。手動テストの試算において167時間を要していた工数を実質0時間にできました。さらに、クラウドを活用した社外との共同開発環境を新たに構築することで、開発期間中、継続的に発生する「ソースコードの統合作業」の効果が飛躍的に改善されました。

製造工程管理を行う部署では、工場からの急な不具合発生への対応が残業の大きな要因となっていました。そこで工程別の点検表を全9工程分作成。不具合が発生してから対応するのではなく、定期交換と点検を先回りして実施することで、突発業務による残業時間を約60%も削減しました。さらに他部門の業務・工程見学や関連部門との懇親会を開催して、自部署への学びのフィードバックや関連部門とのコミュニケーションを深めながら、さらなる業務品質の向上につなげています。

ほかにも各部署で次のような成果が報告され、「今まで以上に働きやすく、助け合えるようになった」との声が多数上がっています。

  • 業務の平準化、共有化により年休取得数が1人あたり2日間増加
  • ペーパーレス化に取り組み、紙の使用量及び工数を50%削減
  • 業務後にバレーボールの練習に取り組み、メンバーの体力が平均17%アップ

残業削減ばかりに注目が集まりがちな働き方改革ですが、その本質はコミュニケーションの向上による「働きやすさの向上」です。正しい働き方改革を行えば、取り組み企業の従業員満足度も飛躍的に向上するのです。

PHCホールディングス株式会社の成功ポイント3
  • 関係性の質を高め、従業員満足度を上げるという本質的な目標を掲げた
  • 一人ひとりが“腹落ち”する具体的なゴールイメージを設定
  • トライアルチームと自走チームで成果を出し、着実に全社展開へとつなげた

※こちらの事例は、弊社代表 小室淑恵の著書『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』からまとめ直したものです。


第二期最終報告会ダイジェスト リーダー&事務局インタビュー(2016年実施)
https://work-life-b.co.jp/case/phc_interview.html

担当コンサルタント

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