Case Study

株式会社ベアレン醸造所様

全部門で残業時間を減らしながら、経常利益146%UP!
地ビールコンテストで2度の日本一に輝く「ベアレン醸造所」

客観的な成果(数値等)
  • 法定外労働時間20%減少
  • 経常利益146%UP
  • 有給休暇消化率85%超
主観的な成果(体感・心理面)
  • ボトムアップの取り組みを行い、経営層はその後押しをすることで、社員の自主性が育まれるように
  • 徹底的な整理整頓で、探し物にかける時間が大幅に減少
  • 働き方改革が難しいとされるレストラン部門でも終礼を行うことで時間に対する意識が向上

本格的なクラフトビールとローカリズムを貫く姿勢が地元ファンを中心に広く愛されている岩手県盛岡市の株式会社ベアレン醸造所。同社にとって良質なビールを醸し続けるのは当然の使命であり、そのためには「社員が満足感を持って働ける環境」「良質なコミュニケーション」が必須条件といえます。2017年にスタートしたベアレン醸造所の働き方改革、その軌跡と今後をご紹介します。

専務自らWLBコンサルタントの養成講座を受け、ユニークに実践

岩手県盛岡市にある株式会社ベアレン醸造所は、「ユニークな取り組みを楽しみながらやろう!」とさまざまな工夫と試行錯誤を繰り返して実績を重ねてきた、働き方改革の先進企業です。専務取締役が自ら「ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座」を受講。そのうえで県が実施する働き方改革モデル企業に名乗りをあげ、弊社のコンサルティングを受けつつ臨んだ本気の取り組みが、着々と実を結んでいます。


JR盛岡駅からタクシーで10分ほどのベアレン醸造所。ビールを仕込むブルワリーと直売所、事務所を併設したこちらの建物のほか、雫石の缶ビール工場、市内の直営レストランも3カ所あります。働き方改革は、取り組みやすい「業務・マーケティング」の2チームから着手し、製造・レストラン部門など全部門に広げていきました。

2019年、見事「いわて働き方改革AWARD 2019」最優秀賞に輝いた同社ですが、取り組み前には多くの課題があったといいます。どのような状況を、どんな方法で改善していったのでしょうか。取り組みのキーパーソンである専務取締役の嶌田洋一さんに、担当コンサルタントの村上健太がうかがいました。


「会社を立ち上げた当初は社長の木村と私、ドイツ人ブラウマイスターの3人だけでしたが、今では正社員40人、パート20人です。女性スタッフの育休や介護のための休暇はもちろん、男性育休の取得率も100%をめざしています」

シンポジウムで耳にした弊社コンサルタントの講演をきっかけに

働き方改革に着手したきっかけは、2016年11月、盛岡市と岩手県共催の働き方改革シンポジウムにて弊社・大塚万紀子の講演を嶌田さんが聞きにこられたこと。ちょうど産休を控えたスタッフがいて「今後も仕事をがんばってほしい。会社としてどういう支援ができるだろう?」と思っていた時期で、大塚の話を耳にし「これからはそういう時代。ずっとがんばっていける環境を作っていかなきゃいけないんだな」と痛感されたといいます。

「トップダウンでサッと動ける規模なので、働き方改革を始めようと提案したときも反対はなかったです。が、上が決めるということは“現場が考えない。何でも確認を取りに来る”ということでもあります。最初、自身が率先して働き方改革を進めていこうと考えていたのですが、コンサルタントの村上さんと田村さんがいらしてまず言われたのが『嶌田専務は、チームの取組みを静かに見守ってください』ということ。やる気まんまんだっただけに実は残念に思ったのですが(笑)、社員がまず考え、私は『いいよ』と後押しすることで、社員の自主性を育むよい機会になったと感じています。自主性を持って生産性高く働ける環境を作ることで、残業が減り、休暇も取りやすくなってきました」

働き方改革着手の流れとその後の受賞歴
  • 2016年11月 働き方改革シンポジウムで弊社・大塚の講演会に出席、直後に田村優実の個別相談も受ける
  • 2017年1月 「生産性を上げ、コミュニケーションも深まる働き方改革をやりたい」と社長に伝え、2月には全スタッフが集まる会議でも話をする
  • 2017年1〜3月 盛岡市主催・弊社の「ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座」を受講
  • 2017年6月 岩手県の働き方改革モデル企業に応募し、約8ヶ月間、弊社のコンサルティングを受けながら、まずは「業務・マーケティング」チームの取り組みをスタート
  • 2018年「イクボス宣言」
  • 2018年「世界に伝えたい日本のブルワリー」で2度目の日本一を受賞
  • 2019年「男性育休100%宣言」
  • 2019年4月 「いわて女性活躍企業認証」「いわて子育てにやさしい企業認証」
       7月「えるぼし認証」
       11月「いわて働き方改革AWARD」最優秀賞獲得!
  • 2019年 社内に「働き方改革推進チーム」を作り、改革を全部署に広げている


「頑張っていることが評価されるとやる気につながりますから、最優秀賞はぜひ取りたいと思っていました。各種認証を受けるなど成果を形にした結果ですから、非常にうれしかったです。外からの注目が高まり責任感も増していますし、さらに進めていかなくてはとみんなで思っているところです」

数字で見る、働き方改革の具体的成果
  • 全社の法定外労働時間は前年度比20%減少
  • マーケティングチームでは、SNSの活用などで会議時間が月あたり約50時間短縮
  • 残業時間は前年比54%減少
  • 2018年度の経常利益は2016年度と比較して146%UP!
  • 有給休暇消化率、2016年53%→2017年は約75%、2018年はすでに85%超
整理整頓の徹底・会議改革・コミュニケーションの円滑化


やるからには、ユニークな面白い手法で取り組みたかったという嶌田さん。「みんないろいろ工夫して、割烹着を着て整理整頓をしてみたり、寡黙でシャイな人間が多い製造チームではどんな些細なことでも“つぶやき・なげき・さけべる”場として1冊のノートを共有したり。楽しく挑んでいます」

ベアレン醸造所の働き方改革は、業務・マーケティングの2チームからスタートしました。まず取り組んだのは整理整頓。「掃除の日を決めて、不要なものをみんなで捨てるところから(笑)。出張中の人の机は誰かがやってあげたりもして、事務所や机まわりを使いやすく保とうという空気になりました」(嶌田さん)


マーケティングチームの菊池香帆さん。「壁のホワイトボードは以前からあったのですが、全く使っていませんでした。事務所を整理整頓してからしっかり活用できるようになり、工場見学の時間やイベント情報などがひと目でわかって助かっています」

2つ目は会議の改革。「マーケチームは会議の回数が多かったので全体で集まる機会を減らして、少人数でこまめにやるように。まだ道半ばですが、SNSを活用して情報共有をしておき、ミーティングの効率化をはかったりもしています。以前は数名しか発言していなかったのが、付箋を使ったカエル会議の手法を実践するようになってから、みんなが発言するようになりましたね」(嶌田さん)


カエル会議は2週間に一度くらいの頻度で実施。毎回テーマを提示してから付箋で意見を出し合っています。「たとえば“生産性を高めるためには?”というテーマでは漠然としすぎていて具体的な行動につながらないのでテーマも精査しています」とマーケティングチーム主任・八木浩太郎さん。

もう1つはコミュニケーションの円滑化。業務チームでは“ありがとうを伝えよう”というのをテーマに、対象者を決めてみんなでありがとうの手紙を書く、ということを実践。全体の雰囲気がよくなったといいます。


マーケティングチームで流通を担当する八木さんは営業で外に出る機会が多いため、「いろいろな業務を見える化できたおかげで、これは誰々に任せられるな、などが明確にわかるようになり、非常に動きやすくなりました」と、働き方改革の効果を肌で感じています。

「残業は当たり前」のレストラン部門にも変化が!

業務・マーケティング部門で改革に乗り出した2017年。両チームの残業時間が大幅に減少(マーケティングは前年比54%減少)し、有休取得率も著しく増加しました(全社でも、2016年53%の取得率から2018年は90%近くまで上昇)。そして、まだ具体的な改革を行っていなかったレストランチームも残業が減少。その理由を嶌田さんは「そういう空気が全体に広まったのでは?」と分析します。

「レストラン部門は“おいしいものを作るために残業も仕方ない”という雰囲気があって。それをやめてほしいとは言いませんでしたが、それでは話が進まないので、暇な時間に夜や翌日の仕込みを同時にできない?本当にムダなことはないのかな?という話はしました。こちらで具体的に問題点を塗りつぶしていくのではなく、あくまでも考えてもらうスタンスで」


ほかに工夫した点は、終礼を必ず行うようにしたこと。「残業しないで、という代わりに“残業は申請してから”というのを徹底しました。終礼で「残業する人?」とわざわざ聞かれると「じゃ、帰ろう」ってなるんです(笑)。ホールと厨房でコミュニケーションがうまく取れていないという課題もありましたが、終礼がいい機会になって、翌日への引き継ぎもうまくできるようになっています」

売上好調だった駅ビル内のレストランを働き方改革のために閉店

盛岡駅ビル内の直営店を閉店するという大きな決断もされました。来店客が多いことに加え、駅ビルの営業時間に合わせるため休暇が取れず、スタッフの長時間労働が慢性化。その状況を打開するために閉店という選択をしたのです。この決断はインパクトが大きく、TVや新聞・雑誌でも報じられました。

「全社会議をやっても駅前店のスタッフは参加できないので、一体感を大切にしてきた社風なのにこれでいいのか?というジレンマもありました。閉店を決めたこと自体は、“働き方改革のために”という意味ではそれほど特別なことだとは思っていません。でもかなりのインパクトがあったようなので、世間にも社員にも、そしてお客様にも“そこまでやるのか!本気なんだな”というのは伝わったのかなと思います」


AWARDを受賞したことは、継続への励みになります。「整理整頓も、やめてしまったら元の木阿弥。“効果があってよかったね、おしまい!”ではなくて継続していくしくみ作りが大事です。コミュニケーションの取りやすさは上の人間が気をつけて、言いやすい雰囲気を作るべきですし、若いスタッフはライフを大切にしながら自主性を持って課題や解決策を考えてほしいですね」

働き方改革で成功する企業には「残業を減らしつつ業績はあがる」という特徴があります。ベアレン醸造所でも残業時間は大幅に減り、サービスや品質は向上。採用面でもすばらしい効果をあげています。

「新卒の応募はかなりあり、女性の割合も増えてきました。“女性が働きやすそう”とみなさんに言われ、働き方改革の影響が非常に大きいと実感しています。昨年は中途キャリア採用の広告も出しました。数人取れればいいかなと思っていたところ会社説明会に100人以上集まって、びっくりしました。定量的な変化以上に、会社のイメージが良くなっているのは間違いないと思います」

今後はどのような展開を考えておられるのでしょうか。

「今後は率より実数に注目したいと思っています。たとえば有休取得率を上げるだけではなく、そもそも有休の付与日数が少なくはないか?有給休暇以外の所定休暇も増やして年間の休日数を増すことが本来の答えじゃないのか?と、実数に視線を向けて取り組みたいと思っています。そして、育児や介護との両立支援は今後もとくに注力したい点。近々育休明けで復職する社員が2人いるので、みんなでサポートしていきたいですね。制度を作っただけでは意味がありませんから」


「スタッフのカエル会議中は木村社長と嶌田専務が電話番をされていたのが印象的でした。心理的安全性がしっかり確立できているからこそ、そういったサポートも自然にできるんだと思います。弊社の小室も「えー!すばらしい!」と褒めていました」(村上)

社員サポート、ますますの充実に向けて

●ライフの充実・スタッフの健康向上

  • 喫煙率が高いので、やめる気がある社員は会社としてサポート
    〈禁煙のための金銭的な補助/保健師のセミナー実施〉
  • 取りたい資格があれば、仕事に関わらないものでもサポート

    〈1人2万円の援助金〉

●両立支援をさらに強化

  • 各種制度を充実させて、子育てしながら働きやすい環境を整理
    〈育休明けスタッフは有休+30日/小学校卒業まで短時間勤務・残業免除/離職後の再雇用制度など〉
  • 気持ちよく休める仕組みと環境を整え、男性育休取得率を100%に
    〈対象者との話し合い/現場の協力体勢強化/一人当たりの育休取得期間を長く〉
  • 介護休暇にも細かく対応


インタビューを終えて、乾杯! 村上自身がベアレンビールのファンであり、「好き」が高じて商品企画の提案までしています。村上の「ライフとワークのシナジー」はこちらの記事もご覧ください。

今後も伸びていくといわれるクラフトビール業界。東京で各地のクラフトビールが味わえる店やイベントも増えていますが、ベアレン醸造所は「クラフトビールファン」というよりも「ベアレンのファン」を確実に増やしているのが大きな特徴です。地元・岩手県を大切にしながら、ベアレンファンの裾野を広げ、愛されるブルワリーであり続けることでしょう。

その味と姿勢を支える本気の働き方改革に、今後もますますご注目ください!


担当コンサルタント

撮影/SHIge KIDOUE
文/山根かおり

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