Case Study

株式会社オーテック様

東京・北海道の支店で起きた目覚ましい変化とそのきっかけとは? 「変わることに挑戦するプロジェクト」で改革中の株式会社オーテック

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1934年創業、建物の快適性・利便性を追求したライフラインや、環境に配慮した関連商品の提供などを主業務とする株式会社オーテック。東京から大阪まで全国に9拠点を有する同社では、仕事の属人化、チーム内コミュニケーション、他部署との連携などに課題を感じ、働き方改革に取り組んでいます。今回は、北海道支店・工事課 柿田育子さんと、東京支店・エンジニアリング部 相澤聡さん、田中佳世さんに、取り組みで感じた本音と今後の展望を語っていただきました。


働き方改革に取り組んだ経緯と流れ

・2017年、働き方改革委員会を社内に立ち上げ、取り組みスタート

改革の意識が芽生え、取組のアイデアも出てきて少しずつ土壌が整ってきたものの、2024年から残業時間の上限規制が適用されることなどをふまえ、さらなる改革の必要性を実感していた

・2022年4月から弊社のコンサルティング開始

これまでの働き方改革の取組みを活かし、新たな働き方改革であるCC Project(CC=Challenge to Change/変わることに挑戦する)として再スタートさせ、現在も取り組み中

北海道支店・工事課 柿田育子さんインタビュー

株式会社オーテック様インタビュー1

ありたい姿の対話を通じて、チームの関係性に変化が

─北海道がCCプロジェクトのチームに選ばれたときのお気持ちは?

率直にいうと、「こういう取り組みをやっている」と社内外にアピールするためと思っていました。何回か定例会をやればそれで解放されるだろうと(笑)。「みんな本音で意見なんて言うわけないじゃん」と毎回気が重かった、というのが正直なところです。

会議はその日のファシリテーターによっても雰囲気が変わります。私自身、「重要なのは、滞りなくスムーズに進めることだけではない」というのを理解していなかったこともあり、「うまくいかないなぁ」とけっこう落ち込みました。コンサルタントの方としっかり話をしてみるまではそんな感じでしたね。

ただ、私がやる気ない姿を見せればこのチームは先に進まないという懸念があったので、そういう態度は見せないように心がけました。

─みなさんの様子が変わり始めたのはどういったタイミングでしたか?

徐々にではありましたが、「ありたい姿」が見え始めたときだと思います。

今思い返すと、最初に決めた「ありたい姿」は適当な内容で(笑)、2回目で「なんか変だよね」とみんなで話すことになり、そのあたりでカエル会議の在り方が少しずつわかってきたと思います。「何が変なんだろう」と突きつめて会話したのをきっかけに、いい方向に進み始めました。

具体的には、初回に決めた「チームワーク向上」という内容に関して、具体的にどうすれば向上できるの?みんなが具体的にゴールのイメージを共有できてないよね?という話をしながら、気づきを得たように感じています。最初はそもそも「なんか変だよね」と言い合える関係性でもなく、本当にみんなが「こうなりたい」と決めた姿でもなかった。チームワークという言葉を使っておけば体裁が整うかな、という感覚だったと思います。

そういった試行錯誤を経て、3回目に「ありたい姿」を話したときは、かっこいい言葉じゃなくていいからみんなが同じゴールを目指せるようにわかりやすく言葉にしていこうという考え方になっていました。

─みなさんが本音を出すようになったきっかけは何だったと思われますか?

今でも本音を言えてるわけではありませんが、コンサルタントの方と数名が面談をした時がありました。その際、私からメンバーへ、「誰かが発言したら頷くなり何なり反応してほしい」、という話をした事があります。ただでさえ無口なメンバーですし、マスクもしていますから、顔だけ見ていると不機嫌そうというか、この時間をつまらないと感じているように思えるので、たとえ声に出さなくても反応してほしい」と。 その時にコンサルタントが仲介し一緒にメンバーに伝えてくれた事が、頷いて反応してくれ努力をしてくれたように思えます。以降とても話しやすくなりました。誰にとっても、反応があれば発言しやすいのではないでしょうか。

株式会社オーテック様インタビュー2

─改善をお願いしてすぐに反応してくれるというのは素晴らしいですね。

そこがこのチームの素直ないいところだと思います。カエル会議への出席にしても、現場に出ている人であれば理由を付けて欠席することもできたと思いますが、ほぼ1年間誰もそれをしなかった。素直に受け入れて、取り組んでくれているんだと思いました。

他に話がしやすくなった背景には、ウェブ会議に慣れてきたことも影響しています。それまでの会議はただそこに居ればよかったけど、ウェブ会議だと画面に顔を出して個々に参加するので、「何かしら発言しなければ」という気持ちにさせられるので参加意識が高くなのかもしれません。

新人が来たがらない支店!? その現状を変えるために

─北海道支店ならではの課題はありましたか?

北海道は残業が多くて離職率も高い支店だと言われていましたが私たち自身はそれほど感じていませんでした。他支店から見ると「辞める人が多く、新人は行きたがらない支店」と言われていると今の支店長に伺いました。しかし異動してきてまもなく「一人ひとりはみんないい人だし、思っていたほど悪い支店じゃないよね」と言っていたんです。

その事に「え、私たちはそんな風に思われてるのか」と驚きました。
キーマンの浜田も最初のうちカエル会議に対して積極的ではありませんでしたが、今では「カエル会議をやって少し変わったと思う」と話すこともありますし、先日の支店全体会議でも「今期もカエル会議を続けます」と発表しました。

浜田はほかのチームに対しても「カエル会議はやってみたほうがいいよ」と伝えてる事があるので、その効果を実感しているのだと思います。

─若手の受け入れについてはどのような取り組みをされましたか?

弊社では年に2回、支店で新人をあずかって本社に戻していまして、昨年の夏場、このチームで1ヵ月新人を受け入れました。毎日でも現場に連れて行って研修するように言われていたのですが、結局2回程しか連れて行けなくて。それ以外の日は会社に来てただ座っている状態でした。先輩が話しかけるわけでもなく、コミュニケーションをほぼ取らない状況で。私も見かねて、「チームがイメージするありたい姿とかけ離れているのでは?」とちょっと感情的に発言したこともありました。

たしかそれが、3回目のありたい姿を考える会議でした。「思いやりのある行動を取ろう」という言葉が出たと記憶しています。

それを経て冬場の新人研修が始まったので、「思いやりを持って行動する」というのを実行してみようと。「思いやりって、人によって捉え方が違うよね」「話しかけられたら困る人もいそう。相手の気持ちを考えないと」という意見も出ましたが、「とにかくまずは名前を呼んであげるとか挨拶をしてあげるとか、こちらからコミュニケーションを取っていくことが思いやり。相手の気持ちばかり考えて話しかけなかったら、結局それは無視していることと同じだよね」と事務局から意見をもらって取り敢えずやってみようと。

そこから研修に来た新人に話しかけるように意識したり、カエル会議で雑談タイムを設けて新人と会話する時間を作ったりしました。

─雑談タイムではどういった話が出ましたか?

まず、お互いの自己紹介をしました。というのも、1回目の新人研修の最後に「1ヵ月を終えて思ったことがあれば何でもいいから教えて」と聞いたら、「まずみなさんの自己紹介をしてほしかった」と言われたのです。自分は新人の○○です、と挨拶するけど、先輩たちのことは何もわからないから覚えられない、と。その反省を次に活かしました。

─新人の意見を受けてすぐに対応されたのは素晴らしいですね。ほかにはどんな工夫をされましたか?

昨年は、新人に対してスケジュールを立てていなかったんです。明日何をすればいいのかわからない、朝出勤するまで何を指示されるかわからないという状態で。それを是正するために、今回は日時・現場名・同行担当者・持ち物などが分かるスケジュール表を作りTeamsで共有できるようにしました。

あとは、わからないこと、困ったことを誰に聞けばよいのかがわかるような工夫をしました。

自分だけでなくチームのために。そしていつかは会社全体に

─今回の取り組みを通じてどのような変化を感じていますか?

私自身でいうと、チームのことをすごく考えるようになりました。これまでは自分の仕事ができていればOKで、みんなでこうしたいとか、全員共通の考えを持ちたいとか思ったこともなくて。自分のチームと本当に向き合ってみた1年間だったなと思います。

メンバーの中で一番変わったのはキーマンの浜田ですね。たとえば定時退社デーには新人にもそれを促すわけですが、今までなら「帰っていいよ」と声をかけて終わりでしたが先日は自分から新人の席まで行って、肩をぽんと叩いて促す感じで「みんなで帰るよ」と声を掛けたんです。それで私たちも「よし帰ろう」と改めて思いましたし、チーム意識を高める上でも大きな変化なんじゃないかなと思いました。

─逆に、難しかったことは?

掲げているゴールイメージのひとつに「充実した休日と柔軟な働き方」というのがあるのですが、それって具体的には何だろうと私は思い始めていて。みんなにもそれを問いかけてみました。出てきた意見は、チームとしてではなく「自分は今、土日に出勤しなくて済んでいるから大丈夫」など、個々の話にとどまっていて。

チームで変わっていかなければダメな取り組みだと思うので、そこをもう少し理解してもらいたい。意識を個々ではなくチーム全体に向けていこうというのを、どうやったらうまく伝えられるだろうかと、毎回そこに難しさを感じています。

─柿田さんは2年目から他チームをサポートする事務局も兼任していますが、1年目の取り組みにおいて事務局というのはどのような存在でしたか?

最初はとにかく不安だから居てほしいと思う存在でありました。自分でも事務局を経験してみて実感しているのは、「事務局は事務局でしかない」ということです。意見やアドバイスをくれる存在は必要ですが、やはり実際にチームを変えていけるのはチームだけ。結局自分たちの中で出した答えの方向にしか進まないというのがすごくわかったのです。

ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座を受講した際のディスカッションの中で、働き方改革の事務局をされている人事部の方と話す機会がありまして。事務局として何をされているのか質問したら、「何もやっていません。事務局が入ると、チームの人たちに会社が見張るためだと思われて意見が出ないんじゃないかと思って」ということでした。自分の知る事務局だけじゃないことを知りました。私はその方に自社の事務局についてお話したら、「私ももっとちゃんとやってみようかなと思います」とおっしゃっていて。他社の取り組みを知るというのもとてもためになると思いましたね。

─これから会社全体に取り組みを広げていくために何が必要だと思われますか?

各チームからさまざまな意見が出てきますが、それに対して会社側がスピード感のある対応をしてくれると、より効果が出ると思います。一度にすべてを変えるのは難しいですが、取り組みのなかで小さな事でも「自分たちの意見や行動で会社のここが変わったね」と気づけるくらいのスピードで。

「このシステムがもっとこうなったら効率化できるね」など本当に真剣に意見を出し合っているチームもあるので、そういった場合に「ちょっとトライアルとして取り入れてみよう」とスピーディにOKを出してほしいかなと思います。

─これから働き方改革に取り組むみなさんにメッセージをお願いします。

取り組みのリーダーになる立場の人が「こんなことをやっても結局会社は変わらない。自分たちの仕事量は変わらない」と思い込んでしまっていることって多いですよね。

私の周りにも、まだ取り組んでいない部署の課長が私たちの定時退社を見て「俺も帰っちゃおうかな」と呟いていて。「一度帰ってみたらいいじゃない」「でも、俺の仕事は他に誰がやってくれるの?」というやり取りをしたことがあります。「そこをみんなで考えてみたらいいよ、残業を減らすとかではなくて今の仕事のやり方でいいのかをみんなで話し合っていくんだよ」と伝えたのですが、そこで終わってしまうのです。とにかく一度考えるきっかけとしてやって欲しいです。

働き方に向けた取り組みをしない、そういう場を設けないということは、チーム内の若手の意見も聞けないことになります。聞かないまま現状維持で進んでしまうというのがすごくもったいないと思うのです。とにかく一度は経験してみましょう、と伝えたいですね。

東京支店・エンジニアリング部 相澤聡さん、田中佳世さんインタビュー

株式会社オーテック様インタビュー2

「変わる必要はない」という出発点から、劇的な変化が起こるまで

─この1年を振り返ってみて、いかがですか?

相澤さん(以下、敬称略):エンジニアリング部※としての活動自体が1年目、私が東京支店に配属されたのも1年目、まだ誰も顔見知りがいないというタイミングでした。どんな風に業務を進めていくべきかと模索していた中で、モデルチームに選ばれたんです。

※各現場作業における関連書類及びシステムデータ構築・作成を行う。

メンバーからしたら、私は「得体の知れない人がよそから来て、得体の知れないことをやろうとしている」という存在だったと思うので、「事業部から話が来ているから」という流れに持っていけたのはむしろ良かったかなと。業務の流れは自分の考えとしてまとまっていましたが、それを具体的に組み立てていく際に今回のCCプロジェクトが功を奏したと思っています。

田中さん(以下、敬称略):取り組んだおかげで仕事が楽しくなったので、やってみて良かったというのが今の感想です。でも最初は「イヤなのが来ちゃったな」「新しくできた部署だからいろいろやらせてみようとしているんだな」としか思えませんでした(笑)。

当初は、変化自体を望んでいませんでした。現状維持でいいと思っていたので、何かを変えさせられるということに抵抗感があって。でも実際にやってみると自分だけではなくみんなの変化も見えて、それが少しずつ楽しくなっていって、最終的には「やってみて良かったな」という感想になったんです。

─スタート当初、どんなことが大変でしたか?

相澤:まず、全くメンバーの反応がなかったんです。田中からも話があったように、変わろうとしない、変わる必要性をメンバーが感じていない状況でした。

というのも、エンジニアリング部は他の部署との関わりの中で仕事をするところなので、「周りが変わらない限り、何をやってもムダ」「うちはちゃんとやっているけど、依頼を出すほうに問題があるから改善しようがない」という他責感があったんです。なので、意見なんて出てこないし、「どうしましょうね」という感じでカエル会議が終わっちゃう状況でした。

反応のなさには本当に苦しみました(笑)。

田中:もう本当にその通りでした(笑)。私たちは悪くない、依頼してくるほうに問題があるから変わる必要はない、と思っていたので。それと、以前は会議で発言しても否定されることが多かったので、「ほらまたダメ出しされた。もう次は何も言わない」と黙っていた人が多かったんじゃないかと思います。

─その反応が解消されたきっかけは何だったのでしょうか?

相澤:メンバーから他部署に依頼を出しても返してこない、誰が言ってもダメだという話だったので、じゃ、俺が言うよ、と。で、私がいろいろ言ってみて「こちらが動けばちゃんと反応が来るんだ」というのを、メンバーの一人が口にしてくれたんです。そこで、今後のためにやり取りの内容を表にまとめていこうというのを田中さんにお願いして、それが働き方改革にまつわる初めての会話だったと思います。

こちらから催促することで仕事がちゃんとまわるのを体感したときに、田中さんを含むメンバーが変わってきた、やれば変わるんだと実感できたというのが変化の始まりでした。

田中:そうですね。それまでは「上に言ってもやってもらえない」と思っていたので、「どうせ今回も…」という気持ちはありました。でも、相澤さんはちゃんと動いてくれるんですよ。言ったことは全部やってくれる、自分で動いてくれるので、「これはきっかけになるかもしれない、今ならできるんじゃないか」と思えました。

コンサルタントの方から心理的安全性について、たとえば「会議で誰かが何かを発言したら、決して否定しない」「お互いに反応しよう」という話をしていただいたのも大きかったと思います。否定されないのであればちょっと言ってみようかな、と思い始めたんですよね。

─コミュニケーションの取り方として、相澤さんはどんな苦労・工夫をされましたか?

相澤:部に来たばかりの私にとって、メンバーは初対面の人たちなので、まずは「そのチームに馴染む」というのを心がけて、メンバーと積極的に会話をすることがスタートでした。CCプロジェクトをうまく進めるために、というだけではなくて、自分が馴染むことでメンバーも意見を言いやすくなるだろうと。

具体的には、業務上必要な面談があったときに、かなり長く時間をかけて一人ひとりの率直な意見を聞きました。中には無理難題を言う人もいましたが(笑)、否定はせず、「そうなんだ、じゃこういう風にしたらいいんじゃないかな」と、とにかく会話を増やすように。

以前いた支店には女性の部下がいなかったので、「女性に対してどう言ったら受け入れられやすいのか」と思案したり、そのあたりも難しく感じたところではあります。慎重に言葉を選びながら自分を出せる会話をしていって。今はもう、みなさんの協力を得て、何を言っても気楽に対応し合える関係性になっています(笑)。

田中:私のときは、最初の面談でディズニーランドの話をしました。何か雑談から入ってみんなの気持ちをほぐすっていうことだったと思いますが、初回の面談についてはディズニーランドの話以外は何も覚えていないです(笑)。

相澤:そうか、田中さんとはディズニーランドでしたかね。全員たぶんそんな感じで、何が好きとか、それいいですよね、とか、雑談をして近しくなってから、じゃあ今後の目標はどういう風にしようかという話に持っていった気がします。

─ずっと相澤さんがファシリテーターでしたが、田中さんたちに任せるようになって。初めてファシリテーターとして前に立たれたときの感想を聞かせてください。

田中:話をまとめるのは今でも苦手なんですけど、前に立ったことで反応の重要性がわかったんです。みんなからの反応があることで前に立っていても落ち着けるし、逆に何も反応しない人を見ると「何をやってるんだ?っていう目で見られてる?」という風に感じてしまって。自分が反応する側にいるときは、しっかり反応をして意見も言おうと心底思いました。

今でも緊張はしますが、少しずつ成長しているんじゃないかなと感じています。

他部署からのアンケートを元に自分たちの在り方を見つめ直す

─取り組みの中で、カエル会議はどういった役割を果たしていたと思われますか?

相澤:今まで「待ち」の姿勢だったのが、仕事を「取りに行く」ようになったと思います。相手が悪いから業務が進まないんじゃなくて、相手に寄り添って仕事をするという意識が芽生えたし、かつ、予定が見えているものに対して、待つのではなく、担当者を決めてその担当者が自分から相手部署に確認を取りに行く。仕事へのスタンスがそんな風に変わった気がしますね。それは今回のカエル会議がきっかけになっていると思います。

田中:相手への対応の仕方も変わりました。今までは、他部署から急な依頼が入ったりしたときに、反論したり文句を言ったりしていたんです。でも、カエル会議の中で「まずは受け止めよう」という話が出てきて、みんなの中で「一回、受け止める」が合言葉になりました。

「思わず言い返しちゃったな、これから気を付けよう」「時間がなくてもやらなきゃいけないんだから、まずは受け止めて、そこからどうしていくか考えていこう」と、みんなが成長したのを感じています。それもカエル会議のおかげですね。

─ポジティブな素晴らしい変化ですね。具体的にはどういったアクションでそこまでの変化が起こったのでしょう?

相澤:他部署の人たちに、エンジニアリング部のことをどう思っているか、本音で教えてほしいというアンケートを取ったんです。その中に「怖い。言いづらい。言ったら反論される」というようなことが書いてあって、そう思わせているならそこを改善したほうスムーズにいくよね、と。そこから「一回、受け止めよう」になったんだと思います。

─自分たちへの印象を率直に聞いて受け止めるというのは、素晴らしいことですが、同時に難しさもありますよね。田中さん、アンケートを取るとき怖くなかったですか?

田中:すごく怖かったです。「あんたたちが怒るからこっちも言えないんだよ」とか、厳しく批判されるだろうなと。それを何とか受け止められたのは、先ほども言いましたが「心理的安全性を確保するために、相手を否定しない」というのが私の中ではかなり大きかったからだと思います。自分たちのチームの関係性が良くなっていたので、外から言われても「みんなで受け止めよう」という思いができあがっていた、というのもあるかもしれません。

「動けば変われる!」と実感してからの目覚ましい成長

株式会社オーテック様インタビュー3

─現在の様子はいかがでしょう? カエル会議は続けておられますか?

相澤:今年4月のカエル会議では、去年の振り返りと、今年度のありたい姿を考えていこうという話になったんですが、5月は結局できなくて。6月に新しい人や派遣の方も入ってきたので、もう一度仕切り直して、そこからは2週間に一度のペースでやっています。

カエル会議以外では、部内で勉強会を開いています。昨年度はほとんどできていなかったのですが、今は部署内を区切って業務を分担したので、少人数で月に2回のペースで実施して知識を増やしていけたらと考えています。

田中:今年度最初のカエル会議では、みんなけっこう静かでした。去年意見が出つくして、「あれ、どんな感じで進めるんだったっけ」という感じで。でもまた感覚が戻ってきたというか、直近の会議では意見も増えていました。

ただ、「去年はこうだったし、もう大丈夫」というような、型にはまった感じもあるので、そこを破らないと次に進むアクションが起こせないのかな、もう少し深掘りしていく必要があるのかなと思っています。

たとえば、「みんなフォローできていないんじゃないか」と問いかけると「フォローはできてるよ、大丈夫だよね」と、そこで止まっちゃう。そのフォローの中身についてもうちょっと深掘りをしたいんですよね。今後は部署内だけでなく支店全体、支店の壁もこえたフォローというところまで考えていけたら理想的かなと思っています。

─視座がかなり高くなっておられると思いますが、それにはどんなきっかけがあったのでしょう?

田中:やったら変われるというのを実感できたからでしょうか。それがちょっと楽しくなってきた感はありますね。

知識をつけると仕事が楽しくなる、何かアクションを起こすと何かが返ってくるから、それがまた楽しい。だから知りたいし、学びたい。そういう変化が起きたのかなと思います。

相澤:私から見ると、一人ひとりが楽しいと思えたり、やり甲斐を感じたりしている、というのを知ることだけで楽しいというか、非常に嬉しいですね

他部署とのやり取りがうまく行き始めたとか、自分が持っているフォルダをこう整理したいと提案したらそれが採用されたとか、ちょっとしたきっかけがあるだけで、みんなすごく変化するんです。それが「視座が高くなる」という結果になるんじゃないでしょうか。一見すると些細なことに見えるアクションのひとつひとつが、いつの間にか広がっていったイメージですね。

─カエル会議は、最初の1年間で集中的に取り組むもののその後がなかなか続けられないという悩みもよく聞きます。みなさんが継続できている理由は何でしょうか?

田中:昨年度に決めたやりたいことがまだ終わっていないんです。たとえば、ありたい姿として「今年は、スーパーエンジニアリング集団になる」というのを掲げていて、それに向かってやるべきことが多々あります。自分たちの知識を増やすのはもちろんのこと、他部署との連携という意味でも、まだまだこれからだと思っています。

相澤:他部署とのやり取りは去年だけでかなり変わったんです。でも部内の仕事全体でいうと、まだ改革の途中です。そこを変えればもっと効率的に仕事をして、定時でさっと帰れるようになる。残業を減らすだけではなく、暇なときと多忙なときの差をなくしてコンスタントにずっと充実した働き方ができる。そういった環境を作るために内部でどんな工夫をしていくか、周囲に対してどんな働きかけをしていくか。そこができればひとつの終着点かなと思います。

あとは、今年CCプロジェクトに参加している部署とコラボレーションして、どういう風に絡み合ってどんな結果が出せるかというのも楽しみなんですが、その参加部署以外の人たちともうまく関わっていけたらというのを視野に入れています。それも、続ける原動力かもしれません。

─メンバーのみなさんの関わり方は変化していますか?

相澤:エンジニアリング部には十数名のメンバーがいて、「業務が忙しいときはカエル会議なんてやらないほうがいい」「私、もういいです」とかいう声も聞きますが、それぞれに楽しんでやっていると思います。

「やってよかった!」とストレートな表現をしないにしても、実際に1年を通して積み重ねた結果として自分たちに変化が出ているのをみんなが感じて、楽しいと思えているはずなんです。だから、「やるよー」と声をかければみんなちゃんと集まるんでしょうね。

田中:取り組み前から考えたら、チーム全体に変化が起きていますよね。

─取り組みを全社に広げていくには何が必要だと思われますか?

相澤:働き方改革と聞くと「残業を減らす」という点だけを考えがちですが、実際にはどんな風に業務を構築し、どんな流れを作るか、それをいかにしてみんなで共有していくかが重要だと思います。エンジニアリング部に関しては、業務を事前に把握して計画的に取り組むという状況を作ったことで、一昨年と昨年を比べると結果的に残業が半分程度になっています。

実体験すれば一番よくわかりますが、やっていない人たちにとっては「面倒くさそうなプロジェクトだな」という感覚しかないんです。なので、実際に起きた変化をどう伝えていくかがカギになるのかなと。忙しいからそんなことに割く時間はないという感覚の人に、「忙しくても取り組んでちょっとずつ変えましょう。そうすることでより良い働き方ができるようになりますよ」というのをどう浸透させるかがひとつのポイントだと思います。

田中:私たちがやっていることを見て、実際の変化を感じてもらえたらいいと思います。他部署の女性陣からも「よくやってるよね、面倒くさくない?」と言われるので「全然そんなことないですよ、やって良かったです」と答えるんですけど、やっぱり「え〜〜!?」っていう反応なんです。私が個人で「やって良かったよ」というだけではなく、ちゃんとチームとしての変化を感じ取ってもらえる場があったら、「へぇそうなんだ、ちょっとやってみたいな」と思ってくれるんじゃないでしょうか。

─CCプロジェクトにとって事務局はどのような存在でしたか?

田中:心強い存在でした。カエル会議に入ってくれて軌道修正をしてくれたり、ちょっとした一言でみんながひらめいたりしますので、存在はとても大きかったかなと思います。

相澤:事務局の先輩と親しかったこともあり、非常に率直にわかりやすい助言をしてもらえて、私自身の成長につながったと思っています。田中も話しているように、伝え方がうまいんですよね。一言で雰囲気を変えられるというか、悟らせてくれるというか。会議を進める上でも助かりました。

─最後に、これから取り組む方たちへのメッセージをお願いします。

相澤:始める前は誰しも面倒くさいと感じるし、余計な関わりの中に入らされたなという感覚になると思うんです。でも、やってみたら絶対に変化は起きます。その変化を楽しみながら、働き方改革を進めていってほしいですね。

田中:私自身、自分がこうやって変わったことに一番びっくりしているので、みなさんも一度やってみて、楽しいなと実感してもらえたらいいなと思います。

■同社で取り組んでいる「CCプロジェクト」については、取締役事業部長・原田和彦さんからも話を伺っています。ぜひ こちらもご一読ください。

担当コンサルタント

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