Case Study

UQコミュニケーションズ株式会社様

働き方改革の講演を聞いた人事担当者が経営陣を説得し、取り組みスタート。
新規事業立ち上げ真っ最中に改革に乗り出した大きな意義とは?

UQコミュニケーションズ株式会社(従業員486名)は、電気通信事業を行うKDDI傘下の企業です。高速モバイルデータ通信サービス「WiMAX」を全国展開し、2015年にはスマートフォンサービス「UQ mobile」事業も開始。今後2020年以降順次、初代「WiMAX」を後継の「WIMAX 2+」に完全切り替えするなど、めまぐるしく変動する同業界にありながら、効果的な働き方改革を積極的に行っています。

講演会で「今こそ働き方の見直しが必須」と気づいた人事部キーパーソンが社長を説得

UQコミュニケーションズ株式会社が働き方改革を検討し始めたのは、2014年。総務・人事部の山田由紀子さんが弊社・小室淑恵の講演会を聞き、「新しい価値を社会に提供し続けていくためには、働き方の見直しが必須である」という気づきを得たのがきっかけだといいます。

短時間で効率よく働き、それによって創出された時間をインプットに使って新たな付加価値を生み出すこと。それが企業としての競争力強化、個人としてのスキルアップにつながるのだと知った山田さんは「ぜひ自社にも導入したい」と考えます。

こうして総務・人事部が働き方改革へのアプローチを開始した2014年当時、同社はスマホ事業へ新規参入するための検討を始めた頃で、業務は繁忙を極めていました。「事業拡大」と「働き方改革」は相容れないものだと考えられ、当初は野坂章雄社長からも反対されていたそうです。

そこから1年かけて他社事例を調査し、働き方改革の意義と本質について、野坂社長と総務・人事部とで、何度も議論を重ねました。少子高齢化の中で企業が成長を持続するには、個人のスキル向上と組織としてのチーム力底上げが不可欠であり、働き方改革はその手段となり得る──。「今は市場を攻めている時だから、働き方改革は後回し」ではなく、「忙しいからこそ、仕事のやり方について思い切った見直しをするしかない」との結論に行き着きます。

「働き方改革とはまさに経営戦略そのもの」という点で、社長の判断と総務・人事部との思いが一致した瞬間でした。会社として前進するための大きな決断。こうして同社の挑戦が始まったのです。

まずは社長・役員を対象に講演会を実施し、理解を得た上で次のステップへ

改革を進めるにあたって最初に実施したのは、小室淑恵による講演会でした。働き方改革の社会的意義と世の中の状況を、まずはマクロな視点から正しく伝える必要があると考えたためです。

社長や役員に出席していただいて多岐に渡ってお話しをしたところ、人口ボーナス期・人口オーナス期の成長戦略の内容が響き、同社の働き方改革がスタートしました。

とはいえ、「社会的意義はわかったが、うちの会社では無理だ」という声も依然として少なからずあり、各部門長を交えての議論を実施。2016年4月から本格的なコンサルティングに入ることになったのです。

働き方改革を実践する活動の名称は『スマートワークプロジェクト』(S=Skillスキルを磨き、M=Managementマネジメント力を強化し、A=Action行動を起こし、R=Recognize認め合い、T=Teamworkチームワークを高める! の意味)」と名づけられました(通称スマワク)。

スマートワークプロジェクト

「今増やすべき仕事・切るべき仕事」を見極めたことで、業務内容や成績が向上!

まずは、事業の最前線である営業・建設・技術部門からそれぞれ1チームずつ、合計3つのトライアルチームが選ばれました。

朝・夜メールでは、通常部署ごとに行う業務分析を、同じ業務を担当するチーム単位で項目を分けて分析。チームごとのリーダー主導で朝メールを振り返り、より時間をかけたい業務はないか、もっと効率化できる業務はないかを検討しました。それまで、市場データ等は詳細に分析するものの自分たちの働き方をデータ分析した経験はなく、朝・夜メールはその状況を考え直すよいきっかけになりました。

たとえば、営業部門のチームでは新規参入のスマホ市場にまつわる新しい業務が次々と発生し続けていました。そこで、業務の効率化をはかるだけでなく、「新たに発生した業務」を書き出し、さらに「現在の業務を廃止する基準」を独自に作成することにしました。これは非常に注目すべき取り組みといえます。というのも、業務を廃止する基準を明確にしたことでチーム単位での効率が上がり、全体の業務内容や成績に好影響が出てきたのです。

具体的な基準は、(1)獲得数30件/月未満が3カ月以上継続していたら廃止、(2)業務廃止による売上減少を他案件の売上増で補える見込みがあれば廃止、(3)その業務をやめたら本当に困る人(社内/社外)がいなければ廃止、という3点です。

こうして削減できた分を、本来もっと力を入れるべき「新規事業の施策検討・準備にかける時間」にあてるようにしました。すると、新規事業にかけられる時間が当初は全体の5%だったのが、最終報告会の頃には15%まで増加しました。

また、基地局の設置交渉・建設調整を行う建設チームでは、朝・夜メールで業務を分析。特定のメンバーに集中していた業務を、他メンバーがサブとなってサポートしながらチーム一丸となって対応するスタイルに変えたところ、建物オーナーとの基地局設置交渉の内諾率が、45%から80%に増加しました。

お互いの業務に興味を持ち関係性を向上させる「グッジョブ共有会」

さらに、チーム内の関係性の質を高めるために、建設チームでは「グッジョブ共有会」を実施。チームメンバーのよい行動や取り組みについて、「このメンバーのこの仕事/行動に助けられた/よかった/感謝」などの意見を投票してもらう会です。

これにより、これまであまり目が向いていなかったメンバーの仕事に対しても、「この人はどういう仕事をしているのか」とお互いに意識が向くきっかけとなりました。日常では気づきにくいお互いの「グッジョブ」をチーム内で共有することで、広い視野が養われるとともに、チーム内の関係性がぐっとよくなったそうです。

働き方改革を柔軟に加速させる「ボトムアップ型」のコミュニケーション

取り組み2年目の2017年は、コンサルタントがサポートするチームを6つに増やし、さらにコンサルタントのサポートなしに自分たちでカエル会議を進めていく18の「自走チーム」が加わりました。これで、すでに全社の3分の1が働き方改革に着手したことになります。2018年度は部門ごとの経営戦略として全社75チームに拡大しており、今後もますます改革を推進していきます。

取り組みを開始した当初は、「うちの会社で働き方改革は無理だ」とささやかれていたものですが、社内に成功事例ができたことでそれも打ち消されました。相互の仕事分担を見直し、会社全体としての業務フローを変えるなど、メンバーの視座も上がり「この取り組みはマネジメントそのものだ」という気づきが社内で広がり始めています。

私たちが同社にアドバイスした今後の重点課題は、トップダウン型で推進してきた企業にありがちな「結果の質」を重視するコミュニケーションから、「関係の質」を重視するコミュニケーションへと変化させることです。社員がボトムアップで自律的に行動し、自由に意見できれば、さらに柔軟にアイデアが出て、働き方改革が加速すると思われます。

残業削減・朝型勤務推奨・年休取得率向上など”形が見える施策”を全社的に実施

こうしたトライアルチームの取り組みと同時に、2016年6月、社長・部門長から「一部だけでなく、全社で取り組む施策があったほうがよいのではないか」との後押しもあり、改革の加速度を高めるために、以下のような”形が見える施策”も全社的に着手しました。

  • 残業は原則20時まで(超える場合は部門長の承認。残業超過者は経営会議で報告)
  • 朝型勤務の推奨(8時までの出社で朝食提供。※18年度より7時30分までの出社に変更。朝型勤務も残業としてカウント)
  • 会議運営の効率化(1会議原則30分まで)
  • オフィス環境の整備(集中ブース、立ち会議スペースの新設)
  • 年休取得率の向上(目標値70%)

これらを4カ月トライアル実施したところ、アンケートでは「今後も継続してほしい」との声が62%と、前向きに捉えられていたことから、正式導入することになりました。

10月からは、社員からの要望が高かった「仕事のスキル向上研修」「資料フォーマット・会議ルールの統一」「柔軟な勤務制度の導入」など、次々と新しい取り組みに着手しています。加えて、各部門担当者で構成する「全社横断WG(ワーキンググループ)」を月1回実施し、ボトムアップ施策も並行して行い、現場の声に耳を傾けるような活動もしています。

新規事業で業務が増えるときにこそ、働き方改革が功を奏す

同社の働き方改革の特徴は、新規事業などで業務が繁忙になる時期に、あえて働き方改革にチャレンジした点です。

通常なら残業が増えるところですが、全社平均で残業時間を約1割減少させながら、会社の利益指標は全項目で計画値を達成しました。社員には、働き方改革支援金・スキルアップに係る費用を支給することで、還元を行いました。従業員満足度を表すES調査でも、「職場環境(私の組織は、残業、休暇の取得、清潔さや安全などへの配慮があり、心身ともに健康でいられる働きやすい環境になっている)」の項目で、前年比5ポイントアップとなり、社員の働きやすさが目に見えて向上しています。

「うちは今、新規事業を展開中だから」と二の足を踏んでいる経営者は多いことでしょう。私たちも、そういった方たちにたくさんお会いしてきました。しかし、新規事業で勝つためにこそ、働く時間を制限して決別すべき事業とは決別し、切るべき業務は切ることが重要です。そこで生み出された時間が従業員にもたらすエネルギーによって、新規事業がより輝くのです。

UQコミュニケーションズ株式会社の成功ポイント3
  • 粘り強く改革の必要性を説いた人事部キーパーソンの存在
  • 新規事業の展開と働き方改革を同時に実施するというトップの経営判断
  • スモールスタートで開始し、3年で全社に拡大

※こちらの事例は、弊社代表 小室淑恵の著書『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』からまとめ直したものです。

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