日本郵便株式会社様
社員の生産性・満足度向上を目指して働き方改革を推進。
事務局によるモデル局リーダーインタビューで見えてくることとは?(3ページ目)
「多能化を進めよう」郵便局の仕事の見直し(豊島局インタビュー)
豊島郵便局郵便部 部長 五十嵐浩二さん
同 課長 鈴木久美子さん
同 主任 宮森紗耶葉さん
(聞き手)日本郵便㈱ダイバーシティ推進室 若松忠秀さん
モデル局に選ばれた理由が分からない
若松 今回、貴局(郵便部)は「仕事の仕方見直しプロジェクト」のモデル局(チーム)に選ばれましたが、感想はいかがでしたか。
五十嵐 モデル局だといわれても、どのようにやっていけばいいのかまったく分からないという状況でした。
鈴木 私は、「何でうちの局が選ばれたんだろう」と思いました。
宮森 うちの局のやり方が悪いから、それを改善しましょうということなのかなと思って、ちょっと焦りましたね。
五十嵐 確かに、当局は規模が大きい局ですから、同じ郵便部でも伝達がなかなかうまくいかないところもあるようです。
とりあえず悪い点ばかりを付箋に書いた
五十嵐 仕事の仕方見直しに取り組むに当たっては、まずゴールを何にするか決めようということになりました。
決め方も、社員から意見を出してもらって決めようということにしました。そうでないと、やらされ感が残ってしまいますから。
鈴木 当局の今の状況を考えてみて、いい点、悪い点をいろいろと出していきました。いい点が見つからなくて、悪い点ばかり出て来ましたね。
郵便部ではほとんどの作業がそれぞれの担当者専担になっています。そうしたところを見直すようにしたいと考え、とりあえず悪い点をいろいろと付箋に書いていきました。
宮森 付箋に書いてみますと、思っていたことが視覚化されるといいますか、目に見えてきます。
そうしますと、やはり、今の仕事のやり方には問題点が多いのではないのかなと思いました。
担当者がいないと仕事が進まない
五十嵐 一番大きな問題点は、担務がそれぞれの担当者ごとに細かく分かれているため、その人がいないと仕事が進まないことでした。
逆に言うと、仮にある担当者がいなくても他の者が代わって行えるようにすればいいわけです。
そのためには、仕事の担務の入れ替えですとか、今まで担当していないような担務をやってもらう、というようなことをしないといけないわけで、それに向かって進むことになったのです。
解決法をコンサルタントに聞く
若松 なかなか難しい課題ですね。今回は、外部からコンサルタントの方に入ってもらってプロジェクトを進められたとのことですが、いかがでしたか。
五十嵐 コンサルタントの方にいろいろと教えていただいたのですが、私達は正直最初の頃、「こんなことをやって、本当にうまくいくんだろうか」というような気持ちでした。失礼ですが、郵便のことをご存じない方たちが、どうやって私達の仕事を見直したり変えたりできるのだろうという思いは、確かにありました。
鈴木 もともと私達は、問題を見つけて解決していくというやり方に慣れていませんでした。例えば、どうやって問題をみつけたらいいのか、どうやって解決策を進めたらいいのかなど、やり方がよく分からなかったのです。
今回、コンサルタントの方に方法を教えていただいたことで、そうした点は助かったと思っています。
改善はこれからが本番
若松 テーマが「多能化」ということに決まりましたね。どんな担務でもできる人を増やすということですが。
五十嵐 プロジェクトが進み始めたという感じです。
鈴木 むしろ、これから苦労するのではないかと思います。多能化ということを目標にして、担務の変更をしていって、もしうまく機能しない、前に進まないというのであればそれは問題です。
ですから、これからが本番だと思っています。
それから、このプロジェクトに参加する、みんなの間で、モチベーションに温度差があるのは事実です。経験が長い方は、これまでのやり方でいいという思いもあるようです。
社員が納得することが大事
五十嵐 温度差が多少なりともあるのは承知しています。それはそれで仕方がない部分もあると思います。
しかし、だからといって止まったのでは何の意味もないんです。本当に大変なのはこれからですよね。実際、毎日の業務をしながら新しい担務を覚えたり、教えたり、引き継いだりするのですから。
ただ、進め方は大事です。局長からは、「事務的にやっても絶対うまくいかないぞ」「とにかく社員の気持ちを重視しなさい」というアドバイスをいただきました。それぞれの社員が腹に落ちるというか、ちゃんと納得してもらうことが大事です。それからでないと、進めたり変えたりすることはできないのだと。
一方で、若い社員の中にはスキルを上達させていろいろな担務を覚えていきたい、という人もいます。そこは絶対大事にしたいのです。
一日の仕事の書き出し
若松 「多能化」を目標にしようと決めて、その後は、仕事の仕方の見直しを具体的にどのように進めていったのでしょうか。
五十嵐 まずは、各自が一日どのような仕事をしているのかの洗い出しをしました。書き出してもらったのです。
すると、他の社員について「あ、そんなことまでやっていたの」というようなことも分かりました。
鈴木 お互いに「あの人、何やっているのだろう」と思っていたのですが、他の人の仕事を大まかに知ることができたというのが一番の成果ですね。
人のやっている仕事って意外と分からないものですね。
宮森 自分の仕事が意外と簡単に書けなくて。ですから、自分の仕事といっても他人にうまく説明できないものなのだなと感じました。
五十嵐 やっている本人は、その仕事が当たり前だと思ってやっているのですが、他の人から見ると、「え、何でそんなことをやっているの」とか「それってうちの仕事じゃないの」と思えるものもありました。
こういうチェックを定期的にやるのも大事かなと思ったりしました。
計画をスケジュール化
若松 次のステップでは、どのようにされたのですか。
五十嵐 社員には、他の局でも通用するよう、新しい仕事をいろいろ覚えてほしいのです。そこで、現在どんな仕事をしているのかということのほかに、今後どんな仕事をしたいのか書いてもらいました。
次のステップとしては、新たに仕事を覚えてもらうために、どのようにスケジュール化していくかです。
スケジュールを作って、四月以降、それをきちんと実行していかなければなりません。
鈴木 順序立ててスケジュールどおりに進めていかないとやはり滞りますから。そこは期日を守って、指示されたことはやらないといけないと思っています。
他局の取組も参考になった
若松 先日は、本社で取組の中間発表が行われましたが、それを聞いてみていかがでしたか。
鈴木 自局も発表しましたが、他局の発表も聞きました。同じ取組をしていても、方向が少し違ったり、観点がおもしろかったりするので、それが参考になりました。
五十嵐 例えば青葉局(神奈川県)では、魅力ある管理者・役職者にするためにチームで「余暇の充実」や「業務の共有化」に取り組んでいる。うちの局とは正反対な考えのように見えて、とてもおもしろいというか、何か遊び心を入れてやっているんだなと感じました。本当にいい機会だったと思います。